全国5会場8公演が行われたワンマンツアー。andropの奏でるサウンド、人々の歌声が煌めいた東京公演をレポート
androp | 2014.10.16
仄かな光に包まれたステージ上から内澤崇仁(Vo & G)が歌声を響かせて幕開けた1曲目「Singer」。やがて佐藤拓也(G & Key)、前田恭介(B)、伊藤彬彦(Dr)の演奏も加わり、奥行き深いサウンドが会場いっぱいに広がっていった。色とりどりのレーザー光線が飛び交い、ステージ上に置かれたミラーボールが放つ光の粒子がキラキラと輝きながら周囲の空間を染める「RDM」へ。音と光が鮮やかにシンクロしたステージ。その煌びやかな息吹を目一杯に感じながら全力で手拍子をして踊る観客。最高の音楽をたくさんの人々と同じ瞬間に共有する喜びを強烈に体感させてくれたオープニングであった。
2曲目以降も強力なダンスグルーヴに彩られたサウンドが連発され、早くも圧倒的な熱気が渦巻いていた会場内。「Bell」を演奏した後、「楽しんでる? ツアーはこの先もあるけど、今のことしか考えていません。今日は最高の夜にしましょう」という内澤の言葉を挟んで、さらにエモーショナルな演奏が続いた。生々しいビートが明るい興奮を誘った「Time Machine」や「Under The Sun」。前田のベースのスラッピングプレイと伊藤のシャープなドラミングの絡み合いを軸に、スリリングなサウンドが放たれた「Alternative Summer」。ヘヴィを音色とスピード感溢れる展開に刺激され、観客が凄まじい勢いで手拍子をした「Lit」……などなど。andropのアンサンブルの強靭さが鮮やかに示され続けた。
内澤がピアノを弾きながら歌い、メンバー3人と共に瑞々しいメロディを響かせた「Melody Line」、曲が展開するにつれてエモーショナルさを果てしなく増していくサウンドに息を呑んだ「Six」など、多彩な楽曲をさらに堪能しつつ迎えた中盤のインターバル。「言葉は人を幸せにもできるし、人を追い詰めることもできます。言葉の重さを考えると、悩んでる人に何て声をかけたらいいのかと思います。今はネットもあるから、誰かを不特定多数が叩いたり、息が詰まる時代です。次にやる曲は、生きてる人に対して背中を押したいと思って作りました。他人にどう思われたいかっていうのは二の次。一番大事なのは自分がどう生きるか。自分らしく生きてもらいたいと思います」、内澤が想いを語って披露されたのは「Shout」。こめられた想いが歌われる言葉、放たれる音色の全てから真っ直ぐ迫って来るのを感じる演奏であった。
「昨日もライブをやって。終わった後に近くのスタジオで練習をして、4人でラーメンを食べて寝て、またここに来て。最高の2日間です。高校の時にレディオヘッドが好きで、愛知から東京に来てライブを観て。そういうライブに動かされて、今、このステージに立ってます。心を開放して楽しんで帰ってください」と語った佐藤。前田は「明日、学校とか仕事とか? そんなの関係ないでしょ。今から後半戦だ! 盛りがっていこうぜ!」と、ハイテンションに皆を煽る。そして内澤が「自分の限界を自分で決めないでください。そういう歌を歌います。歌った後に一緒に歌ってください」と呼びかけ、「Run」がスタート。観客との歌声の交わし合いから始まり、情熱的なサウンドが響き渡ってゆく。踊る人々で揺らぐフロアも、4人のメンバーが演奏するステージ上も、何とも言えず清々しい興奮に包まれていた。
あのお馴染みのクラップ音が流れるや否や、フロア全体から起こった歓声。そしてスタートした「MirrorDance」。この曲を皮切りに突入した終盤戦の盛り上がりは、絶大なものであった。「一緒に歌おうぜ!」という呼びかけに応えた人々の大合唱が会場全体を震わせた「One」。「音楽をやってて良かった。音楽をやってなかったらこんな最高の時間を味わえなかったし、みんなとも出会えなかったから」、心からの感謝の気持ちを内澤が添えて本編ラストを飾った「Voice」。この2曲で生まれた一体感は特に印象深い。音楽を通じて繋がり合う幸福を、あの場にいた全ての人が噛み締めていたはずだ。
《アンコールアンコール もう一度声を聴かせてよ》、「Encore」の歌詞の一節を歌いつつ手拍子をする観客の前に再び現れたメンバー達。アンコールでまず演奏されたのはandrop公式サイトの会員ページ用コンテンツである『佐藤拓也の男は旅の途中です』のテーマソング「Traveler」だった。温かいサウンドが会場内のムードを和ませる。続いて届けられたのは「Neko」。「もっとこの曲を楽しみたい。一緒に演奏したいです。お手本を見せます!」と途中で皆に呼びかけた内澤。彼の言った数字通りに観客が手拍子をするルールだったのだが……1拍余計に叩いてしまう人がどうして現れてしまい、なかなか上手く揃わない。そんなハプニングも楽しんだ和やかなひと時となった。そして、「本当にありがとう。楽しかったよ。俺らの曲はいつもみんなの側にあります。そういう曲をやります」と内澤が言い、アンコールのラストに披露されたのは「Stardust」。観客は腕を振り上げながら全力で踊る。爽やかな昂揚感が広がる素敵なエンディングであった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:橋本塁】
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