ベースが松本彩から松岡彩に交替し、新体制での初ツアー『君ときみの彼氏と転校した彼女の日曜日のデートプラン』ファイナルとなった赤坂BLITZは、新生SHISHAMOの姿を堂々と見せた、暖かくも心強いライヴだった。

　大歓声の中、幕開けとなったのは「彼女の日曜日」。ツアータイトルの一部でもあるこの曲の、”このワンピースあなたは好きかな”という一節は、“この3人もあなたは好きかな”と問うているようにも思えたが、そんな不安めいたものはオーディエンスからの熱気で掻き消された。宮崎朝子（Gu/Vo）と吉川美冴貴（Dr）の演奏に、新メンバー松岡はぶっとい音で食らいついて行く。それを宮崎と吉川が受け止めて、曲が進むほどに3人の気持ちがまとまって行くのが見えるようだった。

　「僕に彼女が出来たんだ」を演奏したあとで、新しい彼女ならぬ新メンバー松岡が「松岡彩と言います、大阪出身です、朝ちゃんと美冴貴ちゃんの１コ下の18歳です」と自己紹介。すると「かわいー」とあちこちから声が飛んで、松岡は「よろしくお願いします」と礼。宮崎と吉川も共に頭を下げて、新生SHISHAMOの絆を示した。
　感情の揺れを込めた宮崎の歌が小気味いい新シングルのカップリング「きみと話せないのは」から「サブギターの歌」を続けた後は、オーディエンスに「中学生」「高校生」「大学生」と呼びかけ盛り上げる。親御さんと一緒に来ていた小学生や幼児もいたのはSHISHAMOの曲が持つ幅広さを物語っている。

　「がたんごとん」「転校の歌」と落ち着いた曲を続けた後は、松岡との出会いから加入した経緯を宮崎が話したのだが、前任ベースが脱退するギリギリの日に大阪のイベントで出会った松岡を宮崎は、ベースの腕より「手際の良さと顔が好み」なので誘ったそうだ。そして何とかツアーをスタートさせ，２ヶ月全国を回ってこの夜を迎えた3人。色々な思いがあったに違いない。「量産型彼氏」は松岡加入後初のシングル曲としてPVも作ったと宮崎が言うと、「その時の衣装着て来たんです?。でも暑い」と松岡。マイペースな松岡を宮崎と吉川がいじるという流れが新生SHISHAMOとして出来上がっているようだ。その「量産型彼氏」は松岡のベースも生きるノリのいい演奏でフロアを沸かせ、トロピカルな雰囲気もある「こんな僕こんな君」は波打つようなうねりが生まれた。

　その後の「吉川美冴貴の本当の気持ち」と題した吉川のMCでは、ベース交替の不安や経験のない松岡への思いを率直に語り、「またSHISHAMOをやれる。松岡に出会って良かった。この3人を受け入れた皆さんに感謝しています」と言うと、盛大な拍手が3人に送られた。
　後半は「君と夏フェス」に、皆がタオルを回すライヴの定番「タオル」、軽快な「恋する」を続けて盛り上げ，ラストは「君との事」。3人が向き合ってリズムを合わせる姿は、目頭が熱くなるようないい光景だった。
　そしてアンコール。「あの子のバラード」などを演奏し、吉川が「ツアーファイナルと気負わず、18本の中で得たものを今回で伝えることができた」と言うと、松岡は「みんなに迷惑もかけたけど最後までやれて良かった。こんなに来てくれて嬉しいです」と嗚咽した。宮崎は「不安もあったけど，みんながライヴを楽しんでくれて嬉しい。諦めなくて良かったです」と安堵した気持ちを語った。

　最後を飾った「休日」は、安堵と満足感を詰め込んだ演奏に、オーディエンスも応えて共に歌う暖かい曲になった。この3人がこれから更に大きく進んで行く事を実感させたツアー・ファイナルだった。
　アンコールで告知された、来年2014年1月の「KICK OFF VIVA!!!」（新木場スタジオ・コースト）への参加、4月のZepp DiverCity TOKYOでのワンマンライヴは、一回り大きくなった彼女たちに会えるに違いない。

【取材・文：今井智子】