命を謳う人間讃歌──THE BACK HORN「シリウス」完成。

THE BACK HORN | 2012.03.07

3月7日にシングル「シリウス」をリリースしたTHE BACK HORN。メンバーに東北地方出身者が多いこともあり、昨年の東日本大震災直後には、被災地への義援金を募るために「世界中に花束を」を緊急配信し、東北地方でのライブを決行。また、ドラムの松田晋二は猪苗代湖ズとして活動するなど、復興支援を積極的に行ってきた。“自分達に出来ることは何なのか?”と苦悩し、葛藤し続けた中で生まれた今作について、メンバー全員に語ってもらった。

EMTG:「シリウス」は、去年からライブで演奏されているそうですね。
菅波栄純:そうですね。震災があって、あがなえないような運命が起こったときに、俺達に何が出来るんだろうって。その想いがすごいストレートに出た曲でもあったので、これは今聴かせたいって。
EMTG:震災があって、自分と向き合う、音楽と向き合う時間が多かったと思うんですが。
松田晋二:自分達は音楽を作って、ライブをするのが主な活動であり、生活なわけですけど、震災があって、今これをやっているべきなのか?っていう問いは、やっぱりあって。東北地方にライブしに行ったときも、決めてはいながらも、複雑な気持ちは正直あったんですけど。でも、ライブをやったら、パワーをもらったところがすごいあって。何をすれば正解なのかはまだよく分からないけど、自分達が思うことを行動に移すっていうのは、やっぱり大切なことだなと。それにやってみて気づいたというか。
岡峰光舟:震災直後は、音楽をやる状況が自分達でも見えづらかったときもあったし、世の中の空気も“今それどころじゃない”っていうところもあったけど、そこで俺たちが音楽をやらなかったら、今までやってたことも何だったか分かんないし。そもそも、“音楽は無力だ”って思ってないからバンドをやってるところもあるし。だから、俺たちは音楽をやろうって。
山田将司:数回ですけど、被災地でライブをやらせてもらって、すごい辛い状況なのに、ライブに来てくれてありがとうっていう言葉をもらって。まだ何も終わってない話ではあるんですけど、弱ってる人の背中を暖かく押してあげられるような表現ができるような、たくましい人間になりたいと思ってます。
EMTG:そんな葛藤の中で生まれた「シリウス」は、ものすごく絶望的なシーンから曲が始まります。でも、一番最後の<命は一人じゃ生かしきれない>というフレーズがものすごく印象的で。“人間讃歌”というか、奮い立たせられるものがありました。
菅波栄純:一番最初の段階では、無力感から来る“何が出来るんだろう”っていう感じだったんですよ。自分の内側でしか考えてない感じっていうんですかね。自分が受けたショックとか、テレビに映ってる悲しみとか。それで、ライブに行ったときに、自分達にはやるべきこと、やれることがあるのはありがたいなって思って、そこからだんだん目線が外に向いて行ったというか。そこには残酷な風景が広がってるんだけど、そこで生きて踏ん張っている人の目を見たときに、やっぱり人間って強えなって思って。そういう変化があって。
EMTG:山田さんは歌詞を見たときにどうでしたか?
山田将司:……共感っていうか、歌いたいって思いましたね。歌うべきだなとも思ったし。なんか……羽ばたいて欲しいっていうか。言葉が上手く出てこないんですけど、思えばそのときは、何も解決出来てない想いのまま、歌ってたところもあったから。
EMTG:「シリウス」のような、ラウドなサウンドに勇気づけられる人もいると思います。優しく包む込むことだけが、優しさじゃないっていうか。次の「一つの光」も、そういった葛藤の中で産まれてきたものですか?
山田将司:そうですね。「シリウス」が出来た頃に歌詞が出来て。これも同じ気持ちですね。
EMTG:歌詞は自分自身に言い聞かせてる部分もあるのかなと思ったんですけど。改めて歌うことへの決意というか、再確認というか。
山田将司:そうですね。やっぱり自分に出来ることですから。歌うこともそうですけど、ホントに命を奏でていって欲しいと思うし。
EMTG:その後に来る「クリオネ」は、一転、光に包まれるような優しい曲ですけど、この曲はCMで流れていた曲でしたよね。こういう曲にしてくださいっていうお話があったんですか?
松田晋二:そうです。一昨年の年末ぐらいに箭内道彦(CMディレクター・猪苗代湖ズとしても活動)さんからお話をもらったんですけど、“バックホーンの曲はCMには使いづらい”って。良く言えば個性的なんだけど、悪く言うと……まぁちょっと……。
岡峰光舟:飲み込んだね、今(笑)。
松田晋二:下手に扱えるもんじゃないっていうか、崇高なものだっていうイメージでいてくれて。でも、もし俺とやるときがあるんだったら、ちょっとでも違う扉を開いて欲しいっていう想いがあったみたいで、いろんなキーワードをもらって。瑞々しくて、朝日が照ってきて、扉を開けて出て行くイメージとか。そこから曲作りが始まったんですけど。
EMTG:スタートはそういうところでしたけど、この作品の中に入ると、ものすごく際立ちますね。何気ない日常の大切さを表現してくれていて。
山田将司:何でもないことがやっぱり好きだし、肩の力を抜いて行こうよっていう気持ちはありますから。それをお伝えした感じです。
EMTG:そして、初回限定盤のみに収録される「舞い上がれ」は、元々ラジオの企画で産まれた曲なんですよね?
菅波栄純:「マニアックヘブン」(バンドが年末に行なっている、普段はセットリストに組み込まれない曲がメインになるライブ)のDVDを出したんですけど、その編集をしてるときに、客観的に演奏してる姿を見て、これはバンドバージョンで出そうってなって。他の曲とのバランスもいいし、メッセージ的にも根底で繋がっている部分もあるんじゃないかって。
山田将司:受験生を応援する企画だったんで、こういうイメージがバーっと広がって。当時のことを思い出したり、こういうことを自分が受験生のときに言われたら優しいなって思ったものにして。
菅波栄純:「舞い上がる」って柔らかいイメージかもな。力抜いたらふわーっていくような。
岡峰光舟:ガッチリとアレンジし直そうっていう感じじゃなくて、自然にやった感じが良かったかもしれないですね。緻密にやる感じの曲ではないと思ったんで。
EMTG:今作はこれから先のバックホーンにとって、すごく大切な作品になると思っているんですが、完成してみていかがですか?
松田晋二:僕が思ったのは、命の大切さとか、命のたくましさとか、なんでそんな当たり前のことを歌ってるのかな?って思う人もいると思うんですよ。でも、震災があって……なんか、いろんな距離感があると思うんですよね。あの出来事をみんな同じ気持ちで味わっていないっていうことに、それはそうだよなって思うところもあって。だけど、そこで気づいた大切なことを、分かって欲しい気持ちもあるわけですよ。距離感があるから、他人事のようになってしまう気持ちもあるだろうけど、それを“しょうがないよ”で終わらせたくないっていうか。状況とか距離とかに関わらず、出来る限り多くの人に聴いてもらって、いろんな感じ方をしてもらいたいです。

