Dragon Ash、IKUZONEのラスト・レコーディング音源「Run to the Sun / Walk with Dreams」をリリース
Dragon Ash | 2012.09.14
今年4月21日、Dragon Ashのベーシスト・IKUZONEこと馬場育三の訃報が音楽シーンを駆け抜けた。15周年を迎えるタイミングで最年長メンバーを失ったDragon Ashは、IKUZONEの残したレコーディング音源を鳴らしながら、IKUZONEとの最後のツアー“REST IN PEACE IKUZONE”を7月から敢行。夏フェスでは、ベースに去年から参加していたRIZEのKenKenのサポートを受けた。そして、この9月19日に、IKUZONEのラスト・レコーディングとなったW-A Sideシングル「Run to the Sun/Walk with Dreams」をリリースする。さらにこのシングルにはIKUZONEの盟友のI.N.A.とDIR EN GREYのToshiyaがリミックスしたテイクが収められている。
バンドにとって困難な時期にも関わらず、Kj、桜井誠、BOTS、HIROKI、DRI-V、ATSUSHIの6人は、EMTGのインタビューに真摯に応えてくれた。切なく熱いエモーションにあふれる「Run to the Sun」と、タメの効いたラップが沁みる「Walk with Dreams」は、ロック・ファンの胸に永遠に鳴り続けることだろう。
- EMTG:去年の暮れからのDragon Ashの流れを教えてください。
- Kj:今年が15周年ってことで、Dragon Ashの新たなアイテムとしてのシングルを作ろうっていうことになった。もちろん前作アルバム『MIXTURE』からの進化形で、それが今回のシングル「Run to the Sun / Walk with Dreams」です。それと並行してスタッフからベストを出さないかと提案された。
- EMTG:ベストアルバムの『LOUD&PEACE』は、バンドからの発信じゃなかったんですね。
- Kj:スタッフから“LOUD&PEACE”っていうアイデアをもらったんで、Dragon Ashが培ってきたアグレッシヴな部分と、包容力の部分をそれぞれに当てはめてシングルを作った。オレはシングルを作るから、メンバーに『LOUD&PEACE』の選曲と、ボーナストラックをまかせて。
- EMTG:15周年はやはり特別だったのかな?
- Kj:そうですね、うん。やりたくてもやれる年数ではないっていうのは自覚してるから、メジャーで15年間やるっていうのは自分の財産にはなるけど、そこが目標でやってきたわけでもない。やること自体が生き甲斐だったり、生き方だったりもするから。
- EMTG:去年の時点では、どんな15周年をイメージしてたんですか?
- Kj:現状を踏まえないで言うと、去年がたぶんバンド史上最大の危機だった。馬場さんの手が動かなくなって、どうするかって、KenKenに入ってもらって去年を乗り越えての15周年だから、またここで改めて意思表示をしたいっていう思いから「Walk with Dreams」をリリースしようと思ってました。で、俺が長いこと轍を作ってきて、今何を思っているかっていうのに近いのは「Run to the Sun」ですね。それぞれ、曲のできた過程が違います。
- EMTG:メンバーは15周年を迎える前の年にあたって、何を思ってたんですか?
- HIROKI:いろんなことが去年はあったので、馬場さんが戻ってきてカウントダウン・ライブをやれて、年越しでここまで安心できたことはなかったな。しかもステージ上で新年を迎えられたことは非常に光栄だなと思ってた。いよいよ15周年だし、じゃあここから仕切り直して、それこそ次のステップに行こうっていう気持ちで満々だったっていうのが正直な気持ちッス。
- EMTG:なるほど。桜井さんはドラムだから、ニューイヤーを迎えたときはステージ上のメンバーを見渡したりはしたんですか?
