新たな側面を見せた藤巻亮太のソロツアー、東京公演のTDCホールをレポート!
藤巻亮太 | 2013.02.19
藤巻亮太はオオカミになった。
2013年2月1日のTOKYO DOME CITY HALL。藤巻亮太はこの日、真っ直ぐに、とても真摯に、そして、とても素直に、自身が産み出した楽曲たちに命を吹き込んだ。
2012年2月29日にソロデビューすることを発表した、2011年12月6日。彼は、その日まで、羊とオオカミの間を、何度も何度も行ったり来たりしていたのかもしれない。
しかし。この日の彼は、一人前の立派なオオカミとなって、そのステージに立っていた。
サポートメンバーと共に放つ音は、アレンジを変えたのかと思うほどに力強いバンドサウンドに変化し、藤巻の歌も、驚くほどに迷いなく響いていたのだ。
変化を感じたと言えば、ステージに立っていた藤巻に限ったことではない。オーディエンスも、“藤巻亮太のライヴ”を一緒に作るのが、とても上手くなったように思う。2回目のワンマンライヴだった【LIVE 2012『“ECLIPSE”』渋谷公会堂】のときには、すっかり解り合った仲のはずなのに、何故かお互いがお互いを改めて意識しあったような、気恥ずかしそうな距離感を感じたりもしたのだが、アルバム曲「ベテルギウス」では、フロアに咲き乱れた花が風に揺れる様にオーディエンスの右手が美しく左右に揺れたのだ。
オーディエンスが花ならば、藤巻の声は風。
お互いが無意識に、お互いの存在の当たり前を感じ合っているような、そんなあたたかな一体感を作り出していたのである。
ソロだからこそ歌えた唄でもあったと語っていたパーソナルな楽曲も、ソロでもやっぱりバンドサウンドが好きだという原点を感じさせる楽曲も、藤巻亮太として歌う意味を放っていた。
「バンドが10周年を迎えた年に、いろいろと自分を見つめ返し、新たな挑戦となるソロ活動をしてみたんですが、なにせスロースターターなもので、ずっとウヨウヨ(ウヨウヨという表現もまた、藤巻らしい・笑)していて、ツアーをするまで時間がかかってしまいましたが、やっとこうしてツアーが実現しました! いままでシングルが2枚しかなかったこともあって、新曲ばかりをやってきていたんですが、今回はアルバム『オオカミ青年』(2012年10月17日にリリースされた1stアルバム)を引っさげてのツアーなので、一体感のあるライヴが出来てるんじゃないかなって思います!」
藤巻は嬉しそうに想いを言葉にした。
そんな藤巻の言葉どおり、しっかりとアルバムを聴き込んできたオーディエンスは、アルバム曲が届けられる度に、“待ってました!”と言わんばかりの笑顔で体を揺らし、手を挙げ、クラップを加え、藤巻と共にライヴを作っていったのだった。
パーソナルながらも、パーティー感いっぱいの「パーティーサイズ」では、藤巻もオーディエンスも手放しの笑顔で曲を楽しんでいたのが伝わってきた。そんな光景に、とても幸せを感じた。心からの笑顔は、周りの人まで幸せにする。そんな幸せの連鎖を、笑顔の力を教えてもらった気がした。そして。彼のソロへ至る心境を赤裸裸に吐き出された「オオカミ青年」が歌われたとき、オーディエンスは微動だにせず、その唄を受けとめた。
“ツアーをやって、やっと1周したって感じる”と言っていた藤巻だが、彼はそこで満足してはいなかった。ナント、藤巻はこの日も、藤巻亮太というアーティストの更なる広がりを感じる新曲を用意してきていたのである。中には、ソロとしては初となる5拍子曲もあり、MCで5拍子の曲の難しさをオーディエンスに語る場面もあるなど、ありのままの藤巻亮太でステージに立っていたのだった。
藤巻亮太はオオカミになった。
心の中は変わらぬ、あたたかな感性を持った羊。藤巻亮太は、羊のままオオカミになった。
彼が言う“オオカミ”は、自分自身を奮い立たせる意思のこと。彼の中身は変わっていない。
しっかりとオオカミを貫いた、音楽人の藤巻亮太がそこに居た。藤巻亮太が“やりたかったこと”を、しっかりと受け取れた気がした。
オオカミになることを決め、その胸の内を言葉にした2011年12月6日から1年と2ヵ月。赤阪BLITZのステージに立ち、ソロアーティストとして歩き始めた2012年の4月12日から約10ヵ月。彼は、そんな時間の流れの中で、ソロで歌う覚悟を明確なモノとしていったのだ。
ソロで歌う覚悟。やりたいことだけをやっていこうという意思。そんな強さと、本当の彼の素顔を感じることの出来たライヴだったように思う。
この日。藤巻亮太はオオカミになった。
【取材・文:武市尚子】
【Photo by 古渓一道】
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藤巻亮太
リリース情報
セットリスト
藤巻亮太 TOUR 2013”オオカミ青年”
2013.2.1@TOKYO DOME CITY HALL
- 1.かすみ草
- 2.ハロー流星群
- 3.ベテルギウス
- 4.ひとりぼっち
- 5.指先
- 6.twilight
- 7.四季追い歌
- 8.月食
- 9.音の花
- 10.Happybirthday
- 11.パーティーサイズ
- 12.ラッキー
- 13.キャッチ&ボール
- 14.Beautifulday
- 15.それぞれの太陽と宇宙
- 16.オオカミ青年
- 17.光をあつめて
- 18.砂時計
- 19.シーズンドライブ
- 20.8分前の僕ら
お知らせ
日比谷野音空想旅団 〜そこに素晴らしき音楽があった〜
2013/04/28(日)日比谷野音
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