Beemerに贈られたクリスマスプレゼント、4人との近い距離感で届けられた“Emotional”徹底レポート!
THE BEAT GARDEN | 2020.12.26
ひと足早いクリスマスプレゼント、いや、なんなら今日がもうクリスマスでいいんじゃないかと思えてしまうくらい、かけがえなく温かな格別の夜だった。4人から手渡される音楽、そこに宿った無限の想いに胸いっぱい満たされる幸福。画面の向こうとこちらの距離感もおそらくこれまででいちばん近かったのではないだろうか。12月20日に開催されたTHE BEAT GARDENの生配信ライブ、そのタイトルも「The Beat Garden on line live―Emotional―」。11月の「The Beat Garden on line live―Roots―」に続き、コンセプトを掲げて2ヵ月連続で行われた生配信ライブの、いわば後編だ。“Roots”をテーマにデビュー以来、グループの音楽性として標榜してきた「エレクトリック・ダンス・ロック」に回帰して躍動感溢れる歌とパフォーマンスで魅せた前回とはがらりと趣を変え、バラードナンバーを中心にメッセージ性を大切にしながらまっすぐに歌を届けようという今回。《“Emotional”の会場は冬がすごく似合う場所なんですよ。ひと足先にクリスマスパーティーをするような雰囲気でお届けできたらなと思ってます。THE BEAT GARDENでこういう雰囲気とセットリストでライブをしたことは一度もないですし、“Roots”ともまったくテイストが違うので新鮮な感覚で観ていただけるんじゃないかな》と当サイトでの「マリッジソング」インタビュー時、最後にこの生配信ライブについてそう語ってくれたUの言葉どおり、開演と同時に画面に広がった光景のなんと目に新しく、心躍らされたことか。
まるで映画の始まりを思わせるオープニング映像を経て、カメラがゆっくりと4人の姿を捉える。彼らが佇んでいるのはライブハウスのステージでも撮影スタジオのホリゾントでもなく、大きな本棚をはじめアンティークな家具たちが配された室内だった。おそらくハウススタジオの一室だから、これも撮影スタジオではあるのだが、今までの生配信ライブとは様子がまったく違う。メンバーがソファや椅子に掛けている姿がまずもって新鮮であり、部屋の広さも比較的こじんまりとしていて、テーブルや窓辺に灯るろうそくのやさしい光も含めて実にアットホームな雰囲気なのだ。そうしたなか、1曲目として歌い上げられたTHE BEAT GARDENのクリスマスソング「Snow White Girl」がときめきムードを加速させ、「Promise you」で一気に甘やかな昂揚へと誘う。通算3回目とあってずいぶん配信という状況にも馴染んできたらしく、折りに触れ、カメラ目線で画面越しのBeemer(※THE BEAT GARDENファンの呼称)を指差したり、歌いながらも気持ち良さそうに笑みを浮かべたり、いつになくリラックスした表情の4人。画面を隔てていても届けたい相手がたしかにそこにいるということ、そして繋がっていられるという実感を過去2回ではっきりと掴めたことも、その大きな要因となっているのだろう。そんな彼らを観ていれば、こちらだっておのずと顔がほころんでくる。「今日はね、こういった温かい雰囲気で、バラードを中心にお届けできたらと思っております。懐かしい曲も織り交ぜて歌っていきますので、この肌寒い季節、少しでも温かい気持ちで過ごしてもらえたら」というUの挨拶を挟んで披露されたのは「横顔」だ。こんな序盤で、しかもウエディングソングが連投されるなんて、普段のライブではなかなかないだろう。スケール感のあるトラックがふたりの未来を希望で満たす「Promise you」と、アコースティックギターの音色がささやかで愛おしい日常に寄り添うような「横顔」。曲調も切り口も異なれば、当然ながら歌のアプローチも違うこの2曲に彼らの感性と表現力の振り幅を改めて見た気がする。
