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11回目のナノムゲン、「音楽には可能性しかない」(アジカン後藤正文)

NANO MUGEN FES | 2014.07.31

 ASIAN KUNG-FU GENERATIONがオーガナイザーを務める「NANO-MUGEN FES.」。昨年はバンドのデビュー10周年を祝した横浜スタジアム2day公演があり、サーキット形式での開催となったため、横浜アリーナでのフェス形式は2年ぶり。「NANO-MUGEN FES.」としては11回目の開催となった。

 11:30。アジカンの山田貴洋(B)、伊地知潔(Dr)の2人による前説トークの後、スクリーンに「NANO-MUGEN FES.」のヒストリーと、今年のラインナップが流され、11:40。トップバッターのKANA-BOONがMAIN STAGEに登場した。オープニング曲の「ないものねだり」から、瞬く間に熱気が会場に立ちこもっていく。MCでは、KANA-BOONを観に来たオーディエンスへ「なかなか見る機会の少ないアーティストもたくさんいるので、最後まで焼き付けて帰ってください」とアナウンス。洋邦/世代を越えたラインナップで、普段は耳にする機会のない音楽を提供したいという主催者の趣旨を伝えていたところは、次世代を担う存在としての頼もしさを見せてくれていた。また、新曲「生きてゆく」も披露。ミディアム寄りの力強いリズムに支えられた、キラキラとしつつもどこか切なげなサウンドは実にドラマチックで、会場から大きな拍手が巻き起こっていた。

 「NANO-MUGEN FES. 2014」は「MAIN STAGE」「ELECTRIC STAGE」「SIDE STAGE」の3ステージ制。KANA-BOONのステージから間髪入れずに、ELECTRIC STAGEでIt’s A Musicalのライヴがスタート。2人体制でありながらユニット名のごとくミュージカルのような夢世界を生み出せば、続いてMAIN STAGEにはTEGAN AND SARAが登場。久々の来日となった2人は、極上のポップサウンドを繰り出して、フロアを熱く盛り上げていた。

 14:10。グッドモーニングアメリカが、SIDE STAGEに登場。アジアン・「カンフー」・ジェネレーションということで、ブルースリーの黄色いツナギに身を包み、スタンディングブロックをダッシュしてステージに駆け上がる、ベースのたなしん。恒例の「ファイヤー!」コールを交えて、「空ばかり見ていた」でライヴをスタートさせた。彼らのコンセプトである「開いていく、届けていく」という言葉通り、「拝啓ツラツストラ」「未来へのスパイラル」といったキャッチーなアンセムを連発。目を大きく見開きながら歌い上げた金廣真悟(Vo・G)の熱唱は、SIDE STAGEを飛び出して行くほどの気迫に満ちていた。

 メインフロアのみでなく、休憩スペースでも音楽を届けてくれる「NANO-MUGEN FES.」。伊地知潔プロデュースの「Kiyoshi’s Bar GUESTReALM」では、Arisa Safu、Hi,how are you?、中嶋康孝(BIGNOUN)が、また、今年から導入された喜多建介(G)が命名の「Ken’s CAFE Sunday in Brooklyn」には、猪又 and the Guitar、岩崎 愛、Ropesが出演。癒しのひとときに彩りを添えてくれていた。

 「音楽の嵐を吹かせに来ました!」──15:05。MAIN STAGEに現れたのは、アジカンの盟友であり、「NANO-MUGEN FES.」の常連でもあるストレイテナー。1曲目の「Melodic Storm」からフロアの大合唱を巻き起こし、「From Noon Till Dawn」では荒ぶった凄まじいバンドサウンドを叩きつけていく。新曲である「Super Magical Illusion」では、ワイルドでありながらキラキラと輝く、まさにロックのイリュージョンをタフにかき鳴らし、エレクトロアプローチな「KILLER TUNE [Natural Born Killer Tune Mix]」へと、矢継ぎ早に曲を披露。太陽光発電と蓄電池で稼働している照明も、楽曲をド派手に彩る。一転、ホリエがキーボードを奏でるミディアムバラード「MARCH」で、会場を優しく包み込み、クライマックスは「TRAVELING GARGOYLE」「ROCK STEADY」と初期曲を2連発で投下。貪欲なまでに更新し続ける自身の音楽性と、その原点を提示する圧巻のパフォーマンスを繰り広げた。

