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レキシ、360度見渡す限りの稲穂が揺らめいた両国国技館!

レキシ | 2016.01.25

 紫式部、織田信長、明智光秀、大塩平八郎、ザビエル……時空を越えて、敵、味方を越えて、歴史上のレジェンド達の幟が立ち並ぶ。場内に向かう1万人以上の観客の手にはグッズの稲穂(INAHO)が握られている。大相撲の聖地・両国国技館で、レキシのツアー「IKEMAX THEATER」の東京公演が開催されるのだ。チケットは即日完売。1階中央のステージを、桝席、2階席が360度で取り囲む。

 ほら貝を合図に、東の花道から現れたのは大名駕籠! それが4人がかりでステージに上げられ、中からキラキラ袴を着たレキシが飛び出した。
「国技館――ッ!! 行くよ――ッ!!」
 巨大ミラー・ボールが高速で回り、1万人の手拍子で始まった「姫君Shake!」。自由を求めてちょいちょい城を脱走する姫君の背中を、70年代西海岸ロックが後押しする。レキシは「父の話を聞いてますから! ご機嫌ななめですから!」と金八風にシャウトして、袴姿でピョンピョン飛び跳ねた。
「やばい。4方向、やばいわ。普段の4倍動かないといけない」
 開始早々、国技館の恐ろしさに気づいたレキシ。それでも客席をピン・ポイントで指差し「見つめておるぞよ。おぬしを見つめておるぞよ!」とボケることだけは忘れない。

 ライヴ中盤、用意されたのは豪華な紫の単衣(ひとえ)。スタッフに袖を通してもらう時、「今夜は遅くなる」とお父さんコントが飛び出して場内爆笑。そうして始まった初シングル「SHIKIBU」はかの紫式部がモチーフに。♪しきしきぶんぶん~のコーラスに合わせて、レキシが回れば、紫の単衣がヒラヒラと舞う(ジェイムズ・ブラウンみたい)。紫式部の和歌「めぐりあひて~夜半の月かな~」を歌えば、猛々しい国技館が雅な空間へと変貌する。
 かと思えば、本編最後の「きらきら武士」では、国技館がダンス・フロアに変わった。回るミラー・ボール。ディスコのビートに、「♪武士武士武士武士!!」のコール&レスポンスに、観客は踊り、国技館がグラグラと揺れる。扇子を放り投げたレキシは、武士らしく、荒々しく、超絶キーボード・ソロを弾きまくる。

 レキシ本人も含めて、バンド・メンバーは一流揃い。7人が繰り出すファンクやロックやポップスに身を委ねていると、不思議な感覚に襲われる。ここはどこ? 今は本当に21世紀? そして、「ねぇ、キミの話を聞かせてよ」と藤原道長に促され作家として覚醒する紫式部や、馬に乗った武士に恋する戦国時代の女子が、現代に生きているように思えてくるのだ。

 極めつけはアンコールの「狩りから稲作へ」。切ないピアノや、足音のように迫るバスドラが、歴史の大転換を告げる。放浪の狩りか、定住の稲作か。葛藤の末、決断に踏み切らせたのは、たったひとつのこんな想いだった。
「♪あなたが好き――!!!!」
 レキシがそう叫んで、ぐるっと一回転して手を差し伸ばす。「わ――ッ!!!!」という歓声と同時に、それぞれ手にした稲穂が揺れる。
「やっとですよ! みんなが無駄に買った稲穂が役立った。アホみたいに稲穂が売れて、今回用意した1万本の稲穂ももうなくなりそうです。バカじゃないの?(場内大爆笑)」
 そう笑うレキシも、観客も、こんな景色が見たかったのかもしれない。360度、見渡す限りの稲穂。愛する人と共に暮らすために選んだ稲作中心の社会。その瞬間、国技館は何千年前もの日本へと一気に遡った。

 全編2時間半。ギャグ満載で、脱線しまくるレキシのライヴが何だか感動的なのは、人類がそれぞれの時代で一生懸命に生きていたとわかるから。稲穂を手に両国駅へと向かう男性が「あぁ、いい年末になりそうだなぁ」と笑顔で口にする。2015年12月16日、両国国技館でひとつの歴史が刻まれた。そして2016年、人類の歴史がまた始まる。

【取材・文:柳村睦子】
【撮影:田中聖太郎】

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リリース情報

SHIKIBU(初回完全生産限定盤)[CD+グッズ+アナザージャケット]

SHIKIBU(初回完全生産限定盤)[CD+グッズ+アナザージャケット]

2015年11月25日

ビクターエンタテインメント

[CD]
1. SHIKIBU feat. 阿波の踊り子 (チャットモンチー)
2. Takeda’ 2 feat. ニセレキシ (U-zhaan)
3. キャッツあつめ ~CATS LIVE SELECTION~
*『レキシ 限定オフィシャル風呂敷「あ・ふろしき・ぶ」付スペシャルパッケージ』。
*ランダムジャケット3種類のうち1種類を封入

お知らせ

■ライブ情報

ビクターロック祭り2016
2016/02/14(日)幕張メッセ国際展示場

チャットモンチーの徳島こなそんそんフェス2016~みな、おいでなしてよ!~
2016/02/27(土)アスティとくしま

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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