『TODOME』の次は『噛む』! 新体制で攻勢をかけるMOSHIMOに直撃取材!

MOSHIMO | 2020.03.24

 昨年11月のリズム隊メンバーの脱退表明を経てもまったく停滞することなく、脱退後もサポートメンバーを交えた新体制にてライブを続行。KOGA RECORDS内に自身のレーベル「Noisy」を立ち上げ、全国ツアー敢行のアナウンスなど、これまで以上にアグレッシブな活動状況を見せているMOSHIMO。その活発さや行動力からは、昨今の彼らのライブ同様、「こんなんで止まってられるか!!」と言わんばかりの気概すら感じる。
そんなMOSHIMOから6曲入りのアルバム『噛む』が届けられた。楽曲を通して現在の意志表明を正直に赤裸々にぶちまけた今作は、彼らのライブでの「あの感じ」を作品に収めつつ、さらにライブをふくよかにすべく新境地的な楽曲も収録。結果、より聴き手の信憑性をアップさせ、気持ちを重ね合わせたり、次への行動力やバイタリティを寄与してくれる作品となった。きっと今後のあなたの力強いパワーとして、頼れる親友や共感者的な1枚となってくれることだろう。

EMTG:今回、新体制になり、自身のレーベルを設立。そこからのリリースに至る経緯を、まずは教えてください。
一瀬貴之(Gt):実は昨年の9月辺りに前のベースとドラムから「脱退したい」との申し出があったんです。バンド自体はいい調子だったし、曲作りも全然滞ってなかったし、その時点でこの『噛む』のリリースも決まっていたり、すでに9月のZepp DiverCityも押さえていて。各地のフェスでもお客さんがたくさん来てくれている状況たったんで、その脱退の話が出た2日後ぐらいにはそれを受け入れて、「自分たちはふたりだけでもやろう!!」「自分たちで会社を作ろう!!」と決めたんです。もちろんそこには若干の不安もありましたけど、それ以上に「バンドを辞めたくない」「続けたい」という思いのほうが強かったです。
EMTG:クイックリーかつフレキシブルな行動ですね。では自身のレーベルのほうは?
一瀬:そんな動きをしている最中に決めました。以前からKOGA RECORDSとは仲良くさせていただいていて、KEYTALKはお兄ちゃん的な存在だったし。まずはCDの流通の相談に行ったんです。そしたら「じゃあ一緒にやろうよ」と声をかけてくれて。
岩淵紗貴(Vo/Gt):「せっかく自分たちでやるんだったら、居心地のいい場所を作りたいな」という思いが強くて。で、「もしその居場所がないなら自分が作ればよくね?」って。そこでレーベルを立ち上げて。正直当初は不安もありましたけど、でも実際に動き出したら想像以上に周りの方々が力を貸してくれて。かついろいろな人とも繋がることができて、今のチームが形成されていったんです。そこには感謝もしているし、それまで自分ひとりで背負っていたり重荷に感じていたことも、いい意味で任せたり、預けたり、助けてもらったりして。周りの方々の大切さやありがたみにも改めて気づかせてもらいました。
一瀬:幸い今の時代、自分たちからもいろいろと発信できるじゃないですか。昔みたいにテレビやメディアやフェスに出ないと売れにくい、なんて時代でもないし。イイものを作ってお客さんとの絆がしっかりあれば、ちゃんと届けられる――そうやって自分たちの腕で勝負できる自信もあったので、挑戦してみようと。
EMTG:MOSHIMOはお客さんとの信頼関係をしっかりと築けていますもんね。ライブを観るたびに感じます。
一瀬:僕らのお客さんはかなり頼もしいですよ。時々DMやリプライでいろいろな方々から人生の報告や相談をしてくれたり、逆に励まされたりもするんで。「お客さんとアーティスト」的な関係値というよりも、感覚的にはお友達のような感じ。基本、僕らのライブはお互いにかなり赤裸々です(笑)。その辺りも含めて、お客さんとは信頼関係がしっかりと築けてる自信はあります。
岩淵:私たちのライブに集まるお客さんたちも、私たちも、みんな器用じゃないし、かっこつけて生きられるタイプじゃないだろうし(笑)。今じゃ同じ「仲間」だと思ってます。一緒に大きくなっていきたいし、大きなステージも一緒に段階を踏んで進んでいきたい。なんなら人生の喜怒哀楽を一緒に過ごしていける、そんなバンドになりたいです。
EMTG:今も変わらぬおふたりに加えて、リズム隊にサポートメンバーを交えての現体制はいかがですか?
一瀬:かなりいい感じです。ふたりとも元々知り合いだし、一緒にやりたかったうえに、向こうも「やりたい」と言ってくれたメンバーなんで。それこそ正式メンバーぐらいのグルーヴで。実は『噛む』もこのメンバーで作ったんです。そのときもそれぞれのアイデアをバンバン入れてくれました。
岩淵:やっててとても楽しいです。自分たちにはない要素を出してくれたり、逆にうちらを引っ張ってくれる頼もしさもあったり。で、これはかなり些細なことなんですけど、レコーディング中にふたりが「少しでも雰囲気が良くなるように、おいしいものを食べて一緒にいいものを作ろう!」って何かしら差し入れを持って来てくれてたんです。その気配りがほんとにうれしくて。まさしく「みんなで作品を一緒に作ってる感じ」になれたんです。「バンドってこうだよな」とつくづく感じました。それと私たちへのリスペクトを持ってライブに臨んでくれてて。「私、ライブになると自由奔放になって迷惑かけちゃうかも……」みたいな話を事前にしたときも、「それは昔から観てたから知ってるし、そこがMOSHIMOの魅力だし、一緒にできてうれしいから大丈夫」とまで言ってくれて。おかげさまで安心してライブができてます。
EMTG:そんななかでリリースされるニューアルバム『噛む』ですが、「これで聴き手とともに心中してもいい」「これがダメならしょうがない」と思えるぐらい、自分たちの「今」が音や歌に正直に、潔く表現された作品という印象があります。
一瀬:(笑)。まさしくそのとおりです。作ったのは去年の10~11月、楽曲を作りながらのレコーディングでした。なのでわりと最近の楽曲ばかりだし、歌詞に関しては「もっと」に顕著に表れてますけど、今のMOSHIMOの現状や思ってること、今伝えなくちゃいけないことや感じてることを詰め込めたと思います。

