今の自分たちの視線がそのまま反映されたスキマスイッチの新曲
スキマスイッチ | 2011.02.09
スキマスイッチの2011年最初のリリースは、名曲「マリンスノウ」('07年)以来、約3年半ぶりのバラード・シングル。「さいごのひ」とタイトルされたこの曲のなかで彼らは、痛々しいニュースのことにも触れながら、”世の中にはいろんなことがあるけど、僕が言いたいのは、君が好きということだけ”という切実な思いを表現している。「いまの自分たちの視線がそのまま反映されている」という大橋卓弥のコメントどおり、生々しいエモーションが込められた楽曲だと思う。
- EMTG : 2010年はかなりライブが多い1年でしたね。
- 大橋卓弥:そうですね。全国ツアーも過去最多の本数だったので。夏フェスもあったし、秋のイベントもいくつかあって。
- 常田真太郎:でも”あー休みたい”って感じじゃなかったんですよ。ライブ自体が楽しいというか」
- 大橋:うん。
- EMTG : ライブのスタイルが確立できた年だったのかも。そして2011年最初のシングルは、「マリンスノウ」('07年)以来のバラードですね。
- 常田:はい。どうでした?
- EMTG : いい曲だなって素直に思いました。スキマスイッチの王道バラードの雰囲気はしっかりキープしつつ、生々しいバンド感も加わっていて。
- 常田:なるほど。”次のシングルはバラードなのかな”ていう感じも何となくあったんですけど、その前にシンプルでいい曲を作ってみたかったんですよね。そういうものって、あんまり作ってこなかったかもなって。
- EMTG : 緻密に作り上げられた楽曲のほうが多かったかもしれないですね、確かに。
- 常田:そうですね。今回はまず、ふたりでディスカッションするところから始まってるんですよ。
- 大橋:そうだね。共同作業の部分が多かったかも。
- 常田:いつもはある程度作ってから話し合うことが多かったから、逆のパターンですよね。
- EMTG : どんなことを話してたんですか?
- 常田:やってみたかったのは、”世の中にはいろんなことが起きてるけど、僕が言いたいのは、君が好きということだけなんだ”っていう歌だったんですよね。そうすれば、時事っぽいことも含めながら、いまのスキマスイッチが描けるのかな、と。
- EMTG : そういうテーマに興味が向くようになったのって…。
- 大橋:最近ですよね。年齢のことも関係あるだろうし、スキマスイッチとして活動を続けていくなかで、少しずつスケールの大きいことも歌えるようになってきたというか。ラブソングを書くときって、”スキマスイッチ君”という主人公を設定してたんですよね。恋愛観の違うふたりの間に主人公を置いて、そこでラブソングを書いていくっていう。
- EMTG : そうですよね。
- 大橋:でも恋愛以外のこと--家族とか、親子とか、友達とか--では、意外と”そうだよね”って頷き合うこともけっこうあって。いつもそんな話をしてるわけじゃないんですけど(笑)、そういう部分を僕らなりに表現してみたらどうなるか、っていうところもあるんですよね、今回の曲は。
- 常田:愛をテーマにした曲っていうのは誰もがやってることなんですよ。でも、それをいまの自分たちがやれば、また新しいものになるんじゃないかなって。
- EMTG : 素直に自分たちの思いを表現する、と。シンガーソングライターとしてはきわめて真っ当なスタンスですよね。
- 大橋:”物語を作る”っていうのは、いままでたくさんやってきたんです。そういう曲って当然、出来上がってみると自分から少し遠ざかってるんですよね。でも、これはいまの自分たちの視線がそのまま反映されてるというか。そういう意味では、より人間的になってるのかもしれないですね。
- EMTG : なるほど。「さいごのひ」というタイトルもストレートですね。この曲の大きなテーマである”命”にもまっすぐ繋がっていて。
- 常田:タイトルを平仮名のしたことによって、子どもにも伝わりやすくなったかもしれないですね。まあ、これは後付けなんですけど(笑)。
- 大橋:(笑)でも、そうじゃない?
- 常田:愛ってなんだろう? みたいなことを考えていったときに、僕はやっぱり”死にたくないな”って思うんですよ。すげえ幸せな瞬間があったときも、やっぱり”死にたくない”って思うし。もしかしたら”これが味わえたら、死んでもいい”って思う人もいるかもしれないけど、僕は逆なんですよね。
- EMTG : わかります。
- 常田:”さいごのひ”っていうのは、僕のなかでは希望なんですよ。最後の日が来ないでほしい、っていう思いを込めてるというか。
- 大橋:いろんな意味に取れるのもいいなって思うんですよ。曲を聴き返すごとにタイトルの意味合いも変わってくるかもしれないし、”何で平仮名なんだろう?”って考える人もいるんじゃないかなって。すごくストレートで味がある、いいタイトルだと思いますね。
- EMTG : そうですね。最初にも言いましたが、バラードをシングルにするのは3年半ぶり。特別な思いはありますか?
- 大橋:そんなに重い気持ちはないんですけどね(笑)。シングルを意識してないといえばウソになりますけど、もっと自由に、いい曲ができたら--それが派手でも、派手じゃなくても--リリースしていいんじゃないかって思っていて。
- 常田:うん。そういえば去年って結局、シングルは1枚しか出してないんですよね。
- EMTG : 「アイスクリーム シンドローム」だけですね。
- 大橋:僕らはずっと動いてるんですけど、リリースを待ってる人のなかには”曲を書いてないんじゃないの?”って思う人もいるかも(笑)。
- 常田:”もしかして書けないのか、スキマスイッチ”とかね(笑)。
- 大橋:でも、こういうペースもいいなあと思いますけどね。リリースの数が少ないことがいいってわけじゃなくて(笑)、毎回毎回、”渾身”っていう感じがいいと思うんですよね。こういうふうに音楽を続けていきたいですね。
- EMTG : 「さいごのひ」のような曲が聴けるのであれば、ファンのみなさんも待った甲斐があると思います。2011年の春以降はどんな感じになりそうですか?
- 大橋:まずは制作ですね。
- 常田:1曲1曲ていねいに作っていって、アルバムが出せたらいいな、と。『ナユタとフカシギ』は勢いで作った部分もあるんですけど、その経験を生かしつつ、いい曲を作っていきたいと思います。
【 取材・文:森 朋之 】
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