誰もが待ちわびた再会の場所「Live on November 15th」、会場限定のダブルアンコールまで徹底レポート!
Nothing’s Carved In Stone | 2020.12.16
強力なライブパフォーマンスで多くのロックファンを惹きつけてきたNothing’s Carved In Stone。2019年の秋から10枚目となるアルバム『By Your Side』を掲げたツアー「By Your Side Tour 2019-20」(対バン~ワンマン)を開催し、今年1月9日にはワンマン公演の初日をZepp Tokyoで迎えて、熱狂のパフォーマンスを見せつけてくれた(参照記事:ナッシングスの「寄り添う音楽」が結実した瞬間――Zepp Tokyoワンマンをレポート! https://music.fanplus.co.jp/liveReport/20200114750c6ae0d)。そのときはライブを楽しむという日常が奪われるなど、誰が予想しただろうか。2月後半からはじわじわと新型コロナウイルスの感染が拡大。音楽業界はライブの中止や延期などで、大打撃を受けることになる。
ただ、メインの活動の場を奪われても、多くのアーティストは音源制作や配信ライブを行い、発信を続けた。もちろん、ナッシングスも配信シングル「NEW HORIZON」や「Dream in the Dark」に加え、セルフカバーアルバム『Futures』をリリース。さらに、6月と9月にはスタジオからライブ配信を行って、元気な姿を見せてくれた。しかも9月の配信ライブ終了時には、11月15日に待望の有観客による「Live on November 15th 2020」の開催(@KT Zepp Yokohama)を発表。ファンを狂喜させた。なぜなら、彼らには「November 15th」という大事な楽曲があり、バンドは毎年、この日にライブを行ってきたのだから。
とはいえ、手放しで喜べないのは、クリアしなければならないガイドラインが多いということ。ソーシャルディスタンスを遵守した座席、観客はマスクの着用と声出しの禁止……など、以前のライブスタイルとは大幅に変わったものになる。それでもオーディエンスとバンドが久々に向き合えば、間違いなく熱い空気になるはずだ。その現場を体験すべく、11月15日、ライブ会場に足を運んだ。
この日のハコであるKT Zepp Yokohamaは、今年新たにオープンしたライブハウス。Zeppと言えばスタンディングが常だが、コロナ禍の中では座席指定が定番となる。隣との間隔が1席分空いており、開演前の場内は驚くほど静か。それでも、集まったファンはバンドのTシャツやタオル、フィーディーなどを着用し、開演をじっと待ち構える。
18時を少し回ったタイミングで場内が暗転。本来なら歓声が上がる瞬間だが、声の代わりに拍手が起こった。次に村松拓(Vo/Gt)、生形真一(Gt)、日向秀和(Ba)、大喜多崇規(Dr)の4人がステージに姿を見せると、拍手のトーンはさらに大きくなっていく。
緊張感の漂う中、本編は大喜多のカウントをきっかけに「Isolation」でスタート。モッシュやクラウドサーフこそ起こらないが、目の前で繰り広げられる生のパフォーマンスに、体を揺らし、手を振り上げて反応する観客の熱量には目頭が熱くなった。2曲目以降も「In Future」「Spirit Inspiration」というエモい流れで進み、客席の熱気も徐々に上がっていく。メンバー自身もリアルな音圧を噛み締めるファンの想いと同じだったようで、4曲目の「Beginning」が終わったあとのMCで村松は「アブないな……」と思わずつぶやいた(のちのMCで「泣きそうだった」と告白)。そして「すっげぇ……みんなを信じててよかった。来てくれてありがとう! ただ、いろいろ状況が違うのはわかってるけど、いつもどおりやるから! 最後まで楽しんでついてきてください。よろしくお願いします!」と挨拶。そこから気持ちを鼓舞するように手拍子を促して、3月に配信でリリースした「NEW HORIZON」へ。実はこの曲、観客の前でのライブ演奏はこの日が初となる。だが、観客は鉄板曲のように反応し、一体感が増していく。メンバーもリラックスしてきたのか、「Who Is」「Overflowing」では超絶フレーズをキメながら、日向は笑顔を見せる余裕も。村松は「みんなの声、聞こえてます! 届いてるぜ! 行けるとこまで行こうぜ!」と煽り、人気ナンバーの「Rendaman」へ。歓声のかわりに突き上げられる多くの腕のなんと力強いことか……。このブロックの最後、「Pendulum」を終えると、2度目のMCへ。
村松は「今日、ここにいる人だけじゃないんだ、観てくれてるの。全国の仲間がいっぱい観てくれているから、一緒に楽しんでいこう!」と、配信で観覧している多くのファンを気づかった。さらに、「そういう時代だ……つまり、俺たちのメッセージも遠くまで届くということだと思うから」と続け、どういう形式であれ、自分たちが鳴らす音楽は絶対にブレないという自信をみせた。
中盤ではテンポを落としたやさしい曲が続く。「Red Light」、そして「シナプスの海」でバンドのソフトな一面を披露。温かみのある楽曲も彼らの武器だが、ことライブではダイレクトに心に響く。アグレッシブなだけでなく、艶っぽい演奏もこなせる彼らの度量はさすがだ。
本編の折り返し地点で演奏した「Milestone」では、生形の狂おしいまでのギターイントロにテンションが高まっていく。実際にこのフレーズを生で聴くのはやはり格別だ。さらには、<いつだって僕も側にいて/本当の声を聞かせたくて/毎日の様に想い巡り/ここで自由を叫ぶんだ>という曲に込められたメッセージにも改めて心を揺さぶられた。
後半戦に向かう前のMCでは、村松が「最初のブロックが終わって、みんなから拍手が来たとき、泣きそうになりました(笑)。俺、こんなにライブがしたかったんだって、びっくりしました」と、素直な感情を吐露。「鬱憤を晴らしたくてライブをやってきた部分があるし、コロナがあったからって何も中身は変わってるわけじゃない……みんなが明日からまた頑張ろうって思えるようなライブをしていきたい。今、心からそう思います」と真面目に語るも、直後に照れ隠しなのか、下ネタも交えて会場の空気を思い切りほぐした。そこから「届いてるか? マジで! ほんとに泣きそうになったから! (みんなと)同じ気持ちでいます!」と煽り、熱いブロックへと誘導していく。
