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祝10周年!!今年も「SOUL POWER」は熱かった!!東京2DAYS、2日目をレポ。

SOUL POWER | 2015.10.13

 毎年夏に開催されるソウルの祭典「SOUL POWER」。鈴木雅之、ゴスペラーズ、Skoop On Somebodyという“SOUL TRIANGLE”が2006年にスタートさせたイベントだ。トータル・プロデュースに彼ら自身が深く携わり、世代を越えた魅力的なボーカリストが集い、歌声を競い、ソウルを交歓し合うという唯一無二のイベントへと育て上げてきた。今や観る側にとってのみならず演る側にとっても夢の舞台。そして、今年は記念すべき10回目。その東京公演“TOKYO SUMMIT ”が、9月12、13日、国際フォーラムで行われた。
 ここでは2日目の模様をお届けしよう。

 ファンキーな音に乗ってまず登場したのは、第1回でもオープニング・アクトを務めたエナメル・ブラザーズ。鈴木雅之とゴスペラーズ黒沢 薫によるデュオだ。大人の茶目っ気たっぷりにオリジナルの「She’s My Girl」を聴かせると、そこへ出場3回目となる川畑 要がジョイン。今回の流れを紡ぐ重要人物と鈴木から紹介された川畑は、ちょっと照れつつ、ふたりと「Soul Sister, Brown Suger」を奏で、キレのいいパフォーマンスで会場を温めた。

 その熱に乗って、10年ぶりの新作『GOSPE☆RATS ~ぺラッII~』を出したばかりのゴスペラッツが登場。「SOUL POWER」の立ち上げ時期、鈴木と村上てつやの熱い思いをシンボライズするように生まれたグループだから、10回目に出る喜びはひとしおだったはず。ちょっとした手のポーズやステップなどにも、ソウルマナーがあふれているのが素敵だ。もちろんトークも一流。ハーモニーの真髄を知る人たちが繰り出す品のあるユーモアに、観客は終始釘づけとなった。アニメ「バリィさんのいまばり弁講座」の主題歌となっている「トンデバリバリ物語」では、今治のゆるキャラであるバリィさんも登場。なんとも愛嬌のある動きに、会場から「カワイイ!!」のざわめきが途切れなかった。それもあって、ほっこりと「音楽って楽しい」と思えたゴスペラッツのステージだったのである。

 続いたのは“SOUL TRIANGLE”の一角Skoop On Somebody。「来年で20周年。KO-ICHIROととにかく前に進もうと話して、3年ぶりの新作をリリースしました」というTAKEの晴ればれとした表情に、今の彼らの充実ぶりが垣間見られた。その新作『THE SOUND OF SUNRISE』からのナンバーはとてもポップ。自然と体が動き、心が軽やかになった。お馴染みのパーティチューンでは会場の熱気が最高潮に。そこに今年2回目の出場となるMs.OOJAが呼び込まれ、TAKEと「Ain’t No Mountain High Enough」の温く爽快なデュエットを聴かせてくれた。最後は川畑 要と初登場のGILLEが加わって「Key Of Love」。スケールの大きなサウンドと歌声に観客は気持ちよく身を委ねた。

 その空気にきれいに溶け入るように再び登場したMs.OOJAは、自身の曲「Be・・・」を披露。丁寧に言葉を届ける人という印象を強く持った。そこに呼び込まれたのが黒沢 薫。実は黒沢はソロ・デビュー10周年の記念シングル「愛とは・・・duet with Ms.OOJA」をレコーディングしたばかりだったのだ。ということで、その曲を「年齢差と身長差を越えて宇宙初披露(笑)」。その豊かな声のブレンドに観客はうっとり聴き入った。

 ロマンチックムードを「ミャオ~ン」とギンギラ衣装でブチ壊した(?)のは、SOUL POWERには欠かせない存在ダンス☆マン。「地球で知り合った大好きなボーカル・グループにコーラスつけてもらいました」と、ゴスペラーズを紹介し、「ダンス☆マンのテーマ」、「二度と言い切ったりしない」をコミカルにパフォーマンス。これが中盤のいいブレイクタイムとなった。

 後半はそのままゴスペラーズから。ここ数年、SOUL POWERでは、ガッツあるソウル・ナンバーを届けるのが定番となっていたが、今年は「TIME STOP」、「星降る夜のシンフォニー」と王道のバラード・モード。が、そこで「去年は客席で観ててくれてた」と、村上がGILLEを呼び込むと、人懐こい宮崎弁のMCでパーンと空気が一気にハジける。そして、彼女の新曲「Shake it! 」をコラボ。「ついてこい!」と言わんばかりのパワフルでコケティッシュなGILLEの魅力に会場は大いに沸いた。続いて、今回大活躍の川畑が三たびの登場。「昔、声が出なくなったとき“永遠(とわ)に”を歌ってもらったことがあって」と、村上から川畑との意外な関係が明かされた。そんな盟友と奏でる「ミモザ」。お互いの感慨が織り込まれたハーモニーが素敵だった。20周年を終えたゴスペラーズは“スイートでメロウなラブバラード”に原点回帰するという。「Dream Girl」、「街角 -on the corner-」の先にほのかに見えるニュー・アルバムが楽しみでならなくなった。

