今夏もフェスやイベントに各種出演。その大らかで人の心を温める歌の数々と、ダイナミズム溢れるサウンドで、老若男女多くの人を惹きつけてきた、かりゆし58。
　昨年末にアルバム『5』を発表した彼らから、早くもニューアルバム『8』が届けられた。
　奇しくも今年デビュー8周年を迎え、語呂的にも縁起的にも『8』をつけるに然るべき今作は、従来の自由で大らかな彼ららしさと、新しいサウンドアプローチや更なる壮大さ、曲毎に様々な景色を思い浮かべさせる新要素との同居も目覚ましい1枚。全員がソングライティングに寄与し、結果、幅広くバリエーション豊かな作品内容となっている。
　これまで以上に、ライヴでのお客さんとのコミュニケーション場面が浮びやすくなった今作について、4人に話を訊いた。

EMTG：今作はかなりメンバー全員で作り上げたアルバムになりましたね。

前川真悟（Vo・B） : 結果的にそうなりましたね。自分たちでも、“これまでで最も4人全員でアルバムを作った”印象を持っていて。初の試みも多いし、仕上がりには非常に満足しています。とはいえ、これが実際に本当にみなさんに受け入れられるかには、多少の不安はありますが。

EMTG：と言いながら、かなり自信たっぷりの表情ですよ（笑）。

前川：（笑）。自信作ではあるんです。自分たちの今出せるベストを全て詰め込めたし。しかしいかんせん、今回は振れ幅も大きく、これまでになかった新しいタイプの曲も多々ありますからね。

新屋行裕（G）: 制作進行もギリギリだったんですけど、その中ではみんな超ベストを尽くしたよね。

EMTG：新屋さんが作詞・作曲している曲も何曲かありますね。

新屋 : 苦肉の策です（笑）。いつもは真悟（前川）が作ってくるんですけど、今回はレコーディング開始時に、そのストック曲が全く無くて。これまでだったら曲が出てくるまで待っていたんですけど、それじゃ間に合わないかもと。試しに数曲作ってみたんです。

宮平直樹（G） : 自分もこれまでのアレンジを考えたり、楽器を弾くだけに留まらず、作曲をしたり、制作に加えて最後のミックスまで立ち会って、今回はかなり細かいところまで携わらせてもらいました。それもあってこれまで以上に、自分たちで作り上げた達成感がありますね。

EMTG： 中村さんも今作では今までになかったリズムも色々と取り入れてますね。

中村洋貴（Dr） :まだメロディが出来てない段階で、「先にドラムだけ録らなくちゃいけない」なんて場面もありましたから。その時はかなり不安だったけど、そこに音がつき、メロディが乗り、「おっ、全然大丈夫だし、今までになかった新しい要素もいっぱいあるじゃん」ってなっていきました。

EMTG： どうしたんですか？前川さん。ソングライターとして今回は生みの苦しみでも？

前川 : ありましたね。これは「枯れた」とは違ったニュアンスなんですけど、今回はこれまでのように、自分が書く曲に興奮や感動をしにくくて。1人でクシャクシャポイ（作っては満足できずにボツにする）の連続でした。それがメンバーの「待っているだけじゃなくて、自分達でも曲を描いてみよう」っていう動きにつながり、自分のイメージを形にしていくところに結びついてくれたのが凄く嬉しかったですね。

EMTG： それもあり、今まで見えにくかった新しい才能の発見や開花にもなりましたもんね。

前川 : 僕、これまで日記を書くように作詞作曲をしていたんですけど、それが今回滞ってしまって。その分、「滞ったよ、だけどメンバーが作ってくれたよ」という日記が出来た感じにとらえていて。なんか、バンドとして新しい一歩が踏み出せたかなと。

