クリープハイプ、1万人と対峙した初の武道館2Daysを両日レポート!
クリープハイプ | 2014.05.02
クリープハイプが初めての日本武道館公演を開催、しかも2Days、そのうえソールドアウト、という偉業を成し遂げた4月16日~17日。2日間のライブの模様をお届けする。
まずは初日の「平日の武道館 バイト編~ねぇ、シフト代わってくわない?~」の模様をレポートしよう。
タイトルと連動しているような、コンビニでバイトする少年の映像からライヴはスタート。仕事をサボって手にしているスマホで、どうやらクリープハイプのUstream(2月21日に行われた、ベストアルバムの曲順通りに演奏されたスタジオライヴ)を見ているらしい。1曲目がはじまると「おい、お前らこの曲じゃねーだろ。何ではじまったと思ってるんだよ」とボソリ。すると映像が終わり、尾崎世界観(V・G)が「クリープハイプはこの曲ではじまったと思っています」と、「左耳」がスタート。武道館という大舞台で、いきなり真実を突き付けた。ライヴハウス慣れしているオーディエンスが多いからか、ホールに少し戸惑っている様子が見受けられるも、徐々にハンドクラップや歓声が沸き上がっていき、4曲目の「あの嫌いのうた」を終えた頃には、尾崎の「どうですか?」という問いかけに、「サイコー!」と返す盛り上がりとなっていた。
その後も、“年寄りで、呼び掛けても反応しなくなってきているけれど、世界で一番可愛い犬の歌”である「マルコ」、「ライヴでやったことがないから、凄く練習した」という「グルグル」など、特別な曲を畳みかけていく。「未だにタクシーのメーターから目が離せないし、エキストラのバイトのメールが来るし。でも、そういうのが大事で。今日来ている友達のバンドの分も頑張れたらいいかなって、ちょっとは思っています」と言ってからはじまった「傷つける」では、気合いが入り過ぎたのかイントロをミスしていたところも、何とも人間臭かった。さらに「こないだばあちゃんが亡くなって。いなくなればいいのにっていう人は増えるのに、いて欲しい人はいなくなる。でも、ここにいて欲しい人がこんなにいることに救われています。いなくならないで下さいね」というあまりにも切実なメッセージと共に演奏された「風にふかれて」は、沁みて沁みて仕方なかった。
ステージに火柱が立ち昇った「火まつり」、再び映像が流れた「バイト バイト バイト」を経て、尾崎が「武道館はいろいろ言っちゃいけない言葉があるから……わかってるだろうな?」と煽るということは、もちろん次の曲は「HE IS MINE」! 武道館いっぱいに「セックスしよう!」の声が響き渡り、完全なる共犯関係を証明していた。そこからは間髪入れずに「身も蓋もない水槽」「ウワノソラ」と続け、これまた武道館で聴くのが気持ちいい「社会の窓」へ。さらに《連れて行ってあげるから》という歌詞が頼もしく響いた「憂、燦々」でハイライトを迎えると、またもや映像が流れ出す。先ほどのバイト少年が仕事中に自分のメロディを閃いて、コンビニのバックヤードでギターを手にすると、「あ、これ『オレンジ』だ」と気付くという場面。「ありそう!」と言わんばかりのクスクス笑いが起きるなか、尾崎が「最後に本物が歌います」と「オレンジ」でばっちり本編を締め括った。
アンコールでは、冒頭の映像で少年に「この曲じゃねーだろ」と言われていた「イノチミジカシコイセヨオトメ」に続き、バーッと客席が明るくなった「手と手」を披露。それでも鳴り止まない拍手に応えて、ダブルアンコール。尾崎は「今日、全部やっちゃいますか!?」とご機嫌だ。そして「新曲やります」と言うと、「オー!」と大きなリアクションが。渦巻く期待に向けて「どうせ『社会の窓』みたいな曲だと思ってるんだろ? そういうのはやめたんだ。スマートに戦っていこうと思って。もう絶対に移籍はしません!」と宣言。そんな流れではじまった、移籍第一弾シングルとなる新曲「寝癖」は、一連の騒動を忘れさせるほどにただただ名曲で、オーディエンスもじっと聴き入っていた。最後は尾崎が「このメンバーになってから5年、バンドをはじめてから12、3年。ずっと下北沢の小さいライヴハウスでやってきて、その時から事務所の社長は『武道館でこの曲ができるから』って言っていて、『何言ってんだ』って思っていたけど、できたなあって……上手く言えないけど、バンドをやっていて良かったと思っています」と感慨を語り、インディーズで初めてリリースした音源に収録されている「ねがいり」で初日の幕を下ろした。
