ユニークなコラボにも注目! 長澤知之が2ndアルバム『黄金の在処』に詰め込んだ思いとは?

長澤知之 | 2013.11.07

 以前、インタビューしたとき、「ミニアルバムは一気に作ってすぐ出せるから、自分に合ってると思う。フルアルバムは作り上げるのに時間がかかるからね」と語っていた。その長澤知之が、デビュー以来、2作目となるフルアルバム『黄金の在処』を完成させた。前言を踏まえると、それだけ作品を発表したいという欲求が高まっているということなのだろう。アーティスト本来の熱気あふれる内容になっている。

 1曲目の「GOODBYE,HELLO」でギタリストとしての強烈な個性を前面に出 しているのを皮切りにボカロとコンバインしたり、話題のバンド“赤い公園”の津野米咲が参加したりと、1曲1曲がアイデアに満ちていて、歌う長澤の楽しさがひしひしと伝わってくる。心の痛みを歌う天才が、存分に本領を発揮したフルアルバムだ。「誰より愛を込めて」という曲にある♪ただ心からあるがままを叫ぶだけ♪というリリックどおりのアルバムを、思い切り心を開いて聴いてほしい。

EMTG:気迫にあふれた、すごいアルバムだね。でも、前に「フルアルバムより、ミニアルバムがいい」って言ってたけど?(笑)
長澤:そうでしたっけ?。気まぐれで、すみません(笑)。
EMTG:曲ができまくったのかな?
長澤:曲はどんどんできたんですけど、レコーディングに入ったら、体調を壊してつまずきました。
EMTG:あははは、そういうもんか。 曲作りは、どんなふうに始まったの?
長澤:前作ミニアルバムの『SEVEN』を出した後、次のアルバムのイメージがすでにあったんですよ。次への布石という意味では、「あんまり素敵じゃない世界」っていう曲の中にヒントを作っていて。♪僕は虹を刻む 刃を持って、出来る限り深く♪っていう。そこで描いた“虹”というのは、いろんな色が集まってひとつの表現になるというもので。たとえば今回の『黄金の在処』は、6曲目の「追憶」では過去を振り返っているのに、8曲目の「無条件幸福」では振り返るなって歌ってる。ある意味、支離滅裂なんだけど、人間なんてそんなもんだと思う。そういうバラバラなものが集まって、 きれいなひとつの虹になればいいと思ったんですよ。
EMTG:そうか。そういう“虹”なんだね。
長澤:それと「あんまり素敵じゃない世界」には♪君と虹を刻む♪っていうフレーズがあって、今回はいろんなミュージシャンと一緒にやってみたかったっていうのもあったんです。
EMTG:“赤い公園”の津野さんとか、ZAZEN BOYSのドラムの松下敦さんとか、SAKE ROCKのドラムの伊藤大地さんとか、本当にいろんな人が参加してる。長澤くんって、友達が少ない人だと思ってたから、意外だった(笑)。
長澤:確かに友達は少ないです(笑)。それでも、ツアーやイベントでも何回かドラムを叩いて頂いている秋山タカヒコさんは友達だったりして。でも今回、一緒にやりたいと思った人は、こっちから声をかけさせてもらいました。赤い公園の津野さんとは、福岡のライブハウスで一緒になって、「一緒にやりませんか?」って言ったら、前から僕の音を聴いててくれて いて引き受けてくれた。嬉しかったですね。
EMTG:どうして津野さんだったの?
長澤:赤い公園の音を聴いて「不思議な曲をやるな」と思ってた。そこに、音楽的な野心を感じてた。ギターとコーラスをやってもらった「そのキスひとつで」は、歌詞的に女性が必要だったんですよ。♪異次元ハニー 側にいて♪という歌詞があるんですけど、津野さんに電話で「異次元ハニーになってくれ」ってお願いしたら、「はい、いいですよ」って言ってくれて、スタジオに髪をツインテールにしてミニスカートで来てくれた。
EMTG:うわっ、それ、カッコいいね!
長澤:現場は盛り上がりましたよ。
EMTG:僕は個人的には3曲目の 「スーパーマーケット・ブルース」が好き。バイト仲間をけなす口調は悪いんだけど、悪いからよけいに愛を感じた。
長澤:コンビニでバイトしてた頃を思い出しながら、素直な気持ちで書いた歌詞です。
EMTG:これは長澤くんの実像なの?
長澤:全部じゃないです。自分の経験と妄想が混じっていて、それを歌の主人公に代弁してもらうっていう感覚です。
EMTG:オーソドックスなバラードの「あとの祭り」もよかった。
長澤:あれは10代 の頃に作った曲です。僕、けっこうねちっこいんで、「今に見てろよ」っていう気持ちを、今回は中学生の自分になりかわって報復してます(笑)。
EMTG:それにしても、『黄金の在処』は、これまで以上に聴く人を意識していて、“外に向かってるアルバム”になってると思う。
長澤:最初はそんなつもりはなかったんですが、結果、そうなりました。でも、どの曲も聴いてくれる他人を意識しつつ、「伝わらなくてもいいや」っていうエゴが入ってる。そのバランスが8:2の曲もあれば、0:10の曲もあるっていう。聴いてくれてる人に100%ありがとうって歌ってる曲もあります。
EMTG:他のミュージシャンとコラボしていることも、外向きに感じられたな。
長澤:そうですね。ただ、こんなにたくさんの人たちとやっていいのかっていう思いもありました。まとまらなくなっちゃうかもしれないし、自分が出せるのかっていう心配もあったし……。でも、自分で作った曲の個性がそのミュージシャンを呼んでるんだから、それでいいかなと思って。もっともっと新しいことをやりたいっていう思いが強かった ですね。
EMTG:アルバムタイトルは?
長澤:プリプロの段階で「黄金の在処」っていう曲があって、最初からアルバムタイトルの候補になってた。出来上がってみたら、やっぱりこれがタイトルにふさわしいって思えたので、これにしました。僕の1枚目のフルアルバムが『JUNKLIFE』だから、セカンドはもっとリッチ に“黄金”ということで(笑)。
EMTG:タイトルが“出世”してるんだね(笑)。黄金に込めた思いは?
長澤:前は、音楽にすがるような気持ちでやってたと思うんですよ。でも今は、苛立つことを歌で昇天させてしまえばいいって思えるようになった。心境が変化して、音楽の中に自分がいて楽しめる感覚を知った。黄金のイメージは人それぞれでいいと思うんですけど、音楽を楽しめる今の状況が、僕にとっての“黄金”です。サウンドも歌詞の方向もバラバラでいい。でもアルバム全部を聴き終わった後で、納得してもらえばいいなと思ってます。
EMTG:ありがとうございました。

