FLiPの 自主企画イベント「RESPECT」。東京公演のゲストはTRICERATOPS。
FLiP | 2013.04.18
「今日、さっきFLiPのサウンドチェック見てたんだけど、ほんと、すごいね、びっくりした!」
この日、ゲストとして出演していたTRICERATOPS。そのライヴ中のMCで、彼らが、FLiPとの出会いなども含め彼女たちとのエピソードを紹介していた際のひとことである。
FLiP。ライヴをその活動の肝のひとつに据え、着実にライヴバンドとして成長している4人組だ。ここ数年で、フェスやイベントへの出演も増え、その実力は口コミでも広がっている。その彼女たちが、デビュー以降、定期的に行ってきたイベントが「FLiP presents“RESPECT”」シリーズだ。今回で5回目を迎えたこのイベントは、回を重ねていく中で、全国ツアー展開ができるまでに発展。彼女たちが、大切に育てた、FLiPの名物シリーズにまでなった。
4月4日。「FLiP presents“RESPECTS vol.5 TOUR”」の東京公演が、Shibuya WWWで行われた。
トップバッターを飾ったのはBARBARS。ギター(田中未希)とベース(湊 梨央子)が女性。ドラムが男性(影山広輔)。そして、ギター&ベースがツインボーカルをとるというスリーピースだ。フロントの田中と湊が、そのファッションも含め、ロックアイコンとして機能している。ファーストインパクトも十分、華やかでキャッチーな印象である。パワフル&パンキッシュ、そしてポップなステージングで観客を盛り上げ、最後には会場から全体から大きな拍手が起こった。
続いてステージに登場したのがTRICERATOPS。それぞれスタンバイする3人。ボーカル&ギターの和田が、ゆっくり後ろを向き、ドラムの吉田に合図する。ステージバックから白光のバックライト。眩い光の中、ブルージーなギターフレーズをポイントに、ベースの林を加え、迫力のアンサンブルを披露。一瞬で会場を自分たちのペースに持ち込んだあと、吉田のカウントが響いた。
ディープなムードから一転、うねるベースがグルーヴを刻む。「あのね Baby」へ。観客が一斉に飛び乗る。和田が「楽しんでるかー!」と叫び、アップチューン「Two Chairs」へ。終わるとMC。和田がマイクをとった。
「やばいね! こんばんは! TRICERATOPSというバンドです」と挨拶。初めて自分たちのバンドを見る人は? と、会場に投げかけ、挙手された手の数を見て「おお、結構いるね!」と心底嬉しそうな表情に。そしてこう言葉をつなげた。
「この初めての人たちに出会わせてくれた、FLiPちゃんに感謝します」
さらに、今日の対バンは、両方共若いから、ちょっと複雑……と観客を笑わせた後、最後はこんな言葉で締めくくった。
「でもロックンロールに年は関係ないという事で、多めに見てくれたら! 精一杯やるので楽しんでって!」
彼らは、約50分というライヴの中で、アップでキャッチーな曲から、ダイナミックなスピードチューン、さらにはサザンロックのど真ん中&ソウルフルなシャウトで勝負するディープなミディアム・ナンバーなど、様々な曲調の楽曲を披露。3人のルーツとバンド実績が、次々に花開くその様は、とても鮮やかで、素直に心が躍ったし、彼らのロックンロールを楽しめる内容だった。
デビュー15周年という活動実績、コーラスのパターンも含んだ3人の演奏&アレンジのスキルは、ベテランと言っても差し支えないほどの実力だと思う。ロックのダイナミズムと普遍性というポップス・センスが共存している楽曲のクオリティーも非常に高いし、ステージのパフォーマンスも安定感がある。しかしながら、じつにフレッシュでピュアなのが、このバンドの個性であり、真骨頂なのではと、この日、改めて思った。
それは彼ら3人が、音楽に、バンドに、ライヴに、そしてお互いに、変わらぬ“愛”を持っているからだと思う。じつに堂々としているのにフレッシュ。そういう意味では、彼らは稀有な存在のバンドだと思った。
最後、アップチューンの「Jewel」「Rock Music」を畳み掛けた時の会場全体を巻き込んだ、小屋の規模に左右されないライヴのスケール感にも脱帽。これが歴史を味方につけたバンドのエネルギーなのか。驚いた。
「俺たちのこと、見てくれて、踊ってくれて、ありがとう。近々、ここの全員と会えることを楽しみにしています」と和田が叫び、彼らはステージを後にした。
時計は21時を回っていた。転換が終わり会場が暗くなる。薄闇に沈むステージ。その向かって左側のステージ袖から、大きな声が聴こえてきた。
「オォ!」
4人が同時に叫んだ声。FLiPのステージ前の気合が、会場にこぼれだしてきた。この声に「おぉおおおお!」と、期待のレスポンスをする観客。
