テスラは泣かない。『永遠について語るとき、私たちの語ること Release Tour』東京公演レポ
テスラは泣かない。 | 2017.10.03
帰る、変える、返る、孵る、換える、そして還る…。
この日のテスラは泣かない。のライブを観て、場面場面で浮かんできたのは、そんな幾種類もの【かえる】という文字であった。
テスラは泣かない。のニューアルバム『永遠について語るとき、私たちの語ること』を提げてのツアーが9月16日の代官山UNITにて幕を閉じた。
8月24日より対バンライブを含め行われた今回のツアー。彼らの故郷・鹿児島と、今や第二の故郷と言っても過言ではない現在の活動拠点である、この東京はワンマン形式で行われた。
ベーシスト吉牟田直和の1年間の学業に専念する為の不在以降、2年ぶりの東京ワンマンでもあった、この日。3年ぶり3度目となる演り馴染みのある同会場にて、元来の彼らが、どのような帰巣を魅せてくれるのか?それも楽しみに会場へと足を運んだ。
SEが流れる中、<お帰りなさい>感溢れる会場からの温かいクラップに迎えられ、4人が1人づつステージに現われる。各立ち位置につき、呼吸を整えると、まずはガツンと四味一体のデモンストレーション音が会場に放たれる。「素晴らしい夜にしましょう!!」と村上学(Vo.&G.)。エレガントさとアップリフティングさを併せ持ったモントゥーノな飯野桃子(Pf.&Cho.)による鍵盤のイントロから、ニューアルバム収録の「名もなきアクション」に入る。「アクションを起こす準備は万全か?」と問われるように迫り来る同曲。飯野の柔らかなコーラスが楽曲に作品以上のふくよかさを寄与していく。まさに<孵る>だ。「東京、楽しむ準備は出来てますか!」と村上。加速度をさらに上げるが如く「Cry Cry Cry」に入ると、サビで現れるストレートさに会場がライドオン。ガツンとした一体感が作り出されていく。続く「ミスターサンライズ」では、ベース落ちやギターソロ等各人の魅せ所も配置。ファットなベースから始まった「cold girl lost fiction」では、作品とは違ったアーバンさや冷ややかな面が楽しめた。より夜的な部分が強調され、反面きちんと熱さやマグマな部分も放射。これらはまさに<変える>と言えた。
「おかげさまで、また4人でここに戻ってこれました!!」と嬉しそうな村上。続く「今日は最上級の感謝を音と歌で伝えます!」との宣言も頼もしかった。
序盤では、<返る>の文字が何度も浮かんだ。ニューアルバム中、「最も永遠について語ったナンバー」(村上)と称された「アテネ」では、雄々しいコーラスが会場中から返り、サビの至福感が会場を包む。吉牟田のベースがグイグイと楽曲を引っ張っていっていった「パルモア」では、ループ感のある飯野のミニマルなピアノが粗野な楽曲にエレガントさを加えていく。ドラムの實吉祐一が16のハイハットでつなぎ、そこにファンキーでタメのある吉牟田のベースラインが絡む。「TO GEN KYO」の出現だ。作品以上の神秘性と幻想性を醸し出してくれた同曲。ここで浮かんだのは<換える>の文字。楽曲の艶めかしさと飯野の伸びやかな深いコーラスも印象深い。
中盤ではちょっとした孤独感が会場を覆っていった。「オープンな世の中だけど、たまには一人の世界があってもいいんじゃないか」(村上)の語り掛けから入った「my world is not yours」ではインナーワールドが広がり、探してるうち出会ったポツンとした街の中の自分に出会わせてくれた「私とあなたとこの町のグラビティ」。これまで以上に荒々しく響いた「国境はなかった」では、♪愛してくれよ♪のフレーズがより寂しく響いた。
折り返し地点では、会場も巻き込んだナンバーが連射された。“この日のMCで終始いじられていた(在籍11年でようやく大学を無事卒業できた件)、吉牟田の今の気持ちはこれだろう!!”と放った「Oh my God!」では、一体感が会場を一つにし、キャッチ―な決めフレーズのコール&レスポンスから入った「フール フール フール」では、前のめりな實吉のビートが場内を牽引していく。また、緊張感と緊縛感が会場に興奮を呼び起こした「梵」では一変し、彼らの青白い一面が伺えた。
後半は盛り上がり曲のオンパレードだった。
「想像以上の景色を味わうことができた。こんな夜と出会う為にここまで演ってきたが、まだまだこの先も忘れられない瞬間を一緒に作って行きたい!」(村上)と「アンダーソン」に入ると、“待ってました!!”の期待感とそれを凌駕するレスポンスが会場を波うたせる。そのまま興奮度を更に増幅するように飛び込んだ「Lie to myself」では、この日最大のダイナミズムとカタルシスが全身を包んだ。そして、「昔は自分たちにとって東京は戦う場所だったけど、今やすっかり温かく迎えてもらえ、帰ってくるべき場所って感じが凄くします。帰る場所があるということは凄く幸せなことで。もし、みなさんが帰る場所がないのであれば、自分たちの音楽やライブが、そんな場所になれればと思っています。またみんなと一緒に大空を飛び回り、再び、ここに戻ってくることを誓います!」との村上の言葉のあと、村上、飯野による男女混声の美しいハーモニーから本編ラストの「Like a swallow」へ。ぐんぐんと美しい景色を広がらせていった同曲。まさに<還る>を味わった瞬間だ。この安堵感と湧き上がってくる生命力はなんだろう…。みんなが帰巣するべき各々の場所を思い浮かべていった。
