清木場俊介、あらためて歌一本の生活になることを宣言。『FACT』全国ツアー東京公演!
清木場俊介 | 2015.12.25
開演前から、まるで野球の応援のような“かっとばせー”というあの節回しで、会場全体からの“きーよきばー”というコールが鳴り止まない。なんとも微笑ましい、熱狂というよりは親密であたたかいムードの中、総勢8名のバンドが姿を現し、重低音をたっぷり効かせた分厚いサウンドが轟くと、空気が一変した。革パンにロングコート、全身黒で決めた清木場俊介がステージに駆け込み、激しいアクションを交えて「Pride」を歌い出す。湧き上がる大歓声。「今までで一番リラックスして作ることができた」と自ら振り返るニューアルバム『FACT』を引っ提げ、全国10か所を巡るツアーのここは9か所目、東京国際フォーラム ホールA、2Daysの初日。ツアーも終盤ということでバンドの一体感も文句なし、歌も絶好調。のっけからいいライブになるフラグは立ちまくりだ。
MCは少なめで、序盤はアップテンポの曲を連ねてガンガン飛ばす。新作からはもちろん、「Fighting Man」や「Lenny down」など新旧交えたロック・チューンが、分厚いバンドサウンドに乗って豊かに響く。いかしたサックスのソロが聴ける「REAL」や、三連符のロックン・ソウル・バラード「Shining」などは、コーラス隊を加えた大編成でないと再現できなかっただろう。テンポは次第にスローになり、新作の中でもとびきりメロウな「空に月と貴方と私」を、立ちっぱなしの観客は静かに聴き入っている。
「ここからはバラードをゆっくり聴いてもらおうかな。ゆったり座って聴いてください」
まぁそんなに緊張しないで、といったくだけた調子で、清木場俊介が観客に呼びかける。ふっと空気が和み、また雰囲気が変わった。サックスやエレクトリック・ピアノの洗練された音色がアダルトなムードをかもし出す「Memory」や、ドラマチックなピアノ・バラード「幸せな日々を君と」など、苦味と痛みをたたえた切ないラブソングを3曲。派手にロックする清木場俊介もいいが、切々と恋の痛みを歌う清木場俊介も同じくらい、いい。「今日のバラードは恥ずかしいね」と照れながら、軽くステップを踏む。飾らない仕草と言葉に、励ますようにあたたかい声援が飛ぶ。
「後半戦、行きます。もうやるしかない。盛り上がって行こう!」
落ち着いた気分を強引にひっくり返すと、10年間ずっと歌い続けて来た大切な曲「さよなら愛しい人よ…」を皮切りに、ゴージャスなロック・ショーの再開だ。壮観なタオル回し大会と化した「JET」では、マイクを客席に向けてサビを丸々歌わせた。「MY LIFE」まで明るい曲調が続き、一転して「夜を塗り潰して」からはマイナーコードの激しいトーンへとギアを入れ替え、「JACKROSE」「Truth」とぐんぐん加速していく。ハードなロック度満点のこの流れは圧巻だ。もっと!まだまだ行こうぜ!と煽りまくる言葉に応え、会場内の温度がじりじりと上昇していくのがわかる。重厚な「Cry」を経て、力強いミドルテンポのエイトビート、清木場王道ロック・チューンの「ONE」へ。貫いて、生きてゆけ。魂こめた歌の力に打たれて、ノリのいい曲にも関わらず観客はみな身じろぎもせずに聴いている。
「この曲が、40代、50代になって、自分に還ってくる曲になればいいと思います」
そう前置きして歌った本編ラストソングは「人生」だった。長く果てしない、人生終わりなど無い。35歳の清木場俊介が歌う、未来への約束の歌。ステージの灯りが消えても、しばらく会場が静まり返っていたのは、きっとこの歌の余韻を噛み締めていたせいだろう。
アンコール。これやらないと駄目だよね、と言って歌いだした“これ”とは、やはり10年間歌い続けて来た大切な曲「唄い人」だ。今日初めて、エレクトリック・ギターを弾きながら歌う清木場俊介。僕は僕の、君は君の。サビの歌詞をコール&レスポンスさせる恒例のコーナーは、男の野太い声、女の可憐な声、そしてチビッコの可愛い声があちこちから聴こえ、清木場俊介を支える客層の幅広さがよくわかる。そして最後の曲、イントロだけで拍手が湧き上がる。2008年にシングル・リリースされた「今。」もまた、清木場俊介とファンの間に結ばれた絆を象徴する純なバラードだ。メロウなサックスのソロが胸に沁みる。激しいロック・チューンから静謐なバラードまで、清木場俊介の等身大をさらけ出した全22曲のラストにふさわしい、万感こめた歌だった。
2015年は事務所を移籍して、あらためて歌一本の生活になることを宣言した。1月11日には、36歳になる。つらい時期もあったけれど、30半ばにして、生きてるのも悪くないなと思うようになったよと、吹っ切れたような笑顔で語って、清木場俊介はステージを降りた。2016年はたくさんライブをやるという。終わりなき唄い屋の旅はまだまだ続く。
【取材・文:宮本英夫】
リリース情報
FACT(初回限定盤)[CD+DVD]
2015年09月16日
ビクターエンタテインメント
2.Pride
3.Sunrise
4.Shining
5.君の幸せ
6.空に月と貴方と私
7.Memory
8.MY LIFE
9.夜を塗り潰して
10. Truth
11. Cry
12.人生
13.軌跡
※初回限定盤には「Shining」「軌跡」「蜉蝣 ~カゲロウ」のミュージックビデオ付属
お知らせ
KIYOKIBA SHUNSUKE PREMIUM NIGHT "ROCK FOR WOMAN"
2016/02/13(土)堂島リバーフォーラム (大阪)
2016/02/14(日)EX THEATER ROPPONGI (東京)
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。