MISIA、最後まで進化を止めなかった全77公演ロングツアーファイナル!
MISIA | 2014.04.16
長かったアニバーサリー・イヤーのツアーも、ついにファイナルを迎える。オペラシアター形式のオーチャードホールの客席は、そそり立つ2階3階のサイドシートまでコアなファンで埋め尽くされている。
オープニングSEが流れ出した途端、総立ちで熱いMISIAコールが始まった。普段以上の熱気が、最終日を祝う。音楽をずっと愛してきた、 筋金入りのライブファンが集まった。これは凄いファイナルになりそうだ。
覆っていたカーテンが開くと、ステージの全貌が現われる。 すぐ目の前にMISIAが立っている。両手を左右に大きく開いて、こぼれんばかりのスマイルで会場をぐるっと見渡す。左隅に小編成のストリングスが陣取り、右端には“星空シスターズ”がいる。ここでドラマーが新メンバーになっていることに気が付いた。ツアー途中に名人“青山純”が急逝してしまったが、もう一人のドラマーFUYUが見事に不動のポジションを貫いた。が、最終公演はどうしてもスケジュールが合わず、新メンバーとしてTOMOが起用されている。アニバーサリー・イヤーを通じてMISIAはチャレンジを続けてきたが、最終章になっても“新しいグルーヴ”に挑戦するというわけだ。現在、日本のバックバンド・シーンではベテラン・ミュージシャンの活躍が続いているが、中でもドラマーは前述のFUYUや、山下達郎で叩いている小笠原拓海などが台頭。果たしてTOMOは、どんなプレイをするのだろう。
それにしても、最後の最後まで先を見据えたトライをするMISIAには驚かされる。しかも彼女はこのツアー最終章の直前のインタビューで、TOMOと作り出す“グルーヴ”を楽しみにしていると嬉しそうに語っていた。
そうして「僕はペガサス 君はポラリス」のピアノのイントロが流れてくると、MISIAの顔がパーっと紅潮してくるのがわかる。自信に満ち溢れた、最高に幸せなファイナルの幕開けだ。会場の隅々にまで、美しい声を行き渡らせる。この1曲で、MISIAはステージと客席のテンションをイーブンにしてしまった。
歌い終わるとMISIAは両手を上げて、深々と膝を折る。次はデビュー曲「つつみ込むように…(15th ver.)」だ。ド頭のハイトーン・ボイスは、驚異的。楽々と歌っているが、15年のキャリアが表現をよりシャープにしていて、フロアから大歓声が上がる。
星空シスターズが指でクリックしながら歌うのだが、そのアクションはMISIAのダンスを支えてきたSTEZOの動きとそっくりでかっこいい。そしてTOMOのドラミングが実力を発揮する。青山ともFUYUとも異なるフィルをはじめ、独自のグルーヴを発信する。これまで何度も「つつみ込むように…」をいろいろなミュージシャン、様々なシチュエーションで聴いてきたが、このセットも好きだ。何よりTOMOはリラックスしており、個性をしっかりと発揮して、ドラムシーンの前線に躍り出た。MISIAの次のステップへのチャレンジが成功した瞬間だった。
ニューアルバム『NEW MORNING』からの「蒼い月影」など、ライヴのスケールが完全に会場からはみ出している。『NEW MORNING』の完成度を考えれば、当然かもしれない。逆に言えば、オーチャードでこのライヴに接しているオーディエンスは、MISIAの今の充実した音楽に全身を包まれて、至福の時を味わっている。また、このライヴは、YouTubeで生放送されている。77本目の充実を生で全世界に発信するという、これもまたMISIAの圧倒的な自信があればこそのチャレンジだ。「ハロー ジャンボ ニーハオ アンニョンハシムニカ オラ ボンジュール サボウナ」と、MISIAは各国の言葉でYouTube視聴者へ向けて挨拶をし、会場をなごませた。YouTube視聴者からは、Twitterなどで感動のコメントがリアルタイムで続々と寄せられている。さらには「今年も“キャンドルナイト・フェス”をやりたいな」と、ちょっぴり宣伝も(笑)。 おそらくここに集まったオーディエンスのほとんどは、昨年、大好評だったキャンドルナイト・フェスに行ったのだろう。「楽しみにしてるよ?!」と声が上がった。
「忘れない日々」は、そのフェスでオーディエンスのド肝を抜いたナンバー。MISIAと星空シスターズの4人が織りなすゴスペルタッチのアカペラは、この夜も圧巻だった。かと思うと、「MAWARE MAWARE」では、オーディエンスがMISIAに負けじと大声でシンガロングする。YouTubeの投稿欄も、コール&レスポンスに応える内容で埋め尽くされていく。『NEW MORNING』のオープニングに抜擢されたハッピーなダンスナンバー「HOPE & DREAMS」までを、盛り上がり切ったのだった。
いつになく大きな声で、MISIAにアンコールを求める言葉が飛び交う。その歓声を上回るパワーで、MISIAが再び登場して「幸せをフォーエバー」を歌う。メンバー紹介では、最後に青山 “アレックス”純の名前をコールする。「星の降る丘」など、最終盤になっても、リリックがしっかり伝わってくるのがよかった。
「1年2ヵ月以上に及ぶツアーも、77本目のこのライヴをもちまして幕を閉じます。再会に心震えたり、悲しいこともありました。けれど、こうしてみなさんに音楽を聴いていただいて、笑顔になってくださって、この道を選んでよかったと心から思います。これからも20年、100年、1000年も歌っていきますので、聴きにきてくださいね。ツアーが終わるのは淋しいですけど、聴いてください」と今後の決意をかたり、「明日へ」。
すべてが終わり、全員でステージ前に並んで深くお辞儀する。MISIAはオープニングと同じく大きく両手を広げ、その後で抱きしめるポーズをしてオーディエンスに最大の感謝を表わした。
10周年とはまったく違う、15thアニバーサリ―・イヤーが終わった。彼女の眼差しは、キャリアを振り返るのではなく、完全に未来を見ている。それを全世界に見せつけたライヴだった。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:長屋和茂】
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リリース情報
セットリスト
星空のライヴ VII ~15th Celebration Thank you 15, Happy 16~
2014.4.2@Bunkamuraオーチャードホール
- 僕はペガサス 君はポラリス
- つつみ込むように・・・(15th ver.)
- 魔法をかけたのは君
- 蒼い月影
- Miss you always
- Daisy
- Jewelry
- 忘れない日々
- 逢いたくていま
- MAWARE MAWARE
- HOLIDAY
- HOPE&DREAMS
- 幸せをフォーエバー
- One day, One life
- 星の降る丘
- 明日へ