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感覚ピエロ、熱く狂気に満ちた渋谷クアトロで800人が大暴れ!!

感覚ピエロ | 2015.11.18

 感覚ピエロとはどんなバンドか? 誰かに聞かれたときの答えとして「O・P・P・A・I 」というクレイジーな曲が有名で、ライブが最高に楽しいんだよ、という説明が一般的だと思う。そのイメージは、すでに早耳のロックファンの間には広く浸透しているし、47都道府県ツアーの合間にバンドが出演したミナホやRUSH BALLは大盛況だった。さらに今回の東名阪ワンマンも早々にソールドアウトと、感覚ピエロというバンドの注目度はいま急速に高まっている。だが、感覚ピエロとはどんなバンドか? それに正しく答えるのはとても難しくもあるのだ。面白いけど、それだけじゃない。バンドのオフィシャルHPのプロフィールには、「この確信犯的犯行がJ-ROCKを嘲笑う」という一文もあるが、47都道府県ツアーのファイナルとして、感覚ピエロが渋谷クアトロで見せたものは、まさに聴き手を感覚を弄ぶような狂気そのものだった。全県ツアーを経て、その一筋縄ではいかない世界観にさらに磨きをかけてきた感覚ピエロ。800人が大暴れした熱い一夜をレポートする。

 「渋谷ー!一緒に遊んでいけますかー!?」と、横山直弘(Vo)の熱い叫びとともに、一瞬にしてフロアから無数の手があがった「A-Han!!」からライブはスタートした。4つ打ちのリズムにのせて、《4つ打ち待って頂戴~なんだかもううんざりだ》と歌う、どこまでも捻くれたナンバーが、大きな歓声をもって迎えられた。長身でどこかアンダーグラウンドな佇まいの秋月琢登(G)によるテクニカルなプレイや、低く腰を落としてヘドバンをする滝口大樹 (B)の激しいベースライン、メロディを口ずさみながら叩く西尾健太(Dr)のパワフルなドラムと、まさにライブ三昧だったこの半年の日々を物語るように、3人の演奏は鋭く研ぎ澄まされている。とびきりゴリゴリでラウドな演奏を聴かせた「メリーさん」では、《「はい、3.2.1!ほら、イっちゃっていいよ!」》とファルセットを交えながら、まるで挑発するように艶やかに歌う横山は、とてもエロくて、かっこいい。

 「渋谷のあんたたちに会いたかったぜー!ただいまー!」と、終始テンションの高い煽りで会場を盛り上げた秋月のMCもそこそこに、10月発売のミニアルバムから「楽園」が披露された。複雑なリズムパターンのなかで、《生きていることに意味があるか?》と投げかけるメッセージはシリアスだ。感覚ピエロは、この全県ツアー中に2枚のミニアルバム『あなたの正義、創ります。』と『あなたの正義、壊します。』を制作していて(ツアーをまわるだけでも大変なのに、これは驚異)、今回はそのレコ発ライブでもあるのだが、そこには感覚ピエロの新機軸と思わせる楽曲が多く収録されている。この日もそのなかから「曖-me-昧i」や「サヨナラ bye-bye」などが披露されたが、なかでも、真っ赤な照明のなかで繰り広げた「Freedom」は素晴しかった。ダークで壮大なハードコアナンバーに、横山の悲痛な叫び声が重なり、言い様のない昂揚感を生み出していく。そこから、前作『Break』に収録されていた名バラード「水槽の中で眠る君よ」へ、美しく繋いでいく流れは圧巻だった。

 そこから「自分を変えようぜ!」と言ってフロアを鼓舞にするように歌った「CHANGE MY LIFE」、大切な人へ届いてほしいという想いを込めて作った初期のラブソング「君にしか聞こえない」へと、ライブは最高にエモーショナルなムードに支配されていくが、続く横山のMCが傑作だった。「さっきまではかっこつけてエモーショナルなことも言ったけど、あなたたちが知ってる感覚ピエロはおバカさんじゃないですかー!?」と。もちろん、これに続く1曲は「O・P・P・A・I」だ。曲の途中で、「およげ!たいやきくん」の替え歌をして、ない乳 ない乳 寄せてもペッタンコー♪と繰り出す、おかしな展開に、フロアは大爆笑。直前のかっこよさも、いまのおバカさんも、全てを呑みこんで感覚ピエロという世界観にできてしまう、今回の全県ツアーでバンドが得た大きな成果はそれだと思った。

