先鋭的なロック・サウンドと”歌”としての魅力がしっかりと結びついている。前田啓介（レミオロメン）をプロデューサーに迎えた３ｒｄアルバム「Re：Union」によってlego big morlは、バンドとしての黄金比をしっかりと手にしたようだ。「４人が同じ方向を向けたことで、ライブも手ごたえも変わってきた」（ヤマモトシンタロウ／Ｂ）という彼らはここから、新しいフィールドへと突き進んでいくことになるだろう。

EMTG：アグレッシブなバンド・サウンドに回帰しつつ、歌の世界観も大きく広がっていて。いままで以上に手ごたえのあるアルバムになったんじゃないですか？

カナタタケヒロ（Ｖ＆Ｇ）：そうですね。何もストレスなく曲を作れたし、自分たちも何度も聴き返せるアルバムかなって。

タナカヒロキ（Ｇ）：いままではどっちかって言うと、曲を作っているときに考え込んじゃうところがあったんですよ。バンドの温度感をそのままパッケージするのが苦手やったというか。でも、今回は出来たものを熱々のまま落とし込めたし、バンド感もちゃんと表現できたと思いますね。レコーディング中のジャッジも早くて。

カナタ：レミオロメンの前田さんがプロデューサーで入ってくれたのも大きかったです。いっしょに合宿したんですけど、曲を作る段階から録りのところまで、ずっといてくれて。

アサカワヒロ（Dr）：プロデューサーというより、５人目のメンバーですよね。遊びに行くときも、率先して提案してくれるんですよ。温泉いこう、とか（笑）。

EMTG：ベーシストに厳しいところはないんですか？

ヤマモトシンタロウ（Ｂ）：めっちゃあります（笑）。「“lego big morlのベースだから”というところに収まっていたら、それ以上は成長しない」とか、いろんなアドバイスをしてもらって。悔しい思いもしましたけど、めっちゃ勉強になったし、ベーシストとしても転機になりましたね。楽曲の世界をもっと早く感じることの大切さやったり。

EMTG：楽曲のイメージを共有するというか。

カナタ：うん、それもすごくやりました。具体的な言葉やったり、イメージやったり。

タナカ：中心になる言葉が浮かんだ時点で、みんなと話をして。それもいままでとは違ってましたね。

EMTG：なるほど。いくつか曲についても聞きたいのですが、まず、「素晴らしき世界」という曲で始まるのが素晴らしいなと思います。最初に「地球（これ）は素晴らしき世界」と宣言したい、という意思が伝わってきて。

タナカ：そこはけっこう考えましたね。最初から“１曲目にしよう”という意識で作ったんですけど、日本の状況も状況やったんで、嘘でもいいから“素晴らしい”と言いたいっていう……いや、嘘ではないんですけどね。決して素晴らしくはないからこそ、“やっぱり素晴らしいんだ”と確信したうえでスタートしたかったというか。

カナタ：うん。何て言うか、（頭で）理解しようとする曲じゃないんですよね。そのまま入ってくる感覚があって。

EMTG：深い部分で共有してるんでしょうね、きっと。「雨のタクシー」も印象的でした。ちょっとソウルミュージックのエッセンスが入ってるというか……何て説明すればいいのかわからないんだけど。

タナカ：“アーバンだね”って前田さんが言ってました（笑）。この曲、アルバム制作の序盤で出来たんですよ。いままでのlegoからいちばん遠い曲だと思うし、これがちゃんと着地できたことで、ほかの曲にもつながって。20代のバンドでこういうことをやってる人らは少ないと思うし、フェスとかでやったら渋いやろなって。

アサワカ：いちばん難しかったんですけどね、これが。ベースのシンタロウが前田さんと話してたんですけど、とにかくリズム感をつかむのが難しくて。

EMTG：ライブの表現の幅も広がりそうですね。

ヤマモト：まだやってないんですよ。練習しないと（笑）。

EMTG：楽しみにしてます（笑）。「Hit Song crazy」も強烈。個人的にはいちばん好きですが。

カナタ：お、マジっすか。ブッ飛んでますね。

EMTG：歌詞もブッ飛んでますからねえ。「誰が正義だ　僕が正義だ　掻き乱すぜ！」っていう。

タナカ：“Hit song crazy”という言葉があって、あとは身を任せる感じだったんですけどね。深く考えるだけ損やなって（笑）。

EMTG：シーンに対する批判ではなく？

タナカ：あ、でも、そういうところもあるんですけど。よくわかんない人たちがいっぱい売れてて、ミュージシャンもそうやし、リスナーの人たちもレベルが下がってるんやないかなって思ったり。まあ、しょうもないなってことですよ。

カナタ：そんな話ばっかりしてますからね。特にいまはあんまりだと思いますね。ホント、“掻き乱せ！”ですよ。

EMTG：でも、「Re:Union」を作ったことによって、“どうだ！”という手ごたえはあるでしょ？

タナカ：そうですね。（このインタビューの時点では）まだリリースされてないですけど、アルバムを聞いてくれた人の意見を聞くと“間違ってなかったな”って思うし、やりたいことは理解してもらえてるのかなって。もちろん、まだこれからですけどね。

EMTG：そうですよね。そしてアルバムのタイトルチューン「Re:Union」。

タナカ：アルバムのタイトルと楽曲の意味合いは少し違うんですよね。曲のほうは“再開”っていう意味が強くて、タイトルは“再結合”という感じなんです。“４人でもう一度、同じ方向を向こう”っていうこともそうですし、合宿中に震災のニュースがずっと流れていたこともあって、そこから“リ・ユニオン”という言葉がさらに強まったというか。

EMTG：このアルバムが2011年にリリースされることも、すごく意義深いと思います。もちろん、バンドにとっても大きな意味を持つだろうし。

ヤマモト：そうですね。このアルバムを作ってから、ライブも変わってきてるんですよ。いまのツアー（「lego big morl 4Union TOUR 2011」）も“こなしてる”っていう感じがぜんぜんなくて、1本1本、すごく集中できてるんですよね。スレ違いもなくなって、みんながちゃんと前を向いているというか。

EMTG：2012年も、いいテンションで進めそうですね。

タナカ：そうですね。ライブもさらにいい感じになるっていう予感があるし、あとは音源も……まあ、ライブと音源ってめっちゃ普通なんですけど。でも、それ以外は考えてないんですよ。

EMTG：バンドはそれだけでいいと思います、ホントに。ちなみに「Re：Union」には“再結成”という意味もありますが、みなさん、再結成してほしいバンドってあります？

アサカワ：あーなるほど（笑）。カート・コバーンが生きてたら、ニルヴァーナを見てみたかったですけどね。

タナカ：俺はジョン・フルシアンテ（ex．レッド・ホット・チリ・ペッパーズ）に戻ってきてほしい（笑）。あとは何やろう……。今年ハイスタを見て、満足したからなあ。

カナタ：俺も（笑）。

ヤマモト：ap bank fes．でGLAYを見たときに、昔テレビで見てたときの印象よりも、むっちゃカッコ良かったんですよ。たとえばジュディマリが再結成したら、やっぱり同じように感じるんやろうなって思うんでしょうね。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

【 取材・文：森朋之 】