 MAIN STAGEでOWL CITYが、会場全体をハッピーに染め上げ、いよいよフェスも中盤戦に差し掛かった、17:15。SIDE STAGEに登場したLOSTAGEは、コンピ盤『NANO-MUGEN COMPILATION 2014』に収録されている「Flowers / 路傍の花」からライヴをスタート。3ピースバンドとは思えないほどの圧倒的な轟音で、横浜アリーナを強襲し、強烈な音像を持つ楽曲達を淡々と、されど異常なまでの熱量を迸らせながらプレイしていた。「ロックバンドをやることになって、出来れば人に頭を下げたりせずにやっていきたいなと思っているんですけど。今日はASIAN KUNG-FU GENERATIONと、イベントを作られた皆さんに感謝したいと思います」。穏やかな声で五味岳久(Vo・B)が感謝を告げると、客席からは大きな拍手が起こっていた。

 18:10。MAIN STAGEにはくるりが登場。出演前のサウンドチェックで「ワンダーフォーゲル」をまるっと披露するというサービスもあり、既にテンションが上がっているオーディエンスへ向けて、1曲目は「Morning Paper」。ダイナミックなバンドサウンドを繰り出せば、続く「World’s End Supernova」では、ソリッドなビートでオーディエンスを踊らせて行く。そして新曲を2曲披露。コンピ盤にも収録されている「loveless」は珠玉のメロディーが最高に心地よい、まさに“名曲”といったもの。そしてもう1曲が「Liberty & Gravity」。“変な曲”と岸田繁(Vo・G)が説明していた通り、確かに変わっていた。構成もフレーズもあらゆるものがぶっ飛んでいて、中には“迷曲”と言う人もいるかもしれない。しかし、とにかく楽しいのだ。カオティックにやり散らかすというわけではなく、カオスから生まれた興奮の渦に、聴き手をグングンと引きずり込んでいく求心力に溢れていた。そして“変な曲をやってドン引きしてるやろうから(笑)、普通の曲やるわ”と「ばらの花」「虹」と続けて、ラストは「東京」。決して“普通”ではない、美しく壮大なバンドアンサンブルを情熱的に奏であげた。

 ELECTRIC STAGEにて、YOUNG PUNXがアップリフティングなステージを繰り広げた後、MAIN STAGEには、weezerの元ベーシスト・マット・シャープ率いるTHE RENTALSが登場(彼らの約15年ぶりのアルバムを、アジカン・後藤正文(Vo・G)が中心となり運営しているレーベル「Only in dreams」からリリースすることが決定している)。大所帯でのドラマチックなステージで観客を魅了した。

 そして、20:45。いよいよヘッドライナーであるASIAN KUNG-FU GENERATIONが、MAIN STAGEに姿を現した。大歓声が巻き起こる中、けたたましいフィードバックノイズを会場全体に響き渡らせ、「サイレン」からライヴをスタートさせる。透明感のあるアンサンブルを鳴らし、続けて「Re:Re:」へ。「終電を気にしている方もいらっしゃると思いますので」と、立て続けに「君の街まで」「暗号のワルツ」「桜草」と、イントロの時点でフロアから大歓声が上がるような懐かしい楽曲達が、立て続けに投下されて行った。

後藤「やっぱり、気が引き締まりますね。2011年は、本当にドキドキしてこのステージに立ったんですけど、続けて来れたことに意味があるんだろうし、こうして自分達のステージの上に自分達のあの日以来の気持ちが乗っかっているのは大事なことだし……たまにね、俺すげえ変なやつなんじゃないかなと思うことがあって。新聞作ったり、いろんなところで発言したり、Twitterで絡まれたりとかさ。周りからすればめんどくさいかもしれないけど、僕はロックミュージシャンだから、知ってしまったからには黙ってるわけにはいかないんです」「僕は音楽を聴いてくれる人達を信じていて、それがその人達に届いて、そこでまた何かが生まれる。だからもっと、ミュージシャンに求めてください。“もっと良い曲書けや!”って。俺ら書くから」

