アジカン新曲2曲収録のコンピレーション。新曲のテーマとは?

ASIAN KUNG-FU GENERATION | 2011.06.29

 アジカンの名物イベント“NANO-MUGEN FES.2011”に向けて、恒例のコンピ・アルバムがリリースされる。内容は、イベントに参加する“ねごと”や“WEEZER”など、ニューカマーから洋楽カリスマバンドまでの豪華なメンバーの曲に加えて、アジカンの新曲2曲が収録されている。

 そのひとつは、チャットモンチーの橋本絵莉子をゲスト・ボーカルに迎えた「All right part 2」。去年、発表した傑作アルバム『マジックディスク』から、さらに進化したアジカンのシンプルなロックンロールが楽しい。

 一方、「ひかり」は東日本大震災から受けたインスピレーションを、♪東京の街で途方に暮れた日々を せめて僕は憶えていよう♪とストレートにつづって、心に深く突き刺さる。

 今、最も充実しているアジカンの4人、後藤正文(vo&g)、喜多建介(g&vo)、伊地知潔(dr)、山田貴洋(b&vo)にきいてみた。


EMTG:新曲「All right part2」を聴いていて、アルバム『マジックディスク』から早くも一歩前進したなっていう感じがすごくした。
後藤:この曲は前回のツアーで、今年に入ってからずっとやってました。これは“NANO-MUGEN 2011”のコンピ・アルバムにめがけて作った曲です。
EMTG:じゃあ、年明けのライブでは、チャットモンチーの橋本さんのパートをケンちゃんが歌ってたの?
喜多:はい、そうです。
後藤:歌ってねーじゃん。オーライ、オーライだけじゃん。
喜多:いや、歌ってた歌ってた。Aメロも、裏声でね。
EMTG:冗談で聞いたんだけど、本当に歌ってたんだ。しかも 裏声(笑)。
後藤:俺、気づかなかったもんね。
EMTG:それはひどいな(笑)。
後藤:ケンちゃん、ギターのリフ弾いてるだけだと思ってた。
喜多:ずっとAメロも歌ってたよ。チャットモンチーの(橋本)えっちゃんが歌う前に、ゴッチ(後藤)が仮に入れてたコーラスのパートを、ライブでは僕が歌ってた。レコーディングでは女性の声を入れたいなって話は作ったときからゴッチが言ってたんで。
EMTG:まあまあ、そのへんで(笑)。コンピをめがけての曲 作りで、テーマについてはどう考えていたんですか?
後藤:テーマは、最初は無意味なものを作ろうと思ってました(笑)。
EMTG:え? 無意味?
後藤:意味がないものっていうか、ありそうでなさそうで、なさそうでありそうな、歌ってて気持ちがいいところを大事にして作っていった。「オーライ、オーライ」って、「アイ・ラブ・ユー」と並んで、ロックンロールの決まり文句じゃないですか。要は歌って踊れば大丈夫みたいな(笑)。音楽って、もっと右脳的な、感覚的なものなんじゃないのっていう、そういう楽しみ方をこの時代にプレゼンテーションできたらいいなと思って書きましたね。だからいろいろ実験してる。言葉のコラージュでもある。
EMTG:具体的には?
後藤:クールな言い回しを探すのは楽しいから、やってみようかなって。『マジックディスク』で意味があって重い歌詞はもう書いたなって思えたから、もっと抽象的で、広がりがあるような歌詞に挑戦してみたいなと思ってました。 口に出して気持ちのいい、日本のロックにのっかる、新しくて面白い言葉を探してみたいなっていう。
EMTG:『マジックディスク』で、情報量と言葉の量を消化したあとに訪れてた心境なのかな。
後藤:そうですね。自分で歌詞がちゃんと書けてる実感があるし、自分は詩人であるって言うことに恥ずかしさがないぐらいのところまではきてるなと思っているので。「All right part2」を書いてるときは、言葉をもう少し実験的にできるかなって思ってました。
EMTG:それと、この曲の8ビートのニュアンスは、以前と変わってるように感じる。
伊地知:普通の8ビートがやっと楽しく叩けるようになってきたところで、わかりやすすぎて恥ずかしいから禁止ってことになっちゃって(笑)。なので、今回は普通にやれてすごく楽しかったです。
後藤:禁止はしてないよ(笑)。
伊地知:ただ、普通に叩くと「なんかそれ以外ないの?」って言われちゃうので。
後藤:僕としては、歌詞だけじゃなくて、もっとドラムもバラバラのコラージュになっていったほうがいいかなって思ってて。でも、今回はプリミティブなところに戻ろうっていう気持ちがあったから、超直球なロックンロールをやってます。
伊地知:やりました(笑)。
EMTG:ベースは?
山田:喜多くんのギター・リフから曲を広げていくっていう作り方だったんですけど、バンドでセッションしながら作る作業は久しぶりだったので、みんな、すごい笑顔でやってました。そのときの感じがそのまま録れたので、バンドの今の開放的な感じが出てよかったなと思います。
EMTG:そしてもう1曲の「ひかり」は?
後藤:震災後、3月中に書きました。
EMTG:ある意味、詩の朗読に近いような歌い方をしてる。
後藤:これは、詞を書きながら曲を作ってるんで、俺の中では完全にフォークです。いわゆる音楽的なことはあまり考えてない。弾き語り用に作った曲で、それをバンドでアレンジしてます。東京の人もホントは被災者だと思っていて。 それでも自分たちよりひどい地域があるから、何かしたい、何か送ろうと思ってスーパーに行っても、物がない。そういう無力感を書いといたほうがいいなと思って、プライドをもって書きました。
自分のおかれた状況、おろおろして、混乱していることを記しておいたほうがいい。と いうか、記しておくべきだろうなと思って。こういう気持ちを「頑張ろう」とか「元気出していこう」って変換できる奴はすごいなと思うんだけど、俺にはそういう回路がないので。へこんでるんなら、へこんだことをそのまま書こうと思ってました。
EMTG:ホントはコンピに入れるのは、「All right part2」だけのつもりだったの?
後藤:はい、こんなことがなければ1曲だったと思います。だけど、「ひかり」を入れられてよかったと思ってます。
EMTG:今回のNANO-MUGENのイベントでは、なるべくみんなが楽しく踊ってくれたらいいね。
後藤:そうですね。僕らに関しては、あんまり深刻じゃない楽曲をレパートリーの中から選んで歌っていこうと思ってます。ぜひ楽しみに来てください。
EMTG:ありがとうございました。