MOSHIMO「もっと」MV
岩淵:毎回そうなんですけど、今回もギリギリの制作状況のなかで完成させました。昔から夏休みの宿題は最終日に慌ててやる典型的なタイプなもので(笑)。
EMTG:そのぶん勢いや瞬発力、いい意味でのやけくそ感も収まってます。
一瀬:ロックなアルバムになったかなって。前作の「TODOME」は四つ打ちや同期を入れた曲もありましたからね。今回の『噛む』では速い曲はもちろん、バラードだったり、あえて今まで自分たちが出してこなかったところを出したりして、いろいろな挑戦ができました。

MOSHIMO 4th ALBUM「TODOME」Trailer
EMTG:「TOKYO」のアーバンでたゆたう感じは新鮮でした。ちなみに岩淵さんは?
岩淵:ライブがさらに豊かになる曲が欲しくて作った曲も多いです。私の歌に関しては、いつものライブの感じを上手く出したいなって。音源ではあるけど、よりライブに近い歌い方にしたかったんです。というのも、やっぱり周りから言われるんですよね……「音源と、実際に観たライブの感じがまったく違う」って。「ライブのほうがより好きになれる」って言ってくれる人もいるし。でもそれは裏返すと「音源で自分たちの魅力が伝えられてないってことじゃん」って。それもあって、より自分たちそのままを出せる音源にしてみました。
EMTG:わかります。失礼かもしれませんが、作品ではかわいく感じるんですよね?
岩淵:言われます(笑)。それは私の歌の影響が大きくて。私、自分の歌声にコンプレックスがあるんです。それを考えたときに「そういえば私って、ライブであまり『歌う』っていう意識を持ってないなぁ……と思って。きれいに、正確に、とかバンドにちゃんと合わせて……みたいな意識をまったく持たずに歌っちゃってる。前作はハードでヘビーな楽曲に私の本来の歌声を乗せる、そんなギャップを活かした作品を目指したんですけど、今回はそのライブで歌う感じをあえて出してみたんです。
EMTG:が故にやさぐれ度もグッと上がったと(笑)。
岩淵:上がりましたね(笑)。よりドライブ感も増したし。なんなら歌詞を間違えた箇所があったんですけど、「こっちのほうがいいや」って差し変えたりもしました。
EMTG:「バンドマン」なんて途中、笑いをこらえて歌ってますもんね(笑)。そんななかで、それでも岩淵さんが聴き手の求めている歌声をキープしつつ、あえてそれをどう活かすか?を考えたんじゃないかなって。楽曲がきちんとポップに響くし、どの曲も親しみが持てるんですよね。
岩淵:その感想はすごくうれしいです。「ライブのとおり何も考えずに歌った」とは言いましたけど、「ここはこうだな」とか考えながら、あえてポイントポイントは聴き手を思い浮かべてしっかり歌いました。それが伝わっていてうれしいです。とにかく自由に楽しく歌わせてもらいました。
EMTG:サウンド面はいかがですか?
一瀬:今回はあえてテイク数をそこまで重ねませんでした。ライブ感を積極的に取り入れたかったので。結果、ガツンと瞬発力を重視した曲ばかりになったかなと。逆にそこで思いついたフレーズを織り交ぜたりもできたし。