ちなみに前回、前々回同様、この“Emotional”の配信も配信視聴専用アプリ『FanStream』を通じて行われたのだが、配信ライブのたびにメンバーとBeemerとのコミュニケーションが進化していくのがなんとも面白い。MCのたびにメンバー各自、ワクワクとタブレットを覗いては次々に届くメッセージを読み上げ、それをきっかけに発生するメンバー同士のやりとりにBeemerがまたリアルタイムなスピード感でツッコミのコメントを寄せ、と、まるでステージと客席で本当に言葉を交わし合っているような錯覚すら覚えるほどだ。MASATOの発案による“バラード調”での自己紹介では、何を思ったかウィスパーボイスで囁き始めるREI、「♪エモ~ショ、ナ~ルへ、ようこそ~!」と独自のメロディで美声を轟かせるMASATO、“バラード調”というお題はどこへやら唐突に本名を名乗ってメンバーを沸かせるSATORU、「Uです! 今日はコーンスープよりあっためちゃうぞ」と最後にハートマーク付きなテンションで物議を醸すU、といかんなく個性を発揮。歌っている姿からは想像もつかない素顔の魅力で、今日も画面の前にいる一人ひとりのハートを鷲掴みにするあたり、本当にニクい。
カラリと明るいサウンドとファンキーな横揺れのグルーブに身を任せ、SATORUも一緒になって踊った「サイドディッシュ」。バラード中心の“Emotional”セットリストの中でも実にいいアクセントとなって、ほどよく4人とBeemerのテンションをほぐした直後、再びアコギの人肌を感じさせて柔らかな、しかしながら、ちょっと聴き覚えのない旋律がしっとりと流れ始めた。これは一体……?と記憶を総動員して楽曲のサーチに当たるも間に合わず、Uが歌い始めてしまったのだが、その歌詞に驚いた。<回る くねる バシッと止まる>……って「ダンシング・マン」やないかい! そう、「ヒューマン」と双璧を成すTHE BEAT GARDEN屈指のおバカソングにして最強に人生を肯定してくれる、2ndアルバム『メッセージ』の中でも異色の名曲ががまさかのアコースティックアレンジでさらなる名曲に生まれ変わったのだ。なんと見事な発想力、“Roots”に引き続き今回もリアレンジを一手に担ったREIの手腕にも唸らずにいられない。これにはBeemerも喝采の嵐で、「ちょっと大人な感じのダンシング・マン」「知らない曲だと思いました」「エモシング・マン」などのコメントが殺到。それを読んだメンバーの「してやったり!」な笑顔もいい。せっかくのコンセプト生配信ライブだ、ここでしか味わえない音楽、“Emotional”だからこその楽しみ方を届けたいという彼らの意気がひしひしと伝わってくる。
Uいわく「THE BEAT GARDEN史上いちばん歌ってこなかったバラード」であり、「最後に歌ったのはインディーズのとき」と紹介された「未来」は、この曲が収録されている1stミニアルバム『Air』の音源とは3人がそれぞれ担当する歌のパートを替えて披露。言うなれば2020年版「未来」だろうか。オリジナルではUがほぼ主旋律を歌っているが、ここでは1番のAメロをU、BメロをMASATO、2番のAメロはREI、BメロはMASATO、サビは3人のコーラスで聴かせるというボーカルワークで、今のTHE BEAT GARDENだからこその厚みある表現力でオーディエンスを切なるその世界にグッと引き込んでいく。同じくインディーズ時代の楽曲ながら、さらに時代を遡り、1stフルアルバム『WILL』収録の「FIRE」をバラードバージョンにリアレンジ。アグレッシブなダンスサウンドは影を潜め、場の空気を艶やかに染めあげる大人のR&Bナンバーに。流麗なイントロがたっぷりと加えられた夏の恋愛ソング「花火」では、それまで着席していたメンバーがついに全員立ち上がり、フロント3人は入れ替わり立ち替わりのフォーメーションで全身全霊で歌を放てば、俄然ライブらしさも増すというものだ。
