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ACIDMAN、彼らの曲を愛する者たちと作り上げた “ファン投票ツアー” 最終公演

ACIDMAN | 2014.06.23

 大木「激しい曲だったりマニアックな曲だったり、インストもバラードもやっている。いろんな曲をやっていますけど、ジャンルなんてどうだっていいんですよね。やりたいこと、伝えたいことはひとつなんですよ」

 ACIDMANが行なったツアー「ANTHOLOGY」は、結成15周年/デビュー10周年を経た3人にとって初の試みとなった。それは、バンドがこれまで生み出してきた100を超える楽曲の中から、彼らのモバイルサイト会員が1人につき1票を投票。その上位30曲の中からセットリストを組むというコンセプト(現在、モバイルサイトにて今回のリクエスト上位30曲を公開中)。この企画については「自分達が思いついたわけでもなんでもなく、友達であるTHE BACK HORNの『マニアックヘブン』のパクリです」と大木がMCで告白していたが(笑)、ツアーファイナルとなったZepp Tokyoは、彼らの曲を愛する超満員のオーディエンスで溢れかえっている。

 想いの強さは、オープニングSEであるインスト曲「最後の国(Intoroduction)」から、充分に伝わってきた。大木伸夫(Vo&Gt)、佐藤雅俊(Ba)、浦山一悟(Dr)の3人を出迎えるリズミカルなクラップ。その一体感は、まさしくその事実の証明だった。1曲目は、アルバム『and world』に収録されている「Stay on land」から。大木が優しくギターを爪弾いた瞬間、「この曲で来たか!」と言わんばかりの大歓声。それに応えるようにサウンドにも徐々に熱が高まって行く。佐藤は何度も高く飛び跳ね、浦山も芯の強いドラムを叩き上げる。まだ1曲目だというのにクライマックスのような高揚感がフロアを満たしていた。

大木「今日という日は二度と戻ってきません。だから、一分一秒、みんなで最高のものにしよう。よろしくお願いします!」

 続けて「式日」へ。浦山のカウントの後、3人が同時に音を合わせたその一撃がとにかく凄まじかった。そして、<輝く今日は美しいと思うんだ>と、会場にいる全員が今を分かち合うように、慈しむように熱狂する。そして、ドラムとオーディエンスのクラップから「migration1064」へ、リズム隊のポリリズムが幻惑的な空間を作り上げ「スロウレイン」へと、興奮を途切らせることなくノンストップで繋げて行く。

 また、ライヴ中盤では“このツアーのおかげで久々にやることができた”と、シングル「Slow View」収録の「静かなる嘘と調和」や、“今までライヴではやったことがなかった”という「equal e.p.」収録の「コーダ」など、レア曲を連発。「コーダ」では、激情的でスリリングなサウンドに、クラウドサーファーも出現。今まで未披露だったことが意外なほどの盛り上がりを見せる中、デビューアルバム『創』収録の「揺れる球体」を届けるなど、懐かしい楽曲も飛び出した。

 そんなセットリストだったからだろうか。MCでは浦山がバンド結成当時の話をし始める。高校時代に3人は同じ部活(フォークソング部)に入ってはいたものの、大木とはバンドを組んだことはなかったが“この男についていきさえすれば、一生喰いっぱぐれることはない!”と思ったこと。バンド結成後、やたらと飲みの場に大木が浦山を誘うことが多く、その理由を聞いてみたら「まだ一悟君のことを分かっていない部分があって、仕事のときだと仕事の話になるから、お酒を飲んでざっくばらんに話し合って、君のことを知りたいと思った」と言われて胸熱になったこと。でも最近は、お店の名前と駅名だけが書かれたメールを雑に送りつけるようになったことなど、MCもかなり特別感のあるものだった。

 そこから一気にグッとドライヴ感をあげた後半戦は、「銀河の街」で開幕。「FREE STAR」では、ミラーボールと共に希望の光を放つように煌めき、「風、冴ゆる」では、痛みと命を噛み締めるように疾走し、その勢いのまま「ある証明」へ。生命を燃やし尽くすように高鳴らされた音に呼応したオーディエンス達は、何度も熱い叫び声をあげていた。

 アンコールは「1曲だけルール違反してもいいですか?」と、最新曲「EVERLIGHT」から。また、“すげえ昔の曲やっていい?”と、タイトルコールでひときわ大きな歓声が沸き起こったのは「培養スマッシュバーティー」。攻撃的なサウンドで、フロアを激しくかき回した。そして、“インディーズ時代のスタッフが「やれ、やれ」とうるさいので”と、上位に入りながらもセットリストからは漏れてしまっていた「酸化空」と曲名を告げると、再び大歓声。哀愁を帯びたサウンドで<もっと光を>と歌うこの曲は、彼らが初期の頃から独創的な楽曲を作り出していて、今も歌い続けているものと根底で繋がっていることを物語っていた。

大木「僕らもみんなも、生きとし生けるものはいつか死にます。こんなことを歌っても聴きたくないかもしれないし、つらいことだから触れないように生きている人もいると思います。僕も昔はそうでした。でもね、それを知って生きると、世界が変わるんです。毎日がとても愛おしくて、一分一秒がとても素晴らしくて、全てが輝いて映る」

 この日、本編のラストに披露された「and world」は、<それだけでいいんだろ それが全てだろ>と、全てを肯定する圧倒的な光を放つ壮大な楽曲だった。静と動、光と闇、刹那と永久、そして生と死。森羅万象の両極を、3ピースというバンド最小形態で繋ぎ合わせ、その中心にある「今ここで息をする命」を奏でるACIDMAN。そんなメッセージを込めた楽曲を愛し、求める人々と共有したこの日のライヴは、彼らにとっても、そして生まれてきた音楽にとっても、何とも理想的な空間だった。

【取材・文:山口哲生】
【撮影:藤井拓】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ACIDMAN

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リリース情報

Stay in my hand(初回限定盤)

Stay in my hand(初回限定盤)

2014年07月16日

ユニバーサル ミュージック

1.Stay in my hand
2.スロウレイン(Second line)
3.HUM(Second line)
4.スロウレイン(Remastering)
5.HUM(Remastering)

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セットリスト

ACIDMAN LIVE TOUR “ANTHOLOGY”
2014.6.12@東京 Zepp Tokyo

  1. 最後の国
  2. Stay on land
  3. 式日
  4. migration 1064
  5. スロウレイン
  6. id -イド-
  7. river
  8. プラタナス
  9. 静かなる嘘と調和
  10. コーダ
  11. 揺れる球体
  12. プリズムの夜
  13. OVER
  14. 季節の灯
  15. 銀河の街
  16. FREE STAR
  17. 風、冴ゆる
  18. ある証明
  19. and world
Encore
  1. EVERLIGHT
  2. ドライドアウト
  3. 培養スマッシュパーティー
  4. 酸化空
  5. ALMA

お知らせ

■ライブ情報

EX THEATER PREMIUM LIVE SERIES GO LIVE VOL.2
2014/07/02(水)EX THEATER ROPPONGI

JOIN ALIVE 2014
2014/07/20(日)北海道 いわみざわ公園

OGA NAMAHAGE ROCK FESTIVAL vol.5
2014/07/27(日)秋田県 男鹿市船川港内特設ステージ

rockin’on presents ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2014 Supported by BOSE
2014/08/02(土)国営ひたち海浜公園

※詳細、そのほかのライブ情報はオフィシャルサイトをご覧ください。

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