 そして、新曲「スタンダード」へ。どこまでも遠くへ届かせるように力強く歌い上げられたメロディーと、真っすぐに突き進んで行くビートに、胸に熱くさせられた。ラストは、そこで灯された胸の炎を絶やさぬように「マーチングバンド」を高鳴らし、本編は終了。アンコールではTHE RENTALSのマット・シャープと、ギタリストとして参加していたASHのティム・ウィーラーの2人を呼び込み、weezerの「UNDONE -THE SWEATER SONG」をセッション。実に楽しそうに音を重ね合わせる6人の姿があった。昨年はバンド初のヨーロッパツアーも開催したアジカン。この日、後藤がMCで話していたが、「音楽は国境を越える」という、人によっては絵空事のように思われるかもしれない話を体感し、今、ここで体現している。

後藤「音楽には可能性しかないと思うんですよね。あの、今から臭いことを言いますけど(笑)──今日はみんなとこういう場所を共有出来て嬉しいです。ありがとう。最後に、みんなの明日がもっといい日になるように歌います」

 ラストナンバーは「今を生きて」。跳ね上がるビートと至福のアンサンブルが、横浜アリーナ全体をこの日一番の多幸感で包み込む中、1日目は幕を降ろしたのだった。

【取材・文:山口哲生】

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リリース情報

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2014

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2014

2014年06月25日

Ki/oon Music

1. スタンダード/ASIAN KUNG-FU GENERATION
2. 流転する世界/the chef cooks me
3. 未来へのスパイラル/グッドモーニングアメリカ
4. Something Ever After/the HIATUS
5. The Music Makes Me Sick/It’s A Musical
6. フルドライブ/KANA-BOON
7. FLOWERS / 路傍の花/LOSTAGE
8. 天地ガエシ/NICO Touches the Walls
9. BEAUTIFUL TIMES(FEATURING LINDSEY STIRLING)/ OWL CITY
10. loveless/くるり
11. THOUGHT OF SOUND/The Rentals
12. 翌る日のピエロ/ストレイテナー
13. CLOSER/TEGAN AND SARA
14. DOWN BEAT STOMP/東京スカパラダイスオーケストラ
15. KEEP ON ROCK’N ROLL/ユニコーン
16. All These Things Are Gone(The Lenno Radio Edit) / 愛は蜃気楼のように/THE YOUNG PUNX

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セットリスト

NANO-MUGEN FES. 2014
2014.7.12@横浜アリーナ


KANA-BOON
  1. ないものねだり
  2. 1.2. step to you
  3. ウォーリーヒーロー
  4. 結晶星
  5. 盛者必衰の理、お断り
  6. 生きてゆく
  7. フルドライブ

グッドモーニングアメリカ
  1. 空ばかり見ていた
  2. キャッチアンドリリース
  3. アブラカタブラ
  4. 拝啓、ツラツストラ
  5. イチ、ニッ、サンでジャンプ
  6. 未来へのスパイラル

ストレイテナー
  1. Melodic Storm
  2. Blue Sinks In Green
  3. From Noon Till Dawn
  4. Super Magical Illusion
  5. KILLER TUNE [Natural Born Killer Tune Mix]
  6. MARCH
  7. シンデレラソング
  8. TRAVELING GARGOYLE
  9. ROCKSTEADY

LOSTAGE
  1. Flowers / 路傍の花
  2. Nowhere / どこでもない
  3. SURRENDER
  4. 楽園
  5. BLUE
  6. Good Luck / 美しき敗北者達

くるり
  1. Morning Paper
  2. WORLD’S END SUPERNOVA
  3. loveless
  4. Liberty & Gravity
  5. ばらの花
  6. 東京
ASIAN KUNG-FU GENERATION
  1. サイレン
  2. Re:Re:
  3. 君の街まで
  4. 暗号のワルツ
  5. 桜草
  6. スタンダード
  7. 振動覚
  8. リライト
  9. ソラニン
  10. 君という花
  11. マーチングバンド
Encore
  1. UNDONE-THE SWEATER SONG(w/Matt Sharp, Tim Wheeler)
  2. 今を生きて

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