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快進撃を予測させる、Mrs. GREEN APPLE 初のワンマンライブ@WWW

Mrs. GREEN APPLE | 2015.10.19

 5人が一丸となってMrs. GREEN APPLEというバンドを、その存在意義を、観る者に問いかけ、また自分たち自身に対しても挑みかかるかのごとき気概に満ちた、実に攻め込んだステージだった。この7月に3rdミニアルバム『Variety』でメジャーデビューを果たして3ヵ月足らずのうちに迎えた初ワンマンライヴ“Mrs.ONEMAN LIVE~武装と創と造~”。駆け上がる彼らのスピード感には目をみはるばかりだが、それも当然とばかりにチケットはソールドアウト、会場に入りきれなかったファンのためにとスペシャアプリおよび動画配信サイト・SPACE SHOWER ON DEMANDにおいてライヴの模様が生中継されるという。場内の空気には詰めかけた観客の人数のぶんだけ、いや、それを余裕で上回るくらいの濃厚な期待がいっぱいに充満していて、まさしく今、Mrs. GREEN APPLEに集まる注目度の高さを裏付けていた。

 予定の開演時刻から5分近くが過ぎたとき、不意に客電が落ちた。大音量のSEの中、颯爽とステージに現われる5人。凛とした登場感に見とれる隙も与えず、朗々と「WaLL FloWeR」をほとばしらせる。5つの音が絡まり合い、絶妙に抜き差ししながらアンサンブルの太い奔流となりゆく様がリアルに見えるようだ。堂に入った見事なオープニングから大森元貴(Vo.& G.)の「よろしく!」を合図に「我逢人」へとなだれ込むや、巻き起こるクラップの嵐が会場を揺らす。ステージと客席とががっちり噛み合ったこの一体感! 空気の振動がビリビリとダイレクトに肌に伝わってくるのがすごい。オーディエンスが声を揃えるサビの箇所では「来い、来い」と身振りで誘いかけ、大合唱がばっちり決まれば「完璧!」と相好を崩す大森の隣で、モニタースピーカーの上に立ち、アグレッシヴに音を飛ばす若井滉斗(G.)。髙野清宗(B.)と向かい合いつつ弾いては一緒にジャンプ、それに連動するようにふたりを見ていないはずの藤澤涼架(Key.)も同じタイミングで大きく跳ねる、そんな目にも気持ちいい一場面も。髪が乱れるのもお構いなし、満面の笑顔でダイナミックにプレイする紅一点、山中綾華(Dr.)が客席をさらにヒートアップさせる。意気込みは溢れども、初ワンマンのプレッシャーなど微塵も感じさせないステージ。大森がMCで語ったところによれば「むちゃむちゃ緊張してる」らしいが、観ているこちらは舌を巻かずにいられなかった。

 白眉のひとつは中盤戦。“♪大丈夫 この歌はあなたを救いにきたヒーローさ”と軽快に聴き手の背中を押してくれる「ノニサクウタ」、訥々とした想いが沁みる「春愁」と立て続けにアコースティックナンバーを演奏、それぞれに曲の世界観を反映させただろう映像が用いられ、初ワンマンのステージを演出する。聴覚と視覚のコラボレーションが新しい作品をオーディエンスの眼前に出現させた、と言っては大仰だろうか。だが、たしかにこれはMrs. GREEN APPLEの新たな提示だと思った。ワンマンライヴだからこその試みに次の一歩を踏みだそうとする彼らの果敢を知る。

 「元気ですか、みんな」と言おうとして盛大に噛む大森。それをきっかけに藤澤との掛け合いで再びの緊張トークがしばし繰り広げられ、客席を沸かせる。

「ホント俺、緊張してるよね?」
「緊張してるね。なんか“元気ですか”も若干自分に言い聞かせてるもん」

 そうした中で初披露された新曲「鯨の唄」がまた圧巻だった。1ヵ月前くらいに作ったという曰く「本当に本当の新曲」。「上手くやれるかもわからなくて、これに緊張してるのかもわからないぐらい大きな曲なので、全部受け止めなくていいから聴いてください」と前置きし、ノドを大きく開いて歌い上げる。楽曲のスケール感と相俟って幅広い声域を求められるのか、高音部は少々歌いにくそうだが、それでも出せるすべてを出し切るべく声を張る大森。バンドでの演奏もこの曲に宿るエネルギーを表現し切るにはまだ浅いように感じられたが、彼らの伸びしろを思えば途轍もない曲にきっと育つと確信できた。

