amazarashiのニューアルバムが発売される。
　この夏から秋、中島美嘉への楽曲提供や夏フェス出演、凛として時雨との２マンなどを経験した彼ら。この活動展開は、音楽に対する貪欲さが、自分以外にも向けられ始めた証拠なのではあるまいか。
　視線が外に向かってきたのはもちろん、自分の内側にあるものを解き放っていこうとしてるように感じられる。
　つぼみが、少しずつ柔らかくなっていくように。
　新作のタイトルは「あんたへ」。
　このバンドのキーパーソン、秋田ひろむにメールインタビューを行った。

EMTG：少し前の話になりますが、初めて夏フェスに出演した感想は？

秋田： 今までワンマンばかりだったのでとても新鮮でした。お客さんのノリもいつもと違ったし、開放感もあって僕らもテンション上がってたし、楽しくやれました。終わった後は色んなバンドを見て刺激を受けました。フェス特有の雰囲気があるのでライブの運び方とか、演出とか、発見があったのでそれは次に活かしたいと思います。

EMTG：猛暑だった2013年、秋田さんにとって最高だと思うことのできる “思い出”をひとつあげてください。

秋田： ライジングサンは楽しかったです。後は青森のフェス夏の魔物も見に行って、それも最高でした。

EMTG：“TK from　凛として時雨”と２マンをやられましたが、その時の感想を教えてください。

秋田：やっぱり皆さん上手いですから、音楽の技術的なところは凄い勉強になりました。ライブの雰囲気はamazarashiと近い所もあると思うので、独特ないいイベントだったと思います。

EMTG：ニューアルバム『あんたへ』は、どんな風に作られていったのでしょうか？

秋田：前作（編集部注：2013年4月発売『ねえママ　あなたの言うとおり』）が完成してからすぐに次の作品はイメージしてて、どんなのにしようかなと考えていました。「あんたへ」という曲は古い曲なんですけど、これは絶対に入れたいと思って、そこから具体的にアルバムの形が見えたと思います。「あんたへ」を中心に他にどんな曲を入れたらいいかを考えて曲作りをしました。漠然とメッセージが伝わる様なものにしたかったです。

EMTG：タイトル曲「あんたへ」の中の　♪　はやく　涙拭けよ　笑い飛ばそう　僕らの過去　♪　という歌詞が印象的でした。秋田さんにとって“過去”は、どういう存在になっていますか？　

秋田： いい過去も悪い過去もあるんですが、「あんたへ」で歌っている過去は悪い方の過去です。毎日死にたいと考えて、引きこもってた時期があって、「あんたへ」はその頃を思って自分自身に向けて作った曲です。３年前だったら自分の中でリアル過ぎて、もっと内に向かった表現になったかもしれませんが、今だったらもっと外に向かって歌えると思って今回の様なアルバムになりました。

EMTG：二人称には、あなた、きみ、お前など、いろいろありますが、ここで“あんた”を使ったのは？

秋田： あなたや君よりもっと近しい呼び方だと思います。「あんたへ」は自分に向けて作ったので、身近だけどぶっきらぼうな「あんた」が一番しっくりくると思います。

EMTG：「匿名希望」が出来上がった背景を教えてください。

秋田：始めは怒りのテンションで作ってた曲なんですけど、作ってて辛くなって来て、怒りでやりあってもしょうがないよっていう曲になりました。僕自身が文句ばっかりの人間だったので、その時の自分に責められている様な気持ちになる事が今になってあります。そこをなんとか乗り越えて、っていう曲になったと思います。

EMTG：「匿名希望」のメロディーについて。どのように出てきたメロでしたか？

秋田：このメロディーはすんなり出来たと思います。あんまり悩んだりしませんでした。

EMTG：のポエトリーリーディングの長編「冷凍睡眠」。以前、ポエトリーリーディングについてお伺いした際に“主役になるようなポエトリーリーディングを作りたい”とおっしゃっていましたが、この曲が、そのチャレンジにあたりますか？

秋田：そうです。以前から挑戦してた長編のポエトリーリーディングなんですが、やっといいのが出来たので今回入れました。今回のアルバムの中で一番実験的な曲だと思います。

EMTG：「冷凍睡眠」を作っていて発見した、ポエトリーリーディングの奥深さ、面白さはありますか？

秋田： 始めはもっとかっちりした、言葉数を合わせてリズム感もあって、っていうイメージで作ってたんですけど、それだと違和感があったので少し崩して、とか自分の中で試行錯誤して作りました。言葉選びも、状況描写で物語が進んでいく様にとか、感情表現は少なくいい所で爆発させてとか、理詰めで考えた曲だと思います。

EMTG：他の楽曲に比べると、言葉を詰め込むことができるのが、ポエトリーリーディングの面白さのひとつだと思うのですが、逆に“言葉を多く使う”際に、秋田さんが意識して気をつけていることは何ですか？

秋田：僕にとってはあまり違いがないかもしれません。メロディー付けるか付けないかの差くらいなので。「冷凍睡眠」自体がもうメロディー要らないんじゃないかっていう所からスタートした曲なので。

EMTG：ポエトリーリーディングの際に、ボーカリストとして意識していることは？

秋田：歌と違って正解が分からないので、作る度、レコーディングの度に試行錯誤してます。人の気持ちに訴えかけるものが出来ればいいなと思ってポエトリーリーディングはやってます。

EMTG：「終わりで始まり」。この曲を作った時、自分を肯定することで、見えてきたものは何だったのでしょうか？　個人的に見えてきたもの、バンドとして見えてきたもの、どちらでもいいので教えてください。

秋田：自分を肯定する歌を作り続けたからなのか、運が良かっただけか分かりませんが、状況は良くなったと思います。純粋に音楽を楽しめる様になりましたし。でも、いつまでもこの状況が続くとも思えないので、今やれる事を全力でやろうと思ってます。

EMTG：作品（楽曲）を作る際、季節や天候、時間などは、作品に反映されていると思いますか？

秋田：反映されてると思います。歌詞に悩んだ時は、とりあえず身の回りの事とか状況をそのまんま書いたりします。

EMTG：鬼も笑う質問で申し訳ありませんが、2013年、amazarashiにとっては、どういう1年でしたか？

秋田：あっという間ですね。色々やった気がするんで充実した一年だったと思うんですけど、まだ、これだというものが出来ていない気もします。

EMTG：2014年。1月には、全国ツアー「amazarashi LIVE TOUR 2014」も決まってます。このツアーのことも含め、2014年、どんな年にしたいと思ってますか？

秋田： とりあえず目の前の事に集中してやって行きたいです。前回のツアーでバンドとして成長の手応えを感じたので、今回はその成果をぶつける感じで頑張ります。

EMTG：最後に。amazarashiの作品、ライヴを楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。

秋田：今回もいいアルバムが出来ました。能動的に外に向かって発信するメッセージソングです。どうか聴いて下さい。良かったらライブに来て下さい。

【取材・文：伊藤亜希】