フジファブリック、10周年記念ライブを日本武道館で開催!
フジファブリック | 2014.12.10
日本武道館で開催された、フジファブリックの10周年記念ライブ。九段下駅からお堀に沿って坂道を登りながら、ぼんやりと構想を練っていた。この日のライブレポートは、バンドの創始者であり、ヴォーカルであり、当時ほとんどの楽曲を手がけていたシンガーソングライターでもある志村正彦からの卒業、精神的な自立を果たすというテーマで書こうと考えていたのだ。ライブが終わる21時30分までは……。
開演から15分ほど過ぎた18:45分。客電はついたままで、場内には時計が時を刻む音が鳴り始めた。やがて、荘厳な鐘の音とともに暗転。時が巻き戻されていくような逆回転の音源が流され、スクリーンには在りし日の志村のライブ映像が映し出された。客席からは拍手が沸き起こる。その拍手の波を壊さないように、メンバーは静かにステージ上に現れる。スクリーンに<FUJIFABRIC>というバンド名が掲げられたと同時に、再び、客電が点灯。そのままの照明で、1stシングル「桜の季節」を歌い出す。1stアルバム『フジファブリック』の1曲目でもあり、ベスト盤の1曲目でもあり、彼らにとっては、いわば“はじまりのうた”だ。金澤によるおなじみのピアノのフレーズ。ベースの加藤はヴォーカル&ギターの山内の方に体を向けている。その山内は、目をつぶり、口を大きくあけて<♪ならば愛をこめて/手紙をしたためよう>と熱唱。彼がこの曲を歌うのは、初。様々な思いが脳裏をよぎっているのか、2番で見開いた目には涙が浮かんでいるようにも見える。咆哮にも似たロングトーンによって、観客の気持ちは徐々に高められていく。会場からは、さきほどよりも大きな拍手が沸き起こり、その拍手はなかなか止まない。演奏を終えた3人は深々と礼をし、少しだけ間をおいて、2ndシングル「陽炎」へ。この曲は武道館の直前まで行っていた『LIFEツアー』で初めて山内が歌唱。アップテンポのナンバーだが、胸の奥がぎゅっと締め付けられる思いがする。
さらに、山内は「赤黄色の金木犀」を歌う前に、志村への思いを語った。
「これは志村くんのストラトです。志村くんのアンプもあります。特別な場所で一緒にいたかった。一緒にステージに立てたのが嬉しいです。アルバム『LIFE』は、志村くんのことも含め、フジファブリックが、自分がどういう風に生きてきたかを思いながら作ったアルバムです。志村くんが作ったバンドをなぜ、そのまま自分たちが続けているのかも考えるようになって。アルバムを作って、ツアーを回ってて、答えが出たんですよ。なんで続けてるかというと、僕らはフジファブリックが好きなんです。志村くんのことも好きなんですね。それしかねーよって思う。そんなバンドを無くしたくなかったんです、ほんとに」
また、アンコールでは速いパッセージのダンスロック「銀河」もパフォーマンスし初期にリリースした四季4部作を網羅した。「茜色の夕日」では、「今日は志村くんと一緒に曲をやろうと思います」と語り、マイクスタンドに彼のハットをかけ、場内にはバンドのアンサンブルとともに、志村の歌声が響き渡った。感動的なシーンではあったが、彼らは決して過去に縛られてるわけではない。実際、この日の観客は志村在籍時のナンバーに感激しつつも、最新アルバムからの楽曲でより盛り上がりを見せていたし、「若者のすべて」は、ライブから離れた日々の中でも、脳裏では山内のヴォーカルで鳴っている。また、ロックンロールナンバー「シャリー」と「Sugar!!」、ミドルバラード「赤黄色の金木犀」と「ブルー」など、まるでアンサーソングのように、既存曲と最新曲が並べることで、さらなる進化を遂げたバンドとしての現在地をより明確に表していたように思う。
別れと希望をテーマにしたウォーミーなフォークカントリー「卒業」と、過去の選択に思いを馳せる6/8拍子のミドルナンバー「カタチ」を歌い終えたあと、山内は再び、志村について言及した。
「やっぱり感慨深いものがありますね。僕ら、志村くんのことも、普通に話してるんですよ。プラモデルをあげたこととか……。面と向かって、みんなの前で言いたかったのね。彼は今でもメンバーだし、バンドが好きだから、フジファブリックが好きだから続けてるっていうことを早く伝えたかったんですね。告白みたいなツアー……ごめんね、ぐっときちゃったよ。おれ」
この言葉で、彼らが考えていたのは、志村からの卒業ではなかったことを思い知らされた。志村の夭逝から5年。彼らは志村正彦との思い出を抱えたままで次へ進むことを決意しているのだ。
