ケツメイシ、ニューアルバム『KETSUNOPOLIS 8』をリリース!

ケツメイシ | 2012.12.12

 新境地に踏み出した一枚。まさに攻めの姿勢に貫かれたアルバムが到着した。ケツメイシ、レーベル移籍を経た約2年ぶりのアルバム『KETSUNOPOLIS 8』。一度聴けば、そこで繰り広げられている新たな挑戦の数々に気付くことができるはずだ。エレクトロやEDMなど、海外のクラブシーンの最先端の潮流を意欲的に取り入れたサウンド。そして、現在の国や社会に巣食う閉塞感や鬱屈に対して物申す、真っ直ぐなメッセージ。以下のインタビューで彼らが言うとおり、「やりたいことをやり、言いたいことを言った」アルバムが、本作なのである。これまで7枚のアルバムでは毎回沖縄・首里城で撮影してきたジャケットも、今回は一転。バンコクのソイ・カウボーイで撮影された4人の写真をタイの国旗の中に配したデザインに、英語で表記された『KETSUNOPOLIS 8』というタイトルになっている。そして、そのことも実はアルバムのテーマと密接に関連している。様々なキーワードから、アルバムに込められた狙いを、4人に語ってもらった。

EMTG:まず、今回のタイトルとジャケットに関してはどういう風に決まっていったんでしょうか?
大蔵:これ、いろんな案が出たんですよ。
DJ KOHNO:そもそも今までのやり方を全部切り替えてしまおうかという話もあって。
EMTG:まったく違うものにしようという案もあった?
RYOJI:そう。先にジャケットの話があったよね。今までの流れを踏襲するのかどうか。やっぱり、今までの写真と文字のイメージを残したほうがいいということになって。そこを継承しつつ何か変えたものをということで英語表記になった、という。
EMTG:これは改めての質問ですけれど、これまでのアルバムでずっと沖縄の首里城で撮った写真をジャケットにしていたというのは、どういう理由で?
RYOJI:1枚目にやり始めた時は、友達からプレゼントされたCD-Rみたいな感じにして、あとは中身勝負でしょ、みたいな気持ちがあったんです。で、2枚目の時も一緒でいいんじゃない?っていうことになって、そうして続けたら、3枚目以降は引くに引けない感じになっちゃったという(笑)。そういう感じなんですよ。
EMTG:今回のジャケットを撮影したのはタイのバンコクにあるソイ・カウボーイという場所なんですよね。どういうところなんですか?
RYO:一言でいえば、ヤラしいところです(笑)。
RYOJI:僕、普段からよくタイに遊びに行くんですけど、ここの雰囲気がすごく好きなんですよね。バンコクのいろんな場所で写真を撮ったんですけど、やっぱりここの感じが一番良かった。この照明がピカピカしている感じと、街のカオスな感じが、今の僕らの心の中、今のケツメイシがやっていることを表現しているんじゃないか、と。それに、こんなジャケットのアルバム、今時作る人いないでしょう(笑)。
一同:ははははは!
大蔵:でも、かなり真剣に作ってるんですからね(笑)。
EMTG:アルバムのテーマとしても、タイで写真を撮ったということは象徴的ですよね。
RYOJI:そうですね。別にただ外国で撮ったということじゃなくて、やっぱり日本というフィルターを通してアジア全体を見ようっていうようなコンセプトがあったので。
EMTG:4曲目の「ASIA」にも“アジアの時代”という歌詞がありますが、この曲のテーマはどういうところから生まれたものなんでしょうか?
RYOJI:やっぱり、これから日本人の目がどんどん海外に向いていけばいいんじゃないかっていう気持ちがあるんですよね。
EMTG:でも、アメリカでもヨーロッパでもなく、アジアだと。
RYOJI:たとえば、学校のクラス替えとか会社の配属先が決まったときも、最初に仲良くなるのは近くの人だと思うんですよ。だから、国同士のもめ事もいろいろありますけど、アジアの国とは基本仲良くしていいんじゃないの?と思っていて。世界に出ていくためにも、まずはアジア人の気持ちを理解できないようでは、先はないわけで。そういう意味で、まずいろんな国と分け隔てなく仲良くしてる国っていうので、タイに行ったという。シンプルに、僕自身がすごく好きな国ですからね。
RYO:行ってみると活気とか熱気がすごいんですよ。そういうのもよかったな。豊かさってなんだろうって思ったし。
大蔵:僕は中国が好きでよく行くんですけど、世界的にアジアが今注目されてるっていうのも、行ってみて肌で感じるんですよ。海外に行くと、日本のいいところと残念なところが両方見えますよね。
DJ KOHNO:僕はこの撮影で初めてタイに行ったんですけど、エネルギッシュだし、ワクワクする感じなんですよね、歩いてる人がみんないい顔してるというか。そういう感覚は今の日本にはないかもしれない。それはちょっと残念だけど、むしろそういう熱気を自分たちで作っていきたい、と思いますね。
EMTG:今回のアルバムのリード曲には「合わせた手のひらの間- in between the two palms」が選ばれています。これは非常に社会的なメッセージを持つ楽曲ですけれど、アルバムを象徴する曲にこれを選んだということには、どういう思いがこめられているんでしょうか?