今回の武道館ライブを見て改めて感じたのは、クリープハイプが持つ過剰さは、狙い澄ましただけの過剰さではなく、いつも純粋過ぎるが故の過剰さだということ。その過剰さの塊のようなロックバンドが、山や谷を乗り越えて、日本武道館という会場でライヴを成功させたことは、単に彼らの歴史においてだけではなく、日本の音楽シーンにとって素晴らしいことだと思う。決意を刻みながら演奏を重ねてきた懐かしい曲で挟み込んだセットリストと、一貫した姿勢を見せる言葉や演奏に、大きな信頼感を覚えずにはいられなかった。
【取材・文:高橋美穂】
キャリア初の武道館2日間公演を成功させたクリープハイプ。4月17日、「連日の武道館 正社員編~有給休暇の使い道、これが私の生きる道~」と題された2日目に見せたのは、痛快さも、毒も、その裏側のやるせないところも、全て堂々とさらけ出した彼らならではのロックバンドの「生き様」だった。
開演時刻を迎え客電が消えると、尾崎世界観(Vo, G)、小川幸慈(G)、長谷川カオナシ(B)、小泉拓(Dr)がステージに登場。そして、ステージ後方に設置されたスクリーンに、松居大悟が監督を務めたショートムービーが映し出される。1日目にも登場したコンビニのアルバイトの青年と、その兄のやり取りだ。「あれ“オレンジ”じゃねえかよ」と兄が呟いたところで途切れ、1曲目の「オレンジ」がスタート。「大変お騒がせしております。今、話題のクリープハイプです」という尾崎の言葉から、一気に会場のテンションがあがる。
まずは「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」「言わなくても伝わると思ってたよ」とアップテンポな曲を連発した彼ら。MCでも尾崎はお客さんからの呼びかけに「元気だよ! 見ての通り、元気だよ!」と笑ったりする余裕を見せる。そして序盤のクライマックスとなったのは、「ものすごいラブソングができました。とっておきのラブソングがあるんですけど、聴いてくれますか? 愛しのあの人に捧げます」と披露した新曲だ。ブルージーで攻撃的なリフにのせ、レーベル移籍にまつわる想いを挑発的な歌詞を歌うこの曲。後方のビジョンに映し出された歌詞を、オーディエンスは食い入るように見つめていた。
そこから中盤にかけては、エネルギッシュな「あ」、四つ打ちの「ウワノソラ」を畳み掛けるように披露。高速で回るミラーボールがキラキラと光り、続いてはイントロから歓声が巻き起こった「HE IS MINE」。彼らのライブの定番になっているこの曲での「セックスしよう!」コールは、アリーナ、スタンド全員が全力で叫んでいた。
ステージ前半のピークポイントを終え、中盤は「グレーマンのせいにする」で長谷川カオナシとの豊かなハーモニーを聴かせ、アコースティックギターを抱えて「傷つける」を歌い上げるゆったりとした展開へ。兄役のサラリーマンを主人公に据えたショートストーリーの続きを挟んで、「明日はどっちだ」から再びアッパーな曲を連発する。
改めて痛感したのは、彼らの堂々とした佇まいだった。彼ら自身も、お客さんも、まだ大きな会場に戸惑っていたようだった2013年の中野サンプラザ公演から1年弱。1万人近くのエネルギーと対峙して、それを引っ張っていくような気概と、堂々とした、それでもどこか飄々とした佇まいが、バンドに備わってきていた。一言でいうと、大きなステージがよく似合うバンドになっていた。「いろんなものを飛び越えて今日ここに立っています」という尾崎のMCの言葉も、とても印象的だった。
そして、「ラブホテル」へ。大サビの前で演奏を一端止めて、そこでトークをはさむ。どうやら実は2日目のこの日もかなり緊張していたよう。ステージに登場するまでは4人して胸に右手を当てて、W杯の日本代表みたいになってたとか。長谷川に「怒ってる?」と声をかけたり、客席からの声に返事をしたりと、独特のムードを醸し出す。長谷川が伸びやかな歌声を響かせた「かえるの唄」、そして包容力を持ったアレンジで、おおらかに響かせた「憂、燦々」と、表現力の幅広さも見せていた。
そして、本編最後は「社会の窓」。「次が最後」だと告げたMCに不満そうに返すお客さんからの声に応えて、「なんか、いろいろあるんです。不安なこともすごく多くて。でも、顔を見てたら本当に安心します。だから『えー!』とかじゃなくて、もっと嬉しそうな顔をしてください。よろしくお願いします」と尾崎は語る。客電が点いた中、4人は全力で演奏、お客さんも笑顔で参加している。「最高です!」の合唱にあわせて金の紙吹雪が舞い、クライマックスの高揚感を生み出していた。
