アジカン、10周年ライブ2日目!盟友たちと繰り広げた素晴らしきセッション
ASIAN KUNG-FU GENERATION | 2013.09.27
大型台風が近づいていた。しかも上陸の可能性が高い。前日の14日は、横浜スタジアムではアジカンのデビュー10周年記念ライブ「ファン感謝祭」が、赤レンガ倉庫ではスピッツの「横浜サンセット」がそれぞれ開催され、天気に恵まれた。が、15日 は悪天。それも強力な雨台風に襲われるという予報だ。僕は中止になるかもと思っていたが、決行の連絡があったので中華街を抜けてスタジアムへと歩いた。途中、同じ道にはスタジアムに向かうファンが大勢いた。みんな、しっかり足周りを固め、雨対策も完璧。雲はとても速く流れているのに、不安な顔は一つもない。アジカンの「オールスター感謝祭」を目がけて続々と集まってくるロックの猛者どもに囲まれて、僕の心配は余計なものだったことを悟った。そう、アジカンのファンは全国で行なわれているフェスの中心を担う奴ら。そんな最高にタフで音楽好きなオーディエンスとアジカンが、これからどんな「感謝祭」を見せてくれるのか。期待に胸を膨らませてスタジアムのゲートをくぐったのだった。
ファンのリクエストに応えた前日に対して、今日は様々なゲストを迎えてのライブになる。ステージの両翼には巨大なソーラーパネルが設置されていて、頭上には青空がのぞいている。さすがの大型台風もアジカンのパワーには勝てないようだ。
BGMの音量が上がって、メンバーがスタジアムをぐるっと見渡しながら登場。その様子がバックスクリーン上の大きなスクリーンに映し出される。アングルが非常に良く、ライブのサービス映像としては最高水準。スケール感たっぷりの演出だ。かつてここで佐野元春やJUDY AND MARYを見たことを思い出す。数々の名ライブが行なわれた場所で、アジカンはどんな風に本領を発揮してみせるのだろう。
セットリストで前日と重なっているのは、わずか数曲。前日はスピッツのライブに行っていて、大好きな「電波塔」や「Hold me tight」を聴き逃してしまったが、今日もきっと楽しいライブになるだろう。
1曲目「All right part2」 から♪オーライ、オーライ♪とシンガロングするオーディエンスは、10周年の歓びをファンとして積極的に表現する。一方、バンドは、10年間で練り上げたタイトなアンサンブルを披露する。前日はメンバー4人だけだったのに対して、この日はコーラス岩崎愛、キーボード&ギター上田禎、パーカッション三原重夫がサポートに入り、7人でパワフルなリズムを紡ぎ出す。「ブルートレイン」では伊地知潔のドラムを中心に、イントロで強力なグルーヴを繰り出してスタジアムを沸かせた。
「今日は予報では雨だったのに、晴れました。すごいね。長いですから途中でビールとか“心のガソリン”を入れて楽しんでください。それでは最初のスーパーゲスト、ホリエアツシ!」と紹介すると、「いちばん予想できるゲストだよね、オレ」とストレイテナーのホリエが答える。「やめて、自虐ギャグは。雨が降るから(笑)。アジカンの曲を歌わせる暴挙に出ます」と後藤正文。「大丈夫、大丈夫。だってメチャ好きな曲ですから」。この盟友同士のやりとりに、会場は大喜び。「無限グライダー」では山田貴洋がメロディアスなベースを弾いて、ホリエとのセッションを盛り上げた。
次のゲストは、ザ・レンタルズのMatt Sharp。weezerの初代ベーシストで、アジカンとは親交が深い。「成功っていうのは、いくらお金を持ってるかじゃない。どれだけみんなを幸せにするかだ。オレはアジカンから幸せをもらった。彼らが届けるのは、本物の幸せだぜ。10周年ってことだけど、ぜひもう10年やってくれ!」とエールを贈る。後藤が「僕のレーベルの名前にもなってる」という「only in dreams」を、Mattはベースを弾きながら歌ったのだった。続くthe HIATUSの細美武士は、アジカンの「遥か彼方」を歌う。その圧倒的な歌唱力でオーディエンスの大歓声を浴びた。
