前へ

次へ

2014年日本武道館公演も決定!! 阿部真央、ツアーファイナルで堂々のステージング

阿部真央 | 2013.12.27

 「アナウンスはわたくし、阿部真央でした」という声が流れると、会場から驚きのどよめきが上がる。一瞬、間をおいて拍手。開演前の注意事項のアナウンスは、阿部が自ら担当していたのだ。今日は、阿部のキャリアの中で最大規模の会場、東京国際フォーラムだ。しかも、ツアー・ファイナル。が、オーディエンスはそれがかえって楽しみらしく、リラックスして阿部の登場を待っている。

 会場を照らすライトがブルーに変わり、水のしずくの音が流れる。待ちきれない女子オーディエンスが「あべま?!」と叫ぶ。阿部はステージのセンターに位置取ると、SEが鳴り止んだ瞬間に、両脚を踏ん張っていきなり♪もう逃げたりしない♪と歌い出した。最新アルバム『貴方を好きな私』のオープンニング曲の「HOPE」 だ。

 気張らない声。大会場でのファイナルに、阿部自身も落ち着いて臨んでいる。最初のシークエンスの4曲目、初期の代表曲「ふりぃ」のイントロが流れ出すと、会場は一気に沸騰。阿部もジャンプやハンドクラップを観客にうながす。ギターソロでは「西川進!」とコールして、アオる。この最初のピークからして、この日のライブは完全に阿部のコントロール下にあり、彼女のライブ・アーティストとしての成長を感じさせたのだった。

 「こんばんは、阿部真央です。ファイナルにお越しくださいまして、ありがとうございます。今日はここに来て本当によかったと思えるように、頑張ります」と阿部。次の「じゃあ何故」をアカペラで歌い出す。これも無駄な力が抜けているから、暗い内容の歌なのに、聴き手を責める気配はなく、ポップに聴こえる。だから歌の本題に、さっと入る効率の良さがあった。

 そして、ここまで『貴方を好きな私』からの曲は、最初の「HOPE」しかないことに気が付いた。そう、今夜の序章は、オーディエンスがライブで耳慣れた曲で組み立てられている。まずは自分も会場もゆっくり温めていく構成に、さらなる成長を感じたのだった。

 「それ以上でも以下でもない」から、最新アルバムの世界に本格的に入っていく。『貴方を好きな私』は歌詞の意図が明瞭な曲が多いので、広いフォーラムがよく似合っている。阿部の歌う言葉が、よく染みわたる。ギアがチェンジしたのは、「どこ行った?」からだった。バンドがいったん去って、弾き語りになる。ある意味、それまで以上に言葉が赤裸々に響く。「どこ行った?」が終わると、そのボーカリストとしての実力に大きな拍手が起こった。

 「改めまして、阿部真央です」。客席からの声に手を振って応えながら、「しゃべってもいいですか? 私のライブを初めて見るっていう人は?」 と客席に問い掛ける。

 「普段はバンドでやることの多い曲を、もう1曲だけ弾き語りでやります…うーん、どうしてここに弾き語りを入れたんだろう…緊張してます。では、“いつの日も”」。

 さっきまでの堂々たるステージングとは正反対の阿部の慎重な発言に、会場から温かい笑いが起こる。しかし、この日はライブDVD撮影が入っていることもあってか、阿部は本当に緊張しているようだ。「いつの日も」は、その緊張にふさわしい名バラードで、歌もギターも丁寧過ぎるほど丁寧に弾き語り、オーディエンスも息を呑んで聴き入った。

 その緊張を乗り切ったせいか、次の「最後の私」が凄かった。ザックリ歌った「HOPE」 とは対極にある、繊細な表現が素晴らしい。特に♪雪は17時を過ぎてから♪という情景描写のフレーズが、心の奥の奥まで届く。ふと振り返ると、後ろの席の女子ファンが、静かに涙をぬぐっていた。

 「天使はいたんだ」からは、一転して明るくキュートな声でアコギを掻き鳴らしながら歌う。『貴方を好きな私』からのポップなナンバーと、「loving DARLING」などのおなじみの曲をうまくミックスして盛り上げていく。跳ねたり、タオルを回したり、アッパーな阿部の魅力が全開になる。

 「みなさん、楽しんでますか? 楽しい? それは何より! いいライブです!! みんなのお陰です。大きな会場で、しかもソールドアウトしてたから、昨日から緊張してました。無事にツアーを終わらせることができて、今日は感謝の気持ちで歌わせていただきました。私にとって、ライブは大きなモチベーション。来年もみんなに会うために曲やアルバム作ります。それを聴いて、気に入ってくれたら、また会いに来てください」 と、自分にとってのライブの重要性を語ってから、最後の「愛してる」を歌う。

 これも重い内容の歌なのだが、阿部はそれを“重苦しく”歌わない。あくまで聴く人のことを考えての歌唱に、彼女の現在の心境を感じた。

 アンコールのトピックは、彼女自身による告知。「2014年10月10日に、初の武道館ライブが決定しました!」。言った途端、爆発的な拍手と歓声が上がる。さっき阿部がライブの大切さを語ったが、彼女のオーディエンスたちにとってもライブの持つ意味は大きい。だから武道館で会えることは、彼らにとっても大きな歓びなのだ。そんな“絆”を確認したところで、最後の最後は、阿部の原点である弾き語りの「母の唄」。さっきの「いつの日も」とは逆に、阿部が自分のために歌ったこの曲に、僕は武道館への準備がすでに万端なのだと直感した。さて、阿部真央は初武道館ライブで、どんな景色を見せてくれるのだろう。彼女の来年が、とても楽しみだ。

【取材・文:平山雄一】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 阿部真央

関連記事

リリース情報

貴方を好きな私(初回限定盤) [CD+DVD]

貴方を好きな私(初回限定盤) [CD+DVD]

2013年08月28日

ポニーキャニオン

1. HOPE
2. 貴方が好きな私
3. それ以上でも以下でもない
4. どこ行った?
5. 短い言葉たったそれだけその一言だけ
6. boyfriend
7. 天使はいたんだ
8. Will you save me
9. 返して
10. 怖い話
11. 最後の私
12. 愛してる

このアルバムを購入

セットリスト

阿部真央 らいぶNo.5
2013.12.16@東京国際フォーラム

  1. HOPE
  2. 未だ
  3. マージナルマン
  4. ふりぃ
  5. じゃあ、何故
  6. それ以上でも以下でもない
  7. 怖い話
  8. 貴方が好きな私
  9. どこ行った?
  10. いつの日も
  11. 最後の私
  12. 天使はいたんだ
  13. Will you save me
  14. loving DARLING
  15. boyfriend
  16. 伝えいたいこと
  17. モットー。
  18. I wanna see you
  19. 愛してる
Encore
  1. 返して
  2. ロンリー
Encore2
  1. 母の唄

お知らせ

■ライブ情報

阿部真央 ワンマンライブ
2014/10/10(金)日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る