それにしても今日は本当に歌が強い。バラードが中心というライブの特性上、歌により重きが置かれるのは当然とも言えるが、彼らの歌声がこれほどにも生身に紐づいているのだということを、今にしてつくづくと知った心地がする。喉だけではない、声帯だけによるものでもない、もっと体の深いところから自身を削り出すようにして、一音一語生み放たれる歌声。Uの歌はほかの誰でもなくUという人の形をして、その内面をも惜しげなく聴き手に差し出す。それはREIも、MASATOも然りで、おそらく3人の歌声には彼らを背後でずっと見守るSATORUのエッセンスも練り込まれているに違いない。この4人でなければ、この歌にはならないのだという当たり前のような事実に今さらながらに気づかされ、少し茫然としてしまうくらい、この日の4人が発するものには唯一無二の何かが孕まれていた。もしかしたら、それを魂と呼ぶのかもしれないなんて、キザったらしいことを考えてしまったりもするほどに。
小さな幸せが実はとても大きなものだったこと、その気づきの瞬間を歌にしたという「そんな日々が続いていくこと」、上京をテーマに上手くいかない日々と「それでもいつかは」と己を奮い立たせる想いを“光”に託して綴られた「光」と、後半戦はまさしくエモーショナルな、つまり感情のど真ん中を貫いて容赦なく揺さぶる、直球のバラードが立て続けに並んだ。すべてのBeemer、一人ひとりに向けて書かれた「みんなへ」の前にはUが、コロナ禍という思いもよらない事態に見舞われた2020年を振り返り、嘘偽りない想いを語る場面もあった。THE BEAT GARDENにとって活動の大切な軸のひとつであるリリースイベントができなくなってしまったこと、ひとり家で過ごすことに慣れるにつれ「みんなもこんなふうに慣れていってしまうのかな」「今までの出会いとか想いとかそういうのも全部、振り出しに戻っちゃうのかな」と怖くなったこと、でも自分の不安ばかりをみんなに伝えるのはずるいからと、とにかく曲を作ったこと。結果として3曲、配信リリースできたこと、最新曲「マリッジハニー」では初めてLINE MUSICにてリアルタイムランキング1位を獲得したことにも触れ、「Beemerってほんとすごいなって思いました。僕らもみんなも、悔しさやもどかしさ、歯痒さがグツグツしてると思うけど、それが来年、すごい形で芽生えてくれることを信じてます。THE BEAT GARDENはもっともっと大きくなります。『何言ってんの』って笑われるかもしれないけど、それでもいい。そうなれたときに、俺らにはBeemerっていうこんなにすごいファンがいるんだって自慢したいと思ってます。どんなに大きくなっても、遠くばっかり見て、いちばん近くを見なくなるような、そんな自分たちには絶対ならないから。今いちばん近くにいてくれてるみんなとどこまでも行きたい」と4人を代表して誓う。そうして歌われた「みんなへ」が、沁みないはずがない。これまた『WILL』に収録の「Konayuki」を儚くも情熱的に歌い上げて、最後は彼ら4人が歩んできた道のりを描いた「エピソード」で「The Beat Garden on line live―Emotional―」は締めくくられ……なかった。
あたかもこれで終わりのような挨拶のあと、エンドロールが流れ始めたと思いきや、映像が切り替わり、映し出されたのはサンタクロースに扮したSATORU。これがアンコールへの布石でなくて、なんだろう。最後の最後まで手を替え品を替え、とにかくBeemerを喜ばせたくて仕方がないのだ、彼らという人たちは。案の定、画面は再びアットホームな室内に。そこには揃って“Emotional”Tシャツに着替えた4人がいて、そのまま「夏の終わり 友達の終わり」へと突入、思えばこれがライブ初披露となるのではないだろうか。