多彩な音とメッセージが煌めくandropの最新作

androp | 2012.12.05

 2ndフルアルバム『one and zero』。様々な出来事が渦巻く世界、無数の感情の間で揺れながら生きる人間をありのままに映し出している――そういう印象を受ける1枚だ。そして、エレクトリカルなダンスミュージック、アグレッシブなロック、アコースティックギターを基調とした素朴なアプローチ……などなど、多彩なサウンドのテイストが、抜群に楽しい。次々飛び出すオリジナリティを心ゆくまで堪能している内に、こめられているメッセージは自ずと伝わってくる。何とも言えず清々しいエネルギーが、心と身体を満たしてくれる作品だ。内澤崇仁(Vo & G)に語ってもらった。

EMTG:タイトルが『one and zero』ですし、様々な曲で「夢/失望」「嘘/希望」「誕生/死」とか、対照的なものが描かれていますよね。そういうものの中で生きる人間の姿が、じっくり描かれている作品だという印象がしました。
内澤:当初はたくさんの言葉が自分の頭の中に転がっていて、いろんな想いが散らかっていたんですけど、『one and zero』っていうテーマをひらめいた時に、不必要な言葉がどんどん削ぎ落とされたんです。結果的に残ったのが、自分にとってすごく根源的、普遍的なこと。そういう言葉を並べる内に、歌詞がどんどん形になって、曲になっていきました。「人間としてどうあるべきか?」っていうことも考えたし、「今、僕は何を表現できるか?」っていうことにも、すごく向き合いましたね。
EMTG:サウンド面に関しては、ダンスミュージック、UKロック的なもの、ミクスチャー、フォーク……いろいろなエッセンスが入っていますね。
内澤:僕はジャンル分けして音楽を聴いてこなかったですし、カッコ良ければ何でもアリだと思っているんです。ギタリストがギターを弾かなくても、そこでシンセが鳴って、何かが伝わればそれでいい。曲作りは、前以上に自由になってきていると思います。
EMTG:例えば「End roll」は自由な音作りをしているし、本当に綺麗な曲。ストリングスやピアノの音色がバンドのサウンドと共に壮大に高鳴っていく様に心動かされました。
内澤:ありがとうございます。これを書いた頃、僕はネガティブな気持ちで、音楽も人間も大嫌いになっていました(笑)。だから「終わりの歌を作ろう」と。でも、自分と向き合って曲を作っている内に、「やっぱり音楽が大好きだな。人間も大好きだな」って思ったんです。世界は終わりを選びながら動いている。最低だと感じることもある。でも、ふとした瞬間に綺麗な夕陽を見たり、知らない人に優しくされたりすることもあるんですよね。「自分の見方によって、世界は180°見え方が変わるんだ」って感じたんです。そのことによってネガティブだった歌詞がポジティブなものにも変わっていきました。
EMTG:音楽や人間が嫌いになったきっかけって何だったんですか?
内澤:何でしょうね? ……震災以降、そういう気持ちはずっとあって。すごくいろいろな終わりを感じたし、いろいろなことを耳にしたし。モヤモヤしたネガティブな気持ちが自分の中でどんどん溜まっていったんです。そういう気持ちをいつか歌にしたいなと思っていたんですけど、ずっと形にできないままで。時間が経っても解決しない問題ばかりでしたし。でも、終わりは「終わり」なだけじゃない。また新しく始まっていくものもあるってことを目にしている内に、頭の中でピアノとストリングスの音が鳴り始めて。そこからこの曲は生まれたんです。
EMTG:「End roll」は、光あふれるイメージを感じる曲でもありました。そういう「光」の感じは、今回のアルバムの重要なキーワードでもあるなと。「Rising Star」はまさにそうだし、「World.Words.Lights.」も、まぶしいくらいの光を感じる曲ですよ。
内澤:まさに「光」っていうものを僕は描きたいと思っていました。「光」って、100人いたら100の光があると思う。それはある人にとっては「希望」だろうし、ある人にとっては「行きたい道を照らしてくれるもの」。このアルバムにはいろいろな「光」が詰め込まれているんですけど、人それぞれにとってのそういうものが感じられる作品にもなっているんじゃないかなと思います。
EMTG:先程「見方によって180°見え方が変わる」ってことをおっしゃっていましたけど、「この世界も悪くないな」って思える「光」の種、ヒントがたくさん散りばめられているアルバムでもあると思うんです。
内澤:そうですね。「絶対希望はあるよ!」とか、「生きていた方が絶対にいいよ!」っていう言い切りは僕にはできなくて。「夢は必ず叶うものではなく、叶わない確率の方が多いのかもしれない。でも、そんなに悪くはない世界なんだよ」っていうことを言いたいというか。「光」と「闇」が共存しているのが世界だと思うし。だからこそ最低に思えても、見方によっては世界は悪くないと思えるのかなと。対照的なものが2つあるっていうことは、描きたかったんです。聴く人それぞれが自由に感じたことが、それぞれの曲の答えになるんじゃないかと考えているので、言い切ってはいない。でも、その人にとっての答えは出るんじゃないかと思います。
EMTG:サウンド面のお話に戻りますが……アコースティックギターの使い方が多彩なのも、このアルバムの聴きどころだなと。
内澤:例えば「Encore」はアコギを使っていますけど、今までだったらandropとしてはやらなかったと思います。前回のアルバムのシークレットトラック「雪のない街」も弾き語りなんですけど、あれはパーソナルな曲。でも、ライブでやった時にお客さんに受け入れてもらえた感覚があったんです。そういう経験があったからこそ、今回、弾き語りの「Encore」をandropの曲として本編に入れられました。