アンコールでは、「すごく楽しくて。やめたくないなと思ってます。一生懸命一曲ずつ歌っていくので聴いてください」と、「さっきの話」「女の子」を披露し、メンバー同士の和気あいあいとした会話も見せていた彼ら。ダブルアンコールではインディーズ時代の「ねがいり」と新曲「寝癖」の2曲も披露された。自分たちの原点と最新型を見せて記念すべき武道館公演を締めくくった。
ライブを体験して改めて感じたのは、この場所が到達点でもなんでもなく、まだまだ通過点にしか過ぎないということだった。尾崎も「これで終わったらどうしようと思ってたんですけど、やってよかったです。またYahoo!ニュースのトップになったりするかもしれないけど、よろしくお願いします」と、次への意志を語っていた。
最後にはステージ前列に4人が並び、大きくお辞儀した彼ら。「ありがとうございます!」という声は、マイクを通さずとも、全員に伝わっていた。
【取材・文:柴那典】
【撮影:神藤 剛】
関連記事
-
クリープハイプ
-
クリープハイプ
-
クリープハイプ
-
クリープハイプ
-
クリープハイプ
-
クリープハイプ
クリープハイプのすべてに迫る展覧会「クリープハイプのすべ展 春 ~歌詞貸して、可視化して~」、楽曲「栞」をモチーフにした大阪限定の展示を追加して開催決定!
-
クリープハイプ
クリープハイプ、23ヶ所全国ライブハウスツアー「今今ここに君とあたし」待ち望まれた追加公演発表!追加公演タイトルは『こんな日が来るなら、もう幸せと言い切れるよ』
-
クリープハイプ
-
クリープハイプ
クリープハイプ“Me and Honda×クリープハイプ”楽曲書き下ろし & コラボMVを公開!豪華出演陣がクリープハイプに対する“魅力”を語る特番も
-
クリープハイプ
リリース情報
セットリスト
平日の武道館 バイト編
~ねぇ、シフト代わってくれない?~
2014.4.16@日本武道館
- 左耳
- SHE IS FINE
- 蜂蜜と風呂場
- あの嫌いのうた
- マルコ
- チロルとポルノ
- ラブホテル
- グルグル
- グレーマンのせいにする
- 傷つける
- 風にふかれて
- ごめんなさい
- 火まつり
- バイト バイト バイト
- HE IS MINE
- 身も蓋もない水槽
- ウワノソラ
- 社会の窓
- 憂、燦々
- オレンジ
- イノチミジカシコイセヨオトメ
- 手と手
- 寝癖
- ねがいり
連日の武道館 正社員編
~有給休暇の使い道、これが私の生きる道~
2014.4.17@日本武道館
- オレンジ
- おやすみ泣き声、さよなら歌姫
- NE-TAXI
- 言わなくても伝わると思ってたよ
- 新曲
- あ
- ウワノソラ
- HE IS MINE
- グレーマンのせいにする
- 傷つける
- 明日はどっちだ
- イノチミジカシコイセヨオトメ
- 手と手
- 愛の標識
- 週刊誌
- ラブホテル
- かえるの唄
- 憂、燦々
- さっきはごめんね、ありがとう
- 社会の窓
- さっきの話
- 女の子
- ねがいり
- 寝癖
お知らせ
クリープハイプ TOUR 2014
2014/08/09(土) [東京] かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール
2014/08/12(火) [静岡] 静岡市民文化会館・中ホール
2014/08/15(金) [愛知] 日本特殊陶業市民会館・フォレストホール
2014/08/16(土) [兵庫] 神戸国際会館こくさいホール
2014/08/19(火) [埼玉] 大宮ソニックシティ―ホール
2014/08/21(木) [新潟] 新潟県民会館
2014/08/24(日) [宮城] 東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
2014/08/28(木) [大阪] オリックス劇場
2014/08/29(金) [大阪] オリックス劇場
2014/08/31(日) [福岡] 福岡市民会館
2014/09/05(金) [北海道] 札幌市教育文化会館・大ホール
2014/09/08(月) [神奈川] よこすか芸術劇場
2014/09/12(金) [香川] サンポートホール高松・大ホール
2014/09/13(土) [広島] アステールプラザ
2014/09/17(水) [東京] NHKホール
2014/09/18(木) [東京] NHKホール
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。