これまでの自身を見つめ直すことで、新たな自分たちが現れた、かりゆし58のニューアルバム
かりゆし58 | 2012.12.11
デビュー5周年を迎え、これまでの集大成的なベスト盤を2011年にリリースし、初のオリコンアルバムチャート5位を記録した、かりゆし58。2012年に入ってからは、その勢いは更に加速。フジテレビ『HEY!HEY!HEY!』のエンディング曲としても起用された3月発表のシングル「ゆい」を皮切りに、6月には映画『愛と誠』のエンディング曲「笑っててくれよ」のシングルリリース、夏の全国ZEPPワンマンツアー、そして本アルバムからのパイロット曲「まっとーばー」の配信と、今年も見事に駆け抜けてくれた。
そんなかりゆし58から、実に2年4か月ぶりとなるニューアルバム『5』が届けられた。従来の彼らの魅力である、人の暮らしに寄り添うような温かみ溢れるシンプルなメッセージと、今の彼らならではのスケール感溢れるバンドサウンド、そして各曲違ったミュージックアプローチが同居した今作は、まさに現在(いま)の彼らの足跡がしっかりと刻まれている。
4枚目のアルバムながらタイトルは『5』。気になるその辺りも含め、4人に色々と質問をぶつけてみた。
- EMTG:2012年もそろそろ終わりですが、今年を振り返っていかがでした?
- 前川:今年の話をする前に、まずは去年の流れから話さなくちゃならないかなと。去年はデビュー5周年を迎え、初のベスト盤を出したり、メンバーも30歳を迎えたりと、ある意味、節目の年でもあったんです。で、今年はそのベスト盤以降、去年をさらに上回る活動を目標に、改めて自分たちと向き合った1年でした。
- 宮平:今年は自分がこのバンドに対しての意識を改めて問いた1年でしたね。メンバー間で色々と話し合ったことで、より結束も固まったし、これから先も、この4人でやっていける確信にもなったし。
- 新屋:もう30歳を超えたんで、言い訳も出来ないですから。自分の責任も増した分、”これから先もこのバンドで続けていくゾ!!”と改めて決意した1年でした。
- 中村:それこそベストまではガムシャラに演ってきましたけど、今年は個々の実力や個性もアップしたかったですからね。その辺りはうまくいったかな。
- EMTG:先ほど、前川さんが「改めて自分と向き合った」とおっしゃってましたが、その辺りをもう少し詳しく。
- 前川:<何を自分の核としてやっていくか?>といったところですね。”自分たちの姿勢をどうとるか?””自分がやっていることに胸を張れるか?”を自問したというか。おかげさまで、逆にこの先の5年、10年も考えることが出来ました。
- EMTG:ちなみに、そこで見つけられたものというのは?
- 前川:音楽が身近にあるけど、ありふれているこの時代、自分たちが音楽を生業としていくには、やはり”目の前にいる人がどうやったら喜んでくれるか?””その人の中に何に残せるか?”、そして、”それを自分たちで、どう実現するか?”といった類いですね。それが達成できれば、今後の世の中の流れに関係なく、自分たちは自分たちの音楽を奏で続けられるだろうと。<背伸びをしない><ごまかさない>って部分も含めて。
- EMTG:今おっしゃられたその辺りって、今作に凄く表れていますね。今作って、凄く自分たちで自分たちのことが、改めて分った上で制作されたアルバムだったんだろうなと思って聴いていたんです。
- 前川:まさしくそこに向かってました。「楽器を持った時、音楽を自分で放った時の面白さや楽しさみたいなものを、もう一度思い出しながら演ってみようよ」的な話もよくしたし。
- EMTG:とは言え、じゃあそれが、昔のかりゆし58に戻ったかと言うとそうでもなくて。自分たちの芯や原点を保持しつつ、キチンと一周回り、一回り大きくなって、表現力を含め今の自分たちにしか出せない楽曲が揃った印象を持ちました。
- 前川:うんうん。あの時の音や気持ちを乗せた歌を今の俺たちが演ったり、作ったりしたらこうなる、というのを常に持ちながら制作してましたからね。
- EMTG:確かに中には、AC/DCを彷彿させる曲(M-2「あいのりズム」)もありますもんね(笑)。
- 前川:その辺りは、昔は子供でお金がなくて買えなかったおもちゃを、お金を持っている今だから買ってやる的な気持ちで演ってみました(笑)。
- EMTG:あと、これまで以上に各曲にダイナミズムがあって。今まで以上に大らかさを持っている作品になったなって。
- 宮平:ダイナミズムやスケール感の類は、昔はなかなか表現できませんでしたからね。その辺りも含め、単なる原点回帰に留まらず、キチンと今の自分たちを随所で入れ込めたかな。
- 新屋:機材もですけど、頭の中に鳴っている音を具現化する為に、現行の自分たち以外の楽器も若干入れてみたし。だけど、それもあえてシンプルな範囲に留めました。自分たち以外の音色に関しては、なるべく自分たちで弾くようにしたし。音の少なさのわりに各音が力強いんで、みなさんきっと聴いて驚くと思いますよ。
