SHISHAMO、痛快に、不敵に駆け巡った秋のワンマンツアー終了!
SHISHAMO | 2015.12.10
筆者がSHISHAMOのライブを観たのは、昨年(2015年)3月に赤坂BLITZで開催された「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2014」のファイナル公演以来、2回目だ。だから、彼女たちの多くを知っているわけではないが、この日のライブを観て、当初からもっていた、いい曲を書くバンドという印象に加えて、いいライブをするバンドになっていることがよくわかった。昨年9月に新ベーシストの松岡彩が加入し、現体制になって1年とちょっと。3人が音楽を軸にした濃密な時間を過ごしてきたことが、アンサンブルからも伝わってきた。そういえば、松岡の加入の経緯が気になって調べると、昨夏に「RUSH BALL」でアルバイトをしていた松岡に宮崎が声をかけたというエピソードが出てきた。痛快なバンドだなと思った。いや、痛快さだけではない、SHISHAMOには底知れぬ不敵さがある。そこが、すごくいい。この日のライブも1曲目に未発表曲をもってくるという心臓の強さ。この曲がまた、よかった。前のめりに転がっていくパンクテイストのバンドサウンドと、揺るぎないグッドメロディ。
それにしても、宮崎朝子はソングライターとしても、ボーカリストとしても、人たらし的な魅力に満ちている。で、そのことをおそらく本人が誰よりもよく理解している。もっと言えば、女性として自分の武器は何かということも見極めている人だと思う。SHISHAMOの楽曲で描かれているストーリーは、37歳のおっさんである僕からしてみたら、とてつもなく眩しい。しかし、宮崎朝子のソングライティングには、つねに切なく心地よい動きを見せる絶対的に抗いがたいメロディ・センスと、豊潤な想像力に満ちた天性の作家性があり、だからこそ、彼女が描く物語は限定されたリアリティを超越したファンタジーとなって、あらゆるリスナーをそこに立ち止まらせる。そして、宮崎の歌にはある側面において成熟した色気と残酷さを感じさせる。一人称が“僕”の曲もあるが、それらは逆説的に宮崎自身の“私”という本能的な欲求をあらわにしている。その歌のあり方はどこかスピッツの草野マサムネに通じるものがある――と、前から思っていたがそれが確信に変わった。こういうフロントマンがいるバンドは、強い。宮崎はMCでも絶妙に毒舌を使い分け、それがまったくイヤな感じにならない。最前列には、先生に内緒で修学旅行を抜けだしてライブに来たという女子高生のお客さんがいたが、そうやってちょっと大人が決めたルールを破ってみたくなるような、”青春という季節の機微”を鮮やかに映し出す表現力もSHISHAMOの楽曲にはあるのだろう。
中盤に披露された「熱帯夜」はニューソウルのフィーリングを感じさせる、SHISHAMOにとってはずいぶんと大人びた楽曲で、そこに帯びた湿度の高い艶っぽさをライブの場でもしっかり表現できていたことは特筆したい。さらに、Zepp Tokyoの規模をまったく大きく感じさせなかったことも。MCで宮崎はこう言った。
「不思議な気持ちです。みなさんがここに連れてきてくれたという思いと、もっともっと大きい場所に行けるんじゃないかという思いもあります。これからもよろしくお願いします」
アンコールのオーラスは、ニューシングル「君とゲレンデ」。SHISHAMO特有のポップネスとドラマ性で冬を彩るこの楽曲で、バンドの存在はさらに広く世間に浸透していくだろう。年が明ければ、1月4日に日本武道館公演が待っている。今のSHISHAMOであれば、どこまでもナチュラルな様相で武道館を自分たちの場所にできるのではないか。いや、できる。
【取材・文:三宅正一】
お知らせ
SHISHAMO NO BUDOKAN!!!
2016/01/04(月)日本武道館
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