藤井フミヤ、30周年記念ツアーの中盤。デビュー記念日のライブ
藤井フミヤ | 2014.10.08
現在、全国ツアー「30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE」を展開中の藤井フミヤ。デビュー30周年を記念した本ツアーは、昨年の“青春ツアー”に続き第2弾となるが、今回も全国31カ所35公演を行うロングツアーである。
昨年のツアーは、バンド時代の楽曲を中心に構成された。続く本年のツアーは、ソロになってからの楽曲のみでセットリストが組まれている。
バンド時代とソロ時代で、それぞれ同規模のロングツアーを実現できるアーティストは、今の日本の音楽シーンを鑑みても、本当にわずかだろう。この2つのツアーの実現は、藤井フミヤの歌が、世の中に浸透してきたことを証明する結果になったと思う。活動の歴史の長さだけでは、世の中に歌は浸透しない。ヒット曲を出しただけでも然り。どれだけたくさんの人の前で繰り返し歌ってきたか、ヒット曲をライブという空間を通して、ずっと生かし続けてきたが重要になってくる。
繰り返し歌い、歌の息吹を絶やさなかったからこそ、藤井フミヤは、自身の歌で、今なお多くの人の心のひだを震わせることができるのだ。
9月21日、東京国際フォーラム ホールA。デビュー記念日とあって、客席は超満員。ソロ初期のシングルからスタートしたライブ。途中、フレンドリーなMCを挟みながらライブは進む。ジャンルはもちろん、曲調も違えば、テンポも違うポップスの百花繚乱。次に繰り出される曲が、ちょっと想像できない。これが、曲調やテンポから、自然に次の曲をイメージすることに慣れてしまった感覚には、とても刺激的だし楽しい。この“想像できない=これまでにない流れ(構成)”を感じるのは、本人がツアー初日にMCで公言したとおり「前向きで明るい曲」を歌詞を踏まえて選んだからだろう。そういう意味では、何度も聴いた曲の歌詞をもう1度噛みしめ、そこにストーリーを見出すのも、本ツアーの醍醐味なのかもしれないと思った。
この日、2回目のMC。30年前の今日、デビューしましたというひとことに、会場から大きな拍手と大歓声。この後、デビュー記念日から、記念日をどれくらい覚えているかという話を経て、話題はこう展開。
「9月21日をみなさん覚えていてくださって、本当にありがとうございます。これまでバンドで約140曲、ソロで約230曲、歌ってきました。その中から、今日は本当に少しですけど、藤井フミヤ幕の内弁当をお持ちしましたので、最後までご賞味ください。次はプラトニックな歌を……じゃ、手拍子よろしく」
この言葉を受け、客席から自発的に手拍子が起こった。フミヤの言ったことを即座に実行する観客。デビュー当時も、フミヤの服装や髪形を真似していた彼女たちの素直さが、発揮されたワンシーンだった。微笑ましいことこの上ないと、ほんわかした気持ちになっていたら、1度マイクスタンドの前から離れたフミヤが、驚愕した顔で戻ってきて、こんなひとことを。
「なんで!(笑)なんで勝手にやってんの? 俺まだ何もやってないじゃん、次の曲のテンポ、知ってんの?」
会場中、大爆笑。しかし、それでも手拍子をやめない。その様子にちょっと大げさにガクッとうなだれるようなアクションをしたりしながら、フミヤが本音を放った。
「でも今、結構(テンポ)速かったね。せっかちだね?、みんな(笑)」
こんな観客との掛け合い(失礼!)も、彼のライブではお馴染みの光景だ。昨年のツアーに続き、今回のツアーでも、初めて訪れる場所&会場がいくつかある。生の藤井フミヤを初めて見る……というお客さんも多いだろう。そんな観客にも、フミヤはフランクに言葉を投げているのではなかろうか。初めてのお客さんにとっては、フミヤのこんなMCは、緊張をほぐす役割をしていると思う。リラックスして、フラットな状態でライブを楽しんでこそ、音楽そのものがその人の中に刻まれる。フミヤのMCは、時に、そんな聴き手のスタンスを作る手助けをしているのかもしれないと思った。
本編の中には、バラードやミディアムなど、ゆったりとした曲が続くブロックがある。25周年ツアーの際も、同様のブロックはあったが、セットリストの違いを考慮しても、当時とは印象がまったく違うのが面白かった。簡単に言うと、ソリッドでミニマムというか。無礼を承知で表現すると、間延びゼロ。1曲1曲、そして曲間も含めて、ブロック全体がとてもシェイプされているのだ。繊細ながらタイトなバンドサウンドのアレンジ、イントロや間奏やアウトロでの“ため”の長さ、さらに曲間と、随所にこだわりが感じられた。
そして、このバラード&ミディアムブロックと、見事なコントランスを見せ、会場のボルテージを一気にマックスに持っていくのが、アップチューンのブロック。「Stay with me.」他、歴代のキラキラしたロックンロールナンバーが、会場全体のムードを一瞬でフライトさせる。フミヤのキレのいいダンスも存分に堪能できるブロックだが、9月21日には、普段はあまり見られない、藤井フミヤの底力にお目にかかることができた。
ボーカルのセンス=アドリブである。フミヤは、ライブでもサウンドはもちろん、歌い方も原曲(作品)を再現しようという意識が強い。そこには、自身が音楽リスナーになった際、ライブでも原曲アレンジで聴いた方が嬉しい、きっと観客も同じだろうという思いがあるからだ。つまり、自分の歌を楽しみに待っていてくれる人には、原曲のまま届けたいと思っている。しかしこの日は、アップチューンのブロックで、何回か、ファルセットでのフェイクや、一部譜わりを変えて歌ったりなど、多彩なアドリブを見せた。この日、デビュー日を祝うために、全国から集まったファンの熱気に、後押しされ、どこかのリミッターが外れたのだろう。そんな彼の姿を見ていて、フミヤが良くいうこんな言葉を思い出した。