後半は正直、声を出せないのがもどかしい選曲だった。「Out of Control」「Like a Shooting Star」「Around the Clock」で、観客は腕を上げ、手拍子で応えながら、バンドのグルーヴに応戦する。「きらめきの花」では、手を左右に振りながら、誰もが心の中で歌を響かせていたに違いない。画面の向こう側では、実際に声を上げていた人もいたことだろう。本編を締めたのはもちろん「November 15th」。この曲をこの日に聴けたのは感無量だった。
その後のアンコールも手拍子のみの要求。その手拍子に応えてステージに戻ってきたバンドは、「BLUE SHADOW」に加え、6月に配信シングルとして発表した「Dream in the Dark」を披露した。この曲も、「NEW HORIZON」同様、ファンの前で生演奏するのは初となる。何しろ10ヵ月ぶりのワンマンライブという、信じられないブランクを経てのお披露目だ。「やっぱりライブは最高だね!」と村松が噛み締めるのも無理はない。ポジティブな気持ちにさせてくれる「Dream in the Dark」は、シメのナンバーとしてぴったりだった。
配信はここで終了したが、会場の観客にはダブルアンコールが用意されていた。大ラス曲は、2015年にリリースしたアルバム『MAZE』の収録曲「Perfect Sound」。スケール感のあるサウンドには“自分を信じるんだ”という思いが込められている。ソーシャルディスタンスで声も出せない状況の中、それでも観客はバンドの思いと、生の音楽を“感じる”ことができた。配信では各メンバーの表情もアップで確認できたと思うが、会場で見ても、その顔にはうれしさが溢れていたように思う。これまでとは違う空気の中ではあったが、やはり(入場者数に上限はあったとしても)ライブは大切な場所だ。配信でのナッシングスもかっこいい。だが、ファンからの視線、熱を感じてプレイする彼らのパワーは確実に増幅していた。この日のライブを通して、演奏する側も聴く側も“音楽を止めてはいけない”と強く感じたと思う。そして、ブレずに前進し続けるナッシングスだからこそ、きっとまたエモいサウンドを引っさげてステージに戻ってきてくれるだろう。現在は新曲も制作中とのこと。今後の動きを楽しみに待ちたい。
【取材・文:海江敦士】
【撮影:西槇太一】
リリース情報
Futures
2020年08月26日
Silver Sun Records
01.NEW HORIZON
02.Isolation
03.Spirit Inspiration
04.November 15th
05.Red Light
06.Rendaman
07.白昼
08.Out of Control
09.Like a Shooting Star
10.きらめきの花
[DISC 2]
01.Dream in the Dark
02.YOUTH City
03.In Future
04.Brotherhood
05.Midnight Train
06.Around the Clock
07.Milestone
08.Pride
09.ツバメクリムゾン
10.BLUE SHADOW
<初回限定盤DVD収録内容>
・What’s My Satisfaction from(“Live on November 15th 2018”)
・Perfect Sound(from “Live on November 15th 2018”)
・Bog(’19 ver.)(from SPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING”)
・Cold Reason(from SPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING”)
・Crystal Beat(from “Live on November 15th 2019”)
・メンバーインタビュー
※アルバムについてのソロ&全員インタビューを収録
<豪華盤>
初回限定盤収録内容+
・ライブ音源CD「Nothing’s Carved In Stone Studio Live "Navigator"」
・LP×3枚(通常盤収録の20曲をLP化)
・ピックセット(メンバーサイン入り)
セットリスト
Live on November 15th 2020
2020.11.15@KT Zepp Yokohama
- 01.Isolation
- 02.In Future
- 03.Spirit Inspiration
- 04.Beginning
- 05.NEW HORIZON
- 06.Who Is
- 07.Overflowing
- 08.Rendaman
- 09.Pendulum
- 10.Red Light
- 11.シナプスの砂浜
- 12.Milestone
- 13.Out of Control
- 14.Like a Shooting Star
- 15.Around the Clock
- 16.きらめきの花
- 17.November 15th 【ENCORE】
- EN1.BLUE SHADOW
- EN2.Dream in the Dark 【W.ENCORE(会場のみ)】
- WEN1.Perfect Sound
お知らせ
SPECIAL ONE-MAN LIVE
“BEGINNING 2020” 振替公演
2021/02/27(土)東京 新木場STUDIO COAST
COUNTDOWN JAPAN 20/21
2020/12/27(日)、12/29(火)〜12/31(木)
千葉 幕張メッセ国際展示場1〜11ホール、イベントホール
COUNTDOWN JAPAN 20/21
2020/12/27(日)、12/29(火)〜12/31(木)
千葉 幕張メッセ国際展示場1〜11ホール、イベントホール
※Nothing’s Carved In Stoneは12/31(木)に出演
ARABAKI ROCK FEST.20×21
2021/04/29(木・祝)〜05/02(日)
宮城 みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。