FLiPのアルバムツアー、恵比寿LIQUIDROOMの様子をレポート!
FLiP | 2013.08.02
「ライヴ、やっぱり好きだ。胸の中の理想と現実は、8年もバンドをやっていれば違和感を感じることもあって―――。今回のアルバムを、どんな気持ちで作ったんだっけ? っていろいろと考えてみたんだけど………、今、すごくいいアルバム作れたなって思えてます。本当に感謝してます! やっぱりライヴが大好きだ!」
2013年7月19日恵比寿LIQUIDROOM。SachikoはMCでそんな本音をポロリとこぼした。
この日は、3rdアルバム『LOVE TOXiCiTY』を引っさげてのツアー『LOVE THE TOXiC CiTY』の2日目。7月7日の大阪を皮切りにスタートしたツアーは、全国9本をまわるもので、まだまだスタート地点ではあったのだが、Sachikoのこの言葉からは、バンドを結成して8年、そして、前アルバム『XX emotion』から約1年、彼女たちがどんな思いで『LOVE TOXiCiTY』を作り上げたのかが、真っ直ぐに伝わってきた。なかなか思うように曲や歌詞が書けず、逃げ出したくなったり、音楽を辞めてしまおうかと考えたこともあったという中、セルフプロデュースという形で生み出された『LOVE TOXiCiTY』。その想いは、この日、すべてライヴで吐き出されていたように思った。
がむしゃらに音をぶつけ合い、感情を剥き出しにして叫ばれる楽曲たちは、ド頭から圧倒的なパワーでオーディエンスを引き寄せていた。
1曲目からフロアの中央辺りには大きなサークルが出来、彼女たちから発せられる爆音に呑み込まれていった。最高の景色。届けたい者の気持ちと、純粋に音を感じ、受け止めている者の想いが重なりあって形になっていたその光景は、何にも代え難い美しさがあった。
しかし、勢いだけではない。新曲である「二十億光年の漂流」や、旧曲の「かごめかごめ」などでは、分厚く感情的な演奏と唄が胸を強く打ち、Sachikoが子供の頃に感じた感情を唄にしたという「darkish teddy bear」では、Yuko、Sayaka、Yuumiの奥行きのある演奏と、Sachikoの深く刻まれた記憶が赤裸裸に綴られた歌詞に心を鷲掴みされ、声が出なくなった。きっとオーディエンスも同じ感覚に呑み込まれていたに違いない。それを証拠に、「darkish teddy bear」が届けられていたその瞬間、フロアに大勢の人が集まっていることを忘れてしまうほどに静まり返っていたのだ。曲と唄の力を感じた瞬間でもあった。
さらに。彼女たちは、ライヴの後半戦に、ド頭以上の勢いを温存していたのである。
後半戦へと流れる節目で、改めてSachikoが、ポソリポソリとした口調で『LOVE TOXiCiTY』がリリース出来たことに対する感謝の気持ちを伝えると、ライヴは「Log in “Rabbit Hole”」から、一気に加速して行った。SachikoとYukoが激しいギターフレーズをかき鳴らし、オーディエンスが轟音の様な歓声を上げて盛り上がった「CHERRY BOMB」では、Sachiko、Yuko、Sayakaがステージギリギリまで出て、オーディエンスを煽りながら音を放ち、オーディエンスはその音に力強い拳を振り上げ、全力で応えた。そこから、間髪入れずに届けられた「カミングアウト」「カートニアゴ」という並びも、“現在”の彼女達を肌で感じることが出来た、最高の流れとなった。
個人的に、思わずニヤリとしてしまったのが、アルバムでもラストに置かれていた「Bat Boy! Bat Girl!」が届けられた瞬間だ。既に、音源以上のライヴ感を宿していたこの曲は、正統派王道メタルバンド、アイアン・メイデンを彷彿とさせるギターリフで、オーディエンスを唸らせたのだ。
やるなぁ、FLiP!
心の中でそうつぶやき、最高の高揚感を味わった。昔に比べ、ここ最近ではガールズバンドも目立ってはきているが、いやいや、まだまだ男社会であるバンド社会で、こんなにも堂々と厚い音とパフォーマンスで勝負出来るガールズバンドはそうそう居ない。変なプライドを感じることのない、あくまでも純粋に、自分たちの音楽を信じて追求している彼女達の音は、実にストレートでダイレクトだ。特に、セルフプロデュースで作り上げたという今作『LOVE TOXiCiTY』には、特別な想いが込められているのだろう。そこには、バンドとしても精神的にも、はっきりと成長を感じ取ることが出来る彼女たちが居た。
アンコールでは、全員がマイクを取り、ライヴへの想いと、純粋に楽しいという想いを言葉にした。素直に今の気持ちを吐き出し、手放しではしゃぐ隙間に “胸の中の理想と現実”を覗かせながらも、FLiPとしてこうして音と唄を届けられていることに感謝していると語り、「平成ジュラシック」で、オーディエンスと掛け合ったのだ。
そんな彼女たちの姿を目にし、純粋な想いだからこそ、こんなにも胸を打つのだろうと、改めて思った。
紛れもないエモーショナルを感じたこの日。このツアーが終わる秋頃には、また1つ、大きく成長したFLiPを見せてくれることだろうと、その日が待ち遠しくてたまらなくなった。
【取材・文:武市尚子】
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リリース情報
セットリスト
FLiP 3rd Album Release Tour
「LOVE THE TOXiC CiTY」
2013.7.19@恵比寿LIQUID ROOM
- Tarantula
- ニル・アドミラリ
- カザーナ
- Dear Miss Mirror
- Shut Up, Men!
- 二十億光年の漂流
- かごめかごめ
- ライラ
- Raspberry Rhapsody
- darkish teddy bear
- ホシイモノハ
- a will
- 永遠夜〜エンヤ〜
- Log In “Rabbit Hole”
- CHERRY BOMB
- カミングアウト
- カートニアゴ
- 最後の晩餐
- Bat Boy! Bat Girl!
- 平成ジュラシック
- ナガイキス
お知らせ
FLiP 3rd Album Release Tour
「LOVE THE TOXiC CiTY」
2013/09/07(土) 金沢vanvanV4
2013/09/13(金) 高松DIME
2013/09/14(土) 福岡BEAT STATION
2013/09/16(月・祝) 岡山 CRAZY MAMA 2nd ROOM
2013/09/23(月・祝) 仙台 enn 2nd
2013/09/29(日) 札幌 COLONY
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。