FLiPの3rdアルバムツアー最終日、SHIBUYA-AXをレポート。
FLiP | 2013.11.22
3rdアルバム『LOVE TOXiCiTY』を引っさげてのツアー『LOVE THE TOXiC CiTY』の最終日。この日のライヴタイトルは、『LOVE THE TOXiC CiTY -FiNAL and BEGINNING-』となっていた。
BEGINNING。それは始まりを意味する言葉。
彼女たちは、この日をツアーのファイナルとするも、新たなる未来のスタート地点としたのである。
7月7日の大阪を皮切りにスタートしたツアーは、全国9本をまわり、この日、ここでファイナルを迎えたのだが、前回観たツアー2日目だった7月19日恵比寿LIQUID ROOMよりも、より激しく、より深みを増していたように感じさせられた。それはきっと錯覚ではなく、彼女たちのモチベーションと、ツアーを経てさらに自分たちの中に、『LOVE TOXiCiTY』というアルバムがしっかりと根付いたからに違いない。
SHIBUYA-AXの紗幕に、自らのバンド名FLiPをしっかりと映し出したそのオープニングは、誰にも邪魔させない、誰にも負けはしないという、彼女たちの強い意思表示のようにも見えた。
1曲目は「カミングアウト」。
全体的に低めセッティングされたドラムセットを、姿勢よく、上から力強く叩き付けるようにプレイするYuumi。少し上目にベースを構え、リズムに乗りながら、懸命にプレイに打込むSayaka。肩幅よりも少し広く足を広げ、男勝りなギタープレイをぶちかますYuko。艶っぽさを宿しながらも、力強く声を張るSachiko。
彼女たちは、間髪入れずに「It’s a lie」「Tarantula」「CHERRY BOMB」と、“これでもか!”と言わんばかりに、ド頭からどこまでもエモーショナルなFLiPの底力を見せつけてきたのだ。
「ありがとう! この日をどれだけ待ち望んでいたことか! 本当に今日を迎えられて幸せです!」(Sachiko)
感極まった表情で言葉を発したSachikoに続き、ドラム台からYuumiがイタヅラな笑顔でこう言った。
「いやぁ?。飛ばしすぎた(笑)? まだ行ける?」(Yuumi)
屈託の無いその笑顔と自由さに、会場からは一瞬クスッという笑いが起ったりもしていたが、我武者らに全てをこのライヴに懸けている彼女たちの想いと音に、オーディエンスは大きな歓声を贈った。
「一緒に忘れられない時間を作っていきましょう――」(Sachiko)
Sachikoの言葉の後、間髪入れずに始まったのは、「二十億光年の漂流」。『LOVE TOXiCiTY』の中からのこの1曲は、なかなか思うように曲や歌詞が書けず、逃げ出したくなったり、音楽を辞めてしまおうかと考えたこともあったという中、セルフプロデュースという形で生み出されたアルバム『LOVE TOXiCiTY』に込められた想いに繋がるモノがあった気がした。しっかりとオーディエンスにその想いを伝えた後は「ライラ」へ。ベースから始まるこの曲に、オーディエンスは力強い“OiOiOiOi”の掛け声を加え盛り上げた。タイトに刻まれるドラムとリズミックに音を弾くギターとベース。少しはすっぱに歌い放つSachikoのボーカル。それは、まさにFLiPにしか出せない個性を存分に放っていた瞬間でもあった。
そして。彼女たちはここでオーディエンスに新曲をプレゼントしたのだ。それは、ループするヘヴィなギターリフが印象的な1曲だった。
と、ここで、ステージ上手からもう1つのドラムセットが持ち込まれた。
「Vドラ(ブイドラ)です! ライヴでVドラを使うのは初めてだから、すごくレアだと思います!」(Sachiko)
YuumiがVドラへと移動すると、「Log in “Rabbit Hole”」が届けられた。“ちょっと違うことがしたかった”という彼女たちのチャレンジは、FLiPの世界観を一層広げ、毒々しさを感じさせる曲調は、オーディエンスの体を無条件に揺らした。
中盤にはSachikoが機材を駆使して1人で唄を届けるシーンが設けられたり、オレスカバンドのテナーサックスのmoricoとトランペットのSAKIとトロンボーンのHAYAMIを呼び込み、一緒に「Bat Boy! Bat Girl!」が届けられるシーンもあった。
そして、ラスト2曲では、サークルモッシュならぬ、サークルヘドバンが生まれ、オーディエンスが所狭しと土下座し、大きく振りかぶってヘドバンするという、これ以上にない熱さで4人に応えていたのだった。
