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「エレクトリック・ダンス・ロック」のルーツをたどり、自由に大胆に踊り明かした一夜。“Roots”徹底レポート!

THE BEAT GARDEN | 2020.12.03

 7月に初の配信ライブ「THE BEAT GARDEN one man live 2020『THE NEST ON LIVE』」を大成功に収めたTHE BEAT GARDENが次に挑むのは“Roots”“Emotional”という2つのコンセプトを掲げた2ヵ月連続生配信ライブ。公式サイトでも発表されているように、前者は“デビュー以来掲げてきた「エレクトリック・ダンス・ロック」をテーマに心とカラダを激しく踊らせるライブ”、後者は“バラード楽曲を中心に構成し温かい空間のなか、メッセージ性を大切にまっすぐ歌を届けるライブ”とそれぞれ異なるアプローチでTHE BEAT GARDENの音楽の魅力をクローズアップし、彼らがBeemerと愛情を込めて呼ぶファンたちのもとへしっかりと届けようという試みだ。そうして11月28日に行われた「The Beat Garden on line live―Roots―」は、彼らが初のMV「Sky Drive」を撮影したスタジオを会場に、ライブではレアなカップリング曲やインディーズ時代の楽曲もふんだんに盛り込まれたセットリストで、まさしく“Roots”の名に相応しい配信ライブとなった。

 開演時刻を回ると同時にSEとともにオープニングが流れ、光の中に佇む4人が映し出される。途端に高鳴る胸の鼓動、「会えた!」という実感が全身を巡るこの感覚は配信ではあれど、やはり格別だ。だが、そんな感慨に浸る隙も与えず、4人はいきなり「Sky Drive」を投下。観る者を一瞬にして熱狂に引き込むのだからたまらない。「THE NEST ON LIVE」ではアンコールのラストを飾ったこの曲が今日の1発目だというのも、前回から今回まで4ヵ月間が単なる空白ではなく実はちゃんと繋がっていたのだという彼らからのメッセージでもあるようで、なんだかうれしく思えてしまう。本当にこの瞬間を待ち侘びた。のっけからダイナミックに身を躍らせ、全力で声を放つU、REI、MASATO。その背中を守るSATORUも激しく揺れている。これぞTHE BEAT GARDENのライブだ。クールでエッジーな音像ながらサビで一気に爆発する「SLY」、<HELLO HELLOでSLY>と画面のこちら側で一緒になって叫ぶ快感といったらこの上なく、さらに「One hundred」と畳み掛けられれば、もはや画面越しであることさえ忘我の彼方だ。前回同様、今回も配信視聴専用アプリ『FanStream』を通じて配信が行われたが、2回目とあってBeemerもすっかり慣れたもの。搭載されたコメント機能やアクション機能を駆使して大盛り上がり。メンバーもMCのたびにタブレットを覗き込み、届いたコメント一つひとつを嬉々として読み上げるなど、前回以上にBeemerの存在を身近に感じられているのがよくわかる。

 前半戦ながら早くも魅せどころとなったのは、Uいわく“英詞が多いラブソング”パート。この日のためにREIがサウンドをリメイクしたという、スペシャルな3曲だった。想う気持ちを風船に喩え、ずっとそばにいるからと誓う「Carried away」の切々とした思慕、メジャー1stアルバム『I’m』に収録の隠れた名曲にして晴れてライブでの初披露となった「Heart Beat」は温もりを滲ませて彼らの内に鳴る柔らかな鼓動をイメージさせもする。大人の顔をしたミディアムスローなR&Bナンバーも彼らにはとてもよく似合うのだ。なかでも目をみはったのは「Just like strange rain」だった。オーロラを思わせる青く幻想的な照明に包まれてキーボードの鍵盤に指を滑らせるREI。流麗なその音色にU、MASATOが声を重ね、エモーショナルにその場の空気を震わせる。ときに激しく、ときに繊細に、彼らの頭上に注ぐ光はまさしく“Just like strange rain”そのもので、完成されたひとつの映像作品のような美しさにも息を呑んだ。

