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クリープハイプ、ひとりひとりと繋がったZepp DiverCity。そして、武道館へ!

クリープハイプ | 2014.01.14

 観客一人ひとりに目を凝らすと、バンドの曲をまるで自分のものとして切実に受け止める姿が印象に残った。1対1のコミュニケーション×満員のフロアという状況で、それがまたこのバンドの特異な魅力を際立たせていた。クリープハイプにとって初のZepp Diver City公演2デイズは両日共にソールド・アウトで、その初日も凄い人でごった返していた。

 メジャー2ndアルバム『吹き零れる程のI、哀、愛』に伴う全国ツアー「秋、零れる程のクリープハイプ」のラストを締め括る今回の関東公演は、総仕上げ的な意味合いも含んでいたと思う。けれど、ここで観た彼らの姿はどこまでも人間臭く、その一方で、これからの未来に対して腹を括った逞しさに漲っていた。

 19時、最後に尾崎世界観(Vo・G)が現れると、「緊張して、朝8時まで眠れなかった」とぼそっと呟き、観客の笑い声が広がる中で「愛の標識」からスタートを切った。拳を上げる人が前方にちらほらいるものの、じっとステージを見つめる観客が圧倒的に多い。たまらず尾崎は「今日は大人しいね、せっかく東京に帰って来たのに」と問いかけるものの、その空気は「ウワノソラ」からすぐに変化し始める。フロア中央ぐらいまでジャンプする観客が増え、次の「イノチミジカシコイセヨオトメ」のイントロ部分だけで大きな歓声が沸き起こる。じわじわと確実に音を浸透させながら、バンド・サウンド自体もどんどん熱を帯び、会場全体を巻き込んでいく様はツアーで鍛えた上げた腕っぷしの強さによるものだろう。ミドル・テンポで聴かせるものから、アッパーな高揚感を刺激する曲調まで繊細さと豪快さを併せ持つアプローチに序盤から引き付けられた。

 尾崎がアコギに持ち替え、小川幸慈(G)とギター同士でロマンチックなフレーズを掛け合うと、「グレーマンのせいにする」に移行した。するとステージ後方の幕がゆっくり開き、暖色系の絵の具がマーブル状に溶け合う映像が流れ、尾崎の気怠さを帯びたセクシーな歌声がより一層映えていた。「歌で何かを残したい。中学の頃は傷ついた、通帳表とか。1が多くて、音楽も1だった」と尾崎がさらっと言うと、観客が意外というリアクションでザワザワした後、「傷つける」をプレイする。この曲の心の奥底から汲み上げたエモーションは、鋭くて切ないんだけど、それ以上にこちらを優しく覆う包容力に満ちていた。また、夕暮れ色の照明からTVドラマさながらに男女が言い争う映像がスクリーンに映され、楽曲への感情移入を容赦なく誘う。ラストの歌詞《後悔の日々があんたにもあったんだろ》と投げかける場面では、会場が水を打ったように感動の静寂に包まれた。

 中盤の「HE IS MINE」からは歌詞を一緒に歌う観客が増え、曲調も次第にロック寄りにシフトしたこともあり、バンドとフロアの一体感は増すばかりだ。とりわけ、「社会の窓」から本編ラストの「さっきはごめんね、ありがとう」まではメンバー自ら「大ヒット・シングルを?」とわざわざ説明した上でキラー・チューンを連発する腹の据わりようだ。高まった衝動を抑えられないのか、一部でモッシュして騒ぐ観客の姿も見かけた。
 その熱狂の渦中にも「スタジオでカオナシとケンカした」と曲間で赤裸々に告げる尾崎。今やバンドは追い風に乗る絶大な人気を誇りながら、等身大の自分たちもきちんと報告しないと気が済まないのだろう。

 そう言えば、クリープハイプの楽曲は聴き手の胸をえぐるセンチメンタルなメロディが多い。それはもちろん個人的な感情に根ざした、作り手本人から生まれたものである。100人いれば100人固有の悲しみや切なさが存在するように、本当の意味で他人の感情を100%理解することはほぼ不可能に近い。だが、そのプライベートな感情がメロディに乗り、音楽になった瞬間、多くの人が共感できる普遍性が宿る。重く切ないメロディが聴き手一人ひとりの心を潤し、晴れ晴れとした表情で歌い上げる観客の光景を目撃して、彼らの音楽は激しく求められているんだなと痛感した。

 アンコールでは新曲「ラジオ」を披露し、さらにWアンコールの「左耳」では最高潮の盛り上げを見せ、約2時間に及ぶライヴは幕を閉じた。来年4月には日本武道館、しかも2日間公演を発表した彼ら。この切なくも熱いメロディが武道館でどう響き渡るのか。あるいは、全く違う響き方でより多くのリスナーの心を鷲掴みにするのだろうか。期待せずにはいられない。

【取材・文:荒金良介】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル クリープハイプ

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リリース情報

吹き零れる程のI、哀、愛(初回限定盤) [CD+DVD]

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2013年07月24日

ビクターエンタテインメント

1. ラブホテル
2. あ
3. おやすみ泣き声、さよなら歌姫
4. 憂、燦々
5. マルコ
6. 女の子
7. 社会の窓
8. NE-TAXI
9. かえるの唄
10. さっきはごめんね、ありがとう
11. シーン33「ある個室」
12. 傷つける
13. 自分の事ばかりで情けなくなるよ (初回盤ボーナス・トラック)

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セットリスト

秋、零れる程のクリープハイプ
2013.12.04@Zepp DiverCity

  1. 愛の標識
  2. ウワノソラ
  3. イノチミジカシコイセヨオトメ
  4. 手と手
  5. マルコ
  6. 週刊誌
  7. リグレット
  8. NE-TAXI
  9. グレーマンのせいにする
  10. 傷つける
  11. HE IS MINE
  12. 身も蓋もない水槽
  13. 社会の窓
  14. ラブホテル
  15. かえるの唄
  16. オレンジ
  17. おやすみ泣き声、さよなら歌姫
  18. 憂、燦々
  19. さっきはごめんね、ありがとう
Encore 1
  1. 自分の事ばかりで情けなくなるよ
  2. ラジオ
  3. 女の子
Encore 2
  1. 左耳

お知らせ

■ライブ情報

クリープハイプ 日本武道館2days
2014/04/16(水)日本武道館
2014/04/17(木)日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。


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