「さっきMattも言ってたけど、僕たちが音楽でみんなを幸せにできたらいいと思う。誰かをバカにせず、バカにされずに、自由に歌ったり踊ったりできる場所に、ライブを変えていきたい。音楽やダンスは生きるエネルギーだよ。そういう気持ちで震災の後に作った曲です」と後藤は言って、「今を生きて」を歌って第1部を締めくくった。
休憩をはさんで、第2部はフィールド後方のスペシャル・ステージに後藤が一人で上がり、アコギの弾き語りでスタート。「昨日はリクエスト上位の曲をやったけど、今日はバンドではあまりやってない上位の曲をやります」と、震災で受けたショックを描いた「ひかり」を歌う。「あれから2年半が経っても、何も終わってないし、何も始まってない。この歌を歌うと、震災直後にコンビニに何もなかった景色を思い出す。もしかしたら忘れてしまったかもしれないから、この曲を作っておいてよかったと思います」。弾き語りコーナーの「転がる岩、君に朝が降る」では シークレット・ゲストとしてストレイテナーのナカヤマシンペイが参加。ナカヤマの叩くカホーンとハーモニー・ボーカルが素晴らしく、♪出来れば世界を僕は塗り変えたい♪というささやかな願いを歌い上げるフレーズを見事に活かしていた。そのとき、雨が落ちてきて場内に緊張が走る。が、すぐにそれも上がったのだった。
後藤がメインステージに移動する間、フジファブリックの金澤ダイスケがキーボードに加わって、「嘘とワンダーランド」を演奏。喜多建介のリードボーカルが、いい味を出す。戻ってきた後藤が「震災で何本かが中止になってしまった“VIBRATION OF THE MUSIC”は素晴らしいツアーで、金澤くんが参加してくれてました。何曲か一緒にやります」と言って「迷子犬と雨のビート」などを演奏する。自分たちのキャリアを正統に振り返るこのセッションは、非常に意味深いものとして、今後のロック史に語りつがれていくだろう。
アンコールでは新曲「スローダウン」と名曲「アネモネの咲く春に」が、オーディエンスにプレゼントされた。メッセージと音楽のバランス、言い換えればシリアスさと解放感のバランスがとてもいいライブだった。それはアーティストのパフォーマンスと、オーディエンスのレスポンスがとてもいいバランスのライブでもあった。
打ち上げで山田が、「昨日はスタジアムの大きさがよくわからない内に終わってしまったけど、今日は落ち着いて楽しめた」と語った。その実感は、これからアジカンがさらなるジャンプアップを遂げる原動力になる。雨は結局、1度だけぱらついただけの奇跡のライブだった。
【取材・文:平山雄一】
【撮影:TEPPEI、RIEI NAKAGAWARA】
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リリース情報
セットリスト
デビュー10周年記念ライブ
「オールスター感謝祭」
2013.9.15@横浜スタジアム
-第1部-
- All right part2
- アフターダーク
- ブルートレイン
- AとZ
- 新世紀のラブソング
- ナイトダイビング
- ラストダンスは悲しみを乗せて
- 1980
- 無限グライダー
- Killer Tune
- Getting By
- only in dreams
- インソムニア
- 遥か彼方
- Loser
- マーチングバンド
- 踵で愛を打ち鳴らせ
- 今を生きて
- ひかり
- 夜を越えて
- 転がる岩、君に朝が降る
- 嘘とワンダーランド
- 迷子犬と雨のビート
- 架空生物のブルース
- さよならロストジェネレイション
- センスレス
- 惑星
- 江ノ島エスカー
- リライト
- 君という花
-第2部-
- スローダウン
- アネモネの咲く春に