 かと思えばシリアスな表情から一転、インディーズでリリースされたアルバム『WILL』から2曲を、と告げて「SHAKE IT OUT」に突入すると、途端に全員の表情が無邪気なそれに豹変するから面白い。いたずらっぽく笑いながらカメラ目線でREIの肩に手を回すU、2番で今度はMASATOのもとに寄り添うと、REIもふたりを捉えるカメラのフレームに入り込み、3人でSATORUに視線を送る場面などなんとも楽しげで、直後に<Turning DJ>のフレーズがくるあたり、そしてカメラもばっちりSATORUに切り替わるあたり、メンバーはもとよりスタッフも同じくらいこのライブを楽しんでいること、そしてその楽しさを丸ごとBeemerに届けようとしていることがまっすぐに伝わってくる(前後するが「Sky’s the limit」でも<DJ right now ボリュームを上げて>のフレーズを歌いながらUがSATORUを指してはアイコンタクトを取っていて、ささやかながらとても印象的だったことも、ここに記しておきたい)。「手を挙げて!」「いいよ!」「HEY!HO! もう1回!」と画面の向こうにいるBeemerに呼びかけ、目の前にはいなくともたしかな一体感を作り上げた「WELCOME TO THE NEW WORLD」。「次は『社内マリッジハニー』というドラマの主題歌を書き下ろさせていただいた楽曲です。皆さんの大切な人を思い浮かべて聴いてもらえたらうれしいです。今日はライブ初披露です」とUが告げて歌われた「マリッジソング」は、この時点ではまだリリースされていない新曲であるにもかかわらず、主役級の存在感で聴く者の心を捉えたに違いない。<Oh マリッジ>というインパクト絶大なサビから始まる歌い出し、<止められないほど好きだ><「キスをして」と甘えるの><「他の誰かじゃだめ」だと言って>など少女漫画原作のドラマに書き下ろしたとあって胸キュンなフレーズも満載な一方、甘さを前面に押し出し過ぎない洗練されたトラックとのバランスも実に絶妙で、それが現在のTHE BEAT GARDEN、すなわちエレクトリック・ダンス・ロックの枠組みを超え、歌そのものを大切にして届ける、そんな姿勢を手に入れた今の彼らにしっくりとハマる。思えば、ルーツを辿るということは相対的に“今”を浮かび上がらせるということでもあるのではないか。この日にラインナップされた曲の半数はインディーズ時代のものであり、それ以外もデビュー間もない頃の楽曲がほとんどだが、そういえば不思議なほど懐かしいという感情が湧いてこない。ライブが始まる前にはたしかに懐かしさを求めていた気がするのに、蓋を開けてみれば、ただただ、今なお色褪せず、むしろ新鮮にさえ響く楽曲たちに瞠目し、しなやかに躍動する彼らのパフォーマンス、曲が変わるごとに表情も佇まいも変えて胸の奥深くを揺さぶる歌にくぎづけにされていた。それってつまり彼らの“今”に圧倒されていたということではないだろうか。

 希望感に溢れるトラックに朗々と重なる歌声を力強くどこまでも飛ばした「The Freedom」、ハードなギターリフが特徴的なロックチューン「FLOWER」では4人でガンガンとタオルを回して暴れ回る。「FLOWER」でSATORUが魅せた華麗なスクラッチプレイは原曲にはないのだが、これまた今日のためにREIが新たに作った見せ場だという。これにはBeemerも大喜び、一緒になってタオルを回したという報告とともに届く自身への賛辞のコメントに「サブスクの『FLOWER』はこっち(スクラッチ入りのバージョン)にしよう!」とわかりやすく調子に乗るSATORUが微笑ましい。

 「2020年がすごく楽しみだったんです。もともと今年のちょうど今ぐらいにツアーを回るつもりだったんですけど、準備していたのがすべてダメになってしまって。でも僕らに限らず、すべての人が今年は想像していた年じゃなかったんじゃないかなと思います」。

