レビュー

SHISHAMO | 2017.08.02

 SHISHAMOの“サマーシングル・シリーズ”(←勝手に命名しました)の最新作。バンドの本格的なブレイクのきっかけを作ったストレートなロックナンバー「君と夏フェス」(2014年)、濃厚なバンドグルーヴを軸にしたサウンドによって奥深い音楽性の一端を示した「熱帯夜」(2015年)、先が見えない恋愛をテーマにした切ないバラードナンバー「夏の恋人」(2016年)。SHISHAMOにとって夏のシングルは“新しいリスナーを獲得する”ことと“幅広い音楽的な個性を提示する”というふたつの側面があったのだが、今回も然り。表題曲の「BYE BYE」はこのバンドのルーツミュージックの濃さ、そして、きわめて優れたポップ感覚を同時に体感できる楽曲に仕上がっている。

「BYE BYE」は松岡彩(Ba)のベースから始まる。ブラックミュージックのエッセンスをたっぷり吸収したベースラインに続くのは、宮崎朝子(Vo・Gt)のシャープなギター・カッティング。さらに吉川美冴貴(Dr)のパーカッシブなドラムが絡み、しなやかで豊潤なアンサンブルへとつながる(ゲストプレイヤーによる奔放なピアノも素晴らしい)。ソウルミュージックのテイストを取り入れた楽曲はここ数年のトレンドでもあるが、「BYE BYE」は流行に沿って作られたわけではなく、宮崎のルーツがさらに色濃く表出したと捉えたほうがいいだろう。もともとモータウンやR&Bに親しんできた宮崎のソングライティング・センスと、常に向上を続けている3人のプレイヤビリティが噛み合っていることこそが、この楽曲の魅力なのだ。

 宮崎が手がける歌詞にも強く惹きつけられる。「BYE BYE」で描かれているのは、分かれてしまった“君”への思いを引きずりながらも、何とか前を向いて進もうとしている“私”の感情の揺れ。この主人公は“空調の効かない”部屋にいるのだが、ふたりの関係性、別れに至るまでの出来事をさりげなく描写することで、ストーリー性のある楽曲に仕上がっている。「君と夏フェス」「熱帯夜」「夏の恋人」とこの曲を順番に聴いてみると、物語がナチュラルにつながっていることがわかるはずだ。

 C/Wの「笑顔のおまじない」は、自分を輝かせようとがんばる女子を主人公にしたポップナンバー。以前から“応援ソングは苦手”という趣旨のコメントをしている宮崎だが、この曲を聴いて、日々の生活をがんばってみようと思う女の子は多いはず。リスナーの気持ちに寄り添うような楽曲が増えてきているのも、SHISHAMOの人気ぶりにつながっているのだと思う。

【文:森 朋之】

tag一覧 シングル 女性ボーカル SHISHAMO

リリース情報

BYE BYE

BYE BYE

発売日: 2017年08月02日

価格: ¥ 926(本体)+税

レーベル: GOOD CREATORS RECORDS

収録曲

1. BYE BYE
2. 笑顔のおまじない

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