レビュー
MISIA | 2016.03.02
MISIA
『MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE』
一人のシンガーの歴史を丁寧に追った“日本初”のライヴアルバム
MISIAは1989年にデビューして、3年後の2001年から“星空のライヴ”をスタートした。
デビュー・ヒット「つつみ込むように...」がダンスジェニックな曲だったせいもあって、彼女の初期のライヴはコンピュータの同期やダンサーを思い切りフィーチャーした内容が多かった。それは当時の最高水準を行くもの で、大きな評価を得た。一方で、MISIAはバラードなどメロディアスな曲も得意にしていた。そこで彼女は、全部生演奏の“星空のライヴ”にチャレンジしたのだった。MISIAのボーカリゼーションを思う存分堪能できるこのライブは大評判を呼び、“星空のライヴ”はダンサブルなツアーと並んでMISIAの人気ツアーとなり、彼女の活動のもう一つの柱となったのだった。
この『MISIA 星空のライヴSONG BOOK』は、最初の“星空のライヴ”から、最新の第8回目までの中からベストテイクを集めた超豪華なライヴアルバムだ。特徴としては、逆年代順、つまり最新のものから始まり、進むにつれて時間をさかのぼっていくように曲が並べられていることだ。
僕はすべての星空ツアーを観ているが、この“曲順”がいちばん興味深かった。MISIAは実に順調にボーカリストとして成長を遂げてきたので、僕は彼女の昔の歌い方を思い出すことはしてこなかった。なぜなら“今の歌”を聴け ば、そこには積み重なった彼女の歌のすべてがあるからだ。だが今回、アルバムの曲順どおりに聴いていくと、彼女の“原点”が徐々に姿を現わす。それを聴き届けるのは、エキサイティングな“音楽体験”だった。
2015年の「桜ひとひら」は、感情表現が素晴らしい。2014年の「THE GLORY DAY」は堂々たるパフォーマンスだ。2010年の「逢いたくていま」はストリングスと歌の溶け合い方がとても美しい。そして最後の2001年「BELIEVE」には、最初の“星空のMISIA”がいた。
現在と比べてやや幼いながら、全身全霊を傾けて歌うMISIAの声はとても感動的だ。このライヴを観たはずの僕でさえ、新しい発見がいくつもあった。このテイクを発表した勇気と自信に、今のMISIAの充実を感じる。一人のシンガーの歴史をこれほど丁寧に追ったライヴアルバムは、おそらく日本で初めてだろう。あらゆる意味で、ぜひ一度聴いて欲しいと思う。
僕にとってもう一つ嬉しかったのは、故・青山純のプレイがたっぷり聴けることだった。青山はMISIAの初期からレコーディングでもライブでも叩いてきた。ボーカリストのいちばんの礎となるのはドラマーだが、青山とプレイし続けたMISIAはつくづく幸運だったと思う。特に最後から2曲目の「Nocturne」(2001年)は、スゥイングしながらロックするという青山にしかできないドラミングが味わえる。
また2001年から現在に至るまでMISIAのバンマスを務めるキーボード重実徹のライヴプレイも注目だ。重実はこの3月にソロアルバム『Sensual Piano』をリリースするが、MISIAでのライヴ経験が強く反映された内容になっている。
このアルバムは日本のミュージシャン史においても貴重な記録だと言えるだろう。
【文:平山雄一】
リリース情報
MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE
発売日: 2016年03月09日
価格: ¥ 3,700(本体)+税
レーベル: アリオラジャパン
収録曲
【Disc1】
1. あなたにスマイル:)
2. 真夜中のHIDE-AND-SEEK
3. 白い季節
4. Color Of Life~Re-Brain
5. 桜ひとひら
6. 流れ星
7. 僕はペガサス 君はポラリス
8. 明日へ
9. 幸せをフォーエバー
10. DEEPNESS
11. 恋は終わらないずっと
12. THE GLORY DAY
【Disc2】
1. 陽のあたる場所~KEY OF LOVE~愛の行方~
2. 地平線の向こう側へ
3. 逢いたくていま
4. そばにいて...
5. 月
6. つつみ込むように...
7. Everything
8. 眠れぬ夜は君のせい
9. あの夏のままで
10. Escape
11. Nocturne
12. BELIEVE
※初回仕様は、豪華デジパック仕様・アナザージャケットステッカー封入