 最後に横山が長い長いMCで語りかけた。それは、今回のツアー中に地元の北海道で亡くなったおじさんの仏前に手を合わせに行ったときのエピソードだった。久しぶりに会ったおばさんに「売れるといいね」と言われ、バンドの現実がまだまだだと思い知ったこと。その発言に必死でフォローする、かつて音楽の道に進むことを反対していた母の姿。その母が、翌日のライブを見て誰よりも盛りあがっていたこと。楽屋で「あんた、良かったよ」と泣いてくれたこと。それらを滔々と語るなかで、最後に、「いままではMステに出たり、有名な雑誌に載るようになって、みんなが納得する売れ方をしないといけないと思ったけど、違うなと思った。自分の大切な人を泣くまで感動させることが、こんなにうれしいことだって初めて知った。だから、俺は、俺たちの音楽を聴きにきてくれた一人ひとりを、ちゃんと幸せにできるようになりたい」と言った。そこから「自分の信じたものを全うしていきたい」という想いを込めて作ったという「拝啓、いつかの君へ」へ。疾走感のあるバンドサウンドにのせて《「あんたの正義は一体何だ?」》と、過去の自分へと問いかけるメッセージをありったけの力で歌い切りると、フロアは熱い感動に包まれた。

 「2015年はライブだけで終わってしまうんだけど、日本全国の素敵なあなたたちに会えた、とっても良い1年だったと思います」と、アンコールで晴れやかな表情で語った横山。しかし、来る12月25日だけは恐れてると明かして、「誰か付き合ってくれよー!お前らにはXmasがあるけど、俺にはないんだ」と、ラストの「リア充大爆発」へとなだれ込んだ。フロアを赤組と青組にわけて巻き起こす盛大なコール&レスポンス。半年にわたり全国のライブハウスで鍛え上げてきたライブ力を存分に発揮する、さすがのラストシーンだった。

 感覚ピエロとは、すでに飽和状態と言われる4つ打ちロックシーンのなかで、それでも爪痕を残すべく生まれた究極の異端児だ。人の気を引くために望んでピエロにもなるが、どこかの誰かを救うためにはヒーローにもなれる。彼らの確信犯的犯行はまだまだ続く。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 感覚ピエロ

リリース情報

Break [CD+DVD]

Break [CD+DVD]

2015年06月09日

JIJI RECORDS

[CD]
1.メリーさん
2.O・P・P・A・I
3.Japanese-Pop-Music
4.D.B
5.A-Han!!
6.水槽の中で眠る君よ

[DVD]
1.LET IT DIE ?Wake up?(Music Video)

お知らせ

■ライブ情報

OTOEMON FESTA EXTRA 2015
2015/11/25(水)大阪 MUSE

タワーレコード神戸店 presents「神戸心中」supported by onion night!
2015/11/28(土)兵庫 神戸 SLOPE

HOTSTUFF presents Ruby Tuesday 8 supported by TUMBLING DICE
2015/12/01(火)東京 新宿 LOFT

見放題 × 下北沢にて TOUR2015 ~あのクリームシチューをもう一度~
2015/12/06(日)沖縄 那覇 output

ジラフポット “Get Myself Back Tour 2015-16”
2015/12/16(水)香川 高松 DIME
2015/12/18(木)岡山 CRAZY MAMA 2nd Room

バックドロップシンデレラ×打首獄門同好会 Wレコ発ツアー【収穫祭でウンザウンザを踊る】
2015/12/19(土)静岡 UMBER

MERRY ROCK PARADE
2015/12/20(日)ポートメッセなごや 1号、2号、3号館

ジャイアンナイト CLUB QUATTRO TOUR 2016「ONEとONE」
2016/01/08(金)広島 CLUB QUATTRO

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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