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THE BACK HORN、Veats SHIBUYA から生配信された無観客ワンマンライブ「KYO-MEI MOVIE TOUR SPECIAL」-2020-(ライブハウス編)

THE BACK HORN | 2020.09.17

 THE BACK HORNが、配信ワンマンライブ『THE BACK HORN「KYO-MEI MOVIE TOUR SPECIAL」-2020-(ライブハウス編)』を、9月6日に行った。8月の『「KYO-MEI MOVIE TOUR SPECIAL」-2020-(スタジオ編)』に続く配信ライブ第2弾になるが、彼らがライブハウスのステージに立つのは今年初めてだ。「KYO-MEI」のロゴマークを描いたバックドロップを掲げたステージで、9ヵ月の間にたまっていたエネルギーを全開にするようなライブで見る者を圧倒した。

 見慣れた位置にメンバーがつくと、「こんばんは、THE BACK HORNです」という山田将司(Vo)の言葉をきっかけに「その先へ」からスタート。ライブハウスに力強く響く彼らの音が画面越しに伝わってきた。ギターを弾きながら頭を振る菅波栄純(Gt)が、嬉しそうに顔を輝かせている。岡峰光舟(Ba)が低音を響かせ、松田晋二(Dr)のビートが3人を受け止める。

 男臭いコーラスが味を添える「Running Away」で山田はフロアからのコーラスを受け止めるように両腕を広げた。彼の耳には世界中からの歌声が聴こえていたに違いない。ステージから身を乗り出して歌いかけ、カメラ越しに目線を合わせる。そこにいるはずの人たちに伝えようとする山田の思いが痛いほど伝わってきた。他の3人も同じだっただろう。

 3曲目「シンフォニア」の歯切れのいいイントロに、8月のスタジオ編を観た人は沸いたに違いない。あの時は終盤で演奏したこの曲で山田は<帰る場所ならライブハウスにあるから>と歌詞を変えて歌った。ライブハウスに帰ってきたこの日、彼は再び同じように歌詞を変えて歌った。<帰る場所ならライブハウスにあるから>その言葉通りTHE BACK HORNはいるべきところに帰ってきたのだ! 照明が山田の胸元の汗を光らせ、菅波の笑顔を照らす。歌い終わった山田も嬉しそうな表情を浮かべていた。

「THE BACK HORN2回目の配信ライブを開催することができました。みなさん盛り上がってくれてますかね。今回はライブハウスからお届けできると言うことで、このステージに立てたことを嬉しく思います。前回のスタジオ編とは違った内容で今日はお送りしますので、僕らのライブがみなさんの元に届きますように、たっぷり楽しんでください。最後までよろしくお願いします」とオーディエンスに対して気持ちを込めたMCをした松田からも、ライブハウスのステージにいる喜びが伝わってきた。

 赤いLEDをフレットに仕込んだ岡峰のベースが唸るグルーヴィーな「白夜」は山田の歌がパワフルに響き、菅波のギターが美しく響くイントロから一気に彼ららしい起伏に富んだ世界に突入する「暗闇でダンスを」では<ネットじゃ死んだことになってるんだって?冗談じゃねー!>と言う一節が、まるで今の彼らの言葉のように響いた。<冗談じゃねー俺はここだ!>山田は全身で叫んだ。

 フェイクとリアルが錯綜する現在を彼らも必死で生き延びている。赤と緑の照明の中で激しく動きながら「がんじがらめ」を、「ジョーカー」は床の上でもがきながら山田は歌い、演奏する3人は荒々しいエネルギーを放出する。それは初期から変わらない彼らの現実との格闘ぶりをうかがわせた。

 一息いれると山田はギターを持ち「楽しんでますか? 配信ライブでは普段ライブに来られない人たちも見てくれているんじゃないかと思います。改めましてTHE BACK HORNです」と穏やかに挨拶し「ガーデン」へ。久々に歌う初期のバラードだが、ライブをやる場所を求め必死であがいていたあの頃と今は似ている。そして<平和は夢の墓場>といった若々しいシニカルさから発せられた言葉が、今は新たな意味を感じさせ、ドキリとさせられる。歌の力には、いろいろあるのだ。

