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2020年の幕開けとともに新体制へ――万感のリキッドワンマンを徹底レポート!

MOSHIMO | 2020.03.06

 「2019年の負がようやく修祓された!」。この日のライブの帰路、多くの人がスッキリとした晴れやかな表情とともに、そんなことを想ったに違いない。そう、この日のMOSHIMOは、2020年はすでに明けたものの、そこに集まった者たちの2019年の負をすべて背負い、バスターしてくれ、ようやく新しい年を新鮮に迎えられたかのような気持ちにさせてくれた。と同時に、この日はバンド自身も、これからさらに独自の道を突き進む宣誓と、今後も並走してくれる頼もしい仲間たちと「改めてよろしく!!」という力強いアライアンスが交わされた一夜にもなった。

 この年末年始に4大都市にて行ったMOSHIMOのワンマンツアー「BARI BARI ROCK 2019-2020」が、この日の恵比寿LIQUIDROOMにて幕を閉じた。全会場ソールドアウトにて大盛況であった同ツアー。元々この「BARI BARI ROCK」は昨年末東京のみで同会場にて行われた忘年会的なライブ。各地からの熱望を受け今年は東名阪福と規模が拡大され開催された。

 この日は、彼らにとって2020年のライブ初めでもあった。真っ赤なライティングで浮かび上がった緊張感みなぎるステージと極悪メタリックな登場SEが鳴り響くなか、岩淵紗貴(Vo/Gt)、一瀬貴之(Gt)、宮原颯(Ba)、本多響平(Dr)がステージに走り出してくる。
「リキッド――! みんなあけましておめでとう!! 今日はみんなの2019年のイヤなこと、苦しいこと、不安なこと、孤独なことを一緒に全部ぶっ飛ばしていくから!!」と岩淵。一瀬が放つハードエッジなギターリフが「圧倒的少女漫画ストーリー」を導き出していく。のっけからこの日を一緒に作り出そうと客電も全開に。「やばい、みんなの笑顔がバッチリ見える」と岩淵もうれしそうだ。疾走感とドライブ感のあるサウンドに乗せ、「新しい自分を探しに行こう」感たっぷりの同曲が満場をステージへと引き寄せていく。そして、続くは「猫かぶる」。こちらも先導性たっぷりに、「ひとりも置いていかん!!」とばかりにグイグイ惹き込みにかかる。同曲では後半ボーカル落ちにさせる新しい展開も。時折混ぜる本多のツーバスが地響きを立てていた。

 ここでMC。「(この日、始業式や仕事始めの人が多いことを受け)日本でいちばんテンション低い日にライブやってます」と一瀬が笑えば、「自分たちにとっては今日が2019年の締めくくり。情念を成仏させてあげるから、最高の2020年に向かおう!」と岩淵が続ける。 「支配するのは君と恋の味」では、4つ打ちの上昇感とバンドの突き進むスパーク感が見事に融合。会場から無数のコブシがステージに贈られた。対して岩淵のサビの歌い出しから始まった「吾輩は虎である」では、宮原もコーラスを重ねていく。同曲のポイントは間に交えたヘビーなメタル部分。また中盤では、いろいろな動物に入れ替えてのお得意のコール&レスポンスも楽しめ、岩淵から「今年はネズミのように器用に生きれる女になる!!」という宣言が満場に成された。
ここでミディアムな曲がいったん場内を聴き浸らせる。「大嫌いなラブソング」では岩淵のギターと歌い出しから始まるも、そこにバンドサウンドがじわじわと色彩を加え、歌の主人公の上手く言葉で伝えられない不器用な気持ちが、先ほどの岩淵の「ネズミのように器用に~」の言葉とどことなく重なっていった。

ここでメンバーがそれぞれ今年のお正月を振り返る。ここで岩淵の実家のお母さんがMOSHIMOの好きな曲として「浮気をするならバレずにやれよ」と「釣った魚にエサやれ」を挙げたことに言及。「その辺り血筋やんなぁ」と笑い、そのまま「浮気をするなら~」をシャウトでタイトルコール。突入した同曲が元カレへの憎しみを込めてより激しくメタル要素たっぷりに放射された。また「ヤダヤダ」では場内のイヤなものに対する負の気持ちを代弁。代わりに「No!」を突き付け、溜飲を下げてくれた。
本多の静と動、緩急を織り交ぜたドラマチックなドラムソロを経て激しい曲に入る……と思いきや、あえてフリーズ。逆にミディアムな「悲縛り」に入るフェイントも。同曲では嫌われ者になってでも大事な人を守りたいという秘めた健気さが場内いっぱいに広がっていった。

 さらに、今後のMOSHIMOからの気概が岩淵により語られた。「2019年は自分のやれることを全力でやってきた1年だった。反動で周りが信じられずに孤独を感じた時もあったけど、逆に仲間や周りからの声や温かさが励みになって、『より一層頑張ろう! このMOSHIMOを続けて行こう!!』と力強く思えた」と熱く激しく語られた。

 ここからは後半戦。まずは「赤いリンゴ」。シンセのトロピカルな同期音も加わり、ルールに縛られずにいくぞという秘めた気骨が、じわじわ沁みゆくような音楽性とともに場内の隅々にまで染み渡っていった。

