ナッシングスの「寄り添う音楽」が結実した瞬間――Zepp Tokyoワンマンをレポート!
Nothing’s Carved In Stone | 2020.01.23
昨年10月2日の恵比寿LIQUIDROOMを皮切りに「By Your Side Tour 2019-20」をスタートさせたNothing’s Carved In Stone。このツアーはアルバム『By Your Side』を掲げつつ、昨年いっぱいは若手バンドを迎えての対バン形式、年が明けた1月9日のZepp Tokyoからはワンマンという、2段構えの意欲的なものだ。EMTG MUSICでは対バンツアーの初日である恵比寿LIQUIDROOM公演をレポートしたが、一発目とは思えない熱量でのパフォーマンスに圧倒されたのを覚えている(参考記事:新進気鋭の若手バンドとまわる9年ぶりの対バンツアー、初日をレポート!)。昨年、間違いなく多くのバンドから刺激を受けたであろう彼らが、ワンマンでそれをどう爆発させるのだろうか。
会場に入ると、ステージ前は幕で覆われていた。どんなキッカケで幕が落とされるのだろう……と、あれこれ妄想しているうちに、場内のBGMが大きくなり、照明が暗転。直後にスクリーンには映像が流された。そこには“Who is the hero?”……など、『By Your Side』の1曲目「Who Is」の歌詞が浮かび上がる。この流れで本編は「Who Is」でスタート。ステージの背景にはジャケットのアートワークが飾られ、一気に『By Your Side』の世界に引き込んでいく。2曲目では2016年リリースのシングル曲「In Future」が飛び出し、エモさ全開のサウンドに場内のテンションが急激に上昇。アグレッシブでありながら、強烈にキャッチーなサビを持つ彼らの音楽には、いつもながらワクワクさせられる。
村松拓(Vo/Gt)は「さぁ、いけるところまでいこうぜ! 東京!」と観客を煽り、「Blow It Up」へ。続く「The Poison Bloom」では、大喜多崇規(Dr)から日向秀和(Ba)、そして生形真一(Gt)が次々と音を回し、息の合ったバンドアンサンブルを見せつける。このあとも「ツバメクリムゾン」や「YOUTH City」といった過去に発表した楽曲を交え、変化を加えながらライブが進行していった。ちなみに終演後、村松は「久々の曲もあるし、セットリストは難しかった」と語っていたが、非常にいいマッチングだったと思う。7曲目の「きらめきの花」では、日向が手拍子を促し、サビでは観客全員が手を左右に振って見事な一体感を演出。ステージとフロアの距離感がグッと近くなっていった。
前半はひたすらアッパーに攻めてきた彼らだが、チェンジアップの時間帯もしっかり設けられている。中盤ブロックでは、アルバムから「The Savior」や「Still」といった深みのある曲が披露され、表現力の幅広さで観客を圧倒。Zeppというハコの中で鳴らすと、また曲のスケール感が増す感じだ。曲が終わると場内から拍手が起こる。この聴かせるブロックを締めたのは「シナプスの砂浜」。村松がアコースティックギターを弾きながら切々と歌い上げ、歌そのものを際立たせていく。その姿は、まさに聴く者の側に寄り添うような穏やかさがあった。
さて、本編は次第に後半戦へと突入し、再び“動”のブロックへ。生形の個性あふれるギターリフが印象的な「Milestone」、また「One Thing」や「Alive」など『By Your Side』からのナンバーを連発。会場には熱狂的なうねりが戻ってきた。
ラストスパートを前に、村松はようやく長めのMCでファンに語りかける。
「明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします! 『By Your Side』は、(バンド結成から)10年経ってようやく作れました」。彼は「自己満で音楽を作ってきたこともある」と告白しながらも、ここでついに“By Your Side”=“みんなの何かの力になりたい”と思うに至ったと、アルバムへの思いを語った。そして「うそっぱちは言わねーよ! いけるところまでいこう! いけるか!」と、ファンとの絆を一気に束ねていった。
後半ブロックも、アルバム曲の合間に鉄板曲が食い込むというおいしい並び。「Spirit Inspiration」「Around the Clock」「Kill the Emotion」、そして多くのバンドマンたちに衝撃を与えた「Out of Control」などで、熱いグルーヴを放出。まさに能力全開放とばかりに、観客に向けて音をぶつけていた。
本編ラストは「Music」。自在に絡み合うドラム、ベース、そしてギターが織りなすスリリングな出だしから、広がりのあるサビでは《僕らが鳴らすミュージック/心を預けていけるような/いつか不意に孤独になるけど/大丈夫僕らは共に行ける》と、力強く歌われていく。今の彼らが言いたかったのは、こういうシンプルなメッセージなのだと思う。ライブが進むにつれて、バンドが言いたいことが浮き彫りになっていったように感じられた。ここまで作り込めたセットリストを堪能できるのは、やはりワンマンならではだ。
アンコールは、『By Your Side』の中でもひと際優しいメロディーを持つ「Bridges」で始まった。激しさだけでなく、温かさも加わったのはバンドの大きな変化だろう。演奏でライブを盛り上げるばかりでなく、感情に訴える熱さ、ファンへの思いあればこそ、楽曲の説得力が増す。彼らはそんなロックバンドのメンタリティーをしっかり育んできたのだ。ナッシングスのライブを未体験の人がいるなら、ぜひライブを体験するべきだと思う。最後に村松は「本編中、熱いことを言いましたけど、でも、本心です」と付け加え、「Beginning」へ。アルバムのラスト曲でキッチリとライブを終結させたところにも、こだわりが感じられた。全体を通して『By Your Side』に詰め込んだ決意が、痛いほど伝わる内容だったと思う。MCでは「新曲を作ろうっていう話もしてます」と、これからの展望も語られ、すでに次のステージを見据えていることも明かした。この先のストーリーには、どんなものが描かれるのだろうか。ただひとつ言えるのは、これからもナッシングスはファンに寄り添う曲を生み出してくれるのは間違いないということだ。
【取材・文:海江敦士】
【撮影:西槇太一】
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リリース情報
By Your Side
2019年09月25日
Silver Sun Records
02.One Thing
03.Blow It Up
04.Alive
05.Bridges
06.The Savior
07.Kill the Emotion
08.Music
09.Still
10.Beginning
セットリスト
By Your Side Tour 2019-20
2020.1.9@Zepp Tokyo
- 1. Who Is
- 2. In Future
- 3. Blow It Up
- 4. The Poison Bloom
- 5. ツバメクリムゾン
- 6. YOUTH City
- 7. きらめきの花
- 8. The Savior
- 9. Still
- 10. シナプスの砂浜
- 11. One Thing
- 12. Milestone
- 13. Alive
- 14. Spirit Inspiration
- 15. Like a Shooting Star
- 16. Around the Clock
- 17. Kill the Emotion
- 18. Out of Control
- 19. Music 【ENCORE】
- 1. Bridges
- 2. Beginning
お知らせ
SPECIAL ONE-MAN LIVE
“BEGINNING 2020"
2/27(木)東京 新木場STUDIO COAST
Suspended 4th
“GIANTSTAMP TOUR II TURBO"
2/9(日)東京 渋谷TSUTAYA O-WEST
SIX LOUNGE TOUR 2020
“THE BULB"
2/15(土)福島 郡山HIPSHOT JAPAN
SUPER BEAVER 自主企画
「現場至上主義 supported by TOWER RECORDS」
3/10(火)愛知 名古屋DIAMOND HALL
w/ SUPER BEAVER / LOSTAGE
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。