- 宮平:M-3の「あなたが好きだ」では、バンジョーの音色も入っていますが、そこもゲストに弾いてもらうのではなく、あえて自分で弾きましたからね。その為にバンジョーエレキを買ったし。
- 新屋:シンプルに戻ったり、原点回帰しつつ、新しい要素や、これまでの自分たちには無かった要素も多々入れ込むことが出来ましたからね。
- 前川:伝えたいことはシンプルだし、あえて歌や歌い方もそのようにしましたからね。伝えたいことも一貫してるし。音数にしても、これまで、音数が少ない=音が寂しいってイメージを持っていたんですけど、今作を機にその考えも変わりましたからね。いわゆる、あえて音数を少なくし、その分、各楽器の音の太さや力強さや存在感をもたらせたというか。「この隙間や空きは、広がりや行間なんだよ」って。なので今回は、より各楽器が出来ることを全うしたと思ってます。
- EMTG:それにしても今回のアルバムは全体的に温かさや愛に満ちてますね。
- 前川:ありがとうございます。自分たちの内面の覚悟や自分たちがこれまで生きてきた中での価値観や人生観みたいなものが、聴き手の暮らしに還っていけばいいなと思いながら作ってましたからね。<暮らしから生まれ、暮らしに還っていく音楽>とでも言うか。その辺りは自分の哲学だったりもするし。それこそ聴き手のガイダンスになってくれると嬉しいな。
- EMTG:ちなみに、アルバムでは4枚目なのに、タイトルは『5』なんですね。
- 前川:このアルバムは、自分たちに折り合いをつけた、いわゆる伝えたりメッセージ的なものが濃い作品だと自分たちでも思っていて。なので、次回はこれと対を成すようなアルバムであり、あえて能天気で、聴いた人が何も考えずに無心で楽しめる作品を作りたいと今から考えているんです。もう、その作品のタイトルも決めていて。
- EMTG:それはまさか…?
- 前川:『8』です(笑)。2枚合わせて『58』。この2枚で今の自分たちを表せたらなと。だけど、今回の『5』のような自分たちの哲学的な作品を出せたが故、次の『8』みたいな作品が出せると思うんです。根っこは低い低いところに伸びていくし、幹や枝は高い高いところを目指して伸びていく。そんな対になる作品を作りたくて。人生思っているほど簡単じゃないことも分かった上で、そことどう向き合うか? だけど、考えてても結局始まらないことの方が多いと感じたら、それをバネにまた跳ね上がったものを作る、そんな自然のサイクルの中で『5』も『8』も成立させたいんです。
- 新屋:今回はホント、下に根づいた作品になりましたからね。シンプルなんだけど、演奏面で色々な仕掛けを用意しているんで、所々歌に納得しつつ、演奏面ではびっくりして欲しいなと。ギターが2本あることの有効性や強みみたいなものも、より随所に表したし。
- 宮平:そうそう。M-2「あいのりズム」なんて、<最近、こんなこと演っているバンドっていないよね>ってこともあえて表現していたり。だけど、それにしても自分が昔影響を受けたものを真剣に、”今の時代、こんなことを演るバンドもいないだろう?だったら俺たちが演ってやる!!”の自負も込めて弾いてますから。あえて堂々とプレイすることで、この時代、逆にカッコイイと感じてもらえるし、改めてオリジナルも見直してもらえると思うんです。他にも随所に、”これ、これ!!”ってニヤついてもらえるところも多々用意してます。
- 中村:出すだけじゃなく、キチンと引いたところも表してますからね、今作では。先ほど出たダイナミズムを意識した分、どっしりと安定したドラムを叩きたいというのは常に心がけてたし。
- 前川:メッセージにしても全編ストレートですから。あえて暮らしに根づかせたものばかりにしたというか。どこかで聴いたことがあったり、普段自分たちが会話で使う言葉で成り立たせる中、どこか新鮮に響いたり、刺さったりする言葉や歌詞を入れ込んでみました。普通ながら伝え方が新鮮。そこから聴き手が自分に置き換え、広げ、自分たちなりの答えを導き出して欲しいですね。
【取材・文:池田スカオ和宏】
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●宮平直樹
かりゆし58
何が出るかは、調べてみて下さい。
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お台場合衆国presents
キラキラ WINTER LAND "キラキラ WINTER ライブ"
2012/12/23(日)フジテレビ本社屋1F広場 キラキラ WINTERステージ
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
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