- 桜井:しましたね。いろんなことがあった年でしたけど、ステージ上でみんなで新年を迎えられたのは嬉しいと思ってました。
- BOTS:去年、馬場さんが怪我したときに、「絶対治してステージに立つから待ってて」って約束して、カウントダウン・ライブでその約束が果たせて、その時点では良かったなあと感じてました。
- DRI-V:去年はライブ・イヤーっていう感じで、いっぱいライブをやったなあと思ってて。その締めくくりが年末のカウントダウンで、そこに馬場さんも帰って来れたっていうのがすごいデカくて。ホント、ずっと走り抜けた1年間、全力疾走で行けたっていう気持ちが大きかったです。
- ATSUSHI:僕も同じですね。とにかく馬場さんが戻ってくるまでは6人が原点を、その場所をちゃんと守って、っていう気持ちでしたね。で、戻ってライブができたので、ここから行けるなって感じでした。
- EMTG:ベスト盤を出す作業は?
- 桜井:ベストに関しては、「LOUD」と「PEACE」にそれぞれ何を入れたいかっていうのをすべて羅列して、これぐらい入るだろうっていう曲数をみんなで持ち寄って、その結果を踏まえてすべてのアルバムから1曲以上は入っているっていう選曲にした。ボーナス・トラックにしか入ってなかったものを入れてみたりとか。初回盤についてるボーナス・ディスクは、Dragon Ashに関して面白いこと、「もう一度やりたい」とかでもいいしっていう作業をおのおの発案して。BOTSくんはあれだけ長い、それこそドラゴンの歴史がわかるようなリミックスを作ったりとか、HIROKIさんはギター1本でできる曲を表現したり。馬場さんは、好きな「Something in view」っていう曲を「ライブのバージョンで録りたいねえ」なんていうことを言ってて、それを形にしたり。僕は「Ivory」っていう曲がずっと好きなんですけど、ライブではもっと激しくやってるんで、これもライブ感のある仕上がりにしたかったのでもう一度録り直しました。ベスト盤に関してはそういう作業でした。みんなが口を揃えて言うように、いろいろあった年だったんで、15周年が準備万端で迎えられてたかどうかっつったらそれはちょっと疑問ですけど、でも年越しでとにかく馬場さんもステージに戻ってきてくれて、そこから15周年に向けたミーティングもたくさん重ねて、「いい年にしましょう」みたいな流れだった。でも、結果その通りにはまだなってない。今もみんながみんな、与えられた課題をこなしてる状況だと思うんです。なので、何か新しいことを始めるのには、すごい大変な1年かなと思ってます。
- EMTG:先を考えるにあたって、ライブを休んでた馬場さんが戻ってきたことは、Kjさんにとって力強いことだったんですか?
- Kj:そうですね。でも年始に、デビュー前からずっと俺たちを見守ってくれてた方が亡くなって。お別れ会をやって……その辺の気持ちで「Run to the Sun」を作ってるんだよね。で、「Walk with Dreams」と「Run to the Sun」を同時にみんなで録ってて。
- EMTG:そのときは馬場さんがいたから、すごく大きい一歩だった?
- Kj:うん。ジャイアント・ステップだった。
- EMTG:そして馬場さんが亡くなって、中断された作業を再開したのはいつだったんですか?
- Kj:ちょっと覚えてないです。ベストとかシングルの他にもいろんなプランがあったんですけど、全部宙ぶらりんになって。でもベストもシングルも出そうよってなって再開して、TDとかして……いろいろありすぎて覚えてねえ……。
- EMTG:……ものすごい重いシングルだね、これは。
- Kj:そうなんですよねえ。「いろんな出来事を予期したわけじゃないのに、今の心境にピッタリはまるシングルだね」ってよく言われるんですけど……。
- EMTG:歌詞の中にも“未来予想図”って言葉があるけど、「不思議だな」って感じなんですか?
- Kj:うん、そうですね、「不思議だな」って感じですね。
- EMTG:バンドとして乗り越えなきゃいけない事件がたくさんあったんだね。
- Kj:まだ乗り越えてないですけどね。これからどうなるにせよ、このシングルがどうなるにせよ、この期間のことは一生忘れないでしょうね。
- EMTG:ちなみにシングルの2曲は、もう夏フェスではやったんですか?