歌い進むに連れて増すわちゃわちゃ感。2番ではREIが後ろを振り返り、SATORUに手招き。4人仲良く、ふざけ合いながらひとつのフレームに収まる光景も微笑ましく、本編以上にいっそう彼らが近しく感じられてくる。曲が終わるや、「アンコールありがとう! みんな、サンタクロースの映像はどうだった? ほんとに終わると思ったんじゃない?」といたずらっぽく声をはずませるU。「やっぱり自分たちはライブが好きなんだなって再認識できたし、この会えない期間でもみんなが離れずにずっと側にいてくれたっていうことが何よりもうれしい」とREIが今日の感想を告げ、MASATOも「こうしてみんなと音楽で一緒になれたことを本当に幸せに思います。Beemerが(この場に)いない未完成さはちょっと悔しいけど、来年こそは会いたい。僕らも踏ん張るんで、みんなも踏ん張って心繋いでいてください」と呼びかける。「楽しかったですね。始まる前に『始まったら終わるの早いんだよな』って言ってたんですよ。そしたら本当に早かった」とSATORUも名残惜しそうだ。
「今回、改めて歌詞を見返して、THE BEAT GARDENの曲は、もともとテーマが決まっていて書き下ろした曲と、自分たちのことをそのまま書いたようなドキュメンタリーな曲、大きく分けるとそのふたつなのかなと。でも、どの歌詞も書くときには嘘をつかないっていつも思ってて。テーマのある曲も、ドキュメンタリーな曲も、根っこにあるのは全部みんなのことだなって感じました。なので来年以降もみんなのことを書かせてもらえたらうれしいです。たくさん曲があるなかで、たくさんミュージシャンがいるなかで、今日はTHE BEAT GARDENを選んでくれてありがとう。最後にこの期間、いちばんみんなと一緒に歌いたかった曲を。次に会えたときは思いっきり叫び合おう」。
そう約束するU。THE BEAT GARDENにとって2020年最後のワンマンライブとなるこの日のラストを飾ったのは「あのね」だった。君こそが歌う意味でここにいる理由だから、と迷いも衒いもなくまっすぐに歌い、お互いに視線を交わしては声を重ねる彼らの体温がダイレクトに届く。最後の最後までなんて温かいのだろう。
セットリストが1曲もかぶらない、趣旨のまったく異なるライブを2ヵ月連続で敢行するのは並大抵のことではなかったと推察する。きっとたくさんの困難も立ちはだかったことだろう。だが、それでもTHE BEAT GARDENは果敢に乗り越え、チーム一丸となって見事に“Roots”“Emotional”を完遂させた。大きな成功を収めた彼らがこの先に何を見せてくれるのか、すでに今、楽しみで仕方がない。2021年、さらなる飛躍を遂げるTHE BEAT GARDENからますます目が離せなくなった。なお、12月31日(木)23:59まで、本公演のアーカイブ配信が行われる。これだけ書いても書ききれていないトピックスはまだまだあるし、何より百聞は一見にしかず、だ。見逃してしまったという人はぜひこの機会に彼らの歌声の真価に触れてほしい。
【取材・文:本間夕子】
【撮影:Yuto Fukada】
<アーカイブはこちらから>
https://tixplus.jp/feature/thebeatgarden_emotional/
[視聴期間]
12月31日(木)23:59まで
セットリスト
THE BEAT GARDEN
on line live―Emotional―
2020.12.20
- 01.Snow White Girl
- 02.Promise you
- 03.横顔
- 04.サイドディッシュ
- 05.ダンシング・マン
- 06.未来
- 07.FIRE
- 08.花火
- 09.そんな日々が続いていくこと
- 10.光
- 11.みんなへ
- 12.Konayuki
- 13.エピソード 【ENCORE】
- EN1.夏の終わり 友達の終わり
- EN2.あのね