アンコールでは、11月26日より東名阪にて、鍵盤ロックバンドであるアイデンティティと自負に立ち戻るべく、あえて鍵盤楽器を擁したアーティストと対バン形式で行う自主企画の開催が告げられ、場内を沸かせた。
「僕らにはこの4人でやっていく上での根っこみたいなものがあって。しかしこれは、4人だけで守れてきたものじゃなかったことをこの1年で実感しました。みなさんが肥料をやり、水をやりで僕たちは都度、花を咲かすことが出来たし、ここまでやってこれました。僕たちはこれからもその根っこをしっかりと張り、より多くの花を咲かそうと思っています」との村上のMCの後に入ったアンコールは、最も新しい彼らとインディーズ時代からの彼らの時を繋いでくれた。彼らの最新とも呼べる「GLORY GLORY」では、ミニマルでシューゲイズながらとてつもない広がりを感じさせてもらい、「このような夜があれば、また、これからも生きていける。それを改めて感じることができたライブでした」と一旦この日を振り返り、インディーズ時代から大切に歌われてきた「Shake your hands saying good bye.」へ。神々しくも果てしない高みへと会場中を引き上げてくれ、フロアからも見たことのない美しい光景を拝むことができた。
帰りを待っていた者たちと、帰るべき場所を目指して日々を送ってきた者たちとの共有により、この上ない一夜へと昇華させた、この日のライブ。きっとその戻ってきた巣は、柔らかく優しく温かく包んでくれ、この上のない夢見心地をメンバーや集まった者たちに与えてくれたに違いない。
来年10周年を迎える彼ら。そこに向けて、ここからまたもうひと飛びしなくてはならない時期が間もなくやって来る。いつでもどこでもふとしたことがあると、“懐かしいな…”と感慨深くなり、戻ってきたくなる場所。願わくば、この日のステージも、今後の彼らが、いつかまたふと思い出して戻ってきたくなる。そんな場所になって欲しい…。そんなことを帰路、何度も思った。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:Daisuke Sakai [eggman]】
リリース情報
永遠について語るとき、私たちの語ること
2017年07月05日
mini muff records
2.GLORY GLORY
3.名もなきアクション
4.Like a swallow
5.私とあなたとこの町のグラビティ
6.TO GEN KYO
7.ミスターサンライズ
8.フール フール フール
セットリスト
永遠について語るとき、私たちの語ること Release Tour
2017.9.16@代官山 UNIT
- 1.名もなきアクション
- 2.Cry Cry Cry
- 3.ミスターサンライズ
- 4.cold girl lost fiction
- 5.アテネ
- 6.パルモア
- 7.TO GEN KYO
- 8.my world is not yours
- 9.私とあなたとこの町のグラビティ
- 10.国境はなかった
- 11.Oh my God!
- 12.フール フール フール
- 13.梵
- 14.アンダーソン
- 15.Lie to myself
- 16.サラバ
- 17.Like a swallow
- En-1.GLORY GLORY
- En-2.Shake your hands saying good bye.
お知らせ
fm 35th Anniversary『MEGA★ROCKS 2017』
10/01(日) 宮城 仙台ライブサーキット
Eggs presents 『FM802 MINAMI WHEEL 2017』
10/07(土) 大阪ライブサーキット
テスラは泣かない。はSUN HALLにて16:00~出演
エフエム鹿児島開局25周年 ライブサーキット
10/09(月・祝) 鹿児島SR HALL & CAPARVO HALL
MUSIC GOLD RUSH First
10/13(金) 福岡BEAT STATION
DaisyBar Autumn Fes 2017~BET IT ALL~
10/19(木) 下北沢DaisyBar
赤色のグリッター「セツナ」AUTUMN TOUR~ジレンマの行方~
10/25(水) 大阪 FANJ twice
10/26(木) 名古屋 HeartLand
オワリカラ会場限定シングルリリースツアー「ラブリー開発」
11/02(木) F.A.D YOKOHAMA
テスラは泣かない。presents
【High noble MATCH ! - VS Piano Band series -】
11/26(日) shibuya eggman
11/30(木) 大阪 LIVE SQUARE 2nd LINE
12/01(金) 名古屋 CLUB UPSET
テスラは泣かない。× PELICAN FANCLUB
《 Island Tour 2017 》
11/24(金) 水戸LIGHT HOUSE
12/15(金) 北浦和 Livehouse KYARA
2018/01/14(日) HEAVEN’S ROCK 宇都宮
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。