盟友たちと競演した熱狂の生配信ライブ「劇場版HUMANisM~Q~」徹底レポート!
ircle | 2020.11.28
11月5日に渋谷CLUB QUATTROにて、ircleの配信ライブ「劇場版HUMANisM~Q~」が開催された。この日は特別ゲストとして、BLUE ENCOUNT・田邊駿一(Vo/Gt)、LACCO TOWER・真一ジェット(Key)、cinema staff・飯田瑞規(Vo/Gt)の3人が参加することが事前にアナウンスされており、誰がどの楽曲でコラボするのか?というドキドキ感も楽しみつつ、ircleがこうして「特別感」を打ち出したライブをするということに多少の驚きもあった。だが、この日のライブからは、ircleがやることに特別だとか普段どおりだとかは関係なく、ただ単純に「生きるということは、自由に進んでいけるということだ」という、彼らが出したひとつの答えが見えてきた。
開演時間になると、傘を差して雨の街中を歩く河内健悟(Vo/Gt)、仲道良(Gt/Cho)、ショウダケイト(Dr)、伊井宏介(Ba/Cho)の4人の姿を後方から追ったVTRが流れ出す。そしてVTRの中の4人が渋谷CLUB QUATTROに到着すると、映像はステージへと切り替わり「ホワイトタイガーオベーション」を以て生配信ライブがスタート! 初っ端から飛びかかる勢いでエンジンをフル稼働させると、SIX LOUNGEとのスプリット作品『地獄盤』から「HUMANisM」、そして「この瞬間をどうやって刻み込むか。それだけなんよ」と「瞬」を一気にプレイ。ここまで冒頭から数えて10分ほどの出来事ではあったが、画面越しからでも伝わってくる圧倒的な熱量に面食らった。個人的にircleのライブは何度も観てきているのだが、彼らのライブを観る度に己の血がぐつぐつと煮えたぎっている感覚がして、「ああ、これが“生きてる”ってことなのか」と思い知らされる。ライブはエンターテインメントだという考え方ももちろんあるけれど、ircleが命を削るかの如く満身創痍で挑んでいるこのライブは、まさに“存在証明”と呼ぶに相応しい。ircleのそういった本質を理解するのに、<寂しい日は寂しいんだぜ/楽しい日は楽しいままでいんだぜ>と肯定する「桃源郷」を含めたファーストセクションは、充分過ぎるものだった。
彼らが観客の有無に関係なく、どれだけ本気で挑んでいるか?というのは、MCに差し掛かっても息切れが凄くてなかなか言葉を発せない河内の様子を見れば、否応なしに伝わってくる。とはいえ、目の前にオーディエンスがいない状況については「この静けさには慣れるもんじゃないです」と本音を口にした河内。それでも「ライブです、これは。いくら文句を言われてもこの形が今日のベストだと思ってますし、心の奥底にあるものを届けていこうと思います」と、この日のライブへの意気込みを言葉にした。そして、最初のゲストとしてBLUE ENCOUNT・田邊駿一をステージにゆるっと呼び込むと、その呼び込み方にツッコミを入れながら田邊が登場。10年来の付き合いだという仲の良さが窺える思い出話を、まるで楽屋でのやりとりかのような和やかさで語らいつつ、いよいよ田邊のタイトルコールから「バタフライ」、そしてBLUE ENCOUNTの楽曲と絡ませた「もっと光を!」という河内の合図をきっかけに「明瞭度」をプレイ! 互いに緊張はあったようだが、歌い出せば思い切り楽しみながらプレイしているように見えたし、聴き手としては田邊と河内の歌声の声質に似通うものを感じ、そのシンクロ率の高さに驚いた。
「明瞭度」が終わると、転換の時間を用いて、冒頭のものとはまた違うVTRが放映される。その中では、メンバーが「全国ツアーに行けるようになったらまた食べたいご当地グルメ」というテーマでそれぞれの回答を発表。ライブが行われている間のどの瞬間も楽しんでもらいたいというircleの心意気を感じつつ、映像を介して全国の人に届けるのではなく、その身その足で早く赴いてライブをしたい!というメンバーの気持ちが、トークテーマからも伝わってきた。そして映像が再び配信に切り替わると、そこにはフロアに設置されたアコースティックセットと、互いに向かい合って着席している4人の姿があった。その配置は、長年の付き合いがある者同士には恥ずかしさを感じさせるようで、その様子が何とも初々しかった(結成19年目を迎えているバンドに“初々しい”という言葉を使うのは変かもしれないが……)。そして何より「きみが セ」からスタートしたこのアコースティックでの演奏が、とんでもなく素晴らしかった。シンプルな音だからこそ際立つ、楽曲のメロディの美しさと精巧な構成。柔らかさが増した歌声が紡ぐ、歌詞に込められた優しさ――通常のステージセットで鳴らされる楽曲を聴いたときとは違った発見があり、改めてircleの曲の良さに感動した。そして河内が、今の状況を鑑みつつ、「狭苦しい考えになってしまう人も多いと思うけど、それを逆手に取るっちゅうか、この状況から生まれたことをたたえていかんとなぁと思うな。狭い方向に行ったんじゃなくて、もしかしたら最初から自由だったのかもな。自由の幅が広がったと思ってもらえたらいいし、そういう気持ちを次の曲に込められたらいいな。一緒に羽ばたいていきましょうよ」と話しつつ「ハミングバード」を届け、さらに「いつも俺らはこんな気持ちです」と話して「サーチライト」を奏でた。
