KREVA、メモリアルイヤーの幕開けを飾るシングル「トランキライザー」
KREVA | 2014.02.05
- EMTG:いよいよ10周年イヤーに突入しましたね。
- KREVA:リリースにライブにいろんな予定が決まってるんですけど、先々のことはあまり考えずにとにかく一つひとつ目の前のことに集中したいと思ってます。で、時間があるときはなるべくスタジオに入って何かしら作っていくことを心がけてます。
- EMTG:トランキライザーのトラックはいつごろできたんですか?
- KREVA:「908 FESTIVAL」が終わってからすぐに曲作りに入って、このトラックは9月16日にできました。これ以外にもう1曲、シングル候補になった曲があったんですけど、そっちは客演もいるのでこのあとにとっておこうってなって。このトラックは、自分でもめちゃくちゃカッコいいと思います。トラックができた時点でかなりの手応えがありましたね。トラックを作っているときに思い浮かべていたイメージは特になかったんですけど、BPMは150を超えようということだけは意識しました。
- EMTG:リリックの内容も含めて、情緒と躍動、孤独と共鳴、闇と光のグラデーションが歌とラップのシームレスな融合によってドラマティックに描かれてますね。
- KREVA:「トランキライザー」の歌詞は最初に厭世的な部分が強く出ていて。サビのメロディと一緒に〈誰も 理解できないかも〉というフレーズが出てきて、そこにどうしても引っ張られてしまって。自分の音楽の魅力がわからない世の中ダメだ、みたいな視点になってしまったんですよね。この歌詞ではシングルにふさわしくないし、どうしたもんかなと思っていたんですけど。でも、そこから、それでも自分の考えや音楽をしっかり理解してくれる人がいる、というところに着地させればいいんだと思って。曲の色合いは違いますけど、歌詞の着地の仕方は「OH YEAH」に近いと思いますね。最初に出てきたフレーズに引っ張られたとしても、そのフレーズを殺さずにそこから粘って、粘って、シングルにふさわしい曲に着地させられる力をもつことが重要なんだって学びましたね。
- EMTG:新たな気づきがあったんですね。
- KREVA:そうですね。フックに引っ張られないために、まずその他のメロディを作っていって、そこに言葉を付けていったんです。その作業がすごく面白かった。歌詞はいい韻が出てくるまで熟考して。歌とラップを両方聴かせるという構成も俺にしかできないことだと思います。歌の部分をラップとして捉える人もいると思うし、その逆もしかりで。熊井吾郎にこの曲を聴かせたときに“この曲のジャンルは、KREVAですね”って言ってたんですけど、自分でもそう思いましたね。
- EMTG:“精神安定剤”という意味をもつ「トランキライザー」というタイトルにちょっとドキッともしたんですけど(笑)。
- KREVA:いや、それは単に言葉の響きがカッコいいからつけただけで、特に深い意味はないです(笑)。
- EMTG:ライブでどんな響き方をするのかも楽しみです。
- KREVA:「トランキライザー」はトラックの雰囲気としては明るくないけど、ライブで盛り上がる画が見えるんですよね。切ないけど、人を熱くさせるというか。そういう意味でもまた新しいタイプの曲ができたなと思います。
- EMTG:2014年、KREVAさんからどんな曲が生まれるのか、楽しみにしてます。
- KREVA:特に今年はスタジオに入れる時間が貴重になってくると思うから、さっきも言いましたけどスタジオにいられる日はとにかく毎日何かしら作るようにしようと。そして、一つひとつの作業を全力でやると。結局、自分の人生でいちばん好きな時間は制作しているときだし、やりたいことって曲を作るしかないんですよね。だから“1年中曲を作っていいよ”って言われたら喜んで四六時中スタジオにいるんですけど(笑)、そういうわけにもいかないから。
- EMTG:忙しい日々において意識していることはありますか?
- KREVA:いまはテレビを観るのもTwitterをチェックするのもやめていて。ネットもなるべく音楽の情報を集めるときだけ見るようにしてるんです。心を乱されず音楽にハマれるように。そうするようになったのは、禅の本を読んだのがきっかけで。
- EMTG:その話、詳しく聞きたいです。
- KREVA:これまでの自分の音楽表現は身を削る部分が多くて、だんだん切り身もなくなってきたなと思うところがあったんですけど、“喚起”するものを求めて、そこから何かを生んでいけばいいんだということも禅の本を読んで気づいたんですよね。全部が全部共感することばかりではないけど、もともと自分の音楽に対する姿勢って禅の思想に繋がることが多いなとも思って。最終的にはシンプルな表現性を求めていることとか。そういうこともあって、10周年イヤーというのはあるんだけど、俺の気持ちはいますごくフラットなんですよ。フラットな状態で、一つひとつの仕事や出来事と丁寧に向き合っていきたいと思ってます。
2014年、いよいよ、KREVAが10周年イヤーに突入した。6月18日の自身の誕生日でもある10周年記念日を起点に、今年のKREVAは例年以上に精力的な活動を展開し、さらなる音楽的な高みを追求するだろう。事実、昨年9月8日にさいたまスーパーアリーナで開催された「908 FESTIVAL」の終演後にはビジョンでいくつもの“公約”とも言えるトピックスを発表し、オーディエンスをおおいに湧かせた。KREVAの新しい音楽劇「最高はひとつじゃない」の再演、シングル、オリジナルアルバム、ベストアルバムのリリース、47都道府県を回るツアー、オフィシャルファンクラブの発足――。また、先日には4月に上演されるブロードウェイミュージカル「IN THE HEIGHTS」日本公演の、ラップを中心とした作詞を担当することになったというニュースも飛び込んできた。このニューシングル「トランキライザー」は、獅子奮迅の勢いで駆け抜けるに違いない2014年の幕開けを飾るものである。
【取材・文:三宅正一】
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