“自分だけじゃできない、ここにいる人全員、みんなと一緒に作るのがライブ”
この日、最後のMC。
「デビュー30年、ソロ20年、このステージで歌わせていただいて、本当にありがとうございました」
観客を筆頭に、バンドメンバーやスタッフも含め、いろんな人の愛に支えられてきたと、30年を振り返り、最後はこう締め括った。
「とにかくいろんな人に感謝しつつ、みんなに感謝しつつ、最後に力いっぱいラブソングを歌います」
フミヤのこのツアーに対する思いを象徴するようなラブソング。ピースフルな空気が充満する中、ライブは幕を閉じた。
ツアーはまだまだ続く。年末12月31日には、2年に渡るダブルアニバーサリーイヤーの集大成となる日本武道館でのカウントダウンライブも決まっている。
【取材・文:伊藤亜希】
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リリース情報
FUMIYA FUJII SYMPHONIC CONCERT(初回生産限定盤)[2CD +DVD]
2014年09月24日
SMAR
1. Overture ~Another Orion~
2. TRUE LOVE
3. 君が僕を想う夜
4. Life is Beautiful
5. 地上にない場所
6. 鎮守の里
7. 大切な人へ
8. 夜明けの街
[DISC 2]
1. ドヴォルザーク:交響曲8番第3楽章
2. Another Orion
3. トワイライト
4. わらの犬
5. 愚か者の詩
6. なんかいいこと
7. ALIVE
8. Go the Distance
9. Encore) 夜明けのブレス
[DISC 3/DVD]
Overture ~Another Orion~
TRUE LOVE
君が僕を想う夜
Life is Beautifu
地上にない場所
鎮守の里
大切な人へ
夜明けの街
ドヴォルザーク:交響曲8番第3楽章
Another Orion
トワイライト
わらの犬
愚か者の詩
なんかいいこと
ALIVE
Go the Distance
Encore) 夜明けのブレス
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お知らせ
藤井フミヤ 30th Anniversary Tour vol.2 TRUE LOVE
2014/08/16(土) 東京・府中の森芸術劇場どりーむホール
2014/08/17(日) 東京・府中の森芸術劇場どりーむホール
2014/08/23(土) 兵庫・神戸国際会館こくさいホー
2014/08/24(日) 滋賀・滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール・大ホール
2014/08/30(土) 静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
2014/08/31(日) 埼玉・東松山市民文化センター
2014/09/03(水) 千葉・君津市民文化ホール
2014/09/06(土) 神奈川・よこすか芸術劇場
2014/09/07(日) 愛知・一宮市民会館
2014/09/14(日) 広島・上野学園ホール
2014/09/15(月・祝) 香川・サンポートホール高松・大ホール
2014/09/20(土) 宮城・東京エレクトロンホール宮城
2014/09/21(日) 東京・東京国際フォーラム・ホールA
2014/09/23(火・祝) 北海道・札幌市教育文化会館大ホール
2014/09/24(水) 北海道・釧路市民文化会館 大ホール
2014/09/27(土) 新潟・南魚沼市民会館
2014/09/28(日) 石川・本多の森ホール
2014/10/01(水) 茨城・龍ヶ崎市文化会館
2014/10/04(土) 大阪・フェスティバルホール
2014/10/05(日) 大阪・フェスティバルホール
2014/10/07(火) 三重・三重県総合文化センター大ホール
2014/10/13(月・祝) 静岡・裾野市民文化センター
2014/10/14(火) 大阪・岸和田市立浪切ホール
2014/10/18(土) 愛知・名古屋国際会議場センチュリーホール
2014/10/19(日) 奈良・なら100年会館 大ホール
2014/10/21(火) 東京・かつしかシンフォニーヒルズモーツァルトホール
2014/10/25(土) 秋田・能代市文化会館
2014/10/26(日) 青森・五所川原市ふるさと交流圏民センターオルテンシア
2014/10/30(木) 群馬・藤岡市みかぼみらい館 大ホール
2014/10/31(金) 東京・中野サンプラザ
2014/11/02(日) 熊本・市民会館崇城大学ホール(熊本市民会館)
2014/11/03(月・祝) 福岡・福岡サンパレス
2014/11/05(水) 福岡・久留米市民会館
2014/11/08(土) 大阪・フェスティバルホール
2014/11/09(日) 大阪・フェスティバルホール
藤井フミヤ カウントダウンライブ
2014/12/31(水)東京・日本武道館
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。