ircleはこれまで何度も配信ライブを行ってきたが、配信という環境に関係なく、「いつものircleだ」と変わらずに思わせる懐深い人情と基盤をそこで感じていた。そして今回のライブは、もちろんそういった面も感じさせたうえで、彼らの「自由であることに気づいた、じゃあこれからどう羽ばたいていきたいか?」という未来へ向けた視点での考え方がより濃く反映していたように思う。「挑戦」と呼ぶよりも、もっと自然な状態で踏み出された新たな一歩。それが今回の、信頼を寄せる仲間を迎えたライブ構成や、照れながらも行ったフロアでのアコースティックなのだろう。「こんな状況だけどできること」という考え方を「こんな状況だからできること」にシフトチェンジするだけで、視野は格段に明るく、広くなる気がする。ircleはいつもそうやって、私たちが生きていくうえで励みになるような選択肢を増やしてくれるのだ。
そして、2人目のゲストとして呼ばれたのは、LACCO TOWERのキーボードを務める真一ジェット。ircleとLACCO TOWERが親睦を深めたという『さよならリリー』のツアーでの思い出を振り返りつつ、5人で届けたのは「テレサ」と「あいのこども」のバラード2曲。鍵盤の慈悲深い音色が“愛情”を歌うそれぞれの楽曲に豊かな奥行きを持たせ、聴く人の心を満たしていく。そして最後のゲストは、cinema staffの飯田瑞規。ircleのメンバーが19歳の頃に出たロックフェスで出会い、当時から互いに魅力を感じ合っていたという彼ら。そんな長年の付き合いを経て、この日を迎えたことに対する「まさかこのような“未来”が来てしまうとはね!」という振りから、「未来」と「2000」をプレイ! 田邊と河内のコラボレーションには共鳴を感じたが、飯田と河内のコラボには「化学反応」と形容できる交わりを感じた。透明感のある飯田の声に河内のがむしゃらな声が重なり、そのコントラストが互いの唄を引き立て合っていた。
そうしてゲストを交えてのセッションを終え、河内は共演できる仲間がいること、互いに似て非なる志を持ちながら、昔から変わらずにそれぞれが歩み続けているという事実について「ありがてぇわ。続いていることがありがてぇ。大事にせんといかんなと思うわ、俺たちバンドは」と改めて感謝をした。そして「こういうふうに、ゲストでボーカルやキーボードを招いたりするっていうチャレンジをしながら進もうとしているときに、『なんで俺を呼んでくれんかったん?』って言うような奴が、この世におったんよ」と、もうこの世にいない仲間への想いを話す。そして「我々はまだ、瞬間瞬間をこの世界の中で刻むことができるんで、しっかり抱きしめてやろうと思います。世界はまだまだ変わっていくよ。それをこの目で見ようと思います」と決意を言葉にし、心を込めて「ばいばい」を演奏した。これは親愛なる故人へ向けたレクイエムではなく、羨ましくなるほどの愛が込められたとびきりのラブソングだ。ircleの音楽が人間の心を動かすのは、曲の中に血の通った人間が存在しているからなのだと、改めて思わせる演奏だった。そしてラストスパートをかけるように、「ジジイババアになっても腐らんようにな!」と「セブンティーン」、そして「エヴァーグリーン」を精魂込めてプレイし、堂々と本編を終えた。
本編終了後に再々度VTRが流れると、来年の1月24日に、TSUTAYA O-EASTにて「HUMANisM~超★盟友編~」が開催されることが発表された。そんな喜ばしい報告を経て迎えた「ボーナスタイム(アンコール)」では、ゲストの3人が肩を組んで再度ステージに登場し、7人のめいっぱいの愛がこもった「あふれだす」が届けられた。新しいことをするには不安は付き物だし、年を取ると怪我をしたときの痛さを知っているが故に走り出すことが怖くなりもする。けれどircleには、その怖さや不安よりも駆けることの楽しさを追い求める好奇心と、人を愛し、人から愛される人情と魅力がある。そんな彼らの、今回のライブで「自由」をきっかけに踏み出した歩みが、これからどんな進み方をしていくのか。彼らが迎える未来が楽しみで仕方ない。
【取材・文:峯岸利恵】
【撮影:MASANORI FUJIKAWA】
リリース情報
ircle『こころの℃』
2020年06月17日
MURO_RECORDS / JMS
02.エヴァーグリーン
03.ハミングバード
04.メイメツ
05.B.N.S.
06.リンネループサティスファクション
07.ルテシーア
08.2人のビート
09.あいのこども
10.瞬(Album ver.)
セットリスト
劇場版HUMANisM〜Q〜
2020.11.05@渋谷CLUB QUATTRO
- 01.ホワイトタイガーオベーション
- 02.HUMANisM
- 03.瞬
- 04.桃源郷
- 05.バタフライ【with田邊駿一(BLUE ENCOUNT)】
- 06.明瞭度【with田邊駿一(BLUE ENCOUNT)】
- 07.きみが セ(アコースティック)
- 08.ハミングバード(アコースティック)
- 09.サーチライト(アコースティック)
- 10.テレサ【wirh真一ジェット(LACCO TOWER)】
- 11.あいのこども【wirh真一ジェット(LACCO TOWER)】
- 12.未来【wirh飯田瑞規(cinema staff)】
- 13.2000【wirh飯田瑞規(cinema staff)】
- 14.ばいばい
- 15.セブンティーン
- 16.エヴァーグリーン 【ENCORE】
- EN1.あふれだす
お知らせ
ircle presents
「HUMANisM〜超★盟友編〜」
2021/01/24(日)東京 渋谷TSUTAYA O-EAST
※対バン後日発表
「STAND UP MARBLE vol.2」
新宿Marble独立記念SPクアトロ公演第四弾
2020/12/10(木)東京 渋谷CLUB QUATTRO
w/ 3markets[ ] / ユレニワ / Liz is Mine. / 灰色ロジック
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。