オオカミ青年・藤巻亮太の2回目の“明日の歌旅”
藤巻亮太 | 2014.05.22
藤巻亮太が1人、赤阪BLITZのステージに立った最初のソロライヴ(2012年4月12日)から約2年。彼は2度目のアコースティックツアー『明日の歌旅2014』に出かけた。彼はここで、“とても素直に唄えている藤巻亮太”を、包み隠さず見せてくれた。
2013年9月18日の宮城・石巻ブルーレジスタンスを皮切りに全国18ヵ所をまわった『明日の歌旅2013』から約2年。藤巻亮太は、再び明日の歌旅に出た。
4月6日の香川・高松DIMEを皮切りに、兵庫、長崎、富山、青森、東京、そして5月3日の山梨・コラニー文化ホールを追加公演とし、全国7ヵ所で行われた2回目の“明日の歌旅”。それは、1回目の“明日の歌旅”よりも素直な気持ちが溢れた、実に力強いライヴだった。
2014年5月8日。
会場の照明がすべて落とされた真っ暗な状態の中、藤巻はゆっくりとステージに姿を現した。藤巻は、何本かセッティングされていたアコースティックギターの中から、無造作に1本のアコースティックギターをピックアップし、ステージの中央を照らす真っ直ぐに伸びた照明の下に立つと、そっと弦をつま弾き始めた。
オーディエンスは聞き慣れないメロディーに耳をこらす。ド頭から新曲である。相変わらずの綺麗な声。曇りのない透明なその声は、丸いアコギの音色の上に、そっと軽く乗っかった。オーディエンスは、すっかりその世界観に引き込まれていく。こんなにも、一瞬にして空気を染め変えてしまう唄い手は、そうそう居ない。それは、藤巻亮太という唄の素晴らしさをしみじみと感じた瞬間だった。
「みんなゴールデンウィークなのに来てくれてありがとうね。2回目のアコースティックツアーになります。昔の曲も今の曲も同列で出来るかなと思って始めたアコースティックライヴです。ツアータイトルにもなっているんですが、新しいことを始めた友達のために作った曲を聴いて下さい」
藤巻はそう言うと、「明日の歌」と名付けられた新曲を、口笛を加えながらオーディエンスに届けたのだった。
続けて、4つの季節を唄ったマイナーコードが印象的な「春夏秋冬」、そして、細かく弦をつま弾いてリズミックにアレンジされた「ベテルギウス」で盛り上げると、春という季節を感じながら、ワクワクした気持ちでまわったという今回のツアーの感想を交えながら、この日のスペシャルゲスト、ギターの清水ひろたかと鍵盤の皆川真人をステージに呼び込んだ。3人で届けられたのは少し物悲しい春の唄。それは、「春の香り」というタイトルの新曲だった。
「永遠と一瞬」からは、藤巻もアコギをエレキに持ち替え、清水のエレキギターと鍵盤の音に自らのギター音を交わらせながら、アコースティックとはまた一味違う景色を魅せてくれた。
中でも、印象的だったのは「ハロー流星群」から、新曲「かすみ草」、「月食」と間髪入れずに続けられたブロックだ。3ピースとは思えない、歪みを上げた激しく重めなサウンド感は、これまで藤巻亮太がソロで生み出してきたサウンドにはなかった景色であった。特に、新曲の「かすみ草」は、可愛らしく優しい印象のタイトルとはまったく印象が異なるダークな1曲。低音楽器であるベースの役割りをギターの歪んだ音が担った、まるでインストのような激情的な1曲だったのである。最高にカッコイイサウンド感だ。
そんな3曲を届けた後、藤巻はこんなMCをした。
「こういう曲がやりたくてソロになったんです。でも、こういうのが20曲続くと辛いでしょ(笑)。僕も辛いんです(笑)。なので、初期衝動が詰まったいろんな曲をまんべんなく作ろうと思っているんです。1番最初の頃は、みんなにまた会える喜びとか、また唄える喜びを感じながら今やれています。本当にありがとう。そんな想いが詰まった曲を聴いて下さい」
本当に素直な、心からの一言だったと思う。ソロとして歩き出して3年。今、やっと“自分の唄いたかった唄”が、おもいっきり唄えている藤巻亮太を見ることが出来た気がした。
藤巻は、ライヴの後半に、ソロとして最初に世に放った「光をあつめて」と、1枚目のアルバムのタイトルでもあり、自身のことを描いた「オオカミ青年」を並べて届け、本編のラストに、2014年10月に公開となる映画『太陽の坐る場所』の主題歌になることが決まっている新曲「アメンボ」を届けたのだった。
それぞれの場所で闘って、気の許せる場所に帰って、またいつもの場所に戻って来てまた闘って、そうやってみんな闘い続けながら生きているんだなと思う???と、「アメンボ」の中に詰め込んだ想いを語っていた藤巻。この日、10曲の新曲を唄った彼も、日々、いろんな想いを巡らせながら、いろんな経験をしながら、自分と闘いながら生きているのだろう。そんな日々の中から生まれてきた曲たちは、日に日に素直さと強さを増している気がした。
アンコールでも、2曲の新曲を届けてくれたのだが、1曲目に届けた「命みたいな日」の3分の2あたりのところで曲構成を間違え、もう一回やり直すという、アクシデントもあったが、それは、お茶目ながらも、音楽に真摯に向き合う真っ直ぐな彼の本質を伺わせた出来事でもあった。
アンコール2曲目ではレミオロメンの楽曲「昭和」を届け、改めて、バンドからソロになって、いろいろと経験出来て、またこうしてみんなに会えて唄えていることへの感謝を言葉にし、最後に「名もなき道」と名付けられた新曲を贈ったのだった。
【取材・文:武市尚子】
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