【取材・文:山口哲生】

tag一覧 シングル 男性ボーカル THE BACK HORN

ビデオコメント

リリース情報

シリウス(初回限定盤)

シリウス(初回限定盤)

2012年03月07日

ビクターエンタテインメント

1. シリウス
2. 一つの光
3. クリオネ
4. 舞い上がれ

このアルバムを購入

お知らせ

■マイ検索ワード

●山田将司
マイク

ノラ・ジョーンズが使ってる「NEUMANN」っていうマイクを購入したんで。
少女時代 TAXI 歌詞
たまたまPVを見て、サビの♪TAXI TAXI TAXIの後の“ヅクシ”って何だろう?って思って(笑)。向こうの言葉で「すぐに」って意味みたいですね。

●菅波栄純
2011 アンダーグラウンド

YouTubeでアングラなバンドを調べてたんですよ。今はひとつも覚えてないんですけど(笑)、変態的なバンドがいっぱい出てきて。で、その話を将司にしたら、ちょうど同じ日に「変態バンド」っていうので調べてて。将司はプレイとかテクニック的に「変態」な方で、俺は変態な人がステージに立ってるような映像を探してたんですけど。

●岡峰光舟
運命の人

ドラマを見てて、その原作を読んだんですけど、あの話って実際にあった事件を元にしてて。多少フィクションも入ってるんですけど、その実際の事件をウィキりました。

●松田晋二
生まれ変わる

レコーディングシーズンだったこともあって、“言葉の同義語を調べたほうがいいよ”って将司に言われて調べてて。生まれ変わるっていうこと自体、実際に出来ないじゃないですか?でも、そこに「気持ちを新たに」とか、未来を想像させられて。実際には出来ないのに、みんな当たり前に使ってて、ちゃんと意味が通じるっていう発見があって。こういうときじゃないと、言葉を改めて分析するっていうことってないなって。


■ライブ情報
Hand In Hand & KYO-MEIライブ~シリウス~
2012/03/31(土)大阪なんばhatch

KYO-MEIライブ~シリウス~ & Hand In Hand
2012/04/05(木)東京SHIBUYA-AX
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る