- Kj:全ライブで2曲ともやってます。
- EMTG:そのときに何か思うことありました?
- Kj:もう、それはありますよ……口には出せないけど。
- EMTG:リミックスの2曲も、すごくよかった。
- Kj:馬場さんには馬場さんのバンド仲間がいて、切磋琢磨してる奴らがいて、あの人のすごく親しかったミュージシャンに、その人たちなりの思いを込めてリミックスしてもらって、馬場さんの記念碑として出そうよっていうアイディア出したら、快くやってくれた。
- EMTG:聴いてどうでしたか?
- Kj:「Run to the Sun」のほうは、すごくベース・ソングにしてくれていて愛を感じるし、「Walk with Dreams」のほうは歌詞だけとったら「日常をサバイブしていかないと」って曲にも聴こえると思うんで、その“タフネス”の部分を強調してくれてるなあ。それがリミックスの醍醐味ですよね。オリジナルと違う聴こえ方をするっていう。
- EMTG:シングルのジャケットのビジュアルは?
- Kj:馬場さんが亡くなった後、作り直しました。
- EMTG:ホントにヘヴィだなあ……なんかこれ以上訊けなくなっちゃった(苦笑)。
- Kj:インタビューをいっぱいしてると、どんどんヘヴィになってくるって感じですけどね。
- EMTG:そっか、悪かった!(一同苦笑)
- Kj:リリースはできるんですけどねえ、自分の思いがなかなか咀嚼できないうちに語るのは難しいですからね。厳しいよなあ……。
- EMTG:そうだね。
- Kj:だからライブをやってる方がいいです。
- EMTG:実際この曲を演奏したりっていう。
- Kj:それだけに限らずライブっていう行為を、待ってくれてるファンの前で、切磋琢磨してるバンド仲間と一緒にやることによって、咀嚼できないならできないなりに、加速して振り切ってやろうみたいな気持ちになる瞬間がある。やっぱライブなんて、そんなちんたら考えながらできるもんじゃないから。
- EMTG:うん、目の前に客がいて、でかい音を出して。
- Kj:そうそう。ましてや、どっちかっていうと戦いみたいな感じでライブやるバンドだし。だから今、ライブはすごくいいですよ。KenKenもそうだし、ファンもそうだし、スタッフもそうだし、メンバーもそうだし、ライブがあることで保てている部分とかさ、潰れない部分っていうのはあるね。現状、KenKenの支えがないと、我々6人では掴まり立ちじゃないと立てない赤子状態でバンドやってるから、情けないなと思う部分もあるけど、KenKenには友人としてホントに心から感謝してる。
- EMTG:そうだね。
- Kj:ここんところ、“グランジ感”通り過ぎてんじゃねえかぐらい酒飲んでるけどね(笑)。
- EMTG:ははははは!(一同笑)
- Kj:酒、酒、酒、酒(笑)。グランジでもここまで飲まねえんじゃねえかってぐらい飲むけど。くははは!(一同爆笑)
- EMTG:どっかの打ち上げで、酔っぱらって海に飛び込んだっていう噂も(笑)。
- Kj:マズいなあ、なんで知ってるんですか。いい話をしてるのに(苦笑)。なんスかねえ(笑)。なんか起きたら傷だらけなんですよ。「ああ、グランジだなあ」と思って(一同笑)。
- EMTG:ありがとうございました!!
【取材・文:平山雄一】
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リリース情報
お知らせ
●桜井 誠
桜井食堂 パスタ
桜井:2冊目の料理本は“パスタ編”です。編集者がどうしてもって言うから、そこまで言うんだったら仕方ないなあって感じで。
Kj:まさかロックバンドのドラマーが料理本は出さないよなと思ってたら、出すんかい! で、ほっといたら2冊目も出すんかい!! でもこの本のレシピ通り作ると、うまいんですよ、ほんとに。
■ライブ情報
AIR JAM 2012
2012/09/15(土)国営みちのく杜の湖畔公園
ロックの学園 in 東北
2012/10/21(日)東北文化学園大学
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。