RYOJI:いろんな意見がありましたけどね。ケツメイシとしてユーモラスな部分を代表曲にするアイデアもありましたし、今までのケツメイシっぽいものを代表曲にしたほうがいいんじゃないかっていう話もあった。その中で、一番いいバランスを持った曲だというのがひとつあって。それから、年齢もそうだし、8枚もアルバムを出せるグループになってきたということもあるし、今の自分たちが伝えなきゃいけないこと、自分たちの役割を考えたということはありますね。「moyamoya」っていうメッセージ性の強い曲をシングルとして出しましたけど、そのモヤモヤを吹き飛ばすきっかけになるような曲だと思うので。やっぱりアルバム全体のメッセージ性が強いので、だとすれば一番それを象徴する曲を選んだということですね。
大蔵:リリックに“国”という言葉がありますけど、最初は“国”という言葉をぼやかして書こうかという話もあったんですよ。でも曲のテーマは“何をやりたいのか、どっちに進んでいくのか、リーダーがちゃんと示せば僕らも動ける、決めてくれないからみんなモヤモヤしているんだ”っていうことで。今の閉塞感のある政治を見ていても本当に思うので、そういうのはちゃんと伝えられたかなとは思いますけど。
EMTG:この曲は、ひとりひとりの生活を応援したり、寄り添うような曲ではなく、国や社会の仕組みに対して言及している曲になっているんですね。これまでのアルバムでもメッセージソングはあったと思うんですけれど、それは聴き手へのメッセージだった。そうではなく、大きな対象に対しての考えを歌っている。
RYOJI:やっぱり、今思うことを歌うのが音楽の基本だと思うんですよね。自分が疑問に思うことを歌えないようじゃ、ミュージシャンをやる意味もないし。誰もがそうあるべしということではないけれど、僕らはこれまで自分たちの思うメッセージをずっと発信し続けてきたので、そういうグループであれば今こういうことをやるのは必然だと思うし、責任だと思うんですよね。言いたいことを言っていかないと、やっぱり何も変わらないと思うので。
DJ KOHNO:やっぱり、メッセージ性の出し方が今回からすごく変わってきたんでしょうね。昔のケツメイシだったら、“自分たちから一歩踏みだそう”みたいなメッセージが多かったと思うんですけど、今回は“あんたが頑張らなきゃダメなんだよ”っていうのを指摘してる。そういう人に聴いた時にぎょっとしてほしいわけですよ。
RYO:国だけじゃなく、会社とかその中のひとつの部署とか、たとえば学生だったら部活とか、いろんな場所でリーダー的な存在の人がいると思うんです。そういう風に、上に立つ人が頑張ってほしい。志を持ってる人は沢山いるはずなのに、上に立つ人が上手く道を示さないと、結局みんながやる気をなくしちゃうと思うので。
大蔵:僕らもそろそろそういうことを歌う世代になったし、そういうミュージシャンになったのかなって思います。『いらんこと言うな』って思う人もいるかもしれないけれど、そういうことを歌っていくという。
EMTG:そういうメッセージ性の強いアルバムですが、1曲目は「脳内開放」という、非常にテンションが高く盛り上がる曲になっています。これは、どういうイメージでアルバムのオープニングにしたんでしょうか?
大蔵:13曲並べた時にも、満場一致でこれが1曲目だよねっていうのは決まってましたね。
RYOJI:まぁ……どんだけ好きでも濡れてないと入らないみたいなもんです(笑)。
EMTG:ははははは!
RYOJI:カラダ、ないしは脳をほぐしてから聴いてほしいっていうことでね。曲の勢いもありますし、やっぱり、このアルバムを作り始めるにあたって、いちばん初めに出たテーマっていうのもあるかもしれませんし。自分たちの意識としても、こういうところからスタートしないと曲は作れないよねというところで作り始めた曲なので。聴く人にもそれを最初に聴いていただこうということですね。
EMTG:“腕組んでる奴より腰振ってる奴が勝つ”っていうのは、ストレートなメッセージだと思います。
DJ KOHNO:そうですね。やっぱり、遊ぶときも我慢してる人が多いなって思っちゃうんで。周りの人を気にして、自分を抑えている。そんな状態の人がすごく多いと思うんで、どんどん自分を開放してほしい。さっきの話で言えば、開放させてあげる役割の人もいてほしい。そういう人たちに届いてくれると嬉しいですね。
EMTG:また、「papamama syndrome」という曲では“ごめんねと あやまれないから 世界が、また、ダメになる”と歌われています。これはどういう切り口から生まれた曲なんでしょうか?
RYOJI:やっぱり、今って戦争とか暴動とか、そういう映像がしょっちゅう子供たちの目に触れるわけじゃないですか。そういう時って、大人たちがしっかりしないと、子供たちの心の中でいろんなものが蓄積されていると思うんですよね。だからその世代の子たちが大人になった時、本当に危ないことが起きちゃうかもしれない。ああ、イラっときたら暴れていいんだ、みたいな。それをダメだよって親も説得できないじゃないですか。その先にある怖さに対して、そろそろ何か誰かが言っとかないと世界中がおかしくなっちゃうよっていうことですね。