EMTG： 新屋さんや宮平さんは、「やっと俺たちの作詞・作曲の出番が来た」なんて思ったりは（笑）？

宮平 : ないですよ（笑）。これまで（前川が新曲を）バンバン持ってきてたんで、全くそこまで頭が回ってませんでしたから。

EMTG： そのわりには今回4曲も作曲してますよね（笑）？

宮平 : とりあえず（笑）。なんとはなしに作っていた曲が溜まっていたんで、それが採用された感じですかね。でも、作曲はかなり面白かったし、勉強になりました。

EMTG： 新屋さんの場合は、自身で歌っている曲（6曲目「16号車」）もあったり。

前川 :全く出す予定がなかったものが間違って出ちゃったレベルでの行裕（新屋）が歌ったものは、過去ありましたが（笑）。

新屋 : 実質初めてボーカルをとった曲になりました。まずは歌詞を書いてみようと、目に映ったものを書いてみたんです。「まっ、歌うのは真悟だし」と、まずは作って、そこからは解釈してもらおうといったノリで書いたんですけど。

EMTG： 今回は共同アレンジャーに足土貴英さんを迎えてますね。

前川 : 前作『5』の時は、それこそプロデューサーさんと組んでやってみたんですけど。今回は「自分たちで下地を作ろう」と。足土さんには、あくまでも“一緒にアレンジを詰めてくれる方”って感じの付き合いを望んでたんですけど、気づけば、ほぼ頼り切りでした（笑）。

EMTG：全体的に非常にダイナミックで、聴いていると広い会場やステージが思い浮かんできます。

前川 :これまで以上にシンプルな楽器構成とアレンジを心掛けました。「手のなる方へ」なんて、それこそマム・フォード・ザ・サンをイメージして作りましたからね。空や大地が思い浮かんだりする、そんな音楽性を特徴にしたかったんです。

中村 : 「ハロー・グッバイ」に関しては、サザンロックですからね。これを作曲した（宮平）直樹からは、「アメリカ人のようにダイナミックでワイドなドラムを頼む」というリクエストでしたから（笑）。やっぱりドラマーとして、「バンドに新しい風を吹き込みたい」というのがあったんで、地味に色々なことに挑戦しています（笑）。「16号車」では、ブラシも使ってスイング感を出したし。

新屋 : 今回は特に、どの曲も「こんな風にしたい」というのが明確でしたからね。技術もついてきて、「この中から何が出来る？」じゃなく、「これをやりたいから、こう演る」に移ってきたと言うか。

宮平 : あと今回は、後にこれを引っ提げて、ライヴハウスツアーを回ることを前提に作ったところもあったんで、そのまんまライヴで出来るようにという意識はありました。機材もあえて普段自分が使っているギターやアンプのみしか使ってないし。その分、愛着を感じたかったところもあって。

EMTG： ライヴが前提の作品作りというのは非常に分かります。今作はお客さんも一緒に参加出来たり、一緒に歌えたり、声を重ねたりするところも多々ありますもんね。

前川 :この秋からは、全都道府県ツアーをこの作品と共に回りますからね。そこで一緒に遊べる作品を作りたくて。いわゆる理屈よりも体感できる作品にしようというのはありました。

EMTG： これだけ一緒に参加できる曲があると、集まったお客さんも、さぞかし満足でしょう。

新屋 : 「青春よ聴こえてるか」もみんなで大合唱できると思うんです。たぶん今回の各曲はライヴで演っていても、お客さんと同じで、自分も高揚しっぱなしな気がする（笑）。

EMTG： では、最後にその全都道府県ライヴへの意気込みを聞かせて下さい。

新屋 : 全都道府県ツアーは、4年ぶり 2回目なんですけど、「そろそろやりたいな…」と思っていたところで。ふたを開けたら、それを超える52公演になってましたけど （笑）。今からみなさんに会えるのがとても楽しみです。

中村 : なかなか遠征できないお客さんに、ようやくこちらから会いにいけます。久しぶりに会える方々も沢山いると思うので、再会できるのが非常に楽しみです。僕たちの変わってない感じを是非確認しに来てください。

前川 : みなさんの地元で一緒に歌い、叫び、遊びましょう。各地、忘・新年会でもやるつもりで回るので、みなさんお楽しみに。

【取材・文　池田スカオ和宏】