EMTG:アコースティックなものとエレクトリカルなものの不思議な融合形も刺激的でした。「Human Factor」とか「Radio」とか。
内澤:僕らもこういう感じのことは今までやったことがなくて。「Radio」は曲を作る段階で打ちこみでドラムを作ったんですけど、普通こういうものはもっと跳ねるビートにするところを、微妙に跳ねていない機械的なものにしたんです。そういうビートがアコギと混じることで、新しいグルーヴを生むんじゃないかと。それを突きつめながら自分たちのグルーヴとして成立させたのが、この曲です。「Human Factor」はプロトゥールスという編集ソフトを買った時に、打ち込みの波系編集を初めてやってみて生まれた曲です。波系編集はずっとやってみたくて(笑)。何にもとらわれずに、自由に作ったんです。昔からあったんですけど、今だったらライブでも表現できると思ったので、今回形になりました。この2つは今までにはなかった部類の曲ですね。
EMTG:「Waltz」も、すごく心に残りました。アルバムで聴いて、改めていい曲だなと。
内澤:僕は田舎が青森なんですけど、僕の原風景みたいな曲ですね。最初に買って練習していたアコギを東京に送ってもらったんです。それを鳴らした時に地元の景色や星空が思い浮かんで。「すごく弾きにくい安物のギターだけど、一所懸命練習してたな」とかいうことを思い出しながらポロポロ弾いていてできたのが、「Waltz」です。
EMTG:「Rainbows」のメロディもすごく綺麗です。
内澤:これは『鈴木先生』という映画の主題歌。十代の頃の青さみたいなのを表現したくて。十代は感情表現がストレートで純粋だけど、すごく複雑なものも抱えている。そういった想いを曲にしました。
EMTG:こういう柔らかな質感の曲がある一方、「Plug In Head」みたいなノイジーでアグレッシブな曲があるのが面白いですよね(笑)。
内澤:これは衝動的な音を鳴らしたかった曲ですから(笑)。突拍子もない、勢いのある曲を作りたかったんです。やっぱりひねくれ者なんでしょうね(笑)。バラードやミドルテンポの曲だけじゃなくて、「驚かせたい」っていう願いはあるので。
EMTG:あと、アルバムの構成で興味深かったのが、「End roll」のエンディングの残響と、1曲目の「O」がリンクしているイメージがある点でした。アルバムの始まりと終わりが繋がっている感じになっているんですよね。
内澤:そこは意識しました。輪廻転生というか。「終わりだけじゃない。次に繋がる光がある」っていうようなイメージ。「終わりは次の何かに繋がっているんだ」っていうことを形にしたくて。それはまさにこのアルバムで表現したいことでした。
EMTG:あと、最後に「End roll」のミュージックビデオについても、お話を少しお伺いできたらなと。長澤まさみさんが主演して、話題になっていますね。
内澤:大事な曲だったので、ミュージックビデオをショートフィルムのようなものにしたいなと思っていて、メンバーみんなと相談しました。そこでお名前が挙がったのが、みんなが好きな熊澤尚人監督。熊澤監督の光の捉え方、色の感じ、画の切り取り方が好きだったんです。ダメもとでお願いしたんですけど、快く受けてくださって、すごくいい作品にして頂けました。長澤さんの何色にも染まらない透明感、それと同時に持っている何色にも染められる演技力、強さみたいな部分も、すごく見どころですね。
EMTG:来年3月のホールツアーが楽しみです。今回入っている曲をどう表現するかは、今のみなさんの取り組みがいのある課題じゃないですか?
内澤:そうですね。ハードルを自分たちで上げちゃいました(笑)。曲の根源にあるものをちゃんと表現したいです。ホールツアーは初めてですが、そういう空間でじっくり演奏して伝えられるのが楽しみ。僕もお客さんの立場だったら、このアルバムの曲はホールでじっくり聴きたい。ホールならではの演出、照明、映像、音響で表現したいと思っています。

【取材・文:田中大】

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リリース情報

one and zero(初回限定盤)

one and zero(初回限定盤)

2012年12月05日

ワーナーミュージック・ジャパン

1. O
2. Rising Star
3. Boohoo
4. Message
5. Plug In Head
6. Rainbows
7. AM0:40
8. Radio
9. World.Words.Lights.
10. You
11. Party
12. Human Factor
13. Waltz
14. Encore
15. End roll

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■ライブ情報

unBORDE X’mas PARTY
2012/12/24(月/祝)Zepp DiverCity (TOKYO)

RADIO CRAZY
2012/12/29(土)インテックス大阪

COUNTDOWN JAPAN 12/13
2012/12/30(日)GALAXY STAGE/幕張メッセ

one-man live tour "one and zero"
2013/03/10(日)日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2013/03/16(土)大阪 オリックス劇場
2013/03/30(土)東京 国際フォーラム・ホールA

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