残念ながら、この日から彼女たちは当面、「がんばれ！Victory」を名乗らなくてはならなくなってしまった。
　しかし、この頑張れは、けっして他人から言われる「頑張れ!!」とは違った類い。いわば、この悔しさを思い返し、自分に言い聞かせ、自身を鼓舞していく為のバイタリティ溢れるネーミングなのだと感じている。まさにネタもとになっているアメリカ映画「がんばれ！ベアーズ」を彷彿とさせている。…この日の彼女たちの試合は、Victoryの名を当面封印し、代わりに「がんばれ! Victory」に改名しなくてはならない、残念な結果となってしまった。
　　では、この日の試合の模様をスコアブック片手に振り返ってみよう。

　まずは１回表の攻撃。いきなり司会者の外国人「ジョナサン」が現れ、前回のワンマンライヴの際に公約させられた、この日までの期限付きであった、<今年頭発売のミニアルバム『KGSD』を手売りで500枚売り切らないと次回CDをリリースできない>、その結果発表が行われた。会場のサイドに設置されたモニターには楽屋にて神妙な面持で発表を待つメンバーたちの顔が…。で、結果は。528枚!!　見事にクリアし、11/26に2曲入りのニューシングルをリリースすることが確約される。と併せて、10月にはTSUTAYA O-WESTにて次のワンマンライヴがあることも告知。会場もメンバーたちも驚喜する。その勢いに乗り、ステージにメンバーが現われ試合開始のデモンストレーションが。”あれ? 以前と立ち位置が逆だ”。２人のギタリストの以前は上手(かみて=向かってステージ右)にいたMINAMIが下手(しもて=向かってステージ左)に、下手にいたRENAが上手へとコンバートしている。おっ、衣装も違う。お揃い…。いや、これまでのロック・レジェンドたちのバンドTシャツたちの袖に新たに金色の袖をつけているものだ。ナイスアレンジ。素敵な衣装だ。
　そう思うも束の間、スタンバイを終えた５人から、ガツンとしたデモンストレーション音が。そして、残ったフィードバックの上、まずはベースのSHINOBUから目標達成のお礼が。ボーカルのAYAKIがセンターで誇らしげに、Victoryタオルを掲げている。フロアもそれに追従するかのようにタオルを掲げる。SHINOBUの「しまっていこうぜ」の一言からライヴに突入。１曲目は「ろっく」。彼女たちのライヴの一曲目を飾ることの多い、ヘビーなギターリフが印象的な楽曲だ。フロント４人が横一列に並び、4つの頭がシンクロするヘッドバンキングのシーンも見どころ。続いて、ノンストップで「I Go Everyday」にイン。会場のOiコール＆クラップが楽曲を迎え入れる。ドラムのMAYUKOによる軽快なドラミングに乗り、ドライヴ感溢れる青春性とスプラッシュ感が会場中に広がっていく。

　ここでMC。野球のコンバッチマーチに乗って、一人一人が最近の近況を交え自己紹介を始める。
　SHINOBUが、「みなさん、どうもありがとう。みなさんへの恩返しは、このライヴでやらせていただきます。新曲を２曲用意してきました。聴いて下さい」と告げ、新曲「Dear」「ふらいはい!!!」を立て続けに披露する。
　「Dear」は、サビの部分にてタオル大旋回が巻き起こること必至のナンバー。ドライヴ感があり、そのサウンドに乗せて、併せて各人の夢もグングン広がっていきそうな楽曲だ。続いての新曲「ふらいはい!!!」は、三三七拍子が楽曲に上手く取り入れられたナンバー。サビではテンポアップを見せ、メロコア的な要素も伺わせる楽曲だ。まるで青い空へと誘ってくれるような同曲。ここではMINAMIがギターソロを会場中に響かせる。

　ここからは早くも後半戦。会場とステージとの一体感を育んでいくナンバーが連射される。会場も呼応、一体感を生んでいった「青春ライフポップ」、そして、会場中からKGSDコールが起こったラストの「KGSD」では、サビの上昇感と勢いがあるんだけど、どこか聴く者の胸をキュンとさせる歌声という、彼女たちらしさが炸裂していく。この曲では、RENAによるギターソロも聴きどころ。そのギタープレイやフレーズからも、”この想いよ、届け!!”といわんばかりの強い気持ちが伝わってくる。

　アンコール。プレイの前に今回のミッションでもある公開体重測定があった。なんでもメンバー各人、上京してきてから体重が増加したそうで。それぞれが目標を決め、そこに向けてダイエットを始め、その結果がここで発表されると言う流れだ。但し、一人でも目標体重をクリアしないと連帯責任として、上述の「がんばれ!Victory」に改名させられるとのこと。それもあり、みんな必死。一人ひとりが、祈るように体重計に乗っていく。結果は5人中3人が目標体重に至らず。残念ながら公約通り、バンド名が「がんばれ!Victory」へと改名させられてしまった。
　「頑張れが取れるまで頑張ります」とSHINOBU。「気持ちを引き締めて頑張る」とはAYAKI。「気持ちを切り替え、楽しくやります」とアンコールは１曲「HAPPY LIFE」を始める。ラストは会場も交え、楽しそうにみんなで大ジャンプ。「以上、がんばれ! Victoryでした」の言葉を残し、５人はステージを下りた。

【取材・文：池田スカオ和宏】