かりゆし58、渋谷AXで怒涛の47都道府県ツアーの幕を下ろす!
かりゆし58 | 2014.05.07
『ハイサイロード ビヨンド 2013-14』と題し、ニューアルバム『8』と共に、昨秋から全都道府県にてライヴを行ってきた、かりゆし58。そんな彼らが、4月6、7日のなんばHatchでの追加公演を経て、いよいよ55本に及ぶ長いツアーを終えようとしている。場所は渋谷AX。この日、最初のMCでボーカル&ベースの前川真悟は、「今回のツアーはやる度に楽しさの最高記録を塗り替えてきた。だけど今日は、それを全部超えるぐらいの楽しいライヴをやるよ」と満員の会場に宣言したのだが、結果その言葉通りの光景を私は目の当たりにした。
この日は『8』からの曲を中心としながらも、ツアー本編とは、また違ったセットリストで挑んだ。代表曲はたまた新曲も交えて、まさに彼らの過去・現在・未来が凝縮されたライブだった。
登場SEに乗りメンバーがステージに現れる。前川は両腕を広げてウェルカムのポーズ。私にはそれが、「この両腕で全てを受け止めてやるゾ!!」という気概のように映った。
一発目は「少年は旅の最中」。この千秋楽を飾る一発目としてピッタリだ。早くもステージと会場の心が一つになり、このツアーの大団円に向けてスタートダッシュが始まる。上手(かみて)ギタリストの新屋行裕のソロが会場の隅々にまで響き渡っていき、下手(しもて)ギタリストの宮平直樹も、ステージ前方に設置されたステップに乗り、フロアの壮観を眺めながら気持ち良くギターをプレイしている。続いて、「心の次は体を一つに!」、と言わんばかりに、「カイ・ホー」が飛び出すと、ドラムの中村洋貴の叩き出すカウパンクのりの疾走感溢れるビートが会場を一つにまとめていく。また、「予告編」では、スカの裏打ちのリズムやクリーンなギターカッティングによる軽快な空気感が場内に呼び込まれる。
勢いのある曲を連射した後、MCを挟み、「流星」からは、かりゆし58のもう一つの魅力である、気持ちを楽にしてくれる、ゆったりとした歌の数々が披露された。さよならや別れを歌いつつも、それを重く響かせない「流星」、レゲエのリズムの上、ありのままの自分でい続けることの大切さに改めて気づかされた「ノーグッバイ自分」、そして、まるで愛しい人への心の手紙のように響いた「ナナ」は、観る者の胸を締めつけ、優しく傍らに寄り添ってくれた。中でも一際まっすぐ飛び込んできたのは「恋の矢」であった。ベースを宮平に預けた前川がスタンドマイクで熱唱。「この想いよ、真っ直ぐ愛しい人の胸に届け!!」という歌が多くの者の胸を射抜いていった。
続いてのMCでは、「恋の矢」が昨秋の優香主演のドラマに起用されたことを受け、その番組の打ち上げに参加したエピソードがメンバーから語られる。以前、このツアーの本編終了のインタビューで、前川が「このツアーでは、MCで自分以外のメンバーが喋る機会が増えた。その分だいぶ気も楽になり、より歌や演奏に注力できた」と話してくれたのを思い出した。
新屋が歌う「16号車」は、『8』の新機軸の一つだが、この日も披露してくれた。牧歌的なカントリー調の曲で、市井の人々の営みがほのぼのと浮かんでくる歌と、彼の柔らかい歌声により、歌の舞台である電車に同乗している気持ちになってくる。
中盤の最高潮は、「愛と呼ぶ」から「南に舵をとれ」までの5連発であった。メロコア調の疾走感が会場中にタオル大旋回を誘った「愛と呼ぶ」、新屋が転倒しても、「止まってられない!」と言わんばかりに、構わず残りのメンバーでフォローし合いながら突き進んでいった「恋人よ」、2人のギタリストが左右に分かれ、放射状でプレイする姿が目を惹いた「南に舵をとれ」がボルテージをグングン上げていく。それに負けじと、『8』から「アイスクリン計画」「ハンサムおじさん」が飛び出すと、盛り上がりに更なる拍車がかかる。
この日はツアーを振り返った新曲「アットホーム」も歌われた。ファンキーで70’s風ロックのテイストの風通しも良い曲。このツアーで回った全国各地で感じたこと、知ったこと、気づいたこと、学んだことが真摯な気持ちと共に聴く者に優しく伝えられる。そして、「アンマー」では、みんなが自身の母親や愛しい人を想うように、目を細め聴き入っているシーンが強く記憶に残った。
本編最後の前川のMCも印象深かった。ここで前川はこのツアーを振り返るように、ライヴを行った全ての土地への感謝を込めて行った順に一つ一つ地名を挙げていった。この日全国各地から駆けつけたファンには、特にかけがえのないものとなったに違いない。そして続けた、「10年前の自分に、10年間バンドを続けてきたら、こんなにも素晴らしい景色を見れることを伝えたい。俺はここでみんなに出会えて本当に良かった」という言葉には、きっと会場に集まった人それぞれがかりゆし58と出会えたことに感謝したことだろう。
アンコールは5曲。それはこの長いツアーのグランドフィナーレにふさわしい、大団円的となるナンバーだった。そして最後は、このツアー本編ではあえて封印していた「オワリはじまり」が、「やっぱり最後は、この曲で締めよう」と言っているかのように歌われる。この曲の半分は会場が主役。メンバーもあえて歌の所々をオーディエンスの大合唱に任せ、最後は会場/ステージ一体となり歌を完成へと導いた。
冒頭で前川が宣言した、「自身のライヴの楽しさの最高地点」を見事に更新した感のあるこの日。とは言え、今後繰り返されるライヴでは、またこの最高地点も抜かれる日がくるのだろう。
『ハイサイロード ビヨンド 2013-14』は、この日でその行程の全てを終えた。しかし、彼らの歌を届ける旅はまだまだ続いていく。彼らはこれからも全国各地へ、“ライヴ”と言う名目で、笑顔でみんなを励まし、肩を組んだり、一緒にバカ騒ぎしたりしに行くにちがいない。その時はまた、みなさんも両腕を広げて迎え入れて欲しい。そして、彼らの歌を、まるで自分の歌のように一緒に歌って欲しい。
【取材・文:池田スカオ和宏】
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リリース情報
セットリスト
「ハイサイロード ビヨンド 2013-14」追加公演
2014.4.13@SHIBUYA-AX
- 少年は旅の最中
- カイ・ホー
- 予告編
- はじまりの前
- 流星
- ノーグッバイ自分
- ナナ
- 恋の矢
- 燦然たれ未来
- 16号車
- 手と手
- 愛と呼ぶ
- アイスクリン計画
- ハンサムおじさん
- 恋人よ
- 南に舵をとれ
- 愛なのでしょう
- アットホーム
- アンマー
- ハローグッバイ
- 青春よ聴こえてるか
- 心に太陽
- 電照菊
- ア・モーレ ア・モーレ
- 夏草恋歌
- オワリはじまり