アンコールを届けた後も、オーディエンスの歓声は鳴り止まず、その声に応えた彼女たち。
「ありがとう。本当にありがとう。今日は第一章の終わりです。この後から、ここから、第二章が始まります! 東京でやるのは初めてです――」(Sachiko)
届けられたのは「茜」。茜色に染まったステージから、4人は柔らかな声と音を響かせた。そこには、沖縄という土地を離れ、必死にもがき、音に向き合う彼女たちの赤裸裸な想いがあった。
「これからもFLiP、もっとヤバくなるから、付いてきてね!」(Sachiko)
4人は横一列に並び、しっかりと手を結ぶと、集まってくれたオーディエンスに深く頭を下げた。この日、無心で音楽に向き合えていた4人を見た気がした。結成8年を迎え、今、やっと自分たちと真っ直ぐに向き合えたのかもしれない。そう思った。理不尽に思うことも、純粋に音楽性だけで評価されない納得いかない現実も、自分たちでは変えることのできないモノに対するその悔しさは、きっとこの先も無くなりはしない。けれど、彼女たちはこの先も、自分たちを見失うこと無く、FLiPにしか出来ない音楽を届けていってくれるに違いない。今、彼女たちはそんな強さを持っている。『LOVE TOXiCiTY』というアルバムを、ファンのみんなと、このツアーを通して完成させたことで、彼女たちはいままで以上の力を持つことが出来たと思う。
FLiP第二章。ここから始まる彼女たちに栄光あれ。
【取材・文:武市尚子】
【撮影:maki kamacra、Mami Naito】
関連記事
-
FLiP
3rdアルバム『LOVE TOXiCiTY』を引っさげ全国ツアー中のFLiP。7月19日、東京・恵比寿LIQUIDROOMでの様子をレポート!
-
FLiP
FLiPの 自主企画イベント「RESPECT」。ゲストにTRICERATOPSを迎えた4月4日の東京公演の様子をレポート!
-
FLiP
FLiPのアルバムリリースツアー“喜怒愛ROCK”。後半戦、ワンマンバージョン、11月2日の渋谷クラブクアトロをレポート。
-
FLiP
-
FLiP
そのライヴの実力で、じわじわと噂が広がり、注目を集めているFLiP。2月8日、新曲「ワンダーランド」発売日と同日に行われた、渋谷クアトロでのワンマンライヴをレポート!
リリース情報
セットリスト
LOVE THE TOXiC CiTY
-FiNAL and BEGINNING-
2013.11.10@SHIBUYA-AX
- カミングアウト
- It’s a lie
- Tarantula
- CHERRY BOMB
- 二十億光年の漂流
- ライラ
- Color Me Blood Red
- Log In “Rabbit Hole”
- Dear Miss Mirror
- a will
- 永遠夜〜エンヤ〜
- darkish teddy bear
- Bat Boy! Bat Girl!(with ORESKA BAND)
- ワンダーランド
- カザーナ
- Raspberry Rhapsody
- カートニアゴ
- ナガイキス
- Oh Darling!
- Balloon Head
- 茜
お知らせ
College Summit SPECIAL
2013/12/01(日)金沢EIGHT HALL
日本工学院ミュージックカレッジ presents Exceed The Limit
2013/12/18(水)赤坂BLITZ
矢沢洋子「Bad Cat」RELEASE TOUR「Bad Cat〜ニャンだこのやろう〜TOUR」
2013/12/20(金)下北沢CLUB Que
ポタリ"コネクトピース"ツアー EPISODE1
2013/12/26(木)名古屋アポロシアター
ROCK IT LOUD!2014 Girls Wanna Rock
2014/01/05(日)桜坂セントラル
心斎橋の如く2014
2014/01/11(土)OSAKA MUSE
Jun Gray Records Presents 「And Your Birds Can Sing In Kyoto」
2014/01/19(日)京都MUSE
Jun Gray Records Presents 「And Your Birds Can Sing In Tokyo」
2014/02/02(日)渋谷CLUB QUATTRO
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。