EMTG:単なる閉塞感とか不安感だけじゃなくて、苛立ちのようなムードが世界中に蔓延しているような感覚ってありますか?
RYOJI:うん、あるでしょうね。ないとこんなアルバムにならないんじゃないかな。
大蔵:イライラしてる人、多いですね。言葉でちゃんと自分の心を表現できないから、すぐ怒りの感情になっちゃうのかな。
RYOJI:ただね、やっとミュージシャンの役割がきたと思うんです。楽しい歌とか恋愛の曲しか歌っちゃいけないと思われていたんだとしたら、それは平和ボケしてたってことなのかもしれない。そもそもミュージシャンってこういう問題提起のようなことを歌っていく役割を持った存在でもあると思うんです。そういう意味で、自分たちも、やるべき時にはやらないといけないという意識は高いですね。きっかけでいいと思うんです。それを感じた強い意志のある人が動けばいいと思う。ミュージシャンのできることって、きっかけを与えることくらいなんですよ。でも、やらないよりやったほうがいいんじゃないかって意識はありますね。
EMTG:アルバムが「YOUR WAY」で終わっているのも象徴的ですよね。「合わせた手のひらの間 - in between the two palms」の“踏み出してよ”という最後のリリックから、“今すぐ手のなる方へ 君を呼ぶ声の方へ”と歌う「YOUR WAY」で終わる。
RYOJI:あれはすごくいい繋ぎですよね。動かなきゃいけない、という気持ちになる。
EMTG:アルバムの最後の曲を「YOUR WAY」にしたのは?
RYOJI:これをアルバムの最後の曲にしようという意識はありましたね。やっぱり救いのある終わり方にしたいんですよ。救いのないものよりも、きちんとフォローしたい。だから“いろいろややこしいことを言ったけど、基本は自分が思うように生きりゃいいんだよ”っていう感じですね。相談された最後にいう台詞みたいな感じ(笑)。“ごめんね、難しいこと言っちゃって、でも頑張りゃいいんだよ!”みたいな感じかな。
DJ KOHNO:本当にそういう役割の曲になってるよね。
EMTG:今回のアルバムは、サウンドにしても、非常に今のケツメイシの姿勢をハッキリと示したものになっていると思います。エレクトロを貪欲に取り入れた今の4人が目指す音楽性というものを、振り幅をあえて狭くして示しているという。
RYOJI:そうですね、今まではアルバムの中で振り幅を広めにとってたんですけど、今回はこれまでとは反対側にいった感じはあるので。でも一度そうしないと、バランスがいいところも見つからないので、そういう意味ではすごく全員の意識が攻めに向かったというのは、いいことだったんじゃないかと思いますね。
DJ KOHNO:そもそも、最初にやろうとしたことが新しいサウンドで表現をするっていうことだったんで、そこの根底の部分はずっとブレなかったですね。今までだったら、こういう音だと歌詞を書きづらいと思ってた曲もあったかもしれないけれど、挑戦してみようという提示ができたし、みんな格好いい歌詞を書いてくれた。
EMTG:ファンやリスナーの反応にもいろいろあると思いますけれど、どう捉えていますか?
DJ KOHNO:面白いですね。リアクションを見てると、やっぱり“えっ! やめてよ、そんなことやるの”って言う人もいれば“新しい! カッコいい!”って戻ってきてくれた人もいる。でも、間違いないのは、結局今の自分たちがやりたいことをやってるっていうことなんですよ。
大蔵:今のクラブシーンの流れも取り入れられたし、自分らが本当に今格好いいと思う音でやれたのは良かったですよね。
RYO:レコーディングで何かやっても、“これは今までのケツメイシっぽいからやめとこう”っていうのは沢山あったしね。そういう意味では挑戦が沢山あった。パターン化したことをやるのは簡単だし、それでいいと思う人もいるんでしょうけど、そのままずっといってもね……。やっぱり楽しいことをやるほうがいいですし。レーベル移籍したのも、いい機会になったと思います。
RYOJI:非常にミュージシャンらしくなったってことなんですよね。言いたいことを言うし、やりたいことをやる。そういうアルバムになったと思います。曲順や曲間にも意味があるし、アルバム一枚を通して聴いてほしいと思ってますね。

tag一覧 アルバム 男性ボーカル ケツメイシ

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リリース情報

KETSUNOPOLIS 8 (ALBUM+DVD)

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2012年12月12日

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11. LOVE LOVE Summer - 高校野球編 (Making) (特典映像) (30分収録予定)

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