【取材・文:平山雄一】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル 長澤知之

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ビデオコメント

リリース情報

黄金の在処

黄金の在処

2013年11月06日

ATSUGUA RECORDS

1.GOODBYE, HELLO
2.フラッシュバック瞬き
3.スーパーマーケット・ブルース
4.そのキスひとつで
5.誰より愛を込めて
6.追憶
7.黄金の在処
8.無条件幸福
9.VACANCES
10.あんまり素敵じゃない世界
11.あとの祭り
12.ハレルヤ
13.STOP THE MUSIC

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サンジェルマン伯爵
ヒトラーのことを調べてたら、この名前が出てきた。1690年代に生まれた人でバイオリンを弾いたり、絵を描いたりする、当時の芸術家なんです。なのに、今、日本にいるという噂がある。あまりにもミステリアスな人なので検索しました。


■ライブ情報

「黄金の在処」発売記念
〜シークレット ライド7〜

2013/12/14(土)渋谷 WWW
2013/12/17(火)大阪 Music Club JANUS

長澤知之ツアー
“Nagasa・Oneman8 Band Ver.”

2014/02/15(土)大阪 Music Club JANUS
2014/02/17(月)名古屋 APOLLO BASE (旧APOLLO THEATER)
2014/02/22(土)広島 BACK BEAT
2014/02/23(日)福岡 DRUM SON
2014/02/28(金)東京 LIQUIDROOM

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