 再度ライブが転がり出したのは「釣った魚にエサやれ」からであった。曲中での宮原とのやりとりもこれで最後。「最後は優しくしてよね」(宮原)とアドリブで歌に交えるも、「ふざけんな!!(笑)」と岩淵が一蹴。自らも歌詞の一部を「酒」に変えて歌った。また、「2020年はよくやったと褒めてくれる彼氏を絶対に見つけ出す!!」と満場に宣言。恒例のソーラン節のレスポンスでは、恋のお守りを買ったことをリークされたことを受け、やけくそ気味に「お守り! お守り!」と歌詞を変えて連呼。同曲を歌い終えたあとの妙にすっきりとした表情も想い出深い。
そして、さらに場内の熱狂に火をつけたのは「触らぬキミに祟りなし」であった。深部にぐいぐい惹き込まれていくのを感じた同曲を経て、「みんなが地獄に落ちとる時は、MOSHIMOも一緒に落ちてやる。そんな歌をこれからも歌い続けてやる!!」という頼もしい誓言を受け、100人力と化した場内に本編ラストに放たれたのは「命短し恋せよ乙女」であった。銀テープも発射されたなか、会場中の気持ちを引き連れ、同曲がひた向きに走るのを見た。

 アンコールでは、前身バンド時代から歌い続けている大切な歌と、あえて今後も変わらず、いや加速度をつけて進んでいく――そんな宣言のような曲がそれぞれ満場へと贈られた。
とその前に、この日を最後に脱退する宮原と本多にもマイクが回る。「これからも覚悟を持って自分の道を進んでいく」とは宮原。「これからも颯くんと響平を応援してあげてほしい」と岩淵が明るく送り出す。この4人の前途に満場からの温かくも祝福感溢れる拍手が贈られた。
「自分ぐらいは自身を信じてあげなくちゃダメ。そんな私にしか歌えない歌」と、ワンマンでは欠かさず歌い続けてきた「寝グセ」が。同曲ではこのメンバーと出会えたこと、一緒にここまで来れて世界が変わったことへの感謝も垣間見ることができた。
そんなしめやかなムードを一変、「ここで終わると思うなよ!!」と岩淵。最後は「電光石火ジェラシー」が会場中の負をすべて引き受けてバスターしてくれた。
そしてステージにひとり残った岩淵から、「今後もみんなの苦楽をともに背負えるバンドでいたい。これからもMOSHIMOは進んでいきます。いろいろあったけど、2020年もついてこい!! 今年も笑顔でいこうぜ!!」と頼もしい言葉を残した。その際の満場からの呼応は「こちらこそ、これからもさらによろしく!!」と言っているかのように力強く堅い握手のように響いた。

 この日で結成時のメンバーの脱退もあり、正直もっとセンチメンタルで、「これまでありがとう」的なライブを想像して会場に足を運んだ。しかし終えてみると、そのような雰囲気よりも「次に向かい進んでいく、留まってらんないし失速もしたくない!!」というような気概のほうが勝り、センチな雰囲気は微塵も窺えなかった。もちろん、ここまで一緒に進み築き上げてきたメンバー同士だ。寂しかったし苦渋でもあっただろう。しかし、岩淵と一瀬はそこをグッとこらえ、次への一歩を踏み出すに至った。
とは言え、前述の宣誓とともに突き進んでいく狼煙のようなうれしい報告はほかにもあった。この日の晩には新曲「誓いのキス、タバコの匂い」のデジタル配信とMVの公開、そして3月18日にはKOGA RECORDS内に自身のレーベル「Noisy」を設立し、ニューアルバム『噛む』の発売をアナウンス。加えて、4月からは全国ツアーの開催も告げられた。なかでも9月12日、同ツアーの最終地点は彼ら単独では過去最大規模のZepp DiverCity(TOKYO)。この日の3倍以上のキャパシティでもあるので、かなりの大チャレンジだ。

 2020年以降、MOSHIMOはますます強くなっていくことだろう。そして、その先には彼らの歌を必要とし、バスターしてほしがっている大勢の人たちが現れ、それらの気持ちも背負い、どんどん強靭になっていくに違いない。
その背負ってもらった気持ちの分、我々の心は軽くなっていく。叶ったり、叶わなかったり、だけど信じて肌身離さず持っている……。MOSHIMOって、なんだか「お守り」みたいなバンドだな……と帰路何度も思った。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:カワドウ】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル MOSHIMO

リリース情報

噛む

噛む

2020年03月18日

Noisy / KOGA RECORDS

01.もっと
02.熱帯夜
03.TOKYO
04.シンクロ
05.バンドマン
06.誓いのキス、タバコの匂い

セットリスト

BARI BARI ROCK TOUR 2019-2020
2020.01.06@恵比寿LIQUIDROOM

  1. 01.圧倒的少女漫画ストーリー
  2. 02.猫かぶる
  3. 03.支配するのは君と恋の味
  4. 04.吾輩は虎である
  5. 05.大嫌いなラブソング
  6. 06.浮気をするならバレずにやれよ
  7. 07.ヤダヤダ
  8. 08.悲縛り
  9. 09.赤いリンゴ
  10. 10.釣った魚にエサやれ
  11. 11.触らぬキミに祟りなし
  12. 12.命短し恋せよ乙女
【ENCORE】
  1. EN1.寝グセ
  2. EN2.電光石火ジェラシー

お知らせ

■ライブ情報

NEW ALBUM『噛む』
RELEASE ONE MAN TOUR「噛みしめる」

04/18(土)東京 下北沢SHELTER
04/25(土)愛知 名古屋E.L.L.
04/26(日)大阪 梅田CLUB QUATTRO
05/23(土)宮城 仙台CLUB JUNK BOX
05/31(日)北海道 札幌BESSIE HALL
06/14(日)広島 SECOND CRUTCH
06/20(土)福岡 DRUM LOGOS
06/27(土)新潟 CLUB RIVERST
09/12(土)東京 Zepp DiverCity(TOKYO)



HIROSHIMA MUSIC STADIUM
-ハルバン’20-

03/21(土) 広島経済大学大学祭 特設メインステージ

FM NORTH WAVE&WESS presents
IMPACT! XV supported byアルキタ

04/12(日)北海道 札幌SPiCE

haruberrylive2020
04/17(金)栃木 HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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