いよいよ外に向けて発信し始めた孤高のバンドTHE NOVEMBERSの新作EPを問う
THE NOVEMBERS | 2012.11.08
THE NOVEMBERSは前作『To (melt into)』、『(Two) into holy』からポップに転ずる予感がしていたが、新作6曲入りEP『GIFT』は“予想外のポップ”に発展している。ブラスを導入したり、4つ打ちリズムの曲があったりするのだが、トラックダウンに工夫を凝らして独自のTHE NOVEMBERSワールドを現出させているのだ。
一般的なポップのフォーマットを使って曲作りをしながら、サウンドで主張するという手法は、尖った世界を多くの人に楽しんでもらいたいと考えるTHE NOVEMBERSにとても似合っていると思う。
それはEPタイトルの付け方にも表われていて、“GIFT”=贈り物という通常の意味と、[Gamete Intra-Fallopian Transfer]=配偶子卵管内移植という医学用語を掛けていたりする。 いよいよ外に向けて発信を開始した孤高のバンド“THE NOVEMBERS”の新作についてを、ボーカル/ソングライターの小林祐介に聞いてみた。
- EMTG:制作はどんな風に始まったのかな?
- 小林:去年、2作品を出した後、すぐに曲作りを始めたんですけど、コンセプトがまだ固まっていない時に、大好きな“LAD MUSICIAN(ラッドミュージシャン)”というファッションブランドのコレクション・ショーに行って、そこで見た舞台セットや音楽にすごく刺激を受けたんです。それで今年の4月に、そこのショーでライブをやらせてもらって。きちんとコンセプトを持って服を見せるために、照明や選曲、モデルの造形に徹底的にこだわったショーを体験したことで、自分たちの美意識をまっとうして、人前に出ることに対する執着が僕らに芽生えたんです。僕らが音楽を作るモチベーションは、“知的好奇心”だと改めて思ったというか。コンセプトが徹底していて、社会に対する態度が地に足が着いていれば、あとは何をやってもいい。だから今回は“挑戦”ではなくて、“実験”です。そこから制作が始まりました。
- EMTG:とってもいい刺激を受けたんだね。
- 小林:はい。で、まずできたのが楽曲としての「GIFT」で。あくまで自分の想像の中でですが、贈る相手にとって良いものであって欲しいという思いがあって。同時に“配偶子卵管内移植”っていう意味もあることを知って、それも含めて曲「GIFT」を作品のタイトルにもしました。
- EMTG:1曲目の「Moire’」で小林くんがシャウトしているけど、あの怒りとも叫びともつかないニュアンスが独特だと感じたよ。
- 小林:あれは“産声”に近いですね。
- EMTG:なるほど。今回、もうひとつ不思議だったのは、6曲目の「GIFT」が終わった後、7曲目が表示されて「ありがとう」って言ってるでしょ。あれは何?
- 小林:実はこのEPは、7月17日のワンマンライブの音源に、音を足したり引いたりして作ったんですよ。
- EMTG:えーっ!? それで最後に「ありがとう」って入れてるんだ。
- 小林:はい。あれは、そのときのライブの最後に言った言葉です。
- EMTG:ライブをベイスにしているから、ユニークな音像になってるんだね。
- 小林:このライブが、今回の最初の実験で。バンドの編成に縛られずに、ブラスやチェロやパーカッションを入れて大所帯でライブをやってみて、知的好奇心が満たされたんです。ただそれを必ずリリースするとは決めていなくて。この日の演奏がすごく良くて、ライブのグルーヴを活かしたものを作りたくなって、音の足し引きをしているうちに、だんだんスタジオ作品に近づいけていったんです。良い方に転ばせていったというか。
- EMTG:面白い作り方だね。元々がライブだから、すごく外を向いている印象がある。
- 小林:そうですね。自分の内側に潜るんじゃなくて、圧倒的に他人に解き放つよう意識しました。他人あっての表現というか、自分の美意識をまっとうした上で、ポピュラリティを得たいと思うようになったんです。たとえばブランキー・ジェット・シティの「悪い人たち」の「♪そんなに長生きなんかしたくないんだってさ、それを聞いたインタビュアーがカッコいいって言いやがった♪」って歌詞を、みんなでシンガロングできるなんて、すごいと思う。こんなに尖った歌詞でも、ポピュラリティを得られる。THE NOVEMBERSで7年間、ひねくれたポップをやってきて、今は何でもやってみたくなったんです。「アンパンマンのマーチ」の「♪わからないままおわる そんなのはいやだ!♪」っていう歌詞じゃないけど、それを子供たちがみんなで歌うこともすごいと思うし(笑)。
- EMTG:あははは。THE NOVEMBERSの美意識と、ポピュラリティが両立するかどうかの実験なんだ。
- 小林:未来は歌いたいと思ってます。誰かが「明日は晴れる」って歌うことは必要だとは思うけど、「明日は晴れる」っていうことに、言及したくなかった。僕はまず「明日をイメージするときに、ポジティヴになれるか?」っていう問いかけをしたかった。僕はこれまでもポジティヴな歌を作ってきたけど、それを裏付けているのは“シリアス”っていうことだった。ポジティヴの反対語はネガティヴだけど、ネガティヴとシリアスの区別をはっきりしたいと思ったんですよ。真剣に生きている人は、ネガティヴにはなれない。その意味で言うと、このEPは今まででいちばんポジティヴでシリアスな作品になったと思います。
- EMTG:2曲目の「Harem」は、「♪踊りましょう♪」って歌ってる。こういうストレートな呼びかけは、今までになかったね。
- 小林:踊るのは身体だけじゃない。JAGATARAの江戸アケミさんじゃないけど、踊るように生きるっていう。
- EMTG:5曲目の「Slogan」は、このEPの中でもいちばんポップに感じたよ。
- 小林:いつもマスタリングをやってもらっているエンジニアの人に、「THE NOVEMBERSって、こういうバンドでしたっけ?」って言われましたもん(笑)。
- EMTG:あは。こんなにポップなTHE NOVEMBERSに出会えるとは、僕も予想していなかった(笑)。
- 小林:だから余計に、最後に「ありがとう」っていうMCを入れたかったんです。この日のライブに関わったすべての人に、感謝すべきだと思った。「スペシャルサンクスは“お客さん”」っていう。だから『GIFT』は、ラッドミュージシャンも含めて誰かと関わっていく中で、THE NOVEMBERSの音楽が生まれていった過程のドキュメントみたいなEPなんです。
- EMTG:ポップなドキュメントなんだ! ありがとうございました。
【取材・文:平山雄一】
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2012/11/08(木)名古屋APOLLO THEATER
2012/11/10(土)梅田Shangri-La
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実施中!!!第一回胞子拡散祭
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※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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