 トリはデビュー35周年を迎えた鈴木雅之。登場するなり骨太な「Dry Dry」をカッコよく聴かせると、「私がラブソングの王様・鈴木雅之です」と半笑いの自己紹介で早速笑い誘う。歌声はもちろん、その話術も観客の楽しみとするところだ。鈴木は第10回のSOUL POWERを総括しつつ、自分のステージでは35年に渡る音楽の歴史をたどってみたいと表明。「ソロ活動に入ってから積極的にコラボにも取り組むようになった」と、まずは山下達郎と作った「Guilty」で会場を酔わせた。2000年代からは若いアーティストとも精力的に関わるようになったという。その“若いアーティスト”のひとつがゴスペラーズ。ということで、ゴスペラーズを呼び込み、「マーチンに曲を書くのが夢だった」という黒沢と安岡 優が作った「これから」を、当時の楽しいエピソードとともに披露。そこに今度は佐藤善雄、桑野信義、Skoop On Somebody、鈴木が「ソウルブラザーNo.1」と呼ぶBro.KORNが加わり、「1980年代にトリップ」(by鈴木)して「め組のひと」、「ランナウェイ」。往年のヒット曲に観客も大興奮。鈴木は自身の根底に持つソウルを、誰もが共有できるポップスとして昇華してきた。このことこそが偉業であると、つくづく感じた瞬間だった。

 「ソウルトレインのテーマ」で始まったアンコールは、いまやSOUL POWERの名物コーナーだ。“ドン・コーネリアス”(=米国の音楽番組「SOUL TRAIN」の司会)に扮したダンス☆マンとマイケル鶴岡率いる華やかなダンサーSOUL POWER GANGSたちが彩りを添えるなか、今年もイベント直前にリリースされたSOUL POWERの公式コンピ『SOUL Summit III』収録の名曲を、出演者たちが入れ替わり立ち替わりのコラボで楽しませてくれた。もちろんオーラスは、SOUL POWERのテーマ「WE GOT SOUL POWER」だ。観客も一体となって胸に当てた手を空に差し伸べ、音楽の神様に感謝。その光景を見ながら、これからまた20年、30年とこのイベントが続く中、古きよき時代から脈々と受け継がれてきた素晴らしい音楽が、さらなる次世代へと手渡されていくことを願った。「断絶」が切実になってきているこんな時代だからこそ。

【取材・文:藤井美保】
【撮影:緒車寿一】

tag一覧 ライブ イベント SOUL POWER SUMMIT ゴスペラーズ 鈴木雅之 Skoop On Somebody ゴスペラッツ Ms.OOJA

リリース情報

エルマ

エルマ

2019年08月28日

UNIVERSAL MUSIC LLC

01. 車窓
02. 憂一乗
03. 夕凪、某、花惑い
04. 雨とカプチーノ
05. 湖の街
06. 神様のダンス
07. 雨晴るる
08. 歩く
09. 心に穴が空いた
10. 森の教会
11. 声
12. エイミー
13. 海底、月明かり
14. ノーチラス

セットリスト

SOUL POWER TOKYO SUMMIT 2015
2015.9.13@国際フォーラム ホールA


<エナメルブラザーズ>
  1. Soul Finger
  2. She’s My Girl
  3. Soul Sister, Brown Suger(with 川畑 要)

<ゴスペラッツ>
  1. 歌の贈り物
  2. まさか赤坂 Show Time
  3. トンデバリバリ物語(with バリィさん)
  4. Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba 物語
  5. ハリケーン
  6. デイジー

<Skoop On Somebody>
  1. Hello Today
  2. Beautiful Sound
  3. バラ色
  4. M.F.S.B.
  5. Ain’t No Mountain High Enough(with Ms.OOJA)
  6. Key Of Love(with 川畑 要,GILLE)

<Ms.OOJA>
  1. Be・・・
  2. 愛とは・・・ duet with Ms.OOJA(with 黒沢 薫)

<ダンス☆マン>
  1. ダンス☆マンのテーマ
  2. 二度と言い切ったりしない(with ゴスペラーズ)

<ゴスペラーズ>
  1. TIME STOP
  2. 星降る夜のシンフォニー
  3. Shake it!(with GILLE)
  4. ミモザ(with 川畑 要)
  5. Dream Girl
  6. 街角 -on the corner-

<鈴木雅之>
  1. DryDry
  2. Guilty
  3. これから(with ゴスペラーズ)
  4. め組のひと(with ゴスペラーズ、佐藤善雄、桑野信義、Skoop On Somebady、Bro.KORN)
  5. ランナウェイ(with ゴスペラーズ、佐藤善雄、桑野信義、Skoop On Somebady、Bro.KORN)
  6. 君を抱いて眠りたい

<ENCORE>
  1. ソウルトレインのテーマ(T.S.O.P.)
  2. Give It To Me Baby/Rick James
  3. Got to be real/Cheryl Lynn
  4. Aint no Stoppin’ us Now/McFadden & Whitehead
  5. Summer Bunnies / R Kelly
  6. Happy/Surface
  7. Boogie Nights/Heatwave
  8. September/Earth, Wind & Fire
  9. I Love Music/The O’Jays
  10. WE GOT SOUL POWER

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