 本編があと2曲となったところで、コロナ禍に見舞われたこの1年を振り返り、静かに胸の内を語り始めたU。実際、周りにも大変な想いをしている友人や知人がいること、もしも自分がすでに大きなステージに立てていたら、その人たちを助けられたのかもしれないと悔しさを滲ませ、今年は「なんでできないんだろう?」ということを何度も何度も自分に問いただしていたと明かす。そして「(Beemerから届いた)DMとか手紙を開くと『歌い続けてくれてありがとう』とか『THE BEAT GARDENの音楽でいつも支えてもらってます』とか、みんなもすごく大変なはずなのにたくさん伝えてくれて。そんなみんなに、誰よりも、どのアーティストよりも、寄り添える音楽を作りたい――俺らはまだまだ小さいけど、でも大きくなれたときも絶対にそうであろうと思いました。今日も目の前じゃないけど、そばにいてくれてありがとう」と心からの感謝を告げた。「次に歌う曲は、まだ自分が音楽もやってなくて、夢も持ってなくて、なんにもなかったときの想いと、自分が志すものが出来て、たくさんの出会いがあって別れがあって、出来上がった思いを綴った曲です」と言って届けられた「ぬくもり」の、なんと沁みることか。グループ結成から8年、試行錯誤も紆余曲折も味わってきた道のりを経て辿り着いた彼らの揺るぎない“今”の、嘘のない想いが温かく広がる。ラストは「Never End」だった。

 「ヒューマン」をBGMにした面白動画を挟み、次に映し出されたのは、着替えを済ませ楽屋でくつろぐ4人の姿だ。わちゃわちゃとコントのようなやりとりからアンコールに戻るや、一番乗りしたMASATOが3人を待たず「♪This Re;story これがアンコールさ~! フ~~!」としてやったりに歌い始めるというなんとも粋な演出で「Re;story」がスタート。そこからはもう終始一貫して笑顔だった。“Roots”Tシャツに身を包み、カメラの前で袖に施されたロゴをお揃いのポーズでアピールする3人の後ろでよく見るとSATORUも同じポーズをしていたり、曲中、MASATOの歌い出しを真似して歌うSATORUに声を上げて笑ったり、とにかく自由で自然体。こうした表情を臆さず晒せるのもカメラの向こうにいるBeemer一人ひとりを感じられているからこそ。みんなも一緒になって笑ってほしい、そう願っているからだろう。「また生で、ライブで会おう」と約束を口にし、オーラスは「BAD THE NIGHT」で締めくくられた。この曲のメロディは彼らがTHE BEAT GARDENになる前、前身グループで活動していた頃に出来たという。正真正銘、ルーツと呼ぶべきサウンドが今も彼らを衝き動かしている、鳴り渡るエレクトリックなビートを凌駕してタフな生身の歌声にそう確信する。

 なお、本公演は12月2日19:00から12月13日23:59までアーカイブ配信される。ここに書き切れなかった4人の仲睦まじいMCやパフォーマンス中の絡み、REIの巧みなラップなどなど、ぜひその目と耳で確かめてほしい。もしまだTHE BEAT GARDENに出会っていないのならば、この配信をあなたと彼らのルーツにするのもいい、と前回に引き続き力強くおすすめする。

 また、冒頭にも記したとおり、12月20日には生配信ライブ「The Beat Garden on line live―Emotional―」が開催される。今回とはがらりと趣を変えたスタイルで今度は何を見せてくれるのか。楽しみに待ちたい。

【取材・文:本間夕子】
【撮影:Tsubo】



<アーカイブはこちらから>
https://tixplus.jp/feature/thebeatgarden_roots/
[視聴期間]
12月13日(日)23:59まで

tag一覧 J-POP 配信ライブ 男性ボーカル THE BEAT GARDEN

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リリース情報

Digital Single「マリッジソング」

Digital Single「マリッジソング」

2020年12月07日

ユニバーサルシグマ

01.マリッジソング

セットリスト

THE BEAT GARDEN on line live
―Roots―
2020.11.28

  1. 01.Sky Drive
  2. 02.SLY
  3. 03.One hundred
  4. 04.Sky’s the limit
  5. 05.Carried away
  6. 06.Heart Beat
  7. 07.Just like strange rain
  8. 08.SHAKE IT OUT
  9. 09.WELCOME TO THE NEW WORLD
  10. 10.マリッジソング
  11. 11.The Freedom
  12. 12.FLOWER
  13. 13.ぬくもり
  14. 14.Never End
  15. 【ENCORE】
  16. EN1.Re,story
  17. EN2.BAD THE NIGHT

お知らせ

■ライブ情報

The Beat Garden on line live
―Emotional―

12/20(日)19:00〜生配信
※アーカイブ配信期間:12/24(木)19:00〜12/31(木)23:59

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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