ダンサブルなSEの中、4人が登場。サチコの「しーぶーやー! かかってこーい!」というシャウトから、ライヴはスタートした。最初を飾ったのは「ワンダーランド」。爽快なアップチューンに、観客が雄叫びをあげる。イントロから、サチコ、ユウコ、サヤカの3人が、激しくヘッドバンキングする。ユウミは、力強くリズムをキープしながら、目をつぶって叫ぶようにコーラスをとる。
エンディングでサチコが「ウェルカーム! リスペクトーッ!」と叫び、次の曲へ。真っ赤な照明の中「GHOST BUSTER」。間奏ではサチコの「飛べーっ!」という言葉と一緒に、観客、そしてサチコ、ユウコ、サヤカがジャンプした。FLiPが、そのサウンドで、容赦なくあっという間にライヴをトップギアに入れていく。「エビバディー! クラップ! クラップ!」とサチコが叫び、ユウコとサヤカがパフォーマンスで煽る。その様子を後ろからユウミが視線で追う。4人がお互いをしっかり意識し、FLiPのライヴを作り上げていこうとしているのがわかるワンシーン。観客から「Oi! Oi!」の掛け声が起こった。呪文のように早口になるメロディーが特徴の「雨の女」。その途中、サチコは、クラップを続ける客席に、目を見開き、挑むような表情を見せた。
あぁ、4人とも、相当気合入っている感じ。
ゲスト達のライヴの素晴らしさが、彼女たちの負けん気に火をつけたようだ。
育ちがよくて、素直で真面目なのに、負けん気が異様に強い。当サイトでの連載を通してわかった4人の性格は、確実に、ライヴスタイルや曲調も含め、今のFLiPを形成するひとつのファクターになっていると思う。
ユウコの早弾きフレーズから「最後の晩餐」へ。ラウド色も濃厚の1曲だが、サビでは少しウェットなメロが、力強く一気に燃え上がる。フロントの3人を含み、会場でもヘッドバンキングする姿が見えた。挨拶がわりのMC。サチコがマイクをとった。
「ありがとうございます。お待たせしました、FLiPです! 最高の瞬間をここにいる人達と作っていきたいと思います。最後までよろしくお願いします。もっともっと気持ちよくなりましょう!」
ブルーのライトが、ステージを彩る。「Everything is alright」へ。メロやサウンド全体の音色に、風を感じるブライト・チューン。独特の音程&淡々とした印象のあるAメロなど、彼女たちの楽曲の中では変わり種と言ってもいい1曲か。2番のAメロでは、サチコがマイクスタンドを抱えるように両手で持ち、さらに丁寧にメロディーを響かせる。他の3人に目を凝らせば、それぞれしっかりと演奏しながら、一緒に歌を歌っていた。後半 ♪ La La La?♪ と繰り返すパートでは「みんな一緒に歌って!」というサチコの言葉に促され、最後は大合唱となった。
MCコーナーへ。イベントの趣旨について簡単に説明した後、この日、ゲストで出演してくれたBARBARSとTRICERATOPSのライヴに触れた。BARBARSには「ステージから見てても、超気持ちよかった」と、観客と一緒に拍手を送る。そして「自主企画でまさか対バンできるとは思わなかった。トライセラを見てる観客の皆さんのキラキラした顔を見ていて“あぁ、このバンドに本当に惚れているんだな”と思いながら、ここに立ててすごく幸せです」と、TRICERATOPSへも大きな拍手を送った。話は「重大な発表がございます」と展開。サチコの口から、ニューアルバム発売決定、6月26日にリリースされる旨がアナウンスされると、観客から大歓声とさらに大きな拍手が。
「全曲、セルフプロデュースです!」
という言葉には「おぉおおおー!」というどよめきが起こった。
「多くの人に届いて欲しいと思ってます。よろしくお願いします」というサチコの言葉に合わせて、メンバー全員が、真剣な顔でお辞儀をした。続いて全国ツアー決定のアナウンス。東京公演は、7月19日、恵比寿リキッドルームとなることも発表された。
盛り上がる会場。ヒューッ!という口笛も飛ぶ中、さらにサチコが繰り返しニューアルバムの告知をするも、発売日の“6・26”を、“2・62と”言ってしまい、観客からつっこまれ、メンバーがフォローする微笑ましい一幕も。サチコ本人も、ごめん、ごめんと笑いながら訂正。このフレンドリーでちょっとゆるい空気を変えたのは、サチコ本人のこの言葉。
「さあ、しゃべる事はもう全部しゃべったので、思いっきり音を鳴らしていこうと思います。渋谷、ついてきてくれますか?」
トリッキーでちょっとキテレツなイントロが、ムードを一変させる。イントロだけで空気を持っていくこの様子に、ライヴバンドFLiPの底力を垣間見る。曲は「Oh! Darling」。ギターのワンフレーズが鳴っただけで、観客がバウンドしながら咆哮し「CHERRY BOMB」。後半へ向け、加速していくバンドサウンド。ステージ上の4人のテンションが、目の前ではじけ飛ぶ。ユウコがユウミの前に陣取る。サヤカに歩み寄り、向き合うサチコ。「カートニアゴ」。曲に合わせて、会場から「Oi! Oi!」という歓声があがる。狭いフロアに、サークルができる。モッシュ。スクリーム。髪を振り乱し、宙を睨むようにシャウトするサチコ。ユウコとサヤカも、それぞれのアクションで観客をどんどん煽っていく。「お待たせしました?、新曲、いきます」と、6月26日発売のニューアルバムから「カミングアウト」という曲を披露。複雑なアンサンブルと激しいエモーションが交差する、FLiPらしい骨太なラウドナンバーだった。サチコが叫び続けるというスタイルのサビは、新境地、かも。本編最後は軽快なアップチューン「ナガイキス」。サビの ♪Darling! Darling! ♪ の繰り返しでは、フロントの3人がステージ前に出て来て、テンションマックス状態の観客をぐいぐい煽った。最後までフルスピードで、メーターを振り切ったまま、4人はステージを後にした。