MOSHIMO「シンクロ」MV
EMTG:そんななかで、「TOKYO」はかなり新境地的な楽曲で。このようなアーバンでたゆたう曲が出てきたのも意外でした。
一瀬:いよいよグルーヴィーな曲も出てきました(笑)。個人的には好きなジャンルで、今まで聴いてましたけど、実際にMOSHIMOとして出したのは初めてで。これまで使ってこなかったワウを起用したり。
EMTG:作品全体的な話に戻ると、今作はこれまで以上に人間くさいし、泥くさい作品だなって。
岩淵:おかげさまで、元々の私たち自身の泥くささをそのまんま出せましたからね。その辺りも今作では出したかったところだったし。
EMTG:非常に安堵感がありました。ああ、こういった人間もいるんだ……みたいな。で、きちんと励みや希望を宿していて。聴いていて力やバイタリティをかなりもらいました。
岩淵:さらけ出しただけですけど(笑)、そう感じてもらえて本望です。聴いて気が楽になる――そこは目指しているもののひとつで。「痛いところをついてくるなぁ」とか「わかるわかる」、はたまた「これ今の私じゃん?」って、そんな曲をこれからも作っていきたいです。
EMTG:今回はMOSHIMO史上最も岩淵さんの私情や恋愛経歴が反映されている印象を受けました。

MOSHIMO「誓いのキス、タバコの匂い」MV
岩淵:これまではあえてことわざとか違った言葉で本質をオブラートに包んで表現してきたんですけど、今回はもう全部そのままぶっちゃけてみました(笑)。自分の生き様をありのままさらけ出してみたというか。元々隠したところで、露わになってただろうし(笑)。「いちボーカリストとしての私が歌うべきテーマって何なんだろう?」って深く考えたときに、「誰でも書けそうな歌詞じゃなくて、やっぱり私にしか書けない歌詞を書くべきだ」と。
一瀬:僕も、ポチ(岩淵)は思ってることを詰めたほうがいいってずっと感じてたし、それが今回ようやく出せたなって。完成した歌詞を見て、「ちょっと出し過ぎなんじゃ?」って心配になったくらい(笑)。
EMTG:その言いたいことを吐き出している面もですが、加えて今作は、全体的に愛しい人への沼感みたいなものも非常に感じました。なんか「抜け出したいけど抜け出せない……」みたいな。
岩淵:だって私の人生自体、沼ですもん(笑)。ハッピーエンドにあんまり興味がないし、もしかしたら好きじゃないのかも。でもそれが、私が幸せになれない原因であることは自覚してて。あー、幸せになりたいー!!(笑)。
EMTG:いや、岩淵さんには今後も幸せになってほしくないです。幸せになったらこんな歌詞出てこないでしょうから(笑)。
岩淵:やっぱりそうなんかな(笑)。私も自分でそう思う時があります。あと、ハッピーに慣れてないからかな?ハッピーでいる時が怖いですもん。「私、幸せに感じてるけど大丈夫?」「神様いいんですか?」とか不安になっちゃう(笑)。と同時に、これが続くと今までのような歌詞は書けなくなるんだろうな……って。
EMTG:なので、これからもみんなが共感できる、いい曲を出し続けていくためにも絶対に幸せになっちゃダメ。
一瀬:俺もポチには絶対に幸せになってほしくない(笑)。
岩淵:うーっ、でもやっぱり幸せになりてえーっ。彼氏欲しいー!!(笑)。

【取材・文:池田スカオ和宏】

tag一覧 アルバム 女性ボーカル MOSHIMO

リリース情報

噛む

噛む

2020年03月18日

Noisy / KOGA RECORDS

01.もっと
02.熱帯夜
03.TOKYO
04.シンクロ
05.バンドマン
06.誓いのキス、タバコの匂い

お知らせ

■コメント動画




■ライブ情報

NEW ALBUM 『噛む』 RELEASE
ONE MAN TOUR 「噛みしめる」

04/18(土)東京 下北沢SHELTER
04/25(土)愛知 名古屋E.L.L.
04/26(日)大阪 梅田CLUB QUATTRO
05/23(土)宮城 仙台CLUB JUNK BOX
05/31(日)北海道 札幌BESSIE HALL
06/14(日)広島 SECOND CRUTCH
06/20(土)福岡 DRUM LOGOS
06/27(土)新潟 CLUB RIVERST
09/12(土)東京 Zepp DiverCity(TOKYO)


haruberrylive2020
04/17(金)栃木 HEAVEN’S ROCK 宇都宮VJ-2

超能力戦士ドリアン presents
満足バロメーター限界突破ツアー2020
~対バン編~

05/06(水・祝)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE

Muvidat 「“Fog Lights"Tour 2020」
05/10(日)神奈川 横浜BAYSIS

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る