【取材・文 平山雄一】

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リリース情報

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2011

ASIAN KUNG-FU GENERATION presents NANO-MUGEN COMPILATION 2011

2011年06月29日

KRE

[DISC:1]
1. All right part2  / ASIAN KUNG-FU GENERATION & 橋本絵莉子(from チャットモンチー)
2. Arcadia / ASH
3. BACK ON MY FEET / BOOM BOOM SATELLITES
4. さよならティーンエイジ / Dr.DOWNER
5. 夜明け前 / 長谷川健一
6. My Own Worst Enemy / the HIATUS
7. 符思議なチャイム / 磯部正文
8. Over And Over / THE KOXX
9. NEVERLAND / LOSTAGE
10. (It’s not War) Just The End Of Love / MANIC STREET PREACHERS

[DISC:2]
1. コンタクト / モーモールルギャバン
2. Mustang / NADA SURF
3. 透き通る衝動 / ねごと
4. Venus / オオルタイチ
5. Ghetto Burnin’  / PHONAT
6. A Rose Is A Rose (Nano-Mugen Remix) / The Rentals with Masafumi Gotoh
7. CLARITY (STOUT ver.)  / ストレイテナー
8. Memories / WEEZER
9. Sugar Candy Super Nova / THE YOUNG PUNX! 10. ひかり / ASIAN KUNG-FU GENERATION

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INFORMATION

■ライブ情報

♪ASIAN KUNG-FU GENERATION presents
NANO-MUGEN CIRCUIT 2011

◆開始日:2011年7月4日(月)~

♪ASIAN KUNG-FU GENERATION presents
NANO-MUGEN FES.2011

◆開始日:2011年7月16日(土)、17日(日)

※ライブの詳細はオフィシャルサイトをご確認下さい

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