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Souが今ここで作る理想郷――オンラインライブであることの意味

Sou | 2020.09.30

本当はどこに居ても、ユートピアを作れるーーSouは、そう思わせてくれた。

8月19日にリリースしたEP「Utopia」をテーマに、9月19日、全世界に向けて配信した初のオンラインライブ『Sou LIVE 2020 -UTOPIA-』。事前収録のライブ映像と生のトークが詰め込まれた約1時間は、予想を超えるものだった。

開場から開演にかけて、顔も名前も知らないリスナー同士の会話で埋まっていくチャット欄。非日常的なやりとりと、ライブが始まる前の高揚感が駆け巡る音が聴こえてくる。

薄暗く青い照明の灯ったステージに向かって、弧を描くようにスタンバイしたバンドメンバーが、チューニングを経て演奏を始めた。ステージ前面に設置された透過スクリーンの裏側、マイクスタンドの後ろに立つSouが、1曲目として手に取ったのは、昨年3月に配信リリースし、初めて作詞作曲した「愚者のパレード」。2013年より、インターネットで活動する歌い手としてジャンルを問わずボカロ曲などをカバーしてきたSouにとって、根底から音楽と向き合い、ディストピアとユートピアとの狭間で藻掻く姿を昇華させた「愚者のパレード」は、Souの才能の開花へと繋がったナンバー。スクリーンに投影された退廃的なsakiyamaによるアニメーションMVと融合するSouは、シルエットながらも、確かにそこにはっきりと存在していた。次に、RUCCAと作詞を手がけ、自身が作曲した「ノイド」を続ける。

「改めまして、Souです。オンラインライブ『UTOPIA』最後まで楽しんでいってください!」

挨拶したSouは、愛聴するクリエイターたちが「Utopia」のために書き下ろした曲を連投。ディストピアに住む自分が、ユートピアを見つめながら藻掻く心情を「悪者」より描いていく。心臓部となるクラップのリズムに連動したSouは時に嗄れ声。“悪”のオーラを漂わせ「クイニーアマンダ」へ突入すると、ユートピアにはほど遠く、いまの生活から逃れられないと叫ぶ主人公と化したSouを、背後から迫りくる煙のようなシンメトリーの模様が飲み込んだ。一転して、軽快に歌った「インペリアルボーイ」からは、毒気を含んだ空気が晴れ渡り、壮大なアンサンブルを奏でる「善人じゃない」、深みのあるピアノの映えるロックバラード「もう会えないと思う」へ。次々と飛び出してくる模様をバックにしたSouの目の前に、立ちはだかっては消えるを繰り返す巨大で立体的な<善人>や<悪人>などの歌詞が、幻想的な世界を押し広げた先に、クライマックスを迎えた。

「今回のオンラインライブは、わくわくする気持ちもありつつも、直接音楽を届けられない歯がゆさもあるんですけど、この状況になっていなかったらオンラインライブという選択肢もなかったわけで。それと同じように、日常生活のなかでも生活が見直されたり、普段気付かない視点から物事を見ることができたり、すごいポジティブな面もあると思う。みんなネガティブになってると思うんですけど、悪いところばかりを見ずにポジティブをうまく探して、この状況をみんなで乗り越えて、いつかまた、みんなと会える日を僕は楽しみに待っています。一緒に頑張りましょう」

後半に繰り出したのは、神谷志龍、RUCCAとの共作の2曲。Souにとって初のタイアップ曲であり、2020年1月に配信リリースした、アニメ『ID:INVADED イド:インヴェイデッド』のOPテーマ「ミスターフィクサー」と、「Utopia」収録曲のラストを飾るミドルテンポな「ユートピア」。Souは最後、ユートピアに辿り着けたとしても、新たなユートピアを求め続ける人間の性を歌に込めた。

ライブ本編が終了したところで画面が切り替わり、予定されているトークがどんな場所からどんな形で繰り広げられるのかと心を弾ませていると、再び、映し出された映像に出現したのは、髪色から衣装までジャケットと同様のバーチャルSou。バックには、先程のライブ映像、『UTOPIA』のインストが流れている。

開演後、チャットに流れるみんなのコメントを目で追いながら、一緒にライブ映像を見ていたと明かしてから、トークテーマは、ライブへと移行。Souは「バンドメンバーと一緒に音楽を演奏するだけだと作り切れない。みんなの歓声があったり、視線があったり、そういうの含めてライブなんだなって」と語り、オンラインならではの演出にこだわったことにも触れた。透過スクリーンを用いた映像効果、照明の加減、絶妙なカメラワーク、オリジナル曲のみで構成されたセットリスト、さらには、バーチャルSouのお披露目は、昨年の初のワンマンライブ『Salir』や、昨年8月の『深層から見た景色』ツアーでは見られなかった初の試み。トークの合間には、手や指を動かしては、にっこり笑って見せたり、じゃんけんにも、リラックスしたムードで応えるSouが居た。

その後は、リスナーに質問を求めるコーナーへ。ライブで定番の「Souだけに?」「爽快!」のコール&レスポンスをしたいとのコメントを拾ったSou。「年を重ねるごとに、恥ずいな~って思ってたんですけど、宿命ですね……」と言いつつ、「Souだけにー?」と声を投げる。多少のタイムラグがあったものの、海外勢を含めた「爽快!」の文字が溢流した途端「来た来た来た!」と頭に喜びが弾けたように舞い上がり、「やっぱり(生の)ライブしたいね。そう思ったら、あんなに恥ずかしいと思って辞めようとしてたのに、これ(「Souだけに?」「爽快!」)も恋しくなってきたね」と零した。

オンラインライブを配信していなければ「Souだけに?」「爽快!」のありがたみには気付けなかったかもしれない。ふと、SouによるライブでのMCであった「悪いところばかりを見ずにポジティブをうまく探そう」がよぎる。この日、すでにSouは、ここにポジティブを見つけていた。トークの終盤、生のライブにはないオンラインライブのメリットを「時代が進化したみたい」と認めたうえで、生のライブも「早くみんなと会いたいです」と求めたSou。いま居る場所が、たとえ、ディストピア、ユートピアでも、自身の可能性を追求していくことだけは止めないだろう。

【取材・文:小町碧音】

リリース情報

Utopia

Utopia

2020年08月19日

ユニバーサルミュージック

01.ミスターフィクサー
02.悪者
03.クイニーアマンダ
04.インペリアルボーイ
05.善人じゃない
06.もう会えないと思う
07.ユートピア

セットリスト

Sou LIVE 2020 -UTOPIA-
2020.9.19

  1. 1.愚者のパレード
  2. 2.ノイド
  3. 3.悪者
  4. 4.クイニーアマンダ
  5. 5.インペリアルボーイ
  6. 6.善人じゃない
  7. 7.もう会えないと思う
  8. 8.ミスターフィクサー
  9. 9.ユートピア

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