今年8回目となる真夏のソウルの祭典、東京1日目の模様をレポート!
SOUL POWER | 2013.09.18
良質のソウル・ミュージックを求めて集まってきたファンで、東京国際ファーラムは満員だ。彼らは、いわゆる大人。自分の好きなモノを知っていて、それを楽しむスタイルも熟知している。もはや恒例イベントになった「SOUL POWER」は、一級の音楽ソムリエが参加アーティストを厳選しているので、オーディエンスはソウル・ミュージックとそれを取り巻くムードを安心して楽しみに来る。今年で8回目となるイベントだが、この8年間は、オーディエンスのそうした信頼を勝ち取る時間だったと言ってもいい。 その信頼は、イベントを作っている者にとってはいちばん嬉しい勲章だ。そうして今回の「SOUL POWER TOKYO SUMMIT 2013」は、オーディエンスからイベントに贈られた勲章の授与式を見る思いがする内容だった。
派手なブラスの音が響く中、最初に登場したのはSkoop On Somebody。この心浮き立つオープニングこそ、ソウル・ミュージックの真髄。セクシーなTAKE(Vo)の声がさらにオーディエンスを沸き立たせる。2曲目「SMOKY」では、KO-ICHIRO(Key・Cho)のアグレッシヴなシンセ・ソロが腰を直撃する。この曲は名ギタリストCHARの70年代のヒット曲で、それをR&Bアレンジにしてカバーするあたりが、Skoop On Somebodyのセンス。それを踊りながら楽しむオーディエンスの大人度が知れるというものだ。
ゲストにMay J.を迎えて、1980年のヒット曲「Just The 2 Of Us」をTAKEとデュエットする。この曲の方が「SMOKY」より歓声がやや高かったのは、会場を埋めた“大人たち”がそういう世代だからだ。それにしてもTAKEとMay J.の歌の絡みは濃厚で、飛ばし過ぎ(笑)。テレビで観るMay J.よりずっと大人びていて、ずっと楽しそうに歌っていたのが印象的だった。
続いては、そのMay J.のソロ・ステージ。J-POPカバーの「ハナミズキ」が違和感なく聴こえたのは、Skoop On Somebodyとのソウルフルなセッションがあったからだろう。イベント演出と選曲がハマった瞬間だった。伸び伸び歌うMay J.を、観客は今度は座って楽しむ。
次のKEITAは、“現代っ子”らしく(笑)、最新のソウル・ミュージックを歌う。ここでは、それまでよりちょっと甲高い歓声が上がる。僕はこのとき、オーディエンスがイベントに寄せる信頼を感じたのだ。出演アーティストを事前に知っていながら、誰がどんな場面で出てきて、どんな曲を歌っても楽しめる。もちろんお目当てのアーティストがいたとしても、イベントを全体として楽しめる観客たちの余裕が美しい。いちばん若い出演者のKEITAは、そうしたオーディエンスに囲まれて、期待以上のパフォーマンスをしてみせる。歌もダンスも切れ味抜群。Eric Benetの2010年のヒット曲「Sometimes I Cry」で、ファルセットを見事にコントロールしていたのが頼もしかった。
盛り上がってきたところに、鈴木雅之がブルーメタリックのスーツで現われる。コテコテの演出が似合うのは、やはりこのイベントの首謀者の一人だからだ。冒頭の「僕らの奇跡」のチャチャのリズムがカッコいい。
「私がラブソングの王様です!」ときっぱり宣言。「ようこそ“SOUL POWER”へ。今年で8回目ですよ。最初は3回ぐらいやれればいいかなと思ってました。愛情がないと、ここまでできません」。
ゲストにゴスペラーズの黒沢 薫やAJI、ラッパーのLGMonkeesが加わって、ライブは熱を帯びていく。さらにゴスペラーズの村上てつや、酒井雄二、ラッツ&スターの桑野信義、佐藤善雄が入ってくる。佐藤はゴスペラーズの所属していたレーベル“ファイルレコード”の代表で、「ファイルレコードは今年で25周年を迎えました。その楽しい思い出だけをピックアップして作った歌です」と、アニバーサリーソング「25」をみんなで歌う。胸がジーンとするシーンだった。
川畑 要は、「SOUL POWER」にフル出場するのは今回が初めて。ダンサーを従えて、ソロのステージを披露する。若干、緊張気味だったが、ゴスペラーズが参加した「You」では素晴らしい歌唱を披露。ルーツであるソウル・ミュージックに対するリスペクトを根幹に置いて、フル出場の責任を果たした。
ライブはそのまま、ゴスペラーズのステージへ。最新カバーアルバム『ハモ騒動 ~The Gospellers Covers~』からの「TIME STOP」でスタートを切る。ブラスが似合うこの曲を、ムーディに仕立てる。グラミー受賞歌手ブルーノ・マーズの「Just The Way You Are」をKEITAと一緒に歌う。May J.とは「少年時代」をアカペラで。「女性が真ん中に入るアカペラって、響きが変わるよね」と安岡 優が言って歌ったこの曲は、その言葉どおりMay J.との相性がよく、5人の個性が存分に発揮されていてさすがだった。
ライブは終盤に差し掛かる。ゴスペラーズの締めは「ギリギリSHOUT!!」。観客は総立ちで思い切り楽しむ。ハンドクラップする人、踊る人、ゴスペラーズと同じアクションをする人。それぞれの“やり方”が、調和していく。
お楽しみは、アンコールだった。村上てつやとTAKEの ユニット“武田と哲也”、ラッツ&スターとゴスペラーズの合体グループ“ゴスペラッツ”、ダンス☆マン、ダンサーなど、出演者が様々な組み合わせでパフォーマンスして、イベントは大団円に突入。
実はこのイベント、バックバンドが2組で編成されていて、それぞれに実力派。2バンドあるから流れがスムーズになり、さらには様々なソウル・ミュージックの時代感を弾き分けることができる。2バンドが合流したフィナーレは、お互いがいい意味で張り合って、ボーカリストたちだけでなく、演奏面でもヒートアップ。そんな見せ場に的確に反応するオーディエンスがとても素敵だった。信頼の勲章は、観客たちにも贈られたのだった。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:緒車寿一】
セットリスト
SOUL POWER SUMMIT 2013
2013.8.30@東京国際フォーラム
〈OPENING ACT〉
LGMonkees
- イマアイ
- 3090~愛のうた~
Skoop On Somebody
- ONE NITE DRIVIN’
- SMOKY
- Just The 2 Of Us
- ソウル・リヴァイヴァー
- Bro. KONE メドレー
(SOUL MAN~CLAP YOUR HANDS TOGETHER~WON’T BE LONG) - My Life
May J.
- ハナミズキ
- I DREAMED A DREAM
KEITA
- Sliden’n Step
- Sometimes I Cry
- Hey Love
鈴木雅之
- 僕らの奇跡
- 十三夜
- 22時までのシンデレラ~心はいつも
- 別れの街(アカペラ)
- 25
- 夢で逢えたら
川畑 要
- スターシップ
- breakthrough
- You
ゴスペラーズ
- TIME STOP
- Just The Way You Are
- 少年時代(アカペラ)
- スローバラード
- 太陽の5人
- ギリギリSHOUT!!
- Between the sheets
- Midnight Train Toe Georgia
- Lovely Day
- Me & Mrs. Jones
- Shake Your Body
- Love Train
- WE GOT SOUL POWER