2009年5月にリリースされた4枚目のアルバム『クロニクル』は、作詞作曲、アレンジの全て志村が手がけた作品で、志村曰く「これまでの自分の人生を振り返りながら。いま、思ってる気持ちをそのまま歌うノンフィクションの歌詞」が描かれ、「僕の日常生活のバイオリズムを表現してる1枚」となっていた。そして、2014年9月にリリースされた8枚目のアルバム『LIFE』は、山内が「自分が普段思ってることを普通に吐き出したいと思った」作品で、これは偶然だが、ふたりともインタビュー時に「これができないと死ねない」と語っていた。『CHRONICLE』に呼応するような『LIFE』が完成したことで、フジファブリックは新たに進む道が見えたではないかと思う。
アンコールでは、「みんなに対してのラブソング」だという新曲「はじまりのうた」を初披露した。<♪君を待つ未来を願ってるから/ただそれに応えたいだけなのさ/僕ら待つ未来へ歩き出せたら>という、日常が続く希望を感じさせるフレーズが胸にまっすぐに飛び込んでくる。山内は最後に「また武道館やる! 10年間ほんとにどうもありがとう。これからも、志村くんのことも含め、フジファブリックをよろしくお願い致します」と叫んだ。音楽が好きだから、バンドが好きだから、フジファブリックが好きだから、待っててくれるみんながいるから……。シンプルで、だからこそ強い結論に達した3人の道のりは、この新たな「はじまりのうた」からはじまるのだ。
【取材・文:永堀アツオ】
【撮影:河本悠貴】
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リリース情報
LIFE(初回生産限定盤)[CD+DVD]
2014年09月03日
SMAR
1. リバース
2. Gum
3. LIFE
4. シャリー
5. ブルー
6. F.T.79
7. 祭りのまえ
8. efil
9. WIRED
10. フラッシュダンス
11. robologue
12. バタアシParty Night
13. sing
14. カタチ
15. 卒業
[DVD]
1.フラッシュダンス(MUSIC VIDEO)
2.バタアシParty Night (MUSIC VIDEO)
3.LIFE(MUSIC VIDEO)
4.ブルー(MUSIC VIDEO)
5.特典映像「モグライフ(Documentary)」
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セットリスト
フジファブリック10th anniversary LIVE at 武道館 2014
2014.11.28@日本武道館
- 桜の季節
- 陽炎
- シャリー
- Sugar!!
- 徒然モノクローム
- WIRED
- 地平線を越えて
- efil
- 赤黄色の金木犀
- ブルー
- 茜色の夕日
- 若者のすべて
- 卒業
- カタチ
- 夜明けのBEAT
- バタアシParty Night
- Magic
- 星降る夜になったら
- LIFE
- Sing
- Gum
- はじまりのうた ※配信限定リリース新曲
- 銀河
- STAR
お知らせ
FUJIFABRIC LIVE TOUR2015
2015/03/27(金)福井・福井響のホール
2015/03/28(土)富山・富山 MAIRO
2015/04/02(木)新潟・新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
2015/04/03(金)松本・松本 Sound Hall a.C
2015/04/10(金)静岡・浜松 窓枠
2015/04/12(日)岐阜・岐阜 CLUB ROOTS
2015/04/22(水)東京・EX THEATER ROPPONGI
2015/05/30(土)岩手・盛岡 CLUB CHANGE WAVE
2015/06/01(月)仙台・仙台 Rensa
2015/06/05(金)北海道・札幌 PENNY LANE24
2015/06/06(土)北海道・帯広 MEGA STONE
2015/06/15(月)岡山・岡山 CRAZYMAMA KINGDOM
2015/06/17(水)高知・高知 X-pt.
2015/06/18(木)広島・広島 CLUB QUATTRO
2015/06/20(土)福岡・福岡 DRUM LOGOS
2015/06/21(日)鹿児島・鹿児島 CAPARVO HALL
2015/06/27(土)沖縄・桜坂セントラル
フジフレンドパーク2015
2015/07/01(水)東京・Zepp DiverCity Tokyo
2015/07/02(木)東京・Zepp DiverCity Tokyo
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。