アンコール。再びステージ上に現れた4人。全員、本ツアーから一新されたという “RESPECTS ”シリーズのTシャツを着ている。ユウミのMC。本ツアーのグッズや、5月1日からスタートするというFCについて、キャラクターをうまく使い、笑わせながら紹介した。
笑顔のサチコがマイクをとる。この日のライヴを振り返り、言葉を紡ぐ。
「ライヴって気持ちいいなって改めて思ったし、音楽って楽しいな、いいな、本当に自分の人生にはなくてはならないものだなって思った」と述べ、改めて出演者、そして観客へ拍手を送った。
アンコールに応えて演奏されたのは、プリミティブな雄叫びが楽曲のエネルギーになっている「平成ジュラシック」。彼女達のライヴではお馴染のキラーチューンは、観客とともに歌う1曲だ。
♪ oh?oh、oh? ♪ とサチコ。
♪ oh?oh、oh? ♪ とレスポンスする観客。
何度か繰り返した後、サチコがマイクを通さず、生声で歌い、観客の大声を誘う。
さらに大きくなる観客のレスポンス。最後は演奏をストップし、観客にアカペラで歌わせた。
その様子に、サチコはありったけの力を振り絞り「ありがとーっ!」と叫んだ。
最後は、TRICERATOPSのメンバーと、BARBARSのメンバーを呼び込み、客席をバックにして記念撮影。
明るくなった客席に、何度も丁寧にお辞儀をし、こんな言葉を残して、FLiPはステージを後にした。
「皆さん、また次のライヴで逢いましょう。FLiPでした」
さあ、もう既に、次のFLiPが待っている。
セルフプロデュースしたニューアルバムとともに。
【取材・文:伊藤亜希】
【撮影:MICHIKO YAMAMOTO(TRICERATOPSのみ)】
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リリース情報
XX emotion(初回盤)
2012年05月16日
DefSTAR RECORDS
1.CHERRY BOMB
2.ワルサー
3.エミモア
4.ワンダーランド
5.Everything is alright
6.YUKEMURI DJ
7.最後の晩餐
8.Shut Up, Men!
9.ホシイモノハ
10.でも maybe
11.今夜月で会いましょう
12.ふつつか少女
13.GHOST BUSTER
ディスク:2
ライラ MV
カザーナ MV
カートニアゴ MV
ナガイキス MV
ホシイモノハ MV
ワンダーランド MV
CHERRY BOMB MV
このアルバムを購入
セットリスト
FLiP presents「RESPECT vol.5 TOUR」
2013.4.4@Shibuya WWW
BARBARS
- 脳みそグルメ
- ながれ星
- Ambulance Song
- サブリナ
- 残響サブストーリー
- あのね Baby
- Two Chairs
- 1000Love
- シラフの月
- Gothic Ring
- Milk&Sugar
- Jewel
- Rock Music
- ワンダーランド
- GHOST BUSTER
- 雨の女
- 最後の晩餐
- Everything is alright
- Oh Darling!
- CHERRY B0MB
- カートニアゴ
- カミンゲアウト(新曲)
- ナガイキス
- 平成ジュラシック
お知らせ
COMIN’KOBE13前夜祭
2013/04/28(日)神戸太陽と虎
COMIN’KOBE13(カミングコウベ イチサン)
2013/04/29(月)神戸ワールド記念ホール
神戸夙川学院大学の2会場で同時開催
Shibuya O-WEST &la la larks presents
2013/05/10(金)Shibuya O-WEST
TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2013
2013/05/26(日)新木場・若洲公園(東京都)
FLiP アルバムリリースツアー
2013/07/07(日)梅田QUATTRO
2013/07/19(金)恵比寿LIQUIDROOM
2013/07/27(土)名古屋QUATTRO
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。