 山田が鍵盤ハーモニカを吹いたレゲエナンバー「ヘッドフォンチルドレン」は、救いはないと言われてもヘッドフォンから聴こえる音楽に救いを求める切実な思いを歌っているのが、ネット越しに彼らを見ている私たちの思いのようだった。ライブハウスで全身に音をまとわりつかせて楽しむライブと配信は全く違うものだけれど、それでも配信を観ずにいられないし楽しまずにいられない。バンドにとってもそれは同じだろう。そんな切ない思いを表すように歌われた「泣いている人」は、未来への祈りを込めた曲になった。

 メロディをなぞるより歌詞が持つ感情や意味を生々しく伝える山田の歌は、曲が進むほどに凄みを増していき、時にはシアトリカルに、時には絵画のように画面に浮かび上がった。そんな山田の歌が発散するオーラに3人の楽器が共鳴し、このバンドならではのダイナミズムを作り出す。この現場にいられないことを本当に悔しく思ったが、一番それを感じているのは彼ら自身だろう。そんな痛いほどの思いを抱えて演奏する彼らのエネルギーが画面越しに伝わってくるのも、この配信ライブの凄みと言えるかもしれない。

 山田は菅波・岡峰と「ライブハウスの音が出てる」「いろんなところで聴いてるのかな」「九州は台風で観れない人もいるかもしれないけど、観れる時間に観てほしい」と語り合った後で、引き締まった顔で言った。「生活が変わったり人に会えなかったり、寂しいよね。また以前のようにライブハウスでやれるのか分からないし、個人レベルでも変わらなくちゃいけないことも見えたけど、無理しなくていいと思う。最低でも無理するのは生き続けること。そのためにみんなが優しさを持って寄り添い支えあいながら、生きていけたら。生きていくことも大変な世の中だけど、音楽は、そこに楽しいことがあるよとか、生きてれば良いことあると心に訴える力があると思います。そんな、一番新しい曲を聴いてください」

 広く伝わることを意識したようなスケール感の大きなこの曲は、音楽を鳴らすことをよりどころに必死で進んできた彼ら自身であり、彼らと同じように音楽で闇を切り拓こうとする人へのアンセムだ。自分の思う色で描いていい、それが「瑠璃色のキャンバス」なのだ。続いて披露された作家の住野よるとのコラボ作品『この気持ちもいつか忘れる』に収録の「ハナレバナレ」は<何者でもないまま 駆け抜けるよ>と歌う落としどころが秀逸だ。何者かを目指さなくたっていい、そのままで。出口を模索していたら最高のアドバイスではないか。THE BACK HORNの楽曲の強さはこういうところだ。その強さ全開の「戦う君よ」で一気に熱量をあげ、「また生きて会おうぜ!」といつものように山田が叫んで「コバルトブルー」に突入、このライブのラストを締めた。

 一旦ステージを降りてから再登壇した4人は、バックステージで視聴者のコメントを見たようで、「楽しんでもらえたみたい」「俺たちの想いが伝わったらいいな」などと感想を述べ合い、リアルなライブの予定を目論んでいることや、9月16日に住野よるとのコラボ作品が再びリリースされることを告げ、この時間をフリーズさせそうな勢いで「無限の荒野」を鳴らした。初期の曲だからこそ爆発する彼らのパワーはここに極まったと言っていい。

 笑顔で手を振り頭を下げた4人を見送ってから気づいた。この日のセットリストには、『カルベ・ティエム』の曲がひとつもない。それは彼らが、再開したらツアーで演奏するのだ、と言外に告知しているかのようだった。その日が来ることを私たちは待っている。

【取材・文:今井 智子】
【撮影:Rui Hashimoto[SOUND SHOOTER]】

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リリース情報

Digital Single「瑠璃色のキャンバス」

Digital Single「瑠璃色のキャンバス」

2020年06月24日

Speedstar

01.瑠璃色のキャンバス

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セットリスト

2020.9.6(日)
THE BACK HORN「KYO-MEI MOVIE TOUR SPECIAL」-2020-(ライブハウス編)

  1. 01.その先へ
  2. 02.Running Away
  3. 03.シンフォニア
  4. 04.白夜
  5. 05.暗闇でダンスを
  6. 06.がんじがらめ
  7. 07.ジョーカー
  8. 08.ガーデン
  9. 09.ヘッドフォンチルドレン
  10. 10.泣いている人
  11. 11.瑠璃色のキャンバス
  12. 12.ハナレバナレ
  13. 13.戦う君よ
  14. 14.コバルトブルー
  15. 【ENCORE】
  16. EN1.無限の荒野

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