 緊張で眠れないかと思いきや「予定してたよりも爆睡してました」と悪びれない髙野に、今日のステージに向けて「お風呂でワンマンライヴを先にもうやっちゃった。今は俺の中で2回目のワンマンだもん」と語る若井。ゆるゆるとしたやり取りに山中が「さて!」と斬り込んで、「みなさん、ここから後半戦に突入するわけですが、盛り上がる準備はできてますか! 盛り上がれますか! かっ飛ばしていきましょう!」と号令一発、ワン、ツー、スリー、フォー! と力強くカウントを刻む。ついさっきまでの緩い空気をあっさりと塗り替えたのは「愛情と矛先」の朗々としてタフなグルーヴ。アルバムには未収録ながらライヴではすっかり定番のMrs. GREEN APPLEらしいアッパーチューンだ。

 「ナニヲナニヲ」の性急な疾走感が客席を熱狂に牽引したあとは、大森が「みなさん、お手を拝借できますか。わかってますよね?」と客席に呼びかける。「“武装と創と造で”、せーの!」という大森の合図に間髪入れず「“登場”!」と大声で応えるオーディエンス。素晴らしきかな、一体感。次の瞬間、「StaRt」が勢いよくほとばしった。この曲の歌詞から冠されたであろう今回のライヴタイトル“武装と創と造”、大森が合い言葉のように口にした“お手を拝借”も、全員で叫んだ“登場”もそう。今日という日に懸ける5人の想いを丸ごと音楽に詰め込んで豪腕でこちらに投げ届けんとする気迫が、熱が、諧謔をはらんだポップなサウンドにもしっかりと宿って刺さる。

「自分を削ってでも、いろんな人を幸せにしたい。自分を削らないで人の心に何かを与えるって絶対無理だと思うんです。だから強くなるし、いろんなものを見せていきたいし、強くなったねって言われたいから、それを今後の目標に音楽と向き合っていきたいと思います」

 本編ラストを前に、MCの中で大森はそう言った。時として音楽は僕をとても苦しくさせる、けれどそこから逃げちゃいけないし、だからこそこうしたすごく幸せな瞬間があるのだ、とも。「だから、ちょっとの間、見ててやってください。飽きちゃったらそれでいいからさ。聴いても何も思わなくなったら、それで全然いい。何か響いてるうちはちょっと見ててやってください」と告げて奏でられたのは「CONFLICT」だった。“強くなりたい”“次のステージに行きたい”と強く願って書かれた、大森にとってはとても苦しくなる曲。

 希望は苦しい。掴みたいからこそ苦しい。掴めなくて、寂しくて、虚しくて、悲しくて、だけど諦められない。諦めたくない。今日、このライヴの間中、通奏低音のようにMrs. GREEN APPLEの音楽に流れ続けていたもの、ここにいる全員を心を衝き震わせてやまなかったものの正体をこの曲に垣間見た気がした。

 アンコールではアニメ『遊☆戯☆王ARC‐V』のエンディングテーマに起用された「Speaking」をこれまた初披露。にも関わらず腕を振り上げたり飛び跳ねたり、それぞれの楽しみ方で盛り上がるオーディエンスが頼もしい。「ワンマンが終わったら僕らはパワーアップするので。みんなのMrs. GREEN APPLE像みたいなのが変わっていくんじゃないかな」と予言めいた意味深な言葉を残し、「本当に本当に本当に今日はありがとうございました!」と最大級の感謝とともにラストは「パブリック」で大団円。12月には早くも次のワンマンライヴが決定しているMrs. GREEN APPLE。しかも今度は東名阪のワンマンツアーとなる。彼らの快進撃はまだ始まったばかりだ。

【取材・文:本間夕子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル Mrs. GREEN APPLE

リリース情報

Mrs. GREEN APPLE「Speaking」(初回盤)[CD+DVD]

Mrs. GREEN APPLE「Speaking」(初回盤)[CD+DVD]

2015年12月16日

ユニバーサル ミュージック

[CD]
1.Speaking
2. 恋と吟(うた)
3. えほん

[DVD]
2015.9.26にShibuya WWWで開催されたミセス初のワンマンライブ、Mrs. GREEN APPLE presents「Mrs. ONEMAN LIVE ~武装と創と造~」からライブ映像を収録

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お知らせ

■ライブ情報

Mrs. ONEMAN TOUR~東と名と阪~
2015/12/16(水) 大阪 Music Club JANUS
2015/12/17(木) 名古屋 ell. fits all
2015